
たとえ脳に問題が損傷や病気が無くても、臨機応変に自分の考えをまとめたり、記憶や言葉を組み立てて返答をするといった「高次脳機能」を利用しない生活を送っていると、神経細胞のネットワークが衰退し記憶・思考・認識などの能力が低下していくことを事例を上げて説明した一冊です。
自分自身、確かに
「何か話そうにも言葉が思い浮かばなかったり、言葉が出てこないことがある。」
「つい最近のことや散々接してきた人の名前がふと思い浮かばなくなる。」
などなど思い当たる節が少なからずあり、つい手にしてしまった次第。
脳はある意味よく出来ており、毎日繰り返す作業はいちいち考えて行動しなくても反射的・パターン的にこなせてくるように出来ている。でも頭を使って新しく組み立てていくことや、興味があること・新鮮に感じることが無くなってくると神経細胞や前頭葉の機能が失われていき、思考が止まったり言葉が詰まったりするようなような事態が起きるとか。そういう意味では現代社会では脳の働きにマイナスとなるような要素が多いことにも書かれています。
エピソードで印象的だったのは商談の最中に不意に言葉が出なくなった証券マンの話。かつて現場で働いていた時は顧客の癖のある会話も巧みにかわしていた優秀な社員だったのに、昇進して直接顧客と対応する機会から離れてデスクワークが中心となり、また同時期に結婚もしてまっすぐ家に帰る機会が増えると生活もパターン化し、ある日部下が誰もいない時にかかってきた顧客からのクレームの電話にまともに返答ができなくなってしまったという話です。
もひとつ、フリーライターさんのエピソード。「何でも屋」的に雑多な仕事をこなしていた時に手がけた本がベストセラーになっていた人が、売れそうな本に絞って仕事を整理し煩わしい事に追われることが無くなって執筆を始めたとたん文章が思い浮かばなくなるという話。実は雑多なことをこなす事で脳の訓練がされており、結果的に豊富なアイディアが浮かぶような脳の構造になっていたのではということでした。
やはりというか、この本でとりわけ問題視されていたのは「1日中パソコンに向かっている仕事」。長時間パソコンの画面に向かい連絡もメールで済ませているのは脳の入力と出力を制限されているような環境にいるようなもので、言わばずっと壁に向かっているような状態。1日パソコンに向かうような仕事なら2時間はよく目を動かす機会が必要と述べています。関連してインターネットについても、ネットで得た知識はプロセスがあまりにも単純で図書館で苦労して調べた知識よりもはるかに記憶を引き出しにくい。また何でも検索という行動が結果的に「思い出す」という行動を遠ざけ、思い出す事をしなければひらめくという機能も低下してくると解説しています。
明日からでも、まずはパターン化した行動を出来るだけ排除して自分の頭で考えること、新鮮なものを取り入れることぐらいは心がけていきたいと思う一冊。それと「家に帰ってもずっとパソコンに向かう」とか、インターネットとの付き合い方もちょっと考え直そうと思うのでした。