この人こそポアロの中のポアロ
デビッド・スーシェ

テレビ版名探偵ポワロ表紙

ISBN4-7630-9838-1 C0074
出版 求龍堂 \1,800 150ページ

 エルキュール・ポアロとは、作家アガサ・クリスティの小説に登場する架空の人物です。職業は私立探偵であり、その珍妙な容姿が特徴です。卵形の頭に奇妙な形をした口髭、そして少々太り気味だが気にせず食べます。(笑) 背は低く、背広はきっちりサイズが測られたものを好み、エナメル革の靴はいつもピカピカに磨き込まれています。整理整頓されていないとそれを整理せずにはいられない性分で、それが自分以外のものでも無造作にしてしまいます。ポアロは美食家でもあり、自分でも料理をします。そして最大の武器は「灰色の脳細胞」です。自信家で自慢好きなポアロは、この灰色の脳細胞をせっせと働かせて警察がてこずる難解な事件を推理していくのです。

 といったところが大まかなポアロの像です。

 私のイメージするエルキュール・ポアロ像は、小説の中の想像上の人物で、特徴はつかめていたもののそれを具体的にこんな人というようにイメージ出来ておらずあやふやでした。しかし、NHK(元はイギリスLWT)で放送されたデビッド・スーシェ扮するポアロを見てしまった後は、デビッド・スーシェ=ポアロというイメージが強く(上記書籍の表紙の人)、切り離せなくなってしまいました。実際、デビッド・スーシェ以外にもポアロを演じた人は何人か居ますが、適役かつハマっている役者は彼が一番ではないでしょうか。皆さんはどうでしょう?

 さて、少しポアロの経歴を追ってみることにします。

 ポアロはイギリス(ロンドン)に住んでいるものの、イギリス人ではなくベルギー人です。ベルギーの首都ブリュッセルで警察官をしていました。くすぶってる警察の中では「爆ぜる火花」とささやかれていて、その頃から評判だった様です(「チョコレートの箱」より)。警察官とはいっても刑事をしていました。第一次世界対戦前にジャップ警部他と知り合いだった様で(アントワープでの事件「スタイルズ荘の怪事件」より)、ドイツ軍進行のために祖国を離れるほかなく、終戦後にイギリスに亡命し、のちに友人のヘイスティングス大尉(当時は中尉だった)とルームメイトとして共に暮していました。そして、ロンドンにて私立探偵事務所を構え、のちにホワイト・ヘヴンマンションへ引っ越します。そして、数々の難事件を解決してゆくのです…。

ポアロの几帳面さ

 ポアロは根っからの紳士で、人が居ないところ…自分の住んでいるマンションの中でも、きっちりした身なりと行動をします。映像化された作品でも、だらしないポアロはほとんど見かけません。もちろん物の整理整頓は言うまでもなく、特に食器に関しては上下まで置く位置をきっちり区分けしている様です。さらに、この几帳面さというか性格は、自分だけにはとどまらない様です。タクシーの運転手に正しい運転方法を教えたり、マントルピースの位置を左右均等に正しく並べ直してあげたり、ヘイスティングスに靴の磨き方を教えたり…。しかし、さすがにミス・レモンに対してあれこれすることは無い様です。彼女もまた、整理魔であり、几帳面さにおいてはポアロと肩をならべるほどだからです。

ポアロと食べ物

 ポアロはとにかく甘いもの好きです。朝のチョコレート(ココアかな?)は欠かさない様ですし、チョコレート、ケーキ、プディング、その他イギリス的お菓子は大好きです。コーヒーには砂糖は三杯、それも小さなカップでです。それを美味しそうに飲む。初めて見る人は唖然とする様です。そしてケーキ。お店でケーキを注文するときや、お皿に乗せてもらう時の彼はまるで子供の様です。チョコレートは専門店で500gほどを買って来ては毎晩頬張る様です。試食は大好きで、お店のご主人を誉めあげるのも得意な様です。ポアロは料理もします。フランス料理が得意な様で、たまに豚足を使った変った料理も…。肉料理も得意で、肉屋の主人と奮闘することもしばしば。そう、お店の主人と闘うシーンは特に映像作品では多々あります。洋服の仕立て屋などとは特に言い争いが耐えません。結局ポアロが負けるのですが。(笑)

ポアロと恋愛

 小説の中でも、映像作品の中でも…特に映像作品では、ポアロと登場する女性との恋愛はいくつかあります。どれも成就はしないのですが、とても深いところでの心のやりとりがあるみたいです。対して、ヘイスティングスのほうは結構軽い。一時的な感情で熱くなるみたいです。ポアロの恋愛はどれをとってもとても悲しげで痛々しいものばかりで、それでいて成就しないところがさらに痛いです。日ごろの”推理”がそうさせるのか、登場する人達の恋愛関係や心の動きなどを読むのがとても上手で、それがしばしば事件解決の糸口にもなります。いつもヘイスティングスには注意を促しているのはそのためでしょうか?(笑)


 ポアロはイギリスでは外国人なので、ときたま母国語を口にすると妙に見られることがあります。小説の中でもそれは多く、前置詞や感嘆符付きで出てくることがあります。殆ど間違っていると思いますが、その前後の会話や雰囲気から次の様に解釈してみました。

エ・ビアン(ビアン) そう/それでは
オールボワール さようなら
パルドン 失礼(ちょっとよろしいですか?)
モナミ あなた/我が友(ヘイスティングスに対してよく使う…親愛の情を込めて?)
モンデュール なんということだ(なんだよこれは…とか)
ボアラ ほ〜ら(嬉しそうに)
ボン よろしい/すばらしい/そうだったと思ってた
ボンソワール こんばんは/おやすみなさい