尸魂界ソウル・ソサエティには二つの区分に分けられる。

 貴族や死神達が住む瀞霊廷と、その周囲にある死者の魂と呼ばれる魂魄達が住む流魂街。

 暮らし向きや待遇などが厳然と区別されている。

 瀞霊廷の中には尸魂界ソウル・ソサエティの護衛及び現世における魂魄の保護、ホロウ退治等の任務をこなす実動部隊・『護廷十三隊』というモノが存在する。

 一番から十三番まで各隊それぞれ隊長、副隊長がおり、その下は強い順に第三席、第四席と席官が続く。

 各隊の構成人数は約200人強で、総勢三千人程度がその任に就いている。

 隊によって各々特色を持ち、四番隊は救護及び補給担当、十一番隊は最前線での戦闘を遂行する。

 各隊を率いる隊長は隔絶した能力を持つ死神がその任に就く。

 各隊には隊舎があり、隊長、副隊長には個室が与えられ、隊舎には隊員が集まって会議が出来るほどの広さの部屋もある。

 そして祐一は『一』と数字の書かれた隊舎の前に立っていた。

 祐一をそこにおいて、終夜は扉の向こう行ってしまった。

 扉の向こうには結構な人数がいるらしく、幾人かの声が漏れる。

 ――俺の判断は正しかったのだろうか?

 今更ながら、尋問するときが来た。

 もう考えて無意味なことは明白で、これから自分が歩む道は少しずつ顔を覗かせている。

 どうせ、後戻りする気もないし。

 『死神』の仕事について、終夜は色々と説明してくれた。

 『死神』という存在は祐一が人間だった頃は存在しないと思っていた。

 だが、それは実際に存在していた。

 死神が尸魂界ソウル・ソサエティと現世のバランスを保っているので、両方の世界にある魂魄の量は常に均等に保たれている。

 現世で死した魂を尸魂界ソウル・ソサエティに送り、尸魂界ソウル・ソサエティから放たれた魂は生物となって転生する。

 その魂魄の運行を見守るのが死神の職務だ。

 死神が現世で仕事を行う場所はキッチリ地域区分されている。

 それぞれの死神はある程度のエリアを担当区域として任され、その範囲内のプラスの魂葬にあたっている。

 他に、ホロウと呼ばれる悪霊を昇華するのが主な仕事。

 また、死神のみが使える鬼道という術があり、これだけでもホロウを倒すことも可能だ。

 その死神になるには一般的に、真央霊術院という学校のようなシステムで一定の試験を受ける必要がある。

 そこでの成績により護廷十三隊への配属が決まっていく。

 死神の適性には、鬼道、治癒霊力……など、いろんなことを聞いた。

 そして最後に、祐一は極めて特殊な例だということを付け加えられた。

「祐一。入って来な」

 ニヤニヤした笑みを浮かべた終夜が、祐一を中へ誘う。

 中に入ってすぐ、気圧されるような圧迫感を受けた。

 ずらりと並んだ、年齢性別様々な人――否、死神。

 向けられる視線は様々だ。

 挑戦的、好戦的な視線、探るような見定めるような視線etc。

 だが何も知らない祐一でも、彼らが只者ではないコトは推し量れる。






死神が奏でる鎮魂歌

――序奏――


第一章 護廷十三隊






「お初にお目にかかるのう、相沢祐一」

 年老いた男の声に、ただ無愛想に頷いた。

「紹介しよう。我らが護廷十三隊を」

 皮と骨のような手が、ゆっくりと上がり方向を示す。

 祐一から見て左側の、一番老人に近い位置。

「二番隊隊長、砕蜂」

 小柄な黒髪の女。

 目が合ったけれど互いに何を言うまでもなく逸らされた。

「四番隊隊長、卯ノ花烈」

 微笑を浮かべた髪の長い女。

 緩やかに一礼され、同じように少しだけ頭を下げた。

「六番隊隊長、朽木白哉」

 端正な顔立ちの男。

 感情のない目線は上げられることもなく、綺麗に無視された。

「八番隊隊長、京楽春水」

 派手な羽織と笠の男。

 にこりと笑みを向けられ、一つ軽く頷いた。

「十番隊隊長、日番谷冬獅郎」

 子供にしか見えない男。

 鋭い視線で頭を軽く下げられ、こちらも頭を下げた。

「十二番隊隊長、涅マユリ」

 外見から判断できない。

 ロボットのような目を向けられ、眉を顰めた。

 次に向けられた手は、祐一から見て右側に移る。

「三番隊隊長、市丸ギン」

 細い目の、細身の男。

 ひらひらと笑顔で手を振られて、思わず片眉を上げた。

「五番隊隊長、藍染総右介」

 眼鏡をかけた男。

 人のよさそうな穏やかな笑みを浮かべ一礼され、同じように一礼した。

「七番隊隊長、狗村左陣」

 大柄すぎるほど編笠をかぶった大柄な男。

 まるで置物のように微動だにしない相手を、見上げた。

「九番隊隊長、東仙要」

 色黒の男。

 礼儀正しく頭を下げられ、同じように一礼を返した。

「十一番隊隊長、更木剣八」

 体格の良い隻眼の男。

 よぉ、と挨拶されて、同じように笑って手を挙げた。

「十三番隊隊長、浮竹十四郎」

 長い白い髪が印象的な、背の高い男。

 穏やかな笑みを浮かべ頭を下げられ、同じように一礼を返した。

 そして最後に老人は名乗る。

「儂は一番隊隊長にして護廷十三隊総隊長、山本元柳斎重国じゃ」

 髭の立派な男。

 真っ直ぐな眼差しを受け止めて、口を開く。

「俺は相沢祐一。よろしく」

 二十三の目を向けられた中での挨拶は、震えることなく、むしろ堂々たるものだった。

「して、斬魄刀の名は?」

 いきなりの問いに数回瞬きをする。

 その名が何を指すのかを既に理解していた祐一は腰に差した刀の柄に手をやる。

「雷吼丸です」

 その返答に護廷十三隊の隊長達がざわめき始める。

「雷吼丸、だと?」

「まさか、彼の?」

「間違いないのか、久遠寺?」

 藍染が終夜に尋ねる。

 終夜は満足そうに頷くと祐一を振り返る。

「間違いないぜ。こいつは始解も行える。それに……祐一、具象化してみな」

 終夜の言葉に頷き、祐一は斬魄刀を抜くと刀を握る手に意識して少しだけ力を込め、心で雷吼丸に呼びかける。

 すると、刀身から雷が迸り、それが一匹の聖獣・麒麟の姿にかわる。

「ほぅ」

 誰かが感嘆の声を上げた。

 それに続くように他の面々も声を上げる。

「はっ、こりゃ確かに雷吼丸だ。間違いなくあいつのな」

「これは驚いた。本当に今日死神化したばかりなのか?」

「今日も何も、ほんの先刻ほどだ」

「逸材、というやつだネ」

 品定めをするような視線を祐一に向けながら、本人そっちのけで話し出す護廷十三隊の隊長達。

「適正試験を受けさせてから決めたほうが良いのでは?」

「いや、やはり真央霊術院に入れるべきではないか?」

「んー、別にボクんとこで面倒見てもええで」

「何言ってやがる。強ェ奴なら俺んとこに決まってるだろーが」

「名乗り出るのは力量を見てからにしてはどうだ」

 祐一が何かを言おうとする前に終夜が手をパンパン叩き、視線を自分の方に向けさせた。

「お前らさっきから何勝手なこと言ってんだよ。祐一は俺の零番隊第五席に隊入りするコトになってるんだ。いいよな山爺?」

「ふむ。確かにこの者があやつから力を受け継いだものなら、万一暴走してそれを止められるのは主ぐらいか……じゃがそれでは周りの死神に示しがつかん」

 真央霊術院に入学せずに護廷入りすれば影で囁く者達が必ず出てくる。

 何の努力もせずに権力かコネで入った、と噂されるであろう。

「大丈夫、大丈夫。一年、いや半年以内にこいつを隊長クラスの実力者に育ててやるから」

「しかしのぅ」

 まだ何かを渋ったような元柳斎に終夜は溜め息を吐いて耳打ちした。


  「承諾しないと真央霊術院設立以来あんたが行ってきた覗き行為を死神達にバラすぞ」

「相沢祐一よ。あやつ――天草雷鳴の力を受け継いでいるなら、どのような壁でも越えてみせい」

 急に態度をコロッと変えた総隊長に、護廷十三隊隊長達は揃って首を傾げた。

 天草雷鳴、それは零番隊の前隊長にして最強の死神と謳われた男だ。

「久遠寺隊長、相沢の事は確かに主に任せたぞ」

「おう、何かあったら総隊長に全責任を押し付けますから安心してくれや」

「待て。誰もそこまで――」


  「女子更衣室……」

 ボソッと終夜が呟く。

「ま、部下の尻拭いをするのは総隊長である儂の役目じゃの」

 再びコロッと態度の変わる元柳斎。

「んー。一体どうしちゃったの、山じいは?」

 京楽はいつもと違う元柳斎に不信感を覚え、浮竹に尋ねる。

「久遠寺に弱みでも握られているんだろう」

 その言葉に再び元柳斎に視線を移すと、元柳斎は壁に額を打ちつけて過去の事を後悔していた。

 何を後悔してるかは知る者は二人しかいない。

「んじゃ、俺らは失礼するぞ。行くぜ祐一」

 護廷十三隊隊長達に挨拶をすると部屋から出て行く二人。

 行く先は零番隊隊舎。

 そこに待つのは魔道冥府への入り口だと終夜は気付いていない。





































「おーい、今帰――ぐほっ!?」

 零番隊隊舎の扉を開け、挨拶をしながら入った終夜の鳩尾に斬魄刀の柄が見事に突き刺さった。

 無防備な状態で受けた一撃に腹を押さえて蹲る。

「お・か・え・り・な・さ・い」

 怒気の篭った声が頭上から降り注ぐ。

 その躰から迸る霊圧が圧し掛かり、恐怖に染まる。

「さ、颯沙……いきなり何し――」

「私達に仕事を押し付けて今まで何処に行ってたんですか?」

 終夜の質問を遮り問い掛けるのは零番隊第四席『天楼颯沙』。

「げ、現世だ」

 そう言った瞬間、終夜の躰が宙を舞った。

「現世? 仕事もせずに現世? いい度胸ですね。クソ隊長」

 斬魄刀――『明鏡止水』を鞘から抜刀し、幽鬼のように倒れている終夜に迫る。

「颯沙……ちょっと待て」

 副隊長の『月詠紫苑』が祐一に気付き、颯沙に声をかけた。

「客が――」

 第三席の『叢雲煉瓦』が続けて話しかけるが、言い終わる前に颯沙は紫苑と煉瓦を冷たい眼光で射抜くと言った。

「うっせェな。外野は黙って空気吸ってろ」

『………………はい』

 副隊長並びに第三席を黙らせた。

 二人は確かに見た。

 背後の黒い何かも震えているのを。

 空気も、否大気も震えているのを。

 二人は同時に思った。

 ――尸魂界全土でもっとも最恐の死神・颯沙様ご光臨である、と。

 近づいてはいけない。

 話しかけるのはもっといけない。

 怒りが沈下するのを待つ他ない。

 そう隊長の尊い犠牲によって……

「おい、覚悟はいいか、クソゴミ野郎」

「ま、待て! アレ! アレ!!」

 終夜は迫り来る恐怖に怯えながら、必死に祐一の方を指差す。

「そんな手に引っ掛かると思ってるのか? 見苦しい」

「いや! マジで見ろよ! 逃げねェから!!」

「…………縛道の六十三・『鎖条鎖縛』」

 終夜に左手を翳して、縛道の名を囁きながら、向けた手を握る。

 すると終夜の躰に巨大な鎖が絡み付き、身動き出来ないようにしっかりと封じた。

 さらには念の為と鳩尾に容赦なく足を振り下ろし、そのまま踏みつける。

 そしてようやく祐一の方に目を向けた。

 殺気の篭った鋭い眼光を受けて、祐一の体が凍りつく。

 霊圧にあてられ今にも倒れそうになるが、それは一瞬のこと。

 祐一を視界に納めた瞬間、殺気と霊圧は霧散した。

「あら? 初めての方ですね。私は零番隊第四席の天楼颯沙と申します。貴方のお名前は?」

 変り身早ッ! とその場にいる全員が思わず突っ込みそうになる後が怖いので誰も言わない。

 只、終夜だけはボソッと呟いていた。

 その瞬間、鳩尾を踏んでいた足が持ち上がり、その喉下目掛けて容赦なく振り下ろされた。

 グエッと蛙が潰れたような呻き声が上がったが、誰も気にしない。

 というか、巻き添えを喰らいたくなければ気にしちゃいけない。

「あ、俺は、いや僕は相沢祐一といいます」

「祐一君ですね。それで祐一君はどうしてここに?」

「俺が連れてきた」

 寝転がりながら終夜は事のあらましを説明する。

 喉を颯沙の足で踏まれて上手く喋れないが、器用に躰を動かし、喋れるように足の位置を右の首下にずらした。

 話を聞いている颯沙達の表情が面白いぐらいにコロコロ変わる。

「雷吼丸に天草隊長の力……とてもじゃねェが信じられねェな」

「信じようが信じまいが事実だ……ま、とりあえずこいつは確実に強くなる。これから祐一を鍛えていくから協力してくれ」

 そう言われ紫苑と煉瓦は顔を見合わせる。

「協力、否ここに置くかどうかはまず彼の実力を見せてから決めさせてもらう。よいな隊長」

「弱ェヤツはここには置けねェからな」

 二人の言葉に終夜は頷いた。

 この二人がこういうコトを言うのは最初から見通していたのだ。

 そして二人が祐一を認める事も分かっていた。

 祐一の実力も認める一つだが、何より祐一は二人にとって恩師とも言うべき人の息子なのだから。

 あと颯沙については別段文句は言わないだろう。

「そうと決まりゃあ、さっそく試験だ。おい、餓鬼着いてきな」

 斬魄刀を持ち、煉瓦が祐一を先導する。

 その後を紫苑が続き、終夜も着いて行こうとするが、縛道と踏まれているため動けずにいた。

「おい、颯沙。俺もついていくからこれなんとかしてくれ」

 その言葉に穏やかな笑みを浮かべていた颯沙の表情が一変、般若の表情に変わった。

「あ? 何寝ぼけたこと抜かしてんだ。まだ話は終わってないだろ」

 明鏡止水を終夜の顔、一ミリ横に何度も突き立てる。

「何か言うことは?」

「え、えーっと……あんまり怒ってっと皺が増えんぞ」

 バカがいる。

 許してもらえるかもしれないチャンスを逃したどうしようもないバカが。

「……誰の所為で怒ってると思ってる?」

「誰の所為?」

「テメェの所為、だろうがぁぁぁぁぁぁ!!! 卍、解!」

「ち、ちょっと待てェェェェ!! 俺が悪かった! 謝る! 謝りますからどうかそれだけは勘弁して下さい!!」

 今更何を言おうがもう遅い。

 すでに颯沙の眼は得物を狩る狩人そのものになっているのだ。

 合掌。





































 双殛の丘の地下に作られた広大な空間。

 何百年か前に浦原喜助がテクノロジーの粋を結集して作ったらしい。

 この地下施設ならば、躊躇うことなく力が出せるというものだ。

 その施設に三人。

 岩壁に背を預けている紫苑。

 そして互いに斬魄刀を抜刀し対峙する祐一と煉瓦。

「おら、とっとと斬魄刀を開放しろや」

「言われなくても……」

 祐一は雷吼丸を握る手に力を込め、言葉を紡ぐ。

「雷火迸れ! 『雷吼丸』!!」

 刀身が伸び、霊圧が作り出した雷がバチバチ、と帯電する。

 雷吼丸を正眼に構えると、柄の根元についた20センチほどの黒い鎖とその先に小ぶりのナイフほどある鏃がジャラジャラと音を立てた。

「ハッ! 確かにそれは雷吼丸。天草隊長の斬魄刀だ……だがよ、そりゃ始解じゃねェな。力も何もかも中途半端だ!」

 煉瓦の言葉に眉を潜めるが、彼の言っていること正解なのだろう。

 自分は覚えていないが、彼らは天草雷鳴のことをよく知っている。

 雷鳴をよく知っているということは、彼の斬魄刀だった雷吼丸のこともよく知っているということ。

 そんな煉瓦が言っているのだ、これは始解ではないのだろう。

“奴の言うとおり、これはまだ始解でない”

 心の中で雷吼丸の声が聞こえる。

“主にはまだ雷鳴の力を制御することはできない。故に我の解放は制限されたものだ。完全解放したいのであれば力をつけ、雷鳴の霊力を制御できるように修練すればよい”

 祐一の中に眠る雷鳴の霊力は雷吼丸が抑えている。

 それを御することが出来れば、雷吼丸の力も完全解放されるのであろう。

 祐一は雷吼丸の言葉に頷き、自分がまず成すべき目標が見えてきていた。

「そういや、自己紹介がまだだったな。俺は零番隊第三席・叢雲煉瓦だ! んじゃ……征くぜ、餓鬼!」

 煉瓦は一瞬身を屈め、躰全体のバネを使い大きく跳躍した。

 そして自身の斬魄刀の柄頭にある棘が付いたリングに人差し指を差し込み、そこを支点に斬魄刀を振り回す。

「嬲れ! 『鬼哭丸』!!」

 その口上とともに斬魄刀の形状が変化し始める。

 指一本しか入らなかった棘付きリングが見る見るうちに大きくなり、直径で20センチほどまで大きくなった。

 棘付きリングが人差し指から手首の位置に移動すると、今度は刃が変化し始める。

 リングを中心に両側に伸びる無数のスパイクを有した凶悪で禍々しい刃に変わり、片刃だけで直径100センチ、刃幅20センチもある。

「簡単にくたばんじゃねェぞ!!」




護廷十三隊の隊長格とは顔見せ程度で終わっちまった。

まぁ、各々出会わせればいいか。

まず一番最初に目立つのは殺し合い大好きな剣八。

あとは……誰にしよ。

流石に全員と顔合わせを回想で書く訳にはいかんよなァ。(何時終わるか分からんし

隊長はあと二人ぐらいかな。

それ以外に書くとしたらルキア達との出会いか。

さっさと回想終わらせて、現代に戻ろ、と。

あ、ちなみに煉瓦の斬魄刀のイメージはD.Gray-manに出て来る『神狂い』です。

ただし刃の部分はチェーンソーになっています。

それでわ、また〜