長い一日(マーマレードスプーン)
 

本作は拙作『マーマレードスプーンシリーズ』の第11作目となります。さらに今回は同じく拙作の『風虎』ともクロスオーバーしておりますので、出来れば両作品をお読みいただいたあと本作を読んで頂けますと、より楽しめるかと愚考するしだいです。


 

晴れた日曜日。

ゆっくり寝坊して、気持ちよく起きたら、ミネラルウォーターをグラスに一杯。

それから顔を洗って、髪に軽くブラシを入れ、お気に入りに着替えたあたしは、いつものようにブレスカフェへでかけた。彼と別れてからこっち、これがあたしの日曜のパターンになってる。ブレス・カフェのガラス扉を開けると、カウベルがカラカラと鳴る。

カウンターの向こうにいたマスターが、顔を上げてにっこりと微笑んでくれた。

すると、テーブルの客にコーヒーを運んでいたマミさんが、こっちを向いて

「みずほちゃん、いらっしゃい」

優しく穏やかな声で迎えてくれる。

あたしはこのマスターとマミさんの夫婦が大好きで、何かって言うとここへきちゃ、丸一日、おしゃべりしてるなんて言うのもざらだ。マミさんはふわっとしたスカートに、フリフリのかわいらしいエプロンをしてる。一歩間違ったら、ゴスロリのコスプレみたいな格好。

もう40を超えてるはずなのに、こんなかわいい格好が、すごく似合う。

本人もホンワカした性格で、驚いたときに目をまあるく開けて、両手で口を覆いながら「まぁ!」なんてのが、もう、抜群にカワイイ。あたし、そっちの気はないけれど、あたしが男だったら、間違いなくお持ち帰りだね、こんなかわいいヒト。

ホント、マスターは果報者だと思うよ。

カウンターに陣取ったあたしは、マスターにチョコレートサンデーを注文した。

誰かと喫茶店に行ったら、コーヒーくらいしか飲まないんだけど、ここでだけは甘いものを食べる。チョコレートサンデーだのフルーツパフェだの、友達から「アネゴ」なんて呼ばれてる、あたしのキャラに似合わないから、普段は封印ってわけ。ダイエットにもなるしね。

出てきたサンデーをスプーンですくいながら、あたしはカフェの中を見回した。

日曜の昼下がり、オープンテラスにふた組と、中のテーブルにひと組。カウンターにはあたしだけ。こんな気持ちのいい天気なら、本当はオープンテラスで朝食をとるのが気持ちいいんだろうけれど、あたしはカウンターから動かない。それには理由があって……

どるん!どるんどるんどるんどるんっ!

あ、うるさいのがやってきた。

調度からなにから、マミさんの趣味で統一された、ちょっとごてごてしてるけどかわいらしいブレス・カフェの店内には、作業服を着たヒトや、経済新聞を読むサラリーマンみたいな客はいない。そういう人は入りづらい雰囲気なのだ。

たいていは女の子ふたり連れか、男の子と言ったら、女の子に引っ張りまわされてニコニコしてるような、おとなしい(軟弱な?)感じの子ばかり。そんな店内に、扉を開けて入ってきたのは、作業服や経済新聞よりも、この店の雰囲気にそぐわない男。

「うぃーす!お、みずほか。相変わらず似合わないモン喰ってるな」

「うるさいよ。ムラさんこそ、あのうるさいバイクとその格好、どうにかしなさいって。傷だらけの革ジャンなんて、カッコいいと思ってるのは本人だけだよ? はっきり言って、営業妨害だと思う、あたし」

「マスターが良いって言ってるんだから、いいだろう。だいたい、ここは俺のテリトリーだ。後から来といて、常連面で俺に説教すんな」

「マスターは優しいから言えないだけなの。店の中を見たって、マミさんを見たって、ここで浮いてるのはムラさんの方でしょ」

「マミの格好のほうがイカれてるんだ」

オンボロの革ジャンに、薄汚れたジーンズを履いて、マミさんを呼び捨てにしてるこの男。

名前は村田信長、通称ムラさん。

あたしより年上で、たぶん40歳くらいなんだけど、とてもそうは見えない。

若いというか、きっと苦労してないんだろう。いつも能天気で、べらべらとマシンガンみたいにしゃべる。マスターとマミさんの古い友人らしく、あたしも最初は敬語で話してたんだけど、あんまりからかわれてるうちに、アタマにきて怒鳴りあいになったことがある。

正確には怒鳴ってたのはあたしだけで、ムラさんはニヤニヤするばかりだったんだけど。それからあたしは、この男に敬語を使うのをやめた。敬語って言うのは、『敬(うやま)う言語』だからね。

「あのねー、この店でマミさんの悪口言ったら、総スカンだよ?」

「悪口じゃねーよ、事実じゃねぇか。な、マミ?」

マミさんは黙ったまま、ニコニコと微笑んでいる。マスターもニコニコ。あたしは怒る気もなくなって、サンデーの残りに取り掛かった。ムラさんはカウンターにひじを置いて、立ったままマスターに向かって話しかけている。

「今日、走りに出るから、あとで寄るよ」

「今日はドコへ?」

「箱根かなぁ」

しばらくそうして話したあと、もう一回あたしをからかって、ムラさんは出て行った。

「あーうるさいのが帰った。マスターもさ、なんであんなの出入させてるのよ。マミさんはバカにするし、うるさいし、汚いし、営業妨害じゃない。出入り禁止にすべきよ、ホント」

「ははは、まあカンベンしてやってよ。あれでもいいところがあるんだよ」

「信じられないなぁ」

とつぶやいてると、カウベルが鳴って、お客さんが入ってきた。

とたん、あたしの心臓が、どくん!と高鳴る。

「いらっしゃい、ゆげさん。ムラさんと会わなかった?」

「あ?ムラのヤロウ来てたん? いや、会わなかったな」

マミさんと話しているのは、ゆげさんと呼ばれる、これもマスターの友人。本名とか、ナニをしてるとか、とにかく謎だらけのヒト。片足が義足で、ちょっと引きずって歩く。でも、そんなことはどうでもよくて、問題なのは、彼の後からついてきたヒト。

「平山くんもいらっしゃい、なんにする?」

「エスプレッソ、お願いします」

そう答えた長髪の彼。

あたしは彼のことも、何も知らない。ゆげさんやムラさんの友達で、名前が平山マコトさんってことだけ。なんでも、何かのイベントの関係でこっち来ているらしい。シャープな顔立ちに、柔らかそうな長髪をかきあげるしぐさが、たまらなくキマってる。

うん、ご想像の通り。あたしは今、この人に夢中。

カウンターに陣取るのも、すべてこのため。彼はいつも、カウンターにしか座らないのだ。もっとも、いつもはカウンターに座って、彼の横顔を眺めているだけなんだけど、今日は、ちょっと違った。なんと、彼の方からあたしに声をかけてくれたのだ。

しかも、いつもの『みんなとの会話の流れの中で』と言うのではなく、いきなり。

「みずほちゃん、こんにちは」

あたしは頭の中がパニックになって、それでも何とかうなずいて見せた。

「こ、こんにちは。あ、あの、元気ですか?」

「はい? ええ、元気ですよ?」

英語の教科書みたいなやり取りに、マスターとゆげさんが吹き出す。

でも、こっちはあせっちゃって、笑われようが、それどころじゃない。何か話さなきゃ、せっかくつかんだ細い糸。手繰り寄せて、何とかはずんだ会話に持ってかないと。何を話せば良いだろう。なにが好きなんだろう。お仕事の話じゃ、嫌がるかな?

と、ゆげさんが微笑みながら話しかけてくる。

「みずほちゃんは、車やバイクには興味ないの?」

正直言えば、ない。むしろ前の男とも、それが原因で別れたようなもんだ。

だけど、こんな風にゆげさんが話を振ってくるってことは、きっと平山さんは車とかバイクが好きなんだろう。ゆげさんは優しくて大人だから、こうやって気を利かせてくれることが多い。ムラさんも、少しは見習えばいいのに。

あたしはそんなことを考えながら、表面上はすまして答える。

「詳しくはないけど、好きですよ」

ウソも方便。って言うか、あたしは平山さんが好きで、平山さんが車を好きなんだったら、あたしも車が好きになるかもしれないし、まるっきりウソじゃあないと思うんだよね。なんて、あたしが自分自身に全力で言い訳していると、平山さんが口を開いた。

「みずほちゃん、バイクに乗る?」

え、え、えぇ〜! そりゃうれしいけど、いきなりー?

面食らってもじもじしていると、ゆげさんが助け舟を出してくれる。

「みずほちゃんは乗らないよ、マコト。車の免許は持ってるかもしれないけど、バイクは乗らない。そうだよね?」

「え、あ、ああ。ええ」

そういうことか。あぶない、あぶない、とんでもない勘違いしてた。

どうやらあたし、『バイクに乗るの?』の『の』を聞き漏らしてたみたい。そりゃ、幾らなんでも、いきなり『俺のバイクの後に乗るか?』なんて話になるわけないよね。あー、びっくりした。やだ、なんか顔が火照っちゃってるじゃん。

「ふふふ、みずほちゃん、バイクの後ろに乗りたいの?」

「あ、マミさん、なに言ってるのよー! やめてよー!」

でも、マミさんナーイス! ステキな方向に話が進みそう。

なんて思ってた矢先、そんな甘い夢を、ゆげさんがバッサりと切り捨てる。

「あ、だめだよ、それ」

ガッカリ。でも、そりゃそうだよね。ニ三回しか会ったことない女を、いきなり大切なバイクの後になんて、乗せてくれないよね。とあたしが軽くへこんでいると平山さん 、抜群にステキな微笑みで、優しく言ってくれた。

「今乗ってるボクのバイク、シングルシートだから。ごめんね?」

「はは。残念だね、みずほちゃん。平山くんのバイクはタンデムシート、つまり後ろの席がないんだって。せっかくバイクに興味を持ったのに残念だけど、それじゃあ、さすがに乗れないね」

すかさずマスターが解説してくれる。マミさんもうなずいてる。

なんか、ふたりともちょっと勘違いしてるみたい。あたしが興味を持ってるのは、バイクじゃなくて平山さんなんだけどな。でも、話の方向は悪くないから、ここは黙っておこう。策士、みずほと呼んでおくれ。

それより、マスターの話から考えるに、つまり乗せたくないわけじゃないってことね。しかも『ごめんね?』って謝ったってことは、ホントは乗せたいってこと? あれ、あたし、ちょっと先走りすぎてるかな。暴走しちゃってる?

「ま、どっちにしても、後ろに乗るのはダメだな。俺も、平山も、ムラなんかも、出来るだけタンデムはしないよ。よっぽど緊急のときぐらいかな。乗っけた人の命まで、責任もてないからなぁ」

ムラさんなんか、どうでもいいんだけど。

でもそうかぁ。平山さんは二人乗りしないんだ。残念だなぁ……

「でよ、マコト。準備のほうはどうなんだ?」

「順調ですよ、海外組の方は。アイスさんが仕切ってくれてますから」

「あん? 国内は?」

すると平山さん、苦笑して頭をかいた。ちょっと困ったそんな顔も、も、ご機嫌にカッコイイ。思わずよだれが出そうになるよ、ホント。あ、いけない。いつの間にか、口が半開きだった。

あわてて口元をぬぐい、知らん顔でサンデーを食べながら、『あーイイオトコー! かっこいー! お持ち帰りしたいー! 萌え〜!』っと、あたしは内心で萌え死にしそうなイキオイでのた打ち回っていた。

「メンバー選出とかそのあたりは、特に問題ないんですが、出発地点とゴールの方がなかなか。ムラさんのダメ出しが厳しくて。さっきマスターが走りに行ったって言ってたのも多分、 その候補地を見に行ってるんじゃないかと思います」

なに?ムラさんめ、平山さんに迷惑かけてるのか?許せん。

「だははは、まあ、ムラのヤロウも必死なんだよ。やっぱり、でかいイベントだし、どうしても成功させたいんだろうな」

あーもー、じれったいなぁ。イベントってなんなんだろう。お仕事の話みたいだから、図々しく首を突っ込むわけにも行かないし、でも知りたい。気になるよー!

「はい、平山くん。こっちは、ゆげさんね」

マミさんがエスプレッソを持ってきた。ふたりは話をやめて、じっくり淹れられた香ばしいエスプレッソを、ゆっくりと楽しんでいる。その香りに、あたしも欲しくなってきて、マスターに注文した。

「マスター、あたしもエスプレッソちょうだい」

すると平山さんがにっこりと笑って、あたしに話しかけてきた。

「ふふふ。香りがすごくいいから、欲しくなるよね」

「え、あ、ええ。ええ、ホントに。すごくいい香りですね」

「くっくっくっく」

「なに笑ってるの、ゆげんさん」

あたしが軽くにらむと、ゆげさん、ニコニコしながら。

「いやぁ、ここにムラのヤツがいなくてよかったなぁと思って」

「なによー!」

まあ、でもたしかにそうだ。あんな男が居たら、このステキな気分もぶち壊しだもん。

「でもムラさんはすごいです。ゆげさんとふたりステップから火花を散らしてぶっ飛んでいくところは、いつ見ても痺れますよ。若いヤツラの面倒見もいいし、いつも陽気で、こっちが落ち込んでるときも明るい気持ちにさせてくれるし。ゆげさんと一緒でいつも走ってる人だから、話に説得力がある」

わ、平山さん、ベタボメだ。ってことは、あのムラさんにもいいところはあるってことね。いや、それとも平山さんがいい人だから、ムラさんの事も良く取りすぎてるのか。

「ははは、平山、ほめ過ぎだよ。ムラのヤロウ、風邪ひいちまうぞ?」

「いや、ホントですよ。ゆげさんもムラさんもマスターも、ホントすごい」

「マスター? マスターもバイクに乗るの?」

思わず聞いてしまったあたしに向かって、マスターは肩をすくめて苦笑い。

「マスターは車なんだ。すごく速かったんだけど、今は降りたんだよ。それにボクも、バイクに乗り始めたのは最近で、今でも車で走る方が多いんだ。よく、マスターと走ったけど、とにかくものすごい切れ味のコーナリングで、見ててぞくっとした もんさ」

平山さんが言ったところで、マスターは笑って続ける。

「もう、歳だからね。無理は利かないんだ」

それを聞いたゆげさん、笑いながら

「ぬかせ、ナニが歳だ。おめぇ、俺より年下じゃねぇか。素直じゃねーなぁ」

とマスターをからかう。すると平山さんが、あたしの耳元でそうっとささやいた。

「ホントはね、マミさんのために降りたんだよ」

いや、ごめんなさい。正直、マスターが降りた理由とか、どうでもいいです。

それより耳元まで近づいてきたときの、平山さんのいいにおいとか、低くて優しい声とか、「降りたんだよ」って言ったあと、にこっと笑ってウインクとか、ホンキで腰が抜けますよ。今、身体に触られたら、あたしトロけるよ。や、マジで。

「みずほちゃん、顔が真っ赤だぞ」

ゆげさんのバカー!

 

アヤから電話があったのは、その晩のことだった。

寝ようか本を読もうか迷ってた時間だから、10:00を少し回ったくらいだったかなぁ。クルマ好きな子で、あたしの前の男とも、妙に詳しい話をしてことがある。そのせいで、あたしがヤキモチ焼いたため、しばらく疎遠だったのだ。

でも彼女は、そんなことなどなかったかのように、電話の向こうで相変わらず屈託ない笑い声を響かせる。こういう、さっぱりした性格、あたし好きなんだよね。ホント、あんな男のせいで彼女を避けてたなんて、あたしってつくづくバカ。

「いやね、風の便りに、あんたがあの男と別れたって聞いてさ。だったらもう、連絡してもいいかなぁって思ったんだよね。あんた、ずーっとこーなってたじゃん?」

たぶん、『こーなって』のところで、受話器を持ったまま両手のひらを目の横にあてて、競争馬のブリンカーのまねをしてるんだろう、一瞬、声が遠くなったあと。

「だからさ、しばらく連絡なくてもしょうがないやって思ってたんだ。悪いけど、多分、別れると思ったしね」

「な、なんで?」

「あんたがいない隙に、あたしにちょっかいかけてくるような男だもん。当然だよ」

あたしは絶句して、天を仰いだ。まぁ、あの男ならありそうな話だけど。

「んで、どうなのよ?」

「な、なにが?」

「とぼけまいぞ、みずほ殿。新しい男の話じゃ」

殊更(ことさら)おどけてそう話すのは、アヤなりの気の使い方だろう。あたしは思わず苦笑してしまう。でも、彼女のこういうところ、嫌いじゃない。

「いないよー。男はしばらくいいやって感じ」

「あんたが? ははぁ、さては片思いか?」

あんた鋭すぎ。

「まぁ、それも悪くないよ。知ってる? 片思いの数だけ、女は綺麗になれるんだよ?」

「あんた、それ、今考えたでしょう?」

「さーね」

電話口で、あたしたちは大笑い。アヤと仲直りできてホントよかったな。

「ま、詳しくは突っ込まないけど、うまくいっても、ダメでも、きちんとこのアヤさんに報告するんだよ?」

「なんでよ?」

「あたしを放っておいたバツ」

そういってもう一度笑うと、アヤは電話を切った。

あたしは、しばらく受話器を眺めながら、なんだかあったかな気持ちで微笑んでいる自分に気づいた。夜は遅いけど、こんな気分のときは、ちょっと明るめの服を着て、ブレスカフェに行こう。あそこは夜の9:00から酒場になるんだ。

平日の夜に飲みに行くなんて、珍しいことだけど、なんとなく、そんな気分になったんだからしかたないよね。アヤとの仲直りに祝杯ってワケ。マスターやマミさんとお話しながら、おいしいカクテルを飲もう。

明るめの『元気な女の子っ!』って感じのワンピースに着替えて、あたしは夜の街へ出る。暗い裏道はちょっと怖いから、駆け足で抜ける。大通りをへでたらそのまま渡って、そこがブレスカフェの真正面。時間にしておよそ10分。

で、カフェについて驚いた。

ガラス張りの店内どころか、普段は夜になると使わないオープンテラスにまで、人があふれている。マスターやマミさんが困るほど嬌声を上げているわけではないが、あちこちから切れ間なく笑い声が上がり、それなりににぎやかな状態だ。

「おや? 珍しいひとと珍しい時間に会うもんだ」

声に びっくりして振り向くと、あたしの後ろに立っていたのは、ゆげさんだった。

「ゆ、ゆげさん」

「ははぁ、いつもと雰囲気が違うからびっくりしたのかな?」

「え? あ、う、うん。知らなかったけど、夜はにぎやかなんだねぇ」

「いや、いつもは夜も昼も変わらないけどね。今日は特別なんだよ」

「特別? 誰かの誕生日とか?」

「いや、祭の前夜祭さ。もっとも本当の祭は一ヶ月以上先だけど」

「一ヶ月前から前夜祭するの?変なの」

すると、横からでっかい声で割ってはいるヤツがいる。

酔っ払ったご機嫌な顔で割り込んできたのは

「みずほじゃねーか! なにやってんだ?」

「お酒を飲みに来た決まってるじゃない。でもムラさんがいるなら、他のところにしよう」

「おー、帰れ帰れ! 今日はお子様禁止デーだからな」

ひらひらと片手を振ってあたしを追い返そうとするムラさん。

すると横からゆげさんが笑顔で言う。

「ごめんねみずほちゃん。こいつ、ずっとこの日のために飛び回ってたから、うれしくて仕方ないんだよ。話がようやく軌道に乗ったから、今まで張り詰めてたのが、一気にキレちゃったんだ」

すでに仲間だろう人々の方へ向かって歩き出しているムラさんの後ろ姿を見ながら、ゆげさんは目を細めてそう微笑んだ。歳はムラさんとそんなに変わらないはずだけど、なんだかお兄さんみたい。やっぱり、ゆげさんの方がずっと大人だね。

でも、そんなに何を頑張っていたんだろう?

「ねぇ、ゆげさん。聞いていいかな?」

「なに?」

「ムラさんは、何をそんなに頑張ったの?」

「あれ? マスターから聞いていないの?」

あたしはうなずいた。

「あのね、実は一ヵ月後に、非公式の公道レースが行なわれるんだ」

「公道レース?」

「うん。キャノンボールって映画、見たことないかな?」

「知らない」

「そうか……まぁ、要は目的のゴールまで、どんな道を通ってもいいから、とにかくイチバン早くついたヤツの勝ちって言う、追いかけっこさ」

「そんなの、危ないじゃん!」

「そうだね」

そう言ったきり、ゆげさんは薄く笑って黙り込んだ。

しばらく答えを待っていたんだけど、ゆげさんは『中、入ろうか?』と言って店に促したきり、その話題には触れない。悪いコト聞いちゃったかな?でも、公道でレースなんて危ないに決まってるよね。

店に入ると、いつもとは違った顔ぶれが、楽しそうに飲み食いしている。

いつもならその間を、マミさんが料理やお酒を運んでいるのだけど、今日はそのマミさんやマスターも、テーブルについてお酒を飲みながら笑っている。代わりにカウンターの中には、お客さんらしき人たちが、入れ替わり立ち代わりふたりの代わりに働いていた。

「マミさん!」

声をかけると、マミさんはいつもみたいに両手を口に当てて、おっきな目を見開いて。

「まぁ! みずほちゃん」

「うぉー、相変わらずマミさんは可愛いなぁ」

あたしが思わずそう吠えると、横にいた何人かの人がぷっと吹き出した。

ムラさんが大声で

「おめーはおっさんか、みずほ」

「うるさいなー。可愛いんだから仕方ないじゃん」

「けけけ、ジジむさい女だ。おい、紹介するぜ」

後半は、店の中にいる人に向けて言った言葉。

「みずほだ。単車もクルマも乗らん。本人は興味があるつってるが、多分、興味があるのは別のことだ。ま、俺に惚れてるんだろう、きっと 。これだけのオトコマエ、無理はないけどな」

「な、む、ムラさんっ!」

叫びながら詰め寄ろうとすると、そばにいた人が、そっとあたしを止める。

「大丈夫。君がムラさんに惚れてないってのは、みんなわかってるから」

銀縁のメガネをかけたその人は、穏やかに微笑んでいた。

「こら、ハイド。早速、口説きか」

ムラさんに言われて、ハイドと呼ばれたメガネの人は、肩をすくめる。すると、ハイドさんの後ろに、男の人が三人集まってきて、いきなり彼の肩にのしかかった。真ん中でハイドさんの背中にのしかかった、ちょっと太目の人が大声でわめく。

「おいおい、ハイド。彼女にチクっちゃっていいのかな?」

すると、その両脇にいた人たちが、声をそろえて叫ぶ。

「そうだ。言いつけるぞ!」

ハイドさんは、メガネをすっと上げると、穏やかに微笑みながら切り返す。

「ジュン、和美ちゃんがいる君は、それじゃあどうしてここにいるのかな?」

ジュンと呼ばれた男が言葉を詰まらせると、すかさずもうひとりが声を上げる。

「あぁ、そうだよ、ジュン。おまえには和美ちゃんって宝物がいるんだから、大事にしなきゃだめだろ。さっさとあっちに行けよ。つーか、それを言ったらノックさんだって、ミナミちゃんがいるじゃん!  ってあれ? んじゃ、彼女いないの俺だけか?」

「やっと気づいたか、バカ」

ノックと呼ばれた太目の人がそう突っ込むと、そこかしこから笑い声が上がる。

見た目はみんな、あんまりいいとは言えない。むしろ、ジュンってコや、『彼女がいないの俺だけ?』ととぼけた声を上げたリョウってコ(どっちもたぶん、あたしより年下だ)なんかは、こんなやり取りがなかったら、怖くて近づかないだろう。

ふたりとも革ジャンを着て、ちょっと昔のワルって感じだからね。

「みんなバカだろう?」

そういって近寄ってきた女の人が、あたしにカクテルをくれた。

「マミさんに好みを聞いて、作ってみた。今日はふたりを働かせたくないんだ。マスターの程じゃないかもしれないけど、飲んでみてよ」

そういいながら渡されたカクテルを、一口飲んでみる。

「あ、おいしい」

女の人は、にっこり微笑んで肩をすくめた。

「よかった。あたしはリカって言うの」

「あんだよ、リカ。俺たちがみずほちゃんとしゃべって……」

「シャラップ!うるさい、色ボケども。あっち行け」

リカさんにそう決め付けられ、ノックさん、ジュンくん、リョウくんはほうほうの体で逃げてゆく。その様子がおかしくて、あたしは吹きだしてしまった。すると、リカさんは顔を寄せ、声をひそめてささやく。

「ごめんね。ムラさんって、普段はあんなこと言わないヒトなんだけど、今……」

「ああ、例のレースの件で」

あたしが言いかけると、リカさんは首を横に振った。

「それもあるけど、それよりもちょっとキツいことがあってね」

「振られた、とか?」

あてずっぽうで言うと、リカさんはびっくりしたように目を大きくしてから、あははと笑い出した。

「いい勘してるね。そんなところ。ま、詳しくは言えないけど、幾ら嬉しかろうが、しんどかろうが、事情もわからない女の子にイキナリ『俺に惚れてる』なんて言ったバツとして、このくらいは教えてもいいでしょ」

リカさんはそう言って、ウインクした。あたしも、思わず顔がほころんでしまう。

すると、表で車の停まる音がした。銀色のオープンカーだ。微笑みながら何気なくそっちを見て、次の瞬間、あたしの表情は固まってしまう。心臓がどきどきと音を立て、顔が真っ赤になっていくのが自覚できる。なんで?なんで?

「ちわっす」

言いながら入ってきたのは、なんと平山さんだ。本当なら、カンペキに舞い上がってしまうところだが、その時のあたしは、そんな余裕さえなかった。なんでって、平山さんと一緒に入ってきたのが、アヤだったから。

「あー! みずほー! 何でここにいるのー?」

あたしを見つけて叫び声を上げる彼女に、応じる余裕もない。

「みずほちゃん、ココの常連さんなんだよ」

平山さんがアヤに優しくそう言う姿を見て、あたしは気が遠くなるような思いだった。

なんで?

なんでなんで?

「みずほちゃん、どうしたの?」

いつの間にか、あたしの横に来ていたマミさんが、心配そうにそう言った。

マミさんの顔を見て、少し冷静になれたあたしは、ようやく止めていた息を吐き出した。そう、あたしはアヤに、誰に片思いしてるか言ってないんだから、アヤが平山さんの彼女だったとしても、それをあたしが知らなくても、誰も何も悪くないんだ。

そりゃ、びっくりしたし、なんでって気持ちはあるけど、もう、同じ間違いはしない。平山さんのことはすっぱりあきらめよう。あたしには、アヤの方が大事だ。 屈託なく笑いかけながら、あたしのそばにやってきたアヤを見て、あたしはそう決心した。

ちょっと苦しいけど、がんばれ、あたしの心。

「びっくりしたー! みずほがいるなんて。そう言えばみずほん家、こっから近いっけ」

「びっくりしたのはこっちだよ。まさか平山さんとアヤが恋人だなんて。平山さん、カッコいいから狙ってたんだけどなー、あたし。危なく、アヤとケンカになるところだったね」

なんとか冗談にしちゃえたよ。でも、ちょっと声が震えてるかな。切ないね。

「ふふ、マコトくん。みずほがカッコいいってさ」

むこうでノックさんやゆげさんと話をしている平山さんに、アヤがそう言うと、彼は穏やかに笑ってこっちに手を振った。その後ろで、立ち上がって盛大に両手を振っている、ノックさん、ジュンくん、リョウくんの姿を見て、半泣きだったあたしは、思わず吹きだしてしまう。

楽しくて、ステキな人たちだ。

「みんな、楽しい人だね。ステキだな。アヤ、なんで紹介してくれなかったのよ」

「だってさ、あんた、こーだったからさ」

言いながら、両手のひらを目の横にかざして、競馬ウマの真似をする。

「ちぇっ。冷たいんだから」

そう言って、あたしは、大声で笑った。笑えた。

うん、大丈夫。あたしは大丈夫。泣いたりなんかしないよ。

それから、平山さんとアヤのなれ初めを聞いた。動揺しないで聞けたのは、アヤが屈託なくて、マミさんが一緒に聞いててくれて、それから、あたしが少し強くなったから なのかな。

「それで、その酒場から引っ張り出して、一緒に外環を走ったのよ」

平山さんが勤めてる病院に通ってたころ、彼を酒場で見かけて強引に横へ座り、そのまま夜のドライブに引っ張り出した話をしながら、アヤは大声で笑う。

ドライブと言っても、彼の車や彼女の車で一緒にデートしたんじゃなくて、それぞれの車で、外環道を競争したって言うんだから、この人たちはやっぱりどっかおかしい。

あたしがそれを指摘すると、マミさんやマスター以外の、その場の全員が、きょとんとしてしまったものだから、あたしはまた、そこでひとしきり笑ってしまう。ダメだこの人たち。自分がおかしいって事に、誰一人気づいてないよ。

子供と一緒で、周囲からの見た目なんて、きっと関係ないんだね。

 

ゴボォー!

低い、お腹に響くような排気音がした。

と、平山さんが真っ先に立ち上がり、店の外に飛び出す。 表に大きなバイクが一台停まって、平山さんがそこへ走ってゆく姿が見えた。 あたしはガラス張りの店内からその様子を見つつ、アヤに聞いてみる。

「誰か来たの?」

するとアヤは唇を尖らせて肩をすくめる。

「最っ低のバカ」

「うふふ、アヤちゃん、そんなこと言っちゃだめよ?」

マミさんが優しくたしなめつつ、あたしに説明してくれた。

「あれはね、アヤちゃんのお兄さん。平山君がアヤちゃんの次に好きなヒトよ」

「いーや、違うよマミさん。あのバカ、あたしより兄貴のほうが好きなんだ、きっと」

「えぇ? 平山君って『そういう人』なの?」

素っ頓狂な声を上げたマミさんに、アヤやあたしだけでなく、おそらく耳をそばだてて聞いていたのだろう、周りの人がいっせいに苦笑した。

「もー、マミさん! あたしがいくら変わり者でも、さすがにそんな男と付き合わないよ」

「マミさん、天然だなぁ。でも、そこが可愛いんだけど」

「おや、こっちにもその気のある人がいるよ」

あたしが言うと、アヤがまぜっかえす。

みんなで大笑いするなか、マミさんがひとり、きょとんとしているのが最高におかしい。

と、外に出ていた平山さんが、バイクでやってきた男のひとと一緒に帰ってきた。

「レディース・エン・ジェンおっと、ジェントルメンはいねぇか。よう、クズども! 元気か?」

入るなりそう叫んだ男。とたんに罵声が上がる。

「うるせぇ、てめぇにだけは言わせねぇぞ、コラ」

「死ね、バカ。クズがクズって言うな」

「おめ、また単車替えたのか。貧乏なくせにバカじゃねーの?」

言葉は怖いけど、みんな笑ってた。

「アレがあたしのバカ兄貴よ」

アヤが盛大なため息と共に言う。マミさんが立ち上がって声をかけた。

「風虎くん、いらっしゃい」

「おぅ、マミちゃん! 元気そうだな」

アヤのお兄さんは『カゼトラ』と言うらしい。それを確認するとアヤは不機嫌そうに、

「そう。風の虎。字、そのまま。バカでガキで、ケンカっぱやくて大酒呑み。おまけに自分勝手でお祭好き。飽きっぽくて、気が短くて、異常に弁が立つ。もう、最悪の生き物よ」

アヤが愚痴っていると、向こうから声が上がった。

「風虎くんも元気そうだね」

ニコニコと笑いながら、そう言ったのはマスター

そんなマスターを見るマミさんは、アヤと同じようにため息をついた。どうやらマスターも、この風虎って人が好きなんだろう。そしてこの人にかき回されて、アヤだのマミさんは大変な思いをするんだろうね。二人の表情から察するに、たぶん、そんな感じだと思う。

と、さっきまで飲みすぎて潰れてたムラさんが、ひょっこり顔を上げた。

大声で

「誰か、水くれぇ」

と叫ぶと、そのまま立ち上がって風虎さんに近づく。ニヤニヤと笑いながら近づいて、イキナリお互いの腹にパンチを入れてから、ガッと抱き合い、ゲラゲラと笑い出した。横で見てると、キチガイにしか見えないけど、どうやら今のくだりは、二人の挨拶だったようだ。

「風虎ぁ、まだ生きてたか」

「抜かせ、クソムラ。てめぇこそ、あのポンコツにまだ乗ってるみてぇじゃねーか」

そこへ、ゆげさんもやってくる。

「風虎、久しぶりだな。おまえも出るのか?」

「あに言ってんだゆげ。こんなクソ楽しい話、俺様が出なきゃ始まらねーだろうが」

「むしろ、おまえ抜きで始めたいんだがな」

そう言うゆげさんも楽しそう。

なんだか、クルマに乗れない自分が、ひどくつまらなく思えてくるから不思議だ。

それを横目に、こちらへ近づいてきた平山さん。やっぱイイオトコだなぁと思いつつ、それでも変な緊張をしないのは、あたしの心が平山さんをあきらめられたからだろうか。なんだか、いっぺんにいろんな人を見たからか、頭の中がこんがらがってる感じ。

「アヤ、また膨れてるの?風虎はボクの大事な友達なんだし、アヤのお兄さん……」

「うるさい、バカマコト! あっち行け!」

すかさず、風虎さんが茶々を入れる。

「お、痴話げんかか? 相変わらず仲がいいな、おめーら」

「だまれバカ兄貴! アンタがその元凶だっての!」

じゃれあっているそんな姿に、軽い嫉妬を感じる。あたしも、この中に入って行きたい。もちろん、明日になって冷静になれば、こんな危なそうな連中の中なんて、真っ平ごめんって思ってるのかもしれないけど、でも、今は……

「こいつらと一緒に、バカ話をして騒ぎたい。そう思ってたりしない?」

突然、平山さんがそう言った。なんでわかったんだろう?

「ボクも初めて風虎に会ったとき、似たようなことを思ったんだ」

「平山さんも?」

それから彼は、風虎さんとの出会いのいきさつを話してくれた。と言っても、酒場で偶然出会っただけなんだけど、そのときに平山さんが考えてたことを聞くと、彼が私の気持ちをわかったのも、なんだかすごく納得できる気がした。

「あ、やばいんじゃね、アヤちゃん。マコトが浮気してるよ」

と、 ノックさんがニヤニヤしながらまぜっかえしたとき。

店の扉が開いて、女の人が入ってきた。入ってくるなりその人は、平山さんの困った顔を見て眉根を寄せると、その元凶が目の前の男だと瞬時に悟ったのか、ノックさんに向かって声をかける。

「ノックン、マコトくんをからかっちゃダメじゃない」

「でたー! ミナミちゃんだー! ノックぅン! だめじゃなーい!」

奇声を上げたのはリョウくんとジュンくん。でも、あたしはびっくりして、それどころじゃない。

「もンのすごい綺麗だよね。あたしも初めて見たときびっくりしたよ」

横でアヤが、あたしの心を的確に解説してくれる。

「アレがミナミちゃん。ノックさんの彼女。あんなに綺麗で華奢なのに、ランボルギーニってスーパーカーに乗って、ノックさんと走り回るんだよ?」

アミさんの解説にうなずきながら、あたしは思わずミナミさんに見とれてしまった。

でも、別にそっちの気があるわけじゃないよ?雪みたいに真っ白な透き通った肌。華奢な身体と、その上に載る小さくてかわいらしい顔。まるで妖精みたいな人なんだもん。男女関係なく、見とれちゃっても無理ないと思うな、ホント。

そのあと、GT-Rって言うおっきくて速いクルマ(らしい)に乗るトモさんってひとが、みんなを紹介してくれた。ゆげさん、ムラさん、ハイドさん、リョウくん、ノックさん、ジュンくん、リカさん、他にもたくさんいて、みんな楽しそうに笑ってる。

素敵な仲間なんだなって思った私は、そう聞いてみた。

すると。

「冗談じゃない。こんなクズども、仲間でもなんでもねーよ」

「仲間? やめてー! こいつら、たとえばさ、あたしが事故ったりしようモンなら、ゼッタイ知らん振りして通り過ぎてから、どっかに集まって大声で笑ってるんだよ?  間違いなく、ね」

「たりめーだ。助けてなんて泣きつくくれぇなら、単車なんか乗るなって話だ」

「俺はいつも、自分の好きなときに、好きなように走ってるんだ。こいつらがたまたま同じ時間に、同じ場所を走ってるだけさ。仲間なんて思われちゃ、ぞっとするね」

驚いたことに、異口同音の返事が返ってくる。

あたしが混乱していると、トモさんが笑いながら説明してくれた。

「別に、仲間だって結束するのが、悪いってことじゃないんだ。ただ、あたしにしろ、ここの誰にしろ、基本的にはひとりが好きなんだよ。もちろん、こいつらとバカをやるのは楽しいし、好きだよ 。でもね、それはあくまで、みんな独りで立ってるってのが前提なんだ」

「独りで立ってる?」

「そう。クチサキだけで『仲間だ』なんて言ってるくせに、いざとなったら及び腰で、それでも仲間って言葉に縛られて、仕方なく集まって、なんとなく走って、言いたいことも言えないで、なんてのに興味がないんだよ、みんな。集まるのは好きだけど、群れるのは嫌いなんだ」

「まぁ、ハタから見たら、バイク同好会とかチームみたいに見えるかもしれないけど、そんなつもりはないんだよ。別にそれを誰かにわかってもらうつもりもないから、『マーマレードスプーンってチーム』言われても、否定はしないけど。そんなのと話すの面倒だし」

トモさんのあとを引き取ったムラさんはそう言うと、さらに言葉を継ぐ。

「まぁ、そう言い続ける事さえ、なんだか肩肘張ってるか。もっと自由に。もっと自分勝手に。少なくとも俺はそう思ってるから、集まってくるやつを特別視もしないし、離れていくやつに何かを言うつもりもない。『チーム』なんて社会主義的なの、嫌なんだよ 」

「俺は好きだぞ? もちろん、俺が王様でお前らが家臣な?」

まぜっかえしたのは、風虎さんだ。

「バカ虎、それは社会主義じゃねぇ。しかもてめぇが王様だと? なるなら俺だろうが」

ムラさんと風虎さんが軽く小突き合いをはじめる。

すると、ゆげさんがそのあとを引き取った。

「独りひとりが自分で責任を取れる。楽しむの苦しむのも、自分でやれる。そんなのが、たまたま同じ場所で、同じように走って、バカ同士だから話が合う。助け合いも、協力もしない。ただ走りたいやつが、同じところで偶然交わった一瞬。それを俺らはマーマレードスプーンって呼んでるんだ」

つまり、チームとかじゃなくて、概念ってコトなのか。

なんとなくわかるような気もするし、ちっともわからない気もするけど、でも、そんな事はどうでもいいかも。だって、実際にこの人たちは、ものすごく楽しそうに生きてる。それが一番ステキだし、だから、『あたしもこの中に身を置きたい』って思う。

もちろん彼らが言うように、ここに身を置いて『楽しませてもらう』んじゃなく、あたしが自分で楽しむために。自分で楽しいと思えるように生きて、その上で、この人たちと、こんな時間を共有してみたい。

そう思ったら、いつの間にか、言葉が勝手に口をついて出てきた。

「ってことはさ、別に車やバイクに乗ってなくたって構わないって事だよね?」

一瞬、妙な顔をしたあと、ゆげさんが笑い出した。

「みずほちゃん、飲み込みが早いな。そういうこと。自分で決めて、自分のしたいようにする。ルールは自分。単車やクルマはひとつのツールでしかない。だから、誰にも寄りかからずに立てて、その上で『遊ぼう』ってんなら、俺はいつでも歓迎だ」

とたんに。

「もちろん、俺も歓迎だ」

「ボクなんか、いつでも歓迎だよ」

「むしろ、俺だけが歓迎だ」

ノックさん、リョウくん、ジュンくんが叫んだ。

この三人のタイミングは、ホントに神業的だね。あたしはうれしくなって、けらけらと笑う。この瞬間、ここに居られる事がうれしくて、楽しくて、あたしはいつまでも笑い続ける。けらけらけらけら……

と。

笑いながら、涙が出てきた。

なんだかうれしいのか悲しいのかワケがわからなくなって、そのうち声を上げて泣き出してしまった。当然、みんなはびっくりしてしまうが、それでも、誰も何も言わずに、黙ったまま私が泣きやむのを待っていてくれる。

それがうれしくて、気持ちよくて、あたしは赤ん坊みたいに、声を張り上げて泣いた。泣きながら涙が流れるのと反比例して、気持ちが軽くなってゆくのを感じる。本気で泣いてるのに、それを冷静に見つめて分析してるあたしがいる。へんなの。

「いろいろあったの。でも、思いっきり泣いたら、すっきりした」

泣くだけ泣いたあと、鼻水を啜り上げながらそう言うと、マミさんがにっこり笑って、温かい紅茶をくれた。一口飲んでみると、甘くて、おいしい。でも、なんだろ。ちょっと変な味がするかも。

「それ、お酒だからね?」

マミさんがいたずらっぽい顔で笑った。

ふふ。この人がこんな可愛くいられるのは、この人をいっぱい愛してくれるマスターがいるからなんだ。そして、そのマスターが笑えるのは、マミさんがこんなに可愛いからだ。なんだか、素敵だなって思って、それからまた少し泣いた。

別に、ふたりと比べて自分が不幸とか、そんなんじゃなくて。

平山さんがアヤの彼氏だったってことがどうとか、バカな男と別れたからどうとか、もう、そんなことでさえなくて。世の中にはいろんな人がいて、いろんな考えがあって。それを貫ける人もいれば、貫けない人もいて。誰もがどっかで不幸だけど、どっかで幸福で。

ああ、もう、なんて言うんだろう。

とにかく今、あたしはバツグンに幸せなの。

好き勝手にやることを、こんなにも爽やかに、さっぱりと公言してる人たち。そのためにやるべきことを、覚悟するべきことを、きちんと理解してる人たち。ものすごく真剣に生きることを考えてて、そのうえで、いつも冗談を言い合い、笑顔の絶えない人たち。

その人たちに囲まれて、今までのいろんなもやもやを、大泣きしてさっぱりと洗い流した。もちろん、 これで明日から何かが変わったり、特別なことが起こると思うほど、いくらなんでも単純じゃない。 だけど、間違いなく言えることは。

明日から、あたしはもっと、生きてくコトを楽しめる。

「大泣きしたから、化粧が全部取れちまったな」

ムラさんが軽口を叩く。

言い返してやろうと思ってその顔をにらんだら、返ってきた笑顔がすごく優しくて、思わず息を呑んでしまった。いやいや、あたしはそこまで惚れっぽくないですよ。ただ、思ったよりは深みのある人なんだなって、それだけはわかったけどね。

 

泣いたことをからかわれたり、それに食って掛かったりしながら。

あたしは幸せな時間を過ごした。 こんな時間がずっと続けばいいと思った。 だから、ゆげさんが立ち上がって声を出したとき、『えぇ、もう終わっちゃうの?』って、心の底から残念な気持ちになった。いや、さすがに泣いてはいないけど。

「さて、そろそろ時間だな」

時計を見ると夜中の1:00。いつの間にか時間がたっちゃってたんだなぁ。残念な気持ちでそう思っていたから、その次のゆげさんの言葉は、うれしいより何より、びっくりしてしまったのが正直なところだった。

「どうやら、今日は帰れそうもないぞ?」

いいながら表を指差したゆげさん。つられてみんながそっちを見るけど、ガラスの向こうには何も見えない。暗闇が広がるだけ。なんだろうと思っていると、ムラさんが声をあげて笑い出した。

「ぎゃはははははっ! やるじゃねぇか、ゆげ。てめぇ隠してやがったな?」

ゆげさん、にやりと笑って親指を立てる。

それが合図だったかのように、遠くの方から雷鳴が聞こえてきた。

ゴロゴロゴロゴロ……

やがて、だんだん大きくなってきたその音に、みんなが飛び上がって叫びだす。

雷鳴は、いつの間にか排気音に変わっていた。

ほどなく、暗闇の中にポツンポツンとあかりが灯(とも)る。

と。

ぱぱぱぱぱぱっ。

明かりは急速にその数を増やし、あっという間にまぶしいくらいの光の渦になった。ブレスカフェの中はもう、大騒ぎだ。事情のわからないあたしだけが、きょとんとしている状態。すると、光の渦は店の前に集まってきて、ほどなく、一斉に消えた。

店の中のみんなは、とっくの昔にオモテに飛び出している。

残ったあたしのそばに、いつの間にかムラさんが立っていた。

「ムラさん、あれ、みんなのお友達?」

「友達つーよりは、共犯者だな。何日か前からこっちに来てて、今日、アサイチで全員そろったんだとさ。さっき、ゆげのヤロウが言ってたよ。まったく、あのヤロウ大事なことを黙ってやがって」

「共犯者? こっちに?」

「そうだ。『レース』の参加者だよ。世界中、つってもほとんどヨーロッパとアメリカだけど、とにかく単車や車の好きなバカどもが、いっぺんに集まってきたんだ。 わざわざ、てめえのマシンを持って、だぜ? バカな連中だよ、ホントに」

そう言うムラさんは、笑っていた。

「ムラさんは、迎えに出ないの?」

「俺は前回の優勝者だからな。王様は動かず、向こうが来るのを待つのさ」

あたしはびっくりして、オウム返しに聞き返す。

「優勝? 世界中のヒトなんでしょ?」

「あんだ? 俺が世界一じゃ、何か不都合があるか?」

当たり前のように世界一なんて言われても、ぴんときませんてば。

「三年前、俺がまだドイツにいたころ、俺はちっとしたことで、家を出た。親父が再婚した相手が向こうの人間で、それもなんとなく気に入らなかったのかもしれないけど……いや、 それは関係ないか。つまり俺は、義妹に惚れちまったんだ」

突然、ムラさんはそんな話を始めた。 ドイツにいたって話はびっくりだけど、義妹に惚れてってのには、もっとびっくり。でも、内容が内容だけに、あたしは何も言えず、黙ったままムラさんの話を聞いていた。

「それで、このまま家には居られないと思って出てきたんだけど、義母と義妹は、俺が二人を嫌ったと思って、ずいぶん悩んだらしい。まったく、今にして思えばバカなことをしたと思うが、それでも、俺は家に居られなかったのさ」

ムラさんの表情が、すごくさびしそうになる。

「そんなのもあって、俺は半ばやけっぱちで、『レース』にでた。ヨーロッパでは有名な裏レースでさ、本気でやりあいたいバカが集まって、勝手に始めたレースなんだよ。賞金も賞品もない、得られるのは名誉、それも公に出来ない、暴走行為の てっぺんって言うだけの、くだらない名誉なんだけどな」

なるほど。あたしが『公道でレースなんて』って言ったとき、ゆげさんが黙った理由がわかった。彼らが走る理由はわからないし、あたしには正しいのか正しくないのかさえわからない。いや、こればっかりは、彼らが間違ってると思う。

でもきっと、彼ら自身がイチバン、そんなことをわかってて、それでもやるんだろう。

危険な行為、違法行為、もっと言っちゃえば犯罪行為だってわかった上で、彼らは黙ってそれをするのだと思う。こうだから安全だとか、こうするから大丈夫とか、そんな事はヒトコトも言わないで、走るんだろうね。

そんなイイワケが、何の意味もないことを、きっとみんなわかってるんだろうね。

「この話を持ってきたのがさ、その義妹なんだ」

「え?」

「ニナ・ハルトヴィックって言う、俺の妹なんだよ。妹が、向こうの走り屋をつれて、やってきたんだ。その中には、あいつの彼氏ってのもいる。別に今更、それはどうってこともないんだけど、やっぱり、ちょっとバツが悪いよな」

「みんな知ってるの?」

「妹のことか?俺が惚れてたなんてのは、ゆげくらいしか知らないさ」

「なんであたしに?」

「さあな、なんとなくってヤツだ。つまんねー話をしたな。忘れてくれ」

話しかける言葉も見つからずに、あたしはただ、ムラさんの横で座っていた。すると、扉が開いて、外に居た人たちが入ってくる。金髪のヒト、でっかいヒト、綺麗な女のヒト、いろんなヒトがやってきて。

「ノブナガ!」

そう叫ぶと、わっとみんなが集まってきた。

ムラさんはあたしににっこりと微笑むと、外国人の集団にもみくちゃにされに行った。

「コンバンハ」

声をかけられて振り向くと、綺麗な金髪の女性が立っている。

「みずほちゃん、ニナよ。あたしの友達なの。ムラさんの妹でもあるけど」

リカさんが紹介してくれる。ニナさんの差し出した手を握ってから、あたしも挨拶した。

「ハロー、じゃなくて、なんだっけ?まいいや。みずほです」

「ミズホデス?」

「ちがうよ、みずほ。みずほが名前」

「ミズホ?」

「いえ〜す! そうそう!」

「みずほちゃん!いえ〜すって!」

リカさんが笑い、ニナさんが笑い、あたしもつられて笑い出した。

それから、ニナさんとリカさん、トモさんや、他の女の子、みんなで話をした。リカさんが通訳してくれるけど、みんな話したいことがいっぱいで、通訳を待ちきれずに、ボディランゲージや片言のドイツ語で、我先にと話しかける。

途中で、ブルーノ・アデナウアと言う大男が割り込んできたが、ニナさんに怒られてしぶしぶ引き下がっていく、なんて事件もあった。ニナさんいわく、とんでもない女たらしらしいから、みんなゼッタイに口を聞いちゃダメなんだって。

それで彼を見ながら大笑いするもんだから、気になったブルーノさんは、ニナさんに怒られながら、何度もこっちに顔を出し、最後にはノックさんとジュンくん、リョウくん、それにマーク・マードックって言うすっごく大きな男のヒトが、羽交い絞めにして連れて行ったり。

それを見て、また大笑い。もう、最っ高に楽しい。

 

やがて。

酔っ払って寝ちゃうヒト、オモテに呑みに出ちゃったヒト、朝っぱらから走りに行っちゃうヒト、なかには、夜中の段階から走りに行っちゃった人なんかもいたみたいだけど、とにかくそんな感じで、空が明るくなるころ、カフェの中は静けさを取り戻していた。

「ありがとな」

突然、声をかけられて、あたしはびっくりして振り返った。

ムラさんが、穏やかな微笑みを浮かべて立っている。

「ニナさんと話したよ。楽しかった」

「そうか。俺も、少しだけ話した」

「仲直りしたの?」

「ニナと? それは前回してるよ。そうじゃなくて、バッカス・バックって言う、ニナの恋人と話したんだ。面白れぇ男だったな。ありゃ俺らと同じ、ただのバカだ。ニナをよろしくなって言おうと思ったんだけど、そんなの、必要なかったよ」

「よかったね」

心の底から、素直に、そう思った。

ムラさんは、にっこり笑ってうなずいた。このヒトがこんなだと、なんだか調子が狂うなぁ。

「あのさ。それで、おまえに、いや、みずほに、ちょっと話があるんだけど」

「え?」

「あのな……俺さ……あの……」

どくん、どくん、どくん。

うるさいなと思ったら、あたしの心臓の音だ。

「みずほは……俺は……え〜と」

ドキドキドキドキ。

ちょっと、大事なところなんだから黙っててくれないかな、心臓さん。

 

やがて。

 

ムラさんが、口を開き。

あたしは、その言葉を聞いた。

 

そして、あたしも口を開き。

その言葉を言おうとした。

 

ズボゥ!

バララン! バララン!

低い排気音と、カン高い排気音が入り混じって、店の前に停まる。

「ムラ! 聞け! 大変なことになってきたぞ!」

「ノブナガ、オハヨウ」

風虎さんと長い金髪のスマートな男性が、扉を開けて入ってきた。

「な、なんだ?」

慌てふためくムラさんの姿に、思わず笑ってしまう。

「こいつが、アイスのヤロウがよ、飛んでもねーの連れてきちまったぞ?」

「ゴメンナサイ。トメラレナカタ」

ムラさんが、いぶかしげな顔でたずねる。

「止められなかった? なにを?」

「だーかーらー! アレだよ、あれ!」

風虎さんが指差したむこうから、またも、バイクの集団がやってくる。それにしても、夜に集まってきた人たちよりも、なんだか小さく見えるなぁ、なんて思ってたら、風虎さんが叫んだ。

「スモールクラブとか言う、爺さんたちの走り屋を連れてきちまったんだ、このバカ」

風虎さんがそう責めると、そのヒト、クール・アイスさんは肩をすくめて知らんフリをしている。そのとぼけ方がおかしくて、あたしはケタケタと笑ってしまった。

「おい、みずほ! てめぇ笑ってる場合じゃねーんだぞ?」

「風虎さん、なんでおじいちゃんたちは走っちゃいけないの?」

「バカ、危ねぇだろうが」

「でも、危ないのは元々でしょう?」

「あ?」

「だって、公道でレースなんてこと自体、危ないじゃない」

風虎さんが絶句する。ムラさんがドイツ語で、それをアイスさんに伝えたらしく、彼は一瞬びっくりしたあと、手を打って笑い出した。なにやらドイツ語でまくし立てながら、大笑いしている。あたしがきょとんとしていると、ムラさんが通訳してくれた。

「お前は、すばらしいってよ。お前の言うことが正しい、風虎は了見が狭いってさ」

「なにを、このヤロウ!」

風虎さんが拳骨くれようとするのを、しなやかな動きでかわしながら、アイスさんが私に何か言った。

「ムラさん、なに?」

「ああ、お前の名前は? ってさ」

あたしは、アイスさんに向かって、ゆげさんがやるように親指を立てながら言った。

「みずほ!」

アイスさんはにっこり笑うと、同じく親指を立てて

「アイス!」

そこでようやく彼を捕まえた風虎さんが『ジジイどもを迎えに行くぞ』と言いながら、アイスさんを引っ立てていってしまう。あたしとムラさんは、彼らが去ってゆくエンジン音を聞きながら、顔を見合わせて笑ってしまった。

「風虎さんって、アイスさんとも日本語のままでしゃべるんだね」

「あいつなら、世界中の誰でも、日本語で意志を通しちゃうだろうな」

それからまた、ふたりで大笑い。 すると、今の騒ぎで、寝ていたうちの何人かが起きてきた。いいから寝てろなんて言ってると、逆にみんな起き出してしまう。ホント、あまのじゃくばっかりだね。

で、 ムラさんがみんなに事情を説明すると、

「やるじゃん、みずほちゃん」

「そうだよね。じいさんだからって特別扱いはダメだよな」

「俺がジジイになったとき、そんなこと言われたら、切れるもんな」

そう言われて、なんだかうれしくなったあたしは、また、親指を立てた。

そのうち、いったん帰っていた人たちや、走り倒してきた人たちも帰ってきて、結局、朝のうちから昨日と同じような状態になってしまう。なかには、眠そうに目をこすりながら『仕事行ってくる。あとでまた来る』なんていう人もいたりして。

「バカなやつらだな」

「あれ、自分がその筆頭だって、覚えてないの?」

「なにを?」

「だって、世界一なんでしょ?」

あっけに取られたムラさん、突然、あたしの頭をくしゃくしゃってすると。

「違いねぇ」

と言って大笑いした。 そして……どちらからともなく手をつなぐと、みんなに冷やかされながら、その輪の中に入ってゆく。うん、 ちょっと照れくさいけど、その何倍もうれしい。

「ねぇ、ムラさん」

「なんだ?」

「今、なに考えてる?」

「そりゃ、もちろん決まってるだろう?」

 

ふふ、そりゃそうだよね。

 

「なになに?教えて?」

ムラさん、にっこり笑ってうれしそうに言った。

「ちっちゃいもん倶楽部のじいさんたちって、どんなヤツラなんだろうな?」

 

あたしは、思いっきりムラさんの足を踏みつけてやった。

マミさんとアヤの気持ちが、ちょっとだけわかった気がしたよ、ホント。

 


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