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日本社会党綱領
−いわゆる「左社綱領」
 
*出典は『日本社会党綱領文献集』(日本社会党中央本部機関紙局 1978)。作成にあたって、北村巌パーソナルページ掲載のファイルを北村氏の同意を得て利用させていただいた。北村氏のファイルは出典が明記されていないが、内容からみて『社会主義協会の提言』収録のものを使用したと思われる。『日本社会党綱領文献集』収録テキストと比べると、特に第一部に漢字の使用、句読点、段落分けに一部相違がある。画像は、1952年総選挙の開票を見守る左派社会党幹部。『日本社会党綱領文献集』掲載テキストをPDFで付す。(ヤフーボックスに掲載)ここ
 
第一部
一 日本社会党の歴史的使命
二 日本資本主義の現状 
三 平和革命の展望 
四 社会主義革命の諸条件 
五 資本主義下における闘争
六 過渡的段階の政府
 
 
 
 
 
第二部
一 序 
二 平和と独立の確保 
三 自由と民主主義の擁護 
四 勤労大衆の生活防衛 

第三部
一 党の階級性堅持と党内民主主義の確立
二 党組織の活動分野
三 労農提携は党組織を中心に
四 党と大衆団体との関係
五 他政党との共同闘争について
六 国際的団体との関係
七 党と民族闘争組織との関係
八 党組織の本隊強化
 
 第一部
 
 日本社会党の目的は、社会主義社会の実現である。敗戦とともに白日の下に
さらされた日本資本主義の矛盾は、すでにわれわれがこの歴史的使命を果たし
うる時期に向かって具体的に近づきつつあることを示している。われわれは今
やこの目標を地平線のかなたにのぞみ見ているだけでなく、かの地点に到達す
ることを決意している。われわれは今こそ、われわれのおかれている歴史的地
位とわれわれの企図する民主主義的な社会主義革命の本質を明らかにし、社会
主義政党としての日本社会党の活動の原則を示さなければならぬ時であると信
ずる。このことによって、日本社会党のゆるきない性格がつくりあげられる。
 
 民主主義の土台のうえに社会主義社会実現しようという日本社会党の決意が
達成されるかどうかは、たんにわれわれが正しい理論をもつのみでなく、すで
に資本主義社会において、いかによく勤労大衆の日常の利害を代表することが
できるかにかかっている。
 日本社会党は、資本主義社会の下でも、国民生活の安定向上を、資本家階級
のつよい反対をついて、達成することを主たる目標としている。しかし日本社
会党は、平和と独立のためにたたかうことなくして、国民生活の安定と向上の
ないことを知っている。
 アメリカ帝国主義とこれに従属する日本独占資本とによる搾取は、ただ貸金
労働者だけでなく、農民そのほか勤労大衆を内外の独占資本の支配に対する反
抗にかりたてるであろう。
 
 このようにして、勤労大衆の生活を守り、向上せしめる闘いは、平和と独立
のための闘い、自由と民主主義を擁護する闘いと、内面的に結びついているこ
とを知らなければならない。したがって、また今日では、純粋に経済的な闘争
はありえない。すべての経済闘争が基本的には政治闘争に結びついている。
 日本社会党はつねにこの闘いの先頭にあって、労働者、農民、中小業者、そ
のほかいっさいの勤労大衆のなかに、その精神的指導力を確立しなければなら
ない。
 
 このようにしてわれわれは、日本社会党自身の組織を強化し、労働組合、農
民組合、そのほかいっさいの大衆組織と有機的に結びつくことができる。ここ
においてはじめてわれわれの正しい思想が大衆的な力となる。組織的な力の上
にのみ、日本社会党のたくましい行動力が生まれるであろう。
 日本社会党は、社会主義社会を実現する。この社会では、資本主義社会の下
で、おそらく十分に達成しえなかった勤労者の完全な就業、社会保障制度など
を不動のものとするであろう。そして、計画化された経済にもとづく生産力の
発達は、国民の生活を引き上げ、個人の有するあらゆる才能を最大限に発揮さ
せ.文化の水準を向上せしめるであろう。このような社会経済の計画化は、主
要な砿業の民主的な国有化または公有化を中心としてはじめて可能となる。
 日本社会党の前途には幾多の困難が横たわっている。しかし、われわれはい
っさいの困難をのりこえて、われわれの歴史的使命を達成するであろう。
 

一 日本社会党の歴史的使命
 
 資本主義社会は、そこに内在する資本家階級と労働者階級の対立をその社会
内で解決することはできない。資本主義社会の発展は、同時にこの対立の発展
である。労働者階級は、このような対立抗争の発展のうちに、社会主義的変革
の使命を帯びた階級として成長する。日本社会党は.このような労働者階級の
歴史的使命を代表し、実現する政党であり、したがって労働者階級をその主力
として組織する。
 労働者階級は.現実においては、その単独の力のみによってこの使命を遂行
するものではない。日本社会党は、小農などの農民層、小経営者、進歩的知識
層、学生層などを党に組織し、富農、中小資本家等の諸社会層を同調させるた
めに、それぞれの対策をもって、支配階級にたいする彼らの闘いの先頭に立
つ。
 
 この意味において、日本社会党は、単に労働者階級の政党であるばかりでな
く、広く勤労大衆の政党である。すなわち日本社会党は、日本における社会主
義の実現を目的とする労働者階級と、その同盟者たる農民その他の諸社会層の
政党である。
 社会主義社会は、資本主義社会における対立した基本的階級の一つである労
働者階級と、その同盟者たる諸社会層の階級闘争によって実現される。この闘
争の展開は、一定の段階において、必然的に社会主義革命となる。
 
 資本家階級は、その階級的支配を確保するために、一切の権力を支配機構に
集中し、組織している。このことは、たとえば、立法機関、司法機関、官僚機
構、武装せる警察や軍隊、刑務所のような拘禁機関さらに広義における教育機
関、ジャーナリズムの機構、文化団体、青少年や婦人の組織、地方の議会およ
び行政組織、その他公的または私的な暴力団体などに具体的にあらわれてい
る。
 それゆえに日本社会党は、社会主義革命によって資本家階級の手から政治権
力を受け継ぎ、これらの支配機構を根本的に変革して社会主義社会の建設を可
能にする。
 
二 日本資本主義の現状
 
 一八六八年、明治維新によって日本が資本主義への道を開いたときは、ヨー
ロッパでは古典的資本主義時代の終わりにちかくすでに独占資本主義の段階に
進もうとしていた。日本資本主義は、強力な軍備をもって先進諸国との市場、
資源、植民地の争奪戦に参加し、なかば封建的な藩閥官僚政府による国家資本
を媒介として、財閥を中心にそれ自身の成長をはかった。明治の末年をもって
日本資本主義はほぼ確立された。
 一九一四年に始まる世界大戦は、日本における資本主義を急速に発展させ、
独占資本の制覇を完成した。このように日本資本主義が高度化したことは、同
時に、資本家階級にたいする最大の対立物である労働者階級を増加させただけ
でなく、その階級意識をも高めた。
 
 このような資本主義の発展は、農村では直接にまたは地主制を通じて零細農
家経営の搾取をつよめ、都市では中小の独立企業を圧迫し、それらの窮乏を促
した。
 こうして、明治以来残存した古い諸階層と、資本主義自身のなかでつくりだ
された各種の中間階級を犠牲にして、その中からあらゆる種類の産業予備軍を
つくり出した。これに立脚して資本家階級は、つねに低賃金政策を労働者階級
におしつけることができた。同時に日本の社会の底部に犯罪と人身売買と浮浪
の泥沼をつくりあげ、支配階級のなかにおおうことのできないたい廃と堕落を
生んだ。
 
 独占金融資本の支配の確立とともに、日本は植民地の再分割を争う帝国主義
諸国の仲間に入った。こうして外にむかっては好戦的に、内にむかっては反動
的に、というその本来的政策を遂行しはじめた。支配階級は大正十四年普通選
挙制によって国民に与えたものを治安維持法の制定によって奪回し、被支配階
級の言論と社会的行動の自由に甚だしい制圧を加え、民主主義を拡大するかわ
りに、与えた民主主義を奪い返すことに専心した。
 日本における君主制は、明治三〇年代に産業資本が確立するとともにその経
済的土台が変化しはじめ、独占資本の制覇とともにその絶対主義的内容を著し
く喪失するにいたった。独占資本は、この絶対主義の残骸を神殿に飾ることに
よって、明治以来教育とジャーナリズムと法制とをもって国民の心のなかに養
ってきた国体論を、自己保存の強固な観念的防砦とすることに成功した。
 こうして額に汗して働くいっさいの国民の民主主義の要求は、資本主義その
ものの変革なしに実現され得なくなった。
 
 一九二八年にはじまる世界恐慌は世界的にファシズムの台頭を促したが、植
民地に飢えた日本の独占資本は、資本主義の危機を脱出するために、ヨーロッ
パ、アメリカ帝国主義に抗して、軍部を中心としたファシズムという暴力的手
段を利用した。一方では先進分子の弾圧によって労働者階級に奴隷労働を強
い、他方では猛烈な侵略政策を強行して、ついに第二次世界大戦を引き起こす
張本人の一人となった。
 国民にたいするあらゆる暴力支配のもつ末路は、日本ファシズムにもまぬが
れることはできなかった。それは敗戦によってもたらされた。しかしこのばあ
いにも、敗戦の一つの犠牲は働く国民の肩にかかった。
 
 戦勝諸国は彼らの好戦的競争国から牙を抜くために、敗戦日本にいわゆる
「民主化」政策を遂行した。軍隊の解散、政界、官界、財界、教育界、労働
界、言論界など各界にわたるパージ、財閥解体、独占禁止集中排除、労働三
法、農地改革、新憲法等々の実施がそれである。
 第二次大戦の後、世界は、いわゆる「二つの世界」への分裂を拡大し、固定
化し、そのために、資本主義諸国にとっては、広大な世界市場が失われた。国
土内になんの損傷も受けず巨大な利潤の堆積と生産力の膨大な発展もたらした
アメリカ独占金融資本は、その資本と商品のために勢力範囲の狭隘化を切実に
感じ、これに対応するソ連の世界政策との間に、対立の激化をみた。同時に、
アメリカの資本と軍事力の前に雌伏を余儀なくされていた独占金融資本の諸大
国もまた、お互の間に、または、アメリカにたいして、その利益を主張せざる
を得ない。こうして不幸にも二つの悲惨な大戦の経験の後にも、全世界の人民
はまったく戦乱の脅威からまぬがれ得ない状態である。
 
 「民主化」政策の一応の終了とともに、アメリカは隷従する日本を軍事力と
して、対ソ対中共戦略に利用する政策に転換した。サンフランシスコ講和条
約、日米安全保障条約はこうして成立した。この両条約によって、アメリカは
日本を基地化し、その軍事力は直接に日本を支配するに至ったばかりでなく、
日本国民をアメリカの軍事目的のために再武装させる政策をおし進めている。
 敗戦直後の不安と動揺から、労働者階級の犠牲において立ち直りつつあった
日本の資本家階級は、アメリカの世界政策に結びつきアメリカ資本主義の経済
力と政治的支配力に依存しつつ反動政策を遂行し、低賃金と自由なき「あり
し、よかりし日」の追求に心を燃やし始めている。かくて破防法、スト規制
法、独禁法の緩和、パージの解除、支配機構への旧職業軍人の大量起用、教育
の反動化、天皇崇拝と国家神道的感情の復活、再軍備、憲法改正等々の一連の
反動政策をおしすすめている。そしてアメリカの援助による再軍備とそれによ
る軍需工業繁栄のまぼろしは、帝国主義侵略と暴力的弾圧の日本の再来へと資
本家階級を導いている。
 このようにしてアメリカは、その軍事、経済、技術などの「援助」によっ
て、また直接に駐兵することによって、独占金融資本の支配する日本を従属国
とし、対ソ戦略の前進基地として日本の再軍備を推進せしめるとともに、日本
全土に七百をこえる軍事基地をもつにいたった。
 
 日本の労働者階級は、いまや社会主義革命という本来の歴史的使命と共に民
族独立の回復と平和の維持という、解決を迫る重大な任務の前に立たされてい
る。広範な国民の間には、民族的感情が目ざめている。しかし、支配的な日本
の資本家階級は、労働者階級がその真実の敵であることを知っている。彼らの
経験は、すでにこの敵こそ真に彼らの存在を脅かすもっともおそるべさもので
あることを彼らに教えている。それゆえに彼らは、本来の植民地におけるよう
に、労働者階級とともに階級として、民族解放の運動を永続的に展開すること
ができない。
 独占金融資本もまた、それ自身の利害の上から、帝国主義アメリカと対立す
ることはありうるが、しかし彼らは、階級的利害をともにする僚友として、自
国の労働者階級よりもむしろアメリカ独占資本を選んでいる。多くの大資本は
すでに独占金融資本の網の目に捕らえられていて、特例を別とすれば、独占金
融資本と利害を共にし、労働者階級と決定的に対立している。
 
 ただ中小資本、零細経営、農漁民などのある部分は、アメリカと日本の独占
資本による二重の搾取の下に、また基地による直接の生活の脅威と圧迫によ
り、民族的独立を強く要求している。日本における中小資本の大部分は、一方
においては部分的な経済上の利害で独占資本に対立しているとともに、他方で
は労働者階級の圧力に最も敏感である。したがって、この階層の大部分が、労
働者階級とともに強力にアメリカ帝国主義と闘うことは予期されない。しかし
労働者階級に近い関係にある者や、アジア中共貿易に特殊の利害をもつ者の多
くは、農漁民、知識人、学生等と共に、労働者階級を主動力とする独立と平和
のための運動に協力する可能性をもっている。
 
 いずれにせよ、完全な独立の回復と平和のための闘争の中心は、資本主義発
展の高度の段階にあるわが国では、常に労働者階級である。したがって、労働
者階級の民族解放の闘いは同時に、アメリカと結ぶ独占資本の支配にたいする
闘いを意味することを理解しなければならない。このようなアメリカ帝国主義
とこれに従属する日本独占資本の支配に対する闘争を主たる目標としない、単
純な民族主義的な運動は早期に中和されて凋落するか、あるいはファシスト的
民族運動に変質する。われわれが日本民族の独立を確立した時は、同時にわれ
われの社会主義革命をも達成しうる時である。
 
三 平和革命の展望
 
 社会主義革命には、万国に共通な一定の型があるのではない。社会主義革命
は、その国の社会的諸条件にしたがって、ことに民主主義的精神と制度の確立
の程度にしたがって、異なる形態をとる。特定の国における社会主義革命の型
を他国におしつけんとするものは、失敗をくりかえすのみである。
 敗戦によって生まれた新憲法は、主権が国民に存し、国会が国権の最高の機
関として、権力をその手に集中することを可能にしている。旧憲法における民
主主義を抑圧した諸条項は、主要な点に関する限り、これを排除することがで
きた。政府が国会に対して責任を負わず、天皇に対してこれを負うかのような
諸条項も決定的に除去しえた。
 
 旧き貴族院も存在しない。軍部ファシスト達は、暴虐な支配者として自らた
くらんだ戦争のためにたおれた。「統帥権」と称する特権をもって、議会の統
制力の外におかれ、国民の主権と民主主義をじゅうりんしたファシスト的旧軍
隊は、解体された。保安隊も官僚も、こんにちでは民主主義的な国民代表の権
力のもとに、その手のとどくところにおかれている。
 議会に多数をえた国民代表は、それらのものを啓発し、規制することができ
る。殊に行政機関にも労働組合の活動が行われ、国民はこれを内部から民主化
する可能性をあたえられている。教育、ジャーナリズムも国体論と教育勅語の
精神から解放されつつある。ここでもまた、教育機関とジャーナリズム機構に
存する労働組合は民主主義の保障となる。たとえば教員組合の存在が教育の反
動化を防止しつつあるように。
 
 しかしながら国会、行政、司法、教育などのこれらの機関がいかに民主化さ
れても、政治権力が資本家階級の手にあるかぎり、その階級支配のためのもの
であることに変わりはない。したがってここに形式上あたえられている民主主
義が実質上はなはだしく制限されていることも当然である。この制度を除去
し、実質的に民主主義を拡大し実現させるものは、労働者、農民を中心とする
勤労大衆の闘争である。今日においても、民主主義の守りは、自由に発達する
社会主義政党と労働組合、農民組合およびその他勤労大衆の組織である。ここ
には、民主主義を担う力が大衆的な人間の組織となって生きている。
 資本主義の発達は、必然的に労働者階級を組織化する。こんにちわれわれは
すでに基本的な諸産業に労働組合をもっている。そしてもしこれらの組合がそ
の実力を発揮するばあいには、全国産業をマヒさせ得るほどに成長している。
このような社会的、組織的な力が存在し、民主主義と文化が発達しているとこ
ろでは、少数者の武力一揆は、勤労大衆自身によって排除され、その成功の可
能性を失っている。
 このような諸条件の下では、政治権力の移行は、武力蜂起をもってではな
く、平和的に、すなわち国会活動を通じ、民主主義的な社会的な力の基盤の上
にのみ行なわれる。この意味においてわれわれの社会主義は民主主義による社
会主義である。
 
四 社会主義革命の諸条件
 われわれの日常闘争の集積は、一定の条件の下で、社会主義革命に転化され
る。しかし、このような社会的変革は、いつ、いかなるところでも起こしうる
ものではない。
 社会主義革命は、労働者、農民などの組織的成長と、その先頭にたつ指導力
である社会主義政党の成熟なくして行なわれることはない。日本社会党は、社
会変革の理論をもって十分に武装され、民主的に形成され、統一された意志に
よって指導される行動の党たるにふさわしい組織と党内規律とを確立しなけれ
ばならぬ。そして労働組合、農民組合、その他働く人びとのあらゆる組織のな
かに党員が増加し、その精神的影響力は、働く人間のあらゆる組織を党の運動
に有機的に結びつけるる程度に成長しなければならぬ。このことなくして、一
切の権力機構をもつ支配階級の手から政治権力を平和的民主的な方法によって
かちとることはできない。
 
 また新たな政治権力が確立されるためには、労働組合、農民組合その他一切
の勤労大衆組織が、新たな社会主義権力の活動を積極的に支持し、その政治機
構と経済機構とを組織的に掌握しさらに建設的に行動するほどに成熟していな
ければならない。
 社会主義革命は、人々の欲するままに行なわれるものではない。資本主義
は、それ自身の矛盾をその枠内で解決することはできない。このような資本主
義の自己矛盾が爆発して、経済的な混乱と激しい政治的な不安が醸成され、勤
労大衆の窮乏化と中間社会層の生活不安は拡大されつつあるにも拘わらず、支
配階級とその政治的指導者とがこの混乱と不安とを収拾する能力を失い彼らの
支配そのものに自信を喪失しているような状態が起こる。それはたとえば戦争
によってもたらされた社会不安やはげしい恐慌の混乱等の場合に生じる。その
とき、これを救済しうる力が社会主義以外にないことを示す。
 このような客観的な条件とわれわれ自身の成熟とは、われわれを社会主義革
命に直面させる。この場合、平和的な社会主義権力はつぎのような過程を経て
成立する。
 
一、日本社会党が中央、地方を通じ、とくに中央において議会に絶対多数をし
める。
二、この絶対多数は、日本社会党が国民大衆の利害を真実に追求し、その信頼
を獲得するとともに、労働組合、農民組合、その他一切の大衆組織を党へ有機
的に結びつけ、協力させることによって安定化し、恒久化する。
三、中央議会では、安定した絶対多数の上にたって、社会主義の原則にしたが
って憲法を改正し、基本的な産業の国有化または公有化を確立し、行政、司法
の諸機関や教育、新開、出版、放送などの諸機構を社会主義の方向に適応させ
る。
四、社会主義建設を妨害するいっさいの暴力組織を解体する。
 
五 資本主義下における闘争
 
 日本社会党の目標とする社会主義政権の確立は、以上のような過程のうちに
実現されるものであるが、しかしわが党は党員にたいして、このような段階に
達するはるか以前から、資本主義の枠内で辛抱強い日常闘争の展開を要求す
る。日常闘争における党員の誠実、規律、勇敢、忍耐、献身なくしては、労働
者、農民、小経営者、知識層、学生、婦人等の党に対する信頼を獲得すること
はできない。また中小資本家、その他の動揺する社会層にたいして影響力を強
め、その同調をかちとることはできない。
 また党は、党員にたいして、勤労大衆の日常の利害を観念的、機械的にでは
なく、現実的、有機的に代表し、その闘争が社会的変革に結びつく道程である
ことを理解して、常に闘いの先頭にたつことを要求する。したがって党員は、
原則として常に何等かの大衆組織の中で活動することが要求される。
 こうして、資本主義の枠内における生活の擁護と改善のための闘いと民主主
義拡充の闘いが、すべて社会主義革命のための勢力の結集と結びつけられる。
 
 わけても、アメリカ帝国主義の日本支配、その傭兵としての保安隊その軍事
援助等々にたいする独立と平和のための闘いは、資本主義のワク内で動員しう
る限りの広範な社会層を包括した闘争に発展させなければならぬ。日本社会党
はつねにその先頭にあって、このたたかいを日本独占金融資本の支配にたいす
る闘争に結びつけなければならない。わが党の中立政策もまた、たんなる消極
的な中立ではなくて日本をその戦略基地たらしめようとするアメリカ帝国主義
の世界政策にたいして、日本と世界の平和を守ろうとする積極的な闘争であ
り、日本の独占金融資本の支配にたいする闘いの一環であることを忘れてはな
らない。
 資本主義の枠内におけるこれらの闘争のなかで、日本社会党自身が鍛えら
れ、強化され、その主体性の確立に伴って弾力性のある行動に訓練され、かく
てはじめてその歴史的使命に耐える社会主義政党に成長し、成熟することがで
きる。
 
六 過渡的段階の政府
 
 資本主義から社会主義への移行は、社会主義政党の政権確立によって本格的
な前進を始めるものであるが、社会主義政党が、ただ一回の総選挙で絶対多数
を占めてその内閣が成立しても、この政権が十分に強固で持続性のないかぎ
り、政権の階級的移行が完了して社会主義政権が確立されたものとはいえな
い。
 このように、日本社会党が国民大衆の信頼をえて、議会の絶対的多数を獲得
し、単独で社会党内閣を組織しうる機会に到達しても、その時なお客観的条件
の不足と社会党自身の主体的な条件が不十分であるために、一挙に社会主義政
権の確立と社会的変革の達成が望まれないばあいがある。
 
 さらに日本社会党が、絶対的多数ではなくて相対的多数を得たにすぎない
が、もし他の政党と連合すれば(たとえば、小市民層や農民の利益を代表する
ような急進的な政党が存在する場合)政治上、経済上、文化上の民主主義を前
進させ、働く大衆の権利と利益を拡大するために政府を組織しうるような場合
がある。だがこれは、現在の資本家的保守政党との連立を意味するものでない
ことはいうまでもない。
 このような情勢の下においては、社会主義革命を意味する社会主義政権の樹
立にはほど遠い連合内閣を組織することも、原則的に否定すべきではない。た
だこのような過渡的段階の政府は、それが社会党の単独内閣であると他の政党
との連合内閣であるとにかかわらず、日本社会党の究極目標とする社会主義政
権とはその性質と役割とを異にするものだという、明確な認識を失ってはなら
ない。
 
 それと同時に、民主政治がある程度に発達している国では、このような過渡
的段階を経ることが多くのばあい必要である。
 これらの過渡的な政府の任務は、民族の独立を闘いとるとともに社会主義の
実現を直接の目的とすることなく客観的な条件と新政権そのものの構成内容い
かんによって、できうる限り反資本的政策を遂行し、特定の産業に国有化また
は公有化の政策を行ない、国民生活の社会保障制を実施する等によって、社会
主義の道を拓くことである。
 
 日本社会党が過渡的段階または中間段階的意義をしかもたない単独内閣を組
織し、または連合内閣を組織しうる機会に到達した場合進んでその種の内閣を
組織するか、またはその機会を見送るべきかは、究極的な社会主義政権の確立
というわが党の目標達成の見地から、その時の具体的な条件を厳正にかつ冷静
に検討して、決定されなければならない。それと同時に、かかる過渡的段階の
時期が長びき、社会主義政権の樹立よりも数歩手前にある中間段階的な内閣の
組織がいくたびも繰返されるような情勢の下では、社会主義革命を目標とする
政党から、当面の過渡的段階の情勢に順応して変質をとげ、革命政党の性格を
失って、もはや社会主義政権確立の使命に耐えないものとなる危険がある。
 日本社会党は、社会主義政党の本質を堅持しつつ合理的な妥協をふくむ弾力
性のある戦術を実践しうるために、党の主体性を確立し、政治の推進力となら
ねばならない。
 
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