(この記事は、Trick-taking games Advent Calendar 2015 の11日目の記事として書きました)

 はじめまして。りかちと申します。プエルのトリコという個人サークルにて、トランプのゲームなど作っております。
 この記事では、過去にトリックテイキングゲームを遊んだり作ったりした経験など踏まえつつ、以下の2点について書いてみようと企てております。
1. トリックテイキングゲームのゲームバランス
2. トリックテイキングゲームに乗せるテーマ
 約4000字です。内容、表現、体裁等お見苦しい点もあるかと存じますが、お付き合いのほど、宜しくお願い致します。


1. トリックテイキングゲームのゲームバランス
 ゲームを遊んだり作ったりするときよく議論の俎上に載せられるものの一つに、ゲームバランスというものがあります。ゲームバランスとは勝ちやすさの公平性くらいの意味で使われているようです。たとえば、先手や3番手の有利が見過ごせない程であったり、ゲーム開始時に配られる手札や初期プランテーションの良し悪しがゲームの勝敗に深く係わっていたり、ある戦略や10金建物の勝率がほかの戦略と比べて極めて高かったりするゲームは、ゲームバランスが悪いなんて言われると思います。差があると悪いというのではなく、差が大きいと悪いというイメージです。(ちなみにプエルトリコはゲームバランスが良い素晴らしいゲームですが、トリックテイキングとは関係ないのでここでは説明しません)
 さて、多くのトリックテイキングゲームはゲーム開始時に各プレイヤーにばらばらの手札が配られます。したがって手札の差はあるわけです。まずはトリックテイキングゲームのゲームバランスとして、手札の運について考えてみようと思います。
 いきなりですが、トリックテイキングゲームで強い手札とはどういう手札でしょうか。マストフォローノートランプのトリックテイキングでトリックを取る可能性が高いカードは大きく分けて2種類あります。高ランクのカードと、長いスートです。たとえばコントラクトブリッジの手札評価のポイント計算ではA,K,Q,Jがそれぞれ4,3,2,1点、5枚以上あるスートは5枚目から1点をカウントします。
 高ランクのカードはいうに及ばず、長いスートも結構重要です。たとえば52枚のトランプを13枚ずつ分け合ったとき、手札にある5枚スートは11951分の3718(約31パーセント)の確率で5-3-3-2の分かれになっており、4トリック目と5トリック目の2トリックを勝つことができます。6枚、7枚とカードが増えるとさらにトリック数が増えていくでしょう。長いスートを走ってトリックをがっぽがっぽです!
 しかし、この長いスートというのが曲者です。なにしろ、他のプレイヤーはフォローができないのですから長いスートが走り終わるのを指をくわえて(ディスカードをしながら)見ていることしかできません。この状況を改善するのに、トリックテイキングゲームに導入されたのが切り札でした。
 マストフォローのルールはそのままに、台札よりも強いスートを作ることで、トリックテイキングの景色は大きな変貌を遂げました。何しろ長いスートが走れません。また、へたすればAも負けることがあります。高ランクのカードと長いスートが勝つだけだったトリックテイキングゲームに切り札の要素が加わり、ゲームはよりスリリングで深みのあるものとなりました。めでたしめでたし!
 だがしかし、この切り札が猛毒です。トリックの勝敗について切り札の有無が大きくものを言います。今までは何らかの長いスートを走ったプレイヤーが勝つゲームだったのが、今度は切り札以外が長くてもうまく勝ちにつながらない。今まで以上に手札の運によるところが大きくなってしまいます。
 切り札に関する様々なアレンジがそれぞれのゲームでなされてきました。切り札が使える場面では必ず使わなければならなかったり、スカートのように切り札がどのスートでも切り札に属するカードがあったり、ミットレールヤスのようにゲーム開始時には切り札が決まっていなかったり。ゲームを複雑にして、人類は切り札による手札運と向き合ってきました。
 そしてこの問題を解決するために取り入れられたシステムが、そうです。ビッドです! ビッドを導入することでゲームはもはや手札の運とは別次元のものとなりました。ビッドには大きく分けて2種類があります。すなわち、より厳しい条件を付けて勝つ宣言と、勝ち数の正確な予測です。
 前者の例としてはブリッジが挙げられるでしょう。ブリッジでは手札のポイントがペアで25点程度あればノートランプで9トリック、切り札ありで10トリックが狙えるとされています。さらに33点あれば12トリック、37点で夢の13トリックが可能とされています。そして様々な種類のゲームの中からビッドによって自分たちのペアに最適なゲームの種類を探し、宣言します。自分たちのペアにハイカードが全然なくて、13トリック中2トリックしか取れなくても、その2トリックでオポーネントのスモールスラムを阻止できたら喜びも一入です。たった2トリックなのに!
 後者のビッドはさらに難しく、アクセルとブレーキの感覚が要求されます。見込みトリック数と実際のトリックの勝敗のずれをゲーム中に適宜修正していく必要があり、ただ勝てばいいトリックテイキングとは違った手札のハンドリングが必要になります。また、他のプレイヤーがあえてトリックを取りにいかないことにより、手札のスポットカードがついうっかりトリックを取ってきてしまうのもこの手のゲームの醍醐味です。
 まとめると、トリックテイキングゲームは手札で決まる運ゲーではないということです。さあ、安心してトリックテイキングゲームをしようではありませんか!


2. トリックテイキングゲームに乗せるテーマ
 後半では、主に趣味のゲーム制作の観点から、テーマについて話したいと思います。今2200字くらいですが大丈夫ですか? 大丈夫ですね。続きをご覧ください!
 私が高校生の頃はトリックテイキングゲームと言えばナポレオン、ハーツ、ラウス、カルターシュラークくらいしか知らなかったので、トリックテイキングにテーマが必要どころか、テーマという概念が存在することすら思いいたりませんでした。しかし、大学生になって様々なゲームに触れ、自分でもゲームを考える段になって、テーマというのも重要な要素であると思えるようになりました。カタン島を開拓したり、プランテーションを経営したり、作物を出荷したり、ギルドホールを建てたり……。
 さて、トリックテイキングゲームに合うテーマとは何でしょうか。もちろん、自由な発想でよいところです。王様になって王冠の上に一番立派な生け花を生けたプレイヤーが勝ちでもよいでしょう。両手をばたつかせて空を飛び、滞空時間を競うゲームもできるかもしれません。魔法使いになって豆腐で釘を打つゲームだってきっと作れるはずです。
 トリックテイキングゲームには独特の様式美とも言えるものが備わっています。ゲームはトリックの繰り返しで構成されているので、このトリックにテーマが乗れば、立派なゲームの完成と言っても過言ではないでしょう。
 ではどんなテーマがトリックに合うか。まず思いつくのは、トリックを勝負に見立てることです。繰り返される真剣勝負、闘技場でも個人競技の団体戦でもよいでしょう。より多く勝つことに意味を見出しやすいのでないかと思います。
 また、何らかの宝物を取りあう様子もイメージしやすいかと思います。特にスカートやナポレオンなど、得点札を奪い合うゲームは多く存在します。工夫すればボトルインプのような素晴らしいテーマのゲームもできるでしょう。
 そして、この宝物、取りあうのではなく、送りあうゲームが戦略に幅が出て面白くなるのではないかと考えています。例としては、そうですね。ナポレオンとハーツあたりでしょうか。
 ハーツの場合得点札は全てマイナスです。したがって自分で取るのではなく、誰かに押しつけるものになります。自分でなければ誰がマイナスでもいいかというと、シュートザムーンというルールが得点札の分散という課題をプレイヤーに与えています。また、マイナス100点を目指すゲームの終盤、得点札を勝っている相手に送るためにあえて自分の手札に抱えておくリスク! まさにトリテの醍醐味であるハンドマネジメントを凝縮したゲームであると言えるでしょう。
 一方ナポレオンは、ナポレオン軍と連合軍に分かれてのチーム戦です。ハイカードが得点札となりますが、いつでも自分で得点札を確保できるわけではありません。では自分で取れない得点札を誰に託せば良いか。正体隠匿系のゲームにも通じる推理の要素がゲームを面白くします。
 得点札は多くの場合自分で取るのも難しいです。しかし、自分の持っている得点札を自分で取るための思考はトリックに勝つ考え方の延長であり、せっかくの点数札のルールを活かしきれていないのではないでしょうか。それよりも、この得点札をいかにして意中のあの子に贈り届けるかと考える方がよりチャレンジングで楽しいと思いませんか。
 たとえば自分の獲得した点数と右隣のプレイヤーが獲得した点数を足した数が得点になるというルールだけで、どうやって点札を送るのか考えるのが楽しいゲームができそうです。題して「右隣はわしが育てた」
 抽象的な話が多くなってしまいましたが、強引にまとめるならば、トリックテイキングの次の地平は、勝つことよりも勝たせることであると、私は考えております。


 そろそろ紙幅もつきそうです。トリックテイカーの皆様におかれましてはますますのご発展とトリックテイクを願いつつ、筆をおきたいと思います。
 末筆ながら、プエルのトリコのトリテ(TTPパスカットランクレッシェンドメイクイットウィン)も、ぜひ遊んでやってください。


トップ