私の公募に対する心構えメモ 

採用されるには、もちろん研究業績を上げることやコネ作りが最重要ですが、ここでは
それ以外の注意点などを書きます。
私は公募に応募した経験が多いのですが、前の大学で教員採用担当になったこともあり
ます。以下はこれらの私の経験から感じたことのメモを加筆修正したものです。
もともと自分用メモなのですが、もし他の方の参考にでもなれば、と思い掲載します。

・自分が落とされると「アレはデキ公募だったのだ」と考える応募者が多いのには驚き
 ます。このページの最後にも書いてますが、業績数だけで採用が決まるわけではあり
 ません。そのような方たちは今まで入試などで挫折したことがないので自分が優秀だ、
 と思い込んでいるのでしょう。入試は受験者の上位20%程度に入れば合格です。しかし
 教員公募では数十人の応募者のトップにならないと採用にはなれないのです。
 しかも、その選考基準は成績(∽業績数orIF総数)だけではないのです。

・「教授になる前、あるいは40歳台になる前に応募せよ!」
 なぜならば、
 ・いったん教授になってしまうと、かなり業績があってその分野の権威でない限り、
  普通の教員公募で教授として採用されるのは難しくなる。
  (だから、教授になることを双六に例えて「上がり」と言う)
  通常教員選考委員は全員教授であり、助手、講師、助教授の選考に対してはかなり
  柔軟な考えを示すが、自分達と同等の「教授」の選考に対しては最高度の慎重さを
  もって臨む。
 ・若くて優秀な教員を求める大学が多いので、40歳台になると教員公募で採用される
  見込みは低くなる。50歳台になるとその分野での権威でない限り公募による採用は
  難しい。

・「在職中に応募せよ!」
 既に前職を退職し無職になった者は採用されにくい。何か問題でもあって解雇された
 り、やめざるを得ない状況になったのだろうか、と勘ぐられる。

・査読論文だけではなく、自分の全業績をまとめておく。できれば文部科学省の様式
 第4号のように全てを書いておくと便利である。

・よほど優秀な者でない限り、応募する分野を狭く絞りすぎるのは不利。

・ステップダウンの応募では採用されにくい。
 旧帝国大学助教授が底辺私立助教授に応募しても「明らかに研究環境も社会的ステー
 タスも下がるのになぜ応募したのだろうか? 何かトラブルを起こしたのか?」と
 勘ぐられる。

・公募書類を熟読してどのような人物を採用しようとしているのか推測せよ。

・先方のHPを見て状況をよく把握しておくこと。(大学の健全性、入学者数、教員数、
 立地、教員の研究業績、公募している分野は先方の教員の研究分野とどのような
 関係にあるのか、など)

・カバーレターは必ずつける。
 事務が書類を受け取って整理して選考委員に渡す場合はカバーレターは除かれてしまう
 場合が多いが、だからと言ってカバーレターもつけずに応募書類だけを送りつける
 ようなことをしてはならない。

・所属大学の封筒ではなく、自分で購入した封筒を使うこと。
 教員公募に応募することは公的な業務ではなく私的なことであるからだ。
 もちろん選考委員の中には所属大学の封筒を使われていても気にしない人もいるが、
 気にする人もいる。
 ちょっと気をつければいいことなので、わざわざ危険な橋を渡る必要はない。

・「市販履歴書に自筆で記入すること」などと指定されていない場合、履歴書はWordや
 TeXで書いてかまわない。ただし自分の氏名くらいは自筆署名すること。
 もちろん、自分の信念で「履歴書は自筆に限る」と思い込んでいる人は好きにすれば
 よい。
 選考委員経験者としては別にワープロで書かれていても自筆でもかまわない。ただ、
 自筆履歴書を読まされるのはかなり目にツライです。

・「研究の抱負」は傲慢でないように心がけ、専門外の人間にもわかりやすく書くこと。
 自分が何に着目し、何をどこまで明らかにしてきたのか?
 時々研究自伝のようなものを書いてくる人がいるのには驚きます。

・「教育の抱負」は先方の学生層に合致した抱負を書く。多少は御託を書いてもいいが、
 できるだけ具体的に書く。何でもやる、なんでも一生懸命にやるなどのような思って
 もいないことを書くべきではない。
 また、教育の抱負とは担当予定科目のシラバスそのものではない。

・公募の体裁を取っていながら、実際は出来公募だったり、教員選考委員にコネを持っ
 た他の応募者がいるので、面接に呼ばれてもコネがなければ採用に至るのは難しく
 連敗を重ねてしまうことが多いようだ。
 しかし、デキ公募でも選考委員全員の意見が「デキ公募」で完全に一致していることは
 稀である。即ち、公平に選考しよう(したい)と考えている選考委員は少数だが存在
 する。

・大学教員のポストゲットは今後はもっと困難になるので任期付は応募しない。
 若くて有能な研究者なら任期付でもいいかもしれないが、私のような妻子もちで40歳台
 目前の凡庸な研究者が任期付のポストに着任するのはリスクが高い。

・応募した公募はすぐ忘れてしまう方が精神的に良い。そのためには複数の公募に応募
 し、返事待ちの応募を3つ以上持っていると良い。

・たいていの場合、公募締め切りから1ヶ月以内に面接の通知が来る。1ヶ月以上何の
 連絡もない場合はたいてい書類選考で落ちている。
 これらは先方の都合によって様々な状況がありうるので例外的な事例は多数あるようだ。

・現本務校の状況にもよるが、DQN度が高い大学ほど脱出を図っている教員への嫌がら
 せや妨害が発生するようです。採用決定後であれば妬みの対象となり、裏切り者扱い
 されたり、割愛拒否される場合もありうる。事実私の現本務校でそのような目に遭った
 教員が複数いたし、他大学でも似た話を時々聞く。
 このような無用なフリクションを避けるために、教員公募に応募しているという事実は
 最終段階まで極力隠しておくべきである。

・何でもかんでも出せそうな公募に応募しているとだんだん不感症になって、実際採用
 になっても行きたくないポストに応募してしまうことがある。その場合面接に呼ばれ
 たり、採用が決まって悩むことになる。また、採用内定を断ると先方に迷惑がかかる
 ため、かなり精神的エネルギーを浪費してしまう。
 よって、公募にどんどん応募するのはよいが、転職を焦っていたとしても、最初から
 あまり行く気がない公募には応募しないこと!
 そのためには自分が何のために現本務校から転出したいのかメモし、重要度別にランク
 分けしてはっきり意識化させておくとよい。「東京の生活はもう嫌だ」「単純にキャ
 リアアップさせたい」「給料を上げたい」「いい研究環境がほしい」「知能が不自由な
 学生の面倒は嫌だ」「新しい分野にチャレンジしたい」等々の中で自分にとって一番
 重要なのは何か?

・自分のHPのアクセス解析をすると面白い。
 私を面接に呼んだ大学は全て、締め切り後か面接直前、あるいは面接直後に私の
 ホームページにアクセスしてました。
 一方、全くアクセスして来ない場合は面接に呼ばれませんでした。
 自分が選ぶ立場になって考えればわかりますが、たとえ当て馬でも面接に呼ぶ者には
 関心があるので、選考委員の誰かがアクセスして情報を集めようとします。
 逆に、書類選考で落とす膨大な数の応募者に対しては興味がないし面倒なので彼らの
 HPをいちいち調べたりしない。(論文別刷りを詳細に読むこともしない)

・JRECINに出されている公募はみんな見ているので、たいていすごい倍率になるようだ。
 知り合いや恩師、あるいは私が応募した大学の選考委員長からの情報によると、普通に
 JRECINに情報を出して公募すると50-100倍の倍率になるらしい。かなり分野を絞ったり
 条件をつけても20-30倍は行くそうです。
 一方「任期付」の条件をつけると一気に応募者が減って10-20倍になり、色々条件を
 つけた任期付公募だと応募者数一桁になるそうです。

・面接には2-7人呼ばれる。あまり人数が多いと面接する側も大変だし日程調整も
 難しいので実際には2-3人のことが多いようだ。

・面接にはある程度きちんとした服装で行くこと。そういうことを気にしない選考委員も
 いるが、気にする人もいる。
 ちょっと気をつければいいことなので、わざわざ危険な橋を渡る必要はない。
 優秀な研究業績なのに面接にYシャツ+ジーンズ+リュックサックで来た応募者が
 いました。コネもあり、第一採用候補者だったのですが、一部の選考委員から「彼は
 TPOに関して適切な判断ができない人物だから、他にどんな非常識な面を持っている
 かわからず危険である」という意見が出されて不採用になりました。

・最初の面接は緊張するが、3回目くらいになると慣れてくる。

・面接だけの時間は30-45分程度。もし模擬授業や研究内容のプレゼンもあればその分
 時間がかかる。私の最長面接時間は研究内容プレゼン+面接で2時間でした。

・自分の研究を専門外の人にわかりやすく5分で説明できるようになっておけ!

・面接は誠意を持って臨む。面接はパフォーマンスの場ではない。まじめな人物か
 どうか、研究や教育への熱意・能力、コミュニケーション能力を見極める場である。
 絶対に嘘をついてはいけないが、イタイ部分への突っ込みに対し多少オブラートに
 包んで返答するのは可。

・9回の面接で、旅費を払ってくれた大学は1つだけ。

・面接に行った9校のうち3校は面接後に選考委員長によって学内見学ツアーに連れ回
 された。「もし採用になったらの話ですが、先生の研究室はここになります。実験
 実習はこの実験室で、機材は***です」等々の説明を受けた。これはインフォーマル
 な面接みたいなものだと考えてよい。気を抜くべからず。

・研究業績数は最重要だがそれだけで採用されるわけではない。
 「募集している研究分野とその人の過去の研究分野とのマッチング」
   面接に残った2人で、A氏は論文数25、B氏は論文数60。最終的にA氏が採用された
   例がありました。
 「論文の質」
   書類選考段階では提出された論文は詳細には読みませんが、面接に残った人の
   論文はかなり精読されるようです。面接に残った2人で、C氏は論文数22、D氏は
   論文数50。トータルIFもD氏の方がはるかに上。しかし最終的にC氏が採用されました。
   あとで選考担当者に聞いた話によると、C氏の業績は『こりゃ一本取られた』と
   思わせるような論文が数本あったが、D氏の業績はグループによるつまらない論文の
   大量生産型だったそうです。
 「今後研究業績を出せるかどうか」
   正直言って教育重視大学では採用した後はバリバリ研究してもらわなくてもほど
   ほどで構わない。しかし全く研究しなく(できなく)なって定年まで昇進できない
   万年講師、万年助手などの組織のお荷物になられるのは非常に困る。
 「予定している担当科目に関する教育経験など」
   応募する大学が研究重視大学か教育重視大学かにもよります。教育重視大学では
   学生の理解度を無視したオナニー講義をされると迷惑です。
   特に大学での教育経験のない企業出身教員は、研究プレゼンはうまくても授業は
   驚くほどヘタな場合が多いようです。
 「人柄」
   いくら研究能力があっても明るくなくモゴモゴしゃべる人、妙に自己顕示欲が強
   すぎる人、思い込みが強くオタク気味の人、研究会などで登壇者に対して容赦ない
   質問や非難をする人などは採用したくない。セクハラやアカハラする人などは論外。
   また、指導教官や上司と喧嘩した人も敬遠されます。当たり前ですね。
 「コネ」
   人柄と関係しますが、採用する側からすると、これから何年も一緒に仕事をする
   同僚を選ぶのですから、全く知らない人を採用するのは怖い。面接で初対面の人
   より事前に学会などで話したり飲んだりした人、以前に非常勤で働いてくれて
   いた人、あるいは後輩などのほうが安心できる。
   たとえ直接話したことはなくても研究会での発表を聞いただけの人でも、採用する
   側から見ればずいぶん安心できるものです。

・落選通知の発送が遅い理由の1つ。
 内々定の採用候補者が決まった時点ですぐに他の応募者に「落選通知」を発送すると
 その候補者に逃げられた場合再公募せざるを得なくなり、全てのプロセスが1からやり
 直しにになります。時期が遅いと再公募が間に合わず次年度のカリキュラムに穴があい
 てしまいます。
 もし「落選通知」を発送してなければ面接で次点だった候補者に内々定を出せるし、
 その候補者に断られても書類選考でギリギリ面接に至らなかった応募者を繰上げで呼ん
 で面接することができる。
 よって、通常(少なくとも私の在籍していた2つの大学では)は教授会や理事会通過後
 に他の応募者に「落選通知」を発送する。
 採用側から見ると教授会や理事会通過後に候補者に断られるのが一番困ります。
 特に、就任承諾書に署名し押印したくせにあとで断ってきた候補者はマジ殺したくなり
 ます。