★ 炭疽菌より恐ろしい天然痘の恐怖!
   〜かつて日本が滅びかけた二度の天然痘の襲来!

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炭そ菌より恐ろしい天然痘の恐怖
★ 天平九年(737)の場合
★ 長徳元年(995)の場合

 アメリカでは、炭疽菌(たんそきん)によるテロにおびえている。平成十三年(2001)十一月二十三日現在、炭疽菌による死者は五人である。

 炭疽菌はそこらの土壌に自然に存在する。牛・馬・ブタなど主に家畜に伝染するが、ヒトに感染することもある。
 炭疽菌の感染によって起こる伝染病を「炭疽」という。
 「炭疽」は炭疽菌が付着した部位によって、それぞれ「肺炭疽」「皮膚炭疽」「腸炭疽」と呼ばれている。
 中でも「肺炭疽」は死亡率八十パーセント以上といわれるほど強力で、アメリカでの死者のすべてがこれである。

 菌が手に入りやすく、ヒトに感染すればきわめて死亡率が高い――
 まさしく、テロリストにとっては格好の細菌兵器である。炭疽菌が「貧者の核兵器」といわれるゆえんである。
 それでも学者たちによれば、まだ炭疽菌は最強の細菌兵器ではないという。学者たちはみな口をそろえて言う。
「最強の細菌兵器は天然痘
(てんねんとう)だ」
 と。

 天然痘は天然痘ウイルスの感染によって起こるきわめてタチの悪い伝染病で、痘瘡(とうそう)とも疱瘡(ほうそう)ともいわれている。古くは「もがさ」とも「わんずかさ」とも呼ばれていた。これにかかると高熱を発し、全身が水疱(すいほう)でただれて死亡することが多い。
 運良く治ったとしても、あとが残ったり、あばたができたり、失明したりする。ちなみに独眼竜として知られる伊達政宗も、幼いときに天然痘にかかったため右目を失明している。

 天然痘は炭疽とちがってヒトからヒトへも伝染する。伝染力がきわめて高いのである。
 炭疽菌では一回の攻撃で一人しか発症させられないのに対し、天然痘ウイルスだと一回の攻撃で多くの人々を発症させることが可能である。
 たとえば、国会議事堂のようなところに天然痘ウイルスがばらまかれでもしたらどのようなことになるか?
 想像しただけでも恐ろしい。
 騒ぎは国会議事堂だけでは収まらないだろう。議員たちが出向いたところ、出向いたところにいた人が出向いたところ、という具合に無限に広がっていくのである。
 政治家も国民もほとんどが天然痘!
 笑いごとではない!
 そんなアンビリーバブルなことが、過去の日本で実際に起きているのである。
 政治家や国民の大半が発症し、わずか数ヶ月のうちに最高権力者を含め多くの政府高官が死んでしまったという不測の事態が、天平九年(737)と長徳元年(995)の二度も起こっているのである。
 余り知られていないが、今回はその二度に渡る悪夢のような現実について紹介したい。

[2001年10月末日執筆]
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参考文献はコチラ

「天平九年の場合」登場人物 

【藤原武智麻呂】ふじわらのむちまろ。左大臣。南家の祖。不比等の長男。
【藤原宇合】ふじわらのうまかい。参議。式家の祖。不比等の三男。
【藤原光明子】ふじわらのこうみょうし。聖武天皇の皇后。橘諸兄らの妹。
【 長屋王 】ながやおう。左大臣。天武天皇の孫。
【橘 諸兄】たちばなのもろえ。参議→左大臣。光明子の異父兄。

「長徳元年の場合」登場人物 

【藤原道隆】ふじわらのみちたか。関白。兼家の長男。伊周・定子の父。
【藤原道兼】ふじわらのみちかね。関白。兼家の三男。尊子の父。
【藤原伊周】ふじわらのこれちか。内大臣。道隆の子。
【一条天皇】いちじょうてんのう。伝66代天皇。円融天皇の子。母は藤原詮子。
【藤原道長】ふじわらのみちなが。内覧。後に摂政。兼家の五男。