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1986年頃製 Tokai SD653BBR


1986年頃に製造されたTokaiのコンポ系ストラト,私は個人的にネオストラトという言い方を好んで使う。

1980年代,ギターのハイファイ化が進みギターテクニックも年々高度なものになり,1970年代のJimmy PageやCarlos Santanaがド素人に聞こえるほどギターテックニックは高度なものになった。いわゆる,ギタリストの体育会系化といわれる現象である。もちろんだが私はかつての偉大なギタリストを貶しているのではない。彼らは謂わば山野を拓いた開拓者で,高性能ギターで高度なテクニックを見せつけるギタリストは前人が拓いた土地に舗装道路を敷いてスーパーカーでかっ跳ばしているようなもの,最初に彼らが拓かなければそこには獣道すらなかったのだ。

それを支えていたのがそれに最適化されたPUとフロイドローズに代表されるロッキングトレモロユニットである。しかし1980年代末にもなるとそのようなプレイスタイルも飽きられ,時代遅れになっていき,ギターの原点回帰とでもいうべきアンプラグド指向が生まれた。これはバイクで云うとヨーロピアンレースレプリカモデルの全盛時からハーレーダビッドソンに代表されるリラックススタイルのアメリカンバイクへの変化と相似する。

このギターが作られた頃には多くのギタリストがもうこのような形態のギターには食傷を起こしたと思う。どの商品もそうだがカスタムメーカーから販売されているうちは垂涎の的になるが,量産メーカーが作り始めると有り難みがなくなって見向きもしなくなる,そんなもんだ。

そのような理由と,さらに同じ量産メーカーの強敵フェルナンデスの影響だと思うが,Tokaiのネオストラトは殆ど売れなかったと思う。オークションなどを見ても玉数が圧倒的に少ない。

この時代のTokaiギターの資料が殆どない。カタログも流通せず,イージーギターズさんから情報を貰うことができてようやく紹介できるまでに至った。それまで機種名すら分からなかったのである。詳しくはこちらのページを参照して頂きたい。

型番接頭のSD+基本型番名+カラー記号+"R"で機種名が決まる

基本型番名は

カバードタイプS-S-Hにシースルー塗装:703(定価70,000円)

カバードタイプS-S-Hにオペイク塗装:653(定価65,000円)

カバードタイプH-Hにオペイク塗装:652(定価65,000円)

オープンタイプS-S-Hにオペイク塗装:603(定価60,000円)

カラー記号は

STB:シースルーブルー STBL:シースルーブラック PW:パウダーホワイト BB:ブラック CR:カーマインレッド

だからこのギターは "SD"+"653"+" BB"+" R"=SD653BBRという型番になるようだ。

写真のギターのトレモロユニットはオリジナルではない。弦固定ボルトが舐めてしまいIbanez製のものに交換されていた。オリジナルではAyers Rocker VというTokaiオリジナル製品が装備されていた。このユニットはファインチューニングに関係したスプリング(これがリーフスプリングではなくなんと小さなコイルスプリング)の耐久性や安定性に問題があり,正直言っていただけない。

ピックアップカバーには"L.WHITE"と印刷されている。このサイトによると当時のTokaiアメリカ代理店の社長だったLawrence White氏に由来するという,しかしPU設計者ではなく代理店の社長の名前を入れた理由は不明,おそらくLawrence White氏自身がこのPUにも深く関係していたのではないだろうか。手間暇かけて手巻きによって作られたことがそのサイトでは説明されている。ハムバッカーはオールドPAFのパーフェクトレプリカということだが,今となってはそのように謳っているPUはたくさんあるので売り文句としては既に力がない。

音は悪くない。すでに殆どのPUがいい音を出すようになった時代なのでこのような平板なコメントしかできないのは残念である。しかしつまりは十分実戦的に使える音を出すPUだということ,ノイズも少なく使いやすい。

ボディーはセンター2pc,完成後暫くは材の組成を外から見ることができないオペイク塗装だが手を抜かれてはいないのは良心的。カタログ上ボディー材はアルダーかアッシュという設定だが,弾いた感じとしてはアルダーだと思う。指板はローズだがハカランダのような美しい縞が出ている。当然この価格ではハカランダということはないだろう。

多くの流行がそうであるように,人の指向は振り子のように指向の変化を繰り返す。またいつか体育会系ギタースタイルが流行る時代の再来があるかもしれない。


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