ペンタックス・オート110
 かつてペンタックスと言う会社は、様々な革新的一眼レフカメラを世に送り出すスパルタンな企業であった様でございます。例えば、アサヒフレックスから始る製品の歴史、ペンタックスAPは間違いなく現在に続くライカ判一眼レフカメラのパイオニアでありましょうし、露出計内臓TTL測光のカメラをいち早く市場に浸透させたのがペンタックスSPである事は間違いないでしょう。ライカ判一眼レフカメラをそのまま巨大化させた様な一眼レフであるペンタックス等例をあげれば数にキリがありませぬ。その様な「一眼レフのペンタックス」の歴史の中に、ポケットカメラ用フィルムである110判フィルムを使用した一眼レフが登場するのは必然だったのかもしれません。
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 さて、ここで110判フィルムについて少々説明せねばならないでしょう。このフィルムは上の写真を参照してわかる様に、フィルム装填側のカートリッジと巻き取り側のカートリッジを繋げた様な構造になっています。この小ぶりな物の細長いフィルムを使用するカメラはポケットカメラと呼ばれ、一時期(約10〜20年前)では一市場を形成していたようなのですが、当時管理人は写真趣味とは遠いところに位置していたので、その当りの事情は良く知りません。
 コダックがこのフィルムを登場させた背景には、フィルム装填時の失敗を減らすと言った初心者・エントリーユーザをターゲットにしたと言う思惑があるらしく、フィルム面積の小さい所などもAPSフィルムに通じる所がある用です。コダックと言う会社は実に様々なフォーマットのフィルムを出現させては消滅させていった事は有名ですが、110判フィルムも既に風前の灯であり、僅かに富士フィルムのISO100とコダックのISO400が手に入るばかりです。しかし、これらのフィルムは大手チェーン店等では普通に手に入り、また現像の受付は普通のDP屋さんでも可能ですから、フィルム代が少々割高(24枚撮りで500円前後)な事に眼をつぶれば、普通の銀塩写真として運用できるでしょう。
 仕上がり(プリント)はフィルム面積の小ささは兎も角、現在はDP屋サイドで110判フィルムの印刷ノウハウが失われているせいなのか一般によろしくない様です。ペンタックス・オート110の様な銀塩ミニチュアカメラを持ち出して解像度云々と言うのはナンセンスとしても、何時110判フィルムが消滅してしまうかは不安ではあります。

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 ペンタックス・オート110の魅力は、この小さなボディながら一眼レフであり、レンズ交換やフラッシュ、ワインダー等の本格的システムカメラの要素を得ている事にあります。レンズは2本爪のバヨネットで絞りリングも絞り羽根も有りません。ボディ側マウント部に見える2枚の羽が絞りだと思うのですが文献が無く確信はもてません。シャッター速度は1〜1/750で1/30以下の場合はファインダー内のダイオードが点灯します。ちなみに、このカメラは所謂ミラー・シャッターとなっている様で、裏ブタを開けるとシャッター幕は無く、ミラーの後部を眺める事になります。露出はプログラムオンリーで任意の指定は出来ません。バルブが有るだけでも遊べる範囲が広がるのですが残念ですね。
 ペンタックス・オート110には新旧のモデルが存在します、今回手に入れたモデルは旧モデルで巻き上げが2ストロークの他、幾つかの変更点がある様です。実は以前、新モデルを持っていたのですがツーリングに酷使したせいか随分前に故障してそれっきりになってしまいました。確か新モデルはauto110の刻印の下にSUPERの文字が刻まれていたと思います。
 機能が簡略化されている感は否めませんが、110判フィルムのエントリーユーザ向けと言う成分からか、それを使用するカメラの殆どはコンパクトカメラや簡易カメラの域を出ないのに対し、オート110の様な本格的一眼レフカメラは稀であると言えます。

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 実は管理人にとってペンタックス・オート110は、その存在は気になる物の「買う」と言う範疇には有りませんでした。その理由はモノクロ・ネガが無い事です。前述の通り、現在は110判フィルムは2種類のカラー・ネガが販売しているのみなのです。モノクロであればプリント時に色々と遊べる為、それなりに作品作りを前提とした理由をつけて購入の対象にするのですが、管理人にとっても既にカラー写真はデジカメで撮れば良いと言う事になってしまっています。今更、作品趣向で機材を選んでいるなどと言う寝言は嘘八百なのですが、管理人が自宅をボロ・カメラとボロ・レンズの洪水状態にする事を回避し、我が愛妻との軋轢を避ける唯一の方便なのでございます。
 今回、本カメラを手に入れる事が出来たのは、友人が余剰となったカメラを無期限供与してくれたのです。恐らく、現在(2004/2/4)妻と遠距離夫婦にあり、しょぼくれている管理人を察し、つまらない事に金を消費する前に気を使ってくれたのかもしれません。その物件はフラッシュ、ワインダー、レンズ3本だったのですが、長年の押入れ生活が祟ったかフラッシュは不動、ワインダーは時折動作する物の極めて不安定な状態でありましが。レンズは全てカビ達磨、内50mmと24mmはそこそこ綺麗になりましたが、18mmはレンズの内側までカビが侵食しており、その後詳しい友人に相談して復旧図る事が出来ました。幸いボディは巻き上げもシャッターも大丈夫なようです。その後、別の友人からもオート110とレンズ3本を無限供与して頂き、ボディ2台に交換レンズ5本となりました。友人とはありがたいものでございます。110判フィルムは35mmフィルムサイズの約1/2に相当し、其々の焦点距離は約2倍となります。ハーフ判のペンEE3等は中々良いモノクロ・プリントを得る事が出来ますから、ますますカラーネガしか存在しないのは残念ですね。
 今後はフィルムをスキャンして遊べないかと検討中。


(了 2004/2/4)
友人から無期限供与を受けたペンタックス・オート110。
小型のストロボは以前から所有していた物。
右はペンタクスSPと並べてみました。
小さいながらも一人前の一眼レフカメラとしての面構えを持っています。
手前が110判フィルムカートリッジです。
上下に分割したミラーシャッターが見えます。