宮島・包ケ浦の矮小化した植物

〔シカの食害調査〕

1,    宮島の植物誌  

  ここ宮島は593年に推古天皇によって神社が建てられたとの記録があり、島の樹木が鎮守の森として守られてきた。江戸時代に
  森林火災があったとはいえ、その後も森は人の伐採から免れたため、島の多くの部分に温帯の極相森である広葉照葉樹林が存在
  する。 高層部にはクスノキ、コジイ、ツガ等があり、中層にはツバキ、イヌガシ、ミミズバイなどがある。宮島では人々も多く住み、
  戦後は開拓農民も入り、自動車道も造られ、観光客も多く出入りする様になったためか、植物相は帰化植物や、本来は島になかった
  植物も多く入ってきている。
    宮島は瀬戸内海に浮かぶ島のため、年間を通じて暖かい黒潮の海流の中にある。そのためかここ宮島では、この島以外では殆ど
  見られない暖地性のヤマモガシ、ホウロクイチゴ、イヌガシなどの自生が見られる。それらはどうしてやって来たかは定かでない。
  海流に乗ってきたものか、夏鳥が島にやって来たときに落としていったものか解らない。反面内陸部でも普通に見られるウリハダ
  カエデやヤマボウシ、タラノキなども見られる。特にウリハダカエデは多くの自生があり、秋の紅葉は対岸からもそれが見られる
  ほどである。以前 大野町 の農業暦で紅葉を見て麦播きをしたという話もある。
       地質学的には、宮島はその殆どが花崗岩で覆われている。それが風化した土は非常にやせていて、極相森に至るまでは非常に長い
  年月を要する。極相森に至るまでには松を中心とした林が形成されるが、ここ宮島でもかなりの場所で見られる。普通ではこれらの
  林は極相森である照葉樹林に変わっていく過程で見られるので、松もやがて消えていく運命にある。しかし、ここ宮島ではかなりの
  崖地や岩場が存在するので、そのような場所に生き残るものと思われる。

      
また、宮島にはシカによる植生の変化がある。以前、神社を造営するとき、一緒に連れてきたという説もあるが、定かではない。
  シカもその気になれば、 大野町 の対岸から渡ってこられる距離である。現在この島には推定千頭あまりのシカが棲んでいてかなりの
  過密状態である。そのため島には草本類はかなり少ない。島以外で多く見られるイネ科植物は殆ど見られない。有毒植物であるハス
  ノハカズラ(ツズラフジ科)やナンゴクウラシマソウ(サトイモ科)の仲間やシダの仲間は食べられない。しかし毒をもたないベニバナ
  ボロギクなどは人間は山菜として食べるのに、シカは殆ど食べないし、レモンエゴマは特有の臭いがあるせいか全く手をつけようと
  はしない。
       この島にはツル植物の種類が多い。特に宮島に自生していて島以外ではあまり見られないものにハスノハカズラ、ホウロクイチゴ、
  ウラジオマタタビ、サカキカズラ、ハマニンドウ、カギカズラなどがある。ツル植物ではないがトキワガキ、カンコノキ、ヤマモガシ、
  ハマゴウ、イワタイゲキ、ナンゴクウラシマソウもそうである。マツにおいては一部にマツクイムシに対してかなり抵抗力のあるものも
  自生している。また、多くの草本類が本土のものに比べてかなり矮小化しているものが見られるが原因がはっきりわかっていない。
  また、国のRDBで絶滅危惧U類に登録されているシバナがある。現在県内では絶滅したと聞いている。このシバナは絶滅寸前のもの
  を3年間保護と播種を繰り返した結果、かなりの回復を見ることが出来た。宮島での植物相は温暖な気候と相まって、島全体を神が
  宿る鎮守の森として森林を守ってきたことが、現在の森林が維持されてきたものと思われる。宮島が世界遺産に指定されたのも、
  神社仏閣の背景に豊かで美しい森があったからに相違ない。私たちはこの森を誇りに思い、次の世代に伝えなければならない。

  ここで、最新の情報を提示致します。2004年に宮島を襲った台風18号もたらした風波の結果、宮島には今まで存在しないとされ
  ていたツルナ、ハマエンドウ、ハマダイコン、オカヒジキの存在が腰細浦海岸で2005年5月に確認できました。今後これらの植物を
  いかにしてシカの食害から守り、本来の植生を取り戻すかは我々の今後の課題のように思われる。

 

 

 シカは何を食べているのかな

     ようこそ、宮島にいらっしゃいました。風光明媚な自然、そして世界遺産の島・宮島に着き、船から降りると一番先に
  わたくしたちシカのお出迎えを受けてビックリされたことと思います。
わたくしたちシカの名前はニホンジカと言い
 宮
島には6千年も前から暮らしています。
  
  
明治に入り観光客が宮島に訪れるようになると「神鹿」と呼ばれ、町民からかわいがられ残飯を貰ったりして大切
 にされた時代もありましたが、戦中戦後にかけては仲間たちがずいぶん殺された時代もありました。でも、今では
 300万人近い観光客が訪れるようになり美味しいお菓子や、弁当の残りを貰うようになり仲間も増えました。
 この間、偉い先生のグループに数えてもらったら350頭くらいの仲間がいたそうです。ところが、人間のくれる食べ
  物は美味しいのだけど本来植物を主食にしている私たちには体に悪いらしく、最近胃の調子がおかしくなって困って
  います。特にお弁当やお菓子の包装のビニール類は胃の中に詰まってしまい、毎年私たちの仲間が苦しみながら死
  んでいっています。本当のことを言うとわたくしたちは山に帰って自然の中で本来の草や木の芽を食べて健康に暮
  らしたいのだけど、ついつい楽チンをしてしまうんだよね。

 わたくしたちの事を少し詳しく書くネ。

   名前は前に言ったとおり、ニホンジカと言います。仲間はベトナムや極東アジアにも棲んでいるそうです。
 分類すると、偶蹄目シャカ科に入るらしく、オスには角が生え体はメスより一回り大きいのが普通です。本来、森林や
 草原に棲み美味しい食べ物が貰えなければ、街の中には出てこないんだけどナー。普段はオスとメスは別々の群れを
 作っています。赤ちゃんは初夏に1〜2頭生まれます。オスの角は毎年春先に抜け替わります。鹿の子(かのこ)模様と
 言って、よく、茶色に白い斑点が付いているけど、あれは
夏服です。冬になると灰褐色の地味な服に着替えます。

           

《解説》

   シカは本来、植物性の草や木の芽をたくさん食べて胃の中にあるバクテリアの働きによって、健康な体が作られます。
  しかし、今のように人から与えられる高タンパク、高脂肪で塩分の多い食品をとり続けると胃で造られるバクテリアが
  充分機能出来なくなります。おまけに餌と一緒に食べられるビニール類や消化が出来ない異物などが胃袋につまり
  健康を害し、雄シカの角が貧弱な個体も多く見られます。人との共存も程ほどにしないと、シカの糞尿による衛生上
  の問題、雄シカによる人への被害、交通事故など問題が頻発しています。何頭のシカが街中にいるのが適当なのか
  難しい問題ですが、出来るだけ本来の森での生活を取り戻し、人とシカとがバランスがとれ、宮島に来られる観光客の
  皆さんに自然な姿で受け入れられる状態に
なるのが理想的な姿だと思われます。

宮島のニホンジカ シカの胃袋 ビニールや異物を食べた胃袋

 

 
〔矮小化した植物の調査方法〕


 

 

  

宮島・包ケ浦の矮小化した植物調査

(18年度ひろしま環境大学にて実施

NO

植 物 和 名 

植 物 科 名

A班・東側(15名)

B班・西側(15名)

A+B=合計

1

オオバコ

オオバコ科

15

15

30

2

クサイ

イグサ科

15

15

30

3

チチコグサ

キク科

15

15

30

4

メヒシバ

イネ科

15

15

30

5

チドメグサ

セリ科

10

12

22

6

トキンソウ

キク科

11

19

7

ニワホコリ

イネ科

15

18

8

ヤハズソウ

マメ科

17

9

ヒメクグ

カヤツリグサ科

15

10

コニシキソウ

トウダイグサ科

11

13

11

カタバミ

カタバミ科

13

12

シバ

イネ科

11

13

トキワハゼ

ゴマノハグサ科

14

ニワゼキショウ

アヤメ科

15

チチコグサモドキ

キク科

16

ニシキソウ

トウダイグサ科

17

ヒナギキョウ

キキョウ科

18

アカカタバミ

カタバミ科

19

スズメノヤリ

イグサ科

20

ヨツバムグラ

アカネ科

21

スミレ

スミレ科

22

カラクサナズナ

キク科

23

アゼガヤツリ

カヤツリグサ科

24

 

 

 

 

 

25

 

 

 

 

 

                            調査指導責任者: 金山 芳之 

調査日:2006,9,10(9:3010:30)