─ 給水温め器 ─


蒸気機関車D51の煙突の前に枕のように円筒型の装置が載っている。給水温め器と称する装置で ある。
C57やC62の煙突の前には設置されていないが、給水温め器は前デッキに搭載されている。C57の 前デッキの円筒型の装置を空気タンクと記載した雑誌があったそうだが、あれは空気タンクでは ない。(後日訂正された。)
火力発電用のボイラとか工場などの業務用のボイラには「エコノマイザ」という装置を付ける ことがある。和文では「節炭器」と記す。油やガスを燃料とするボイラでも「節炭器」と表記 する。ボイラから排出される燃焼ガスの熱を利用して給水を予熱する。
蒸気機関車の場合、蒸気圧力14〜16kg/cm2の飽和蒸気温度が約200℃だから、ボイラ の保有水の温度も約200℃、煙突から吐き出される煙の温度は煙管を出てから冷やされなければ、 200℃以下になることはない。蒸気圧力が高ければ、ボイラから吐き出される煙の温度も高くな る。
そこで、このボイラ本体から出て、まだ充分温度の高い燃焼ガスを利用して、給水の温度を少し でも上げておこうというのがエコノマイザ。
熱の有効利用なのだが、実はこれがそう簡単ではない。「エコノマイザ」は給水ポンプとボイラ 本体の間に設置するので、ボイラの圧力がそのまま加わる。頑丈に作らないと破裂してしまう。 もちろん、ボイラ本体と同様、厳しい検査を受けなければならない。わずかばかりの熱を利用 するために相当な手間を必要とする。
ならば、給水ポンプの入口側に付ければいいか、というと、給水ポンプの入口の水の温度が 上がりすぎると給水ポンプで吸ったときに、(圧力が下がって、ポンプの入口側で)水が気化 (蒸発)してしまい、水を吸ってくれなくなってしまう。
蒸気機関車の「給水温め器」は給水ポンプとボイラ本体の間に設置されており、石炭を燃やした 燃焼ガスではなく、蒸気で予熱している。
ボイラから発生する蒸気で予熱していては、本来、熱の有効利用にはならない。が・・・
ボイラに給水するときにはボイラ内の圧力以上に水圧を上げないと入っていかない。このために、 蒸気駆動の給水ポンプを備えている。給水ポンプを動かした蒸気がこの「給水温め器」に導かれ て、給水を予熱する。他にも、ブレーキ用の空気圧縮機を駆動した蒸気も使用する。動輪を動か した蒸気の殆どは煙突の下の吐出管から出ていくが、この蒸気の一部も「給水温め器」で給水を 予熱するのに使われる。
蒸気の熱で給水を温めるから、蒸気は冷えて水になってしまう。この水は機関車の右前の排水管 から出ていく。蒸気機関車の写真を見ていただくと、右の前部でいつも蒸気(湯気)を吹いてい るのがわかる。(参考文献:蒸気機関車メカニズム図鑑/グランプリ出版刊)

写真は紀勢線の貨物列車を引くD51。煙突から白く蒸気が排出されている。向かって左側、 シリンダの下から給水温め器の排気が出ている。