■竜を育てる乳■ 少し前に、西洋のドラゴンを調べていたら「このドラゴンはミルクが好物である」という記述をよく見かけました。一、二箇所ではないので「なにか意味があるな」と感じたんですが日本人の私には想像できませんでした。ところが、それからしばらくして昔のケルト地方のキリスト教教会に飾られていた母子像の画像を見たんです。十字架に架けられたキリスト像が定番になる前の時代です。
日本でもそうですが、教会や寺を作る場所は、その地域の聖地に建てる場合があります。権力や思想を自然かつ強力に広めるためには、そこに住む人々が古代から大事にしていた場所を受け継ぐ形が効果的だからです。そうした古代の社に安置されているご神体は、子宮とペニスの形をした石や樹であるパターンが多く、作物や家畜などの財産が殖え、子孫が繁栄させる豊穣祈願を象徴する形なのです。
ところが、その母子像は、そういったパターンを超えていました。…なんとM字開脚をして女性器を露わにし、むき出しの乳房には2匹の蛇が吸い付いているという造型なのです。強烈にデモーニックでエロティック。乳房に蛇が吸い付いているってのは初めて見ました。北欧神話に登場する世界樹(ユグドラシル)も、悪竜を養っていると表現できなくもありません。得体の知れない動物も大事に育てる、そんな度量の大きい思想を、その地方の人は母子像で示してるんじゃないかな〜と感じました。
■クトュルフ談義■ モンスターに憧れる理由ですか〜。難しいですね。一般的には“未知への興味”なのかなと思います。宇宙のどこか、または外宇宙、過去、未来…、どこかに未知の生物がいるというのは想像するだけでワクワクします。自分の人生観をひっくり返してしまうような存在(出来事)を期待すること、非日常への憧れ。または日常の中にもそういった超現実を信じることで、現実を刺激的なものとして捉えなおす。そういった思い(工夫)の具現化こそモンスターなのだと思います。
というと、「人間がモンスターに憧れる」のではなく、「人間の憧れがモンスターには込められている」ということなんですかね。逆説的だ…。(ヌスさん)
中世の人々は旅人から奇想天外な冒険談を楽しみにしていました。子供たちは旅人の話を尾ひれのサイズはどれくらいか判らない状態で聞き、布団の中で反芻しながら検証していたはずです。
現代のお話は表紙にフィクションかノンフィクションかが表記されており、嘘か真か判らないグレーゾーン状態で他人の話を聞く機会が減りました。しかしグレーゾーンの大きさは昔も今もそれほど変わっていないはず。(位置はずれていますが)
クトゥルフ神話はクトゥルフ達が作家にテレパシーを送って書かせているとか?読者に反芻と検証の鍛錬を課すのがこのグレーゾーン感覚(グレーゾーン風味?)だとすれば、クトゥルフ読者がクトゥルフ作家になるのも頷けます。(竜胆)
確かにそのとおりです。僕がクトゥルフ神話作品が好きなのも、おっしゃるとおり、そのグレーゾーン感覚を味わいたいからなんですね。事実なのか創作なのか、読んでいるうちに判別のつかなくなる宙ぶらりんな感覚、それが楽しいんです。しかもラヴクラフトあたりはその創作を本当だと信じ込ませるのがうまいんですよ。かと言ってフィクション要素ばかりでもなくて……実際に図書館で調べてみたら「あれ、この事件って本当にあったんだ」と知ることもありましたし。
竜胆さんも時間がありましたら、ぜひ読んでみてくださると嬉しいです。もしかしたら何かインスピレーションが得られるかもしれません……。
(ヌスさん)
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『RPG幻想辞典』 文・早川浩 絵・Nikov 1986・日本ソフトバンク出版事業部
テーブルトークRPGをやる基礎が詰まった一冊。ファンタジーの背景のネタ元となった『アーサー王伝説』『指輪物語』『ギリシャ神話』『北欧神話』の紹介をザッとやると、本格的に罠・魔法・武器防具・モンスターを細部まで紹介し、巻末にはテーブルトークRPGの簡単なやり方を紹介しています。これを読むと設定魔の遺伝子が入り込みますよ。
さてイラストですがNikov氏。名前からするとロシア系?な感じです。なんというのか、絵柄は日本の80年代アニメに影響された外国人って感じで味わい深いです。私の絵柄にも大きな影響を与えてしまっている一冊です。
『ウィザードリィのすべて』 文・ベニー松山 絵・末弥純 1989・JICC出版局
ファミコンゲーム『ウィザードリィ1・2』の攻略盆なのだが、モンスター一匹一匹の解説をゲームから離れたところまで詳しく記述されており、さらにトレボー城塞やリルミガン市の見取り図や歴史背景までをも語り、HPの概念を語り、末尾にはウィザードリィ友の会(ファンクラブ)からの詩・ゲーム論・イラストまで乗せられているウィズ愛が詰まった一冊です。
もちろん末弥純氏のイラストも十分堪能できる大きさです。ファミコンが出たのが私が小学1年のあたり。ドラクエが2年だったような。その次の年にFFとWizが出たような感じ。そのため鳥山明氏・天野喜孝氏・末弥純氏のモンスターデザインはファンというより、刷り込まれていると言う感じです。その中でも末弥純氏は凄い。他の二人に比べると「俺の絵の上手さを見せつけてやろう」とか「俺の個性って凄いだろ」という我欲が微塵も感じられないのです。実際に見たモンスターをスケッチしている感じ?世界一のモンスター職人です。
『幻獣ドラゴン』 文・苑崎透 絵・佐藤肇 1990・新紀元社
まずはじめに、典型的なドラゴン(4本足で翼が生えて火を吹く)が生まれるまでの系統図が登場します。この系統図は、ヨーロッパの歴史的・宗教的精神の地下水脈図を見ているような楽しさがあるのです。これに、エジプトの翼の生えた蛇の系譜やケートス型(魚や鯨・ゾウアザラシ型)の系譜、メドぅーサの隠れた系譜やらを勝手に付け足して楽しんでおります。
本文は、北欧・ドイツ・ギリシャ・メソポタミア・エジプトの西洋ドラゴンから始まり、インド.中国・日本、北南アメリカ、そして小説のドラゴンへと世界中のドラゴンを一通りそろえています。(アフリカやロシア・アボリジニの蛇神なんかの別冊でまとめられると嬉しいですね)嬉しいのは、解説本文の横に神話は畏敬などの備考欄があることです。
しかし、この本の魅力は、なんといっても精緻なイラストです。ティポーンや女女咼(ジョカ)なんかを模写したものです。
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