人権擁護法 修正して成立を急げ

2005.02.25 

 政府・与党が人権擁護法案を今国会に再び提出することになった。民主党も内容について協議することで合意した。
 差別や虐待に苦しむ人をすばやく救済する。そうした法の目的に反対する人はいないだろう。
 しかし、3年前に提出された法案は、新たにつくられる人権委員会の独立性が乏しいうえ、メディア規制を盛り込んだことで批判を浴び、廃案に追い込まれた。再提出にあたっては、この2点をきちんと修正して成立を急ぐべきだ。
 この法案には二つの原点がある。
 ひとつは、部落差別をなくすことである。住宅や道路などの同和対策事業が02年に終わったが、差別はなおさまざまに残っている。そこで人権侵害を救済する新たな法律が求められた。
 もうひとつは、国際社会からの要請である。国連規約人権委員会は6年余り前、入国管理の職員や警察官などによる人権侵害を救済するため、独立機関を設けるよう日本政府に勧告した。
 政府は専門の審議会をつくって具体策を論議した。しかし、国会に提出された前回の法案は、これらの原点からはずれたものだった。
 人権委員会は差別や虐待を強制的に調査し、被害者に代わって訴訟を起こすこともできる。書類の提出や出頭を拒めば過料に処すなど、権限は強い。
 それはいいのだが、人権委員会は法務省の外局にすることになっていた。実務を担う事務局の職員は、法務省人権擁護局からの横すべりとなる。
 国連が挙げた人権侵害の多くは、入国管理事務所や刑務所など、法務省の施設で起こっている。人権委員会が同じ法務省に属するのでは、厳しく監視、調査できるとは思えない。独立性を強めるためには、内閣の直轄か、内閣府の外局とすべきだろう。
 「報道機関の人権侵害」が調査や勧告の対象にされたことも賛成できない。
 行き過ぎた取材や報道について、新聞社や放送局などが取り始めた対策は、確かに、まだ十分とは言えない。いっそうの取り組みが求められている。
 だからといって、取材が行き過ぎかどうかを人権委員会が判断すれば、行政機関が取材の方法や範囲を決めることになる。公権力を監視するはずのメディアが公権力にしばられては、国民の知る権利が危うくなる。海外の人権救済機関にもメディアを対象としたものはない。
 政府・与党は今回、メディア規制の条文を残したまま、凍結する方針を打ち出した。しかし、それは一時的なまやかしである。凍結していいというのなら、なぜ、削除できないのか。
 民主党は前回の法案に対し、人権委員会を内閣府の外局とするよう求め、メディア規制を削除することも主張した。
 これをもとに与野党は話し合うべきである。差別や虐待を許さない法律を本気でつくろうと思うならば、与党は真剣に修正に取り組まなければならない。