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 〜 まさか! 吉野金峰山の老僧の伝説!!

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熊野三山ツーリスト
★ 金峰山の老僧の伝説 

 熊野三山は日本最古の観光会社である。

 本社は以下の三つ。

名称 熊野本宮大社
(くまのほんぐうたいしゃ)
熊野速玉大社
(くまのはやたまたいしゃ)
熊野那智大社
(くまのなちたいしゃ)
旧称 熊野坐(くまのにます)神社 熊野速玉神社 熊野那智神社
所在 和歌山県田辺市 和歌山県新宮市 和歌山県那智勝浦町
祭神 家津御子神(けつみこのかみ)ほか 熊野速玉神ほか 熊野夫須美(ふすび)神ほか
例祭 4/13〜15(神輿渡御神事ほか) 10/15・16(御船祭りほか) 7/14(那智の火祭り)
創立 神代 神代 伝初代神武天皇代
竣工 伝10代崇神(すじん)天皇代 伝12代景行(けいこう)天皇代 伝16代仁徳(にんとく)天皇代

 御覧のように、三社とも創業年代はきわめて古い。
 当初は単なる別個の自然神や地主神を祭る宗教団体であったと思われるが、平安中期に業務提携を結び、観光会社「熊野三山ツーリスト」に発展した。

 商品は、熊野三山を巡るツアーである。
 これにいくつか途中のトッピング
(名所)を加えていく。
 トッピングは多い。
 日本最大の落差を誇る那智の滝
(和歌山県那智勝浦町)、奇跡の空中宗教都市・高野山、修験道(しゅげんどう)のメッカ・金峰山(きんぷせん・きんぶせん。奈良県吉野町)、日本一の桜の名所・吉野山(吉野町)、日本最多雨地帯・大台ヶ原(おおだいがはら。奈良・三重県境)、日本最古級の温泉・白浜(しらはま)温泉(和歌山県白浜町)聖武天皇も絶賛した天下の絶景・和歌浦(わかのうら。和歌山市)などなど。
 これらを加えたり外したりすれば、無数のツアーができていく。

「古今チップス」関連記事
熊野古道[1][2][3]
熊野那智大社
金峰山寺

 コースは様々だが、紀伊(西周り)伊勢(東回り)に大別される。
 主に京都や西国の人々が紀伊路を行き、東国の人が伊勢路を歩いたのである。

 サービスも充実させた。
 人々が通りやすいよう迷わないよう街道を整備し、それに沿って「王子
(おうじ)」という分社を勧請、旅行者が宿泊・休息できるようにした。
 王子の数は鎌倉時代までに百近くになり、「九十九王子」と総称された。
 また、「山伏
(やまぶし。語りべ・案内人)」や「御師(おんし。宿坊主人)」を養成し、目や口の肥えた観光客にも対応、リピーターの増加に努めた。

 次に宣伝である。
 いくら名所があり、サービスが良くても、世間に知られなければ意味がない。
 そこで全国各地に次々と熊野神社
(支店・出張所)を勧請、多数の「熊野聖(くまのひじり。営業社員)」や「熊野比丘尼(くまのびくに。女性営業社員)」を派遣し、熊野のすばらしさを大いに喧伝(けんでん)させたのである。
熊野は昔、伊弉諾尊
(いざなぎのみこと)が伊弉冉尊(いざなみのみこと)を葬った場所なんですよ」
「つまり、この世とあの世との境界なんですよ」
「ですから、いろいろと不思議体験ができるんですよ」
「不治の病でも、参詣することによって治ることもあるんですよ」
「もしダメでも、死後の安穏を願うにはもってこいの場所なんですよ」
 このようにして、老人たちの旅行心をくすぐった。
高野山などは女人禁制なんですが、熊野は女性だって参詣できるんですよ」
「水も空気もきれいなので、汚い都と違って何を食べてもおいしいですよ」
「火祭りは勇壮で迫力がありますよ」
「いい男の裸祭りなんかもあるんですよ」
 こうして、女性たちの旅行心もくすぐった。
「山歩きは、鍛えられますよ」
「まさに男の浪漫ですよ」
「別に女を連れてっても、バチ当たらないんですよ」
「かわいい女の子もゾロゾロ来ますって」
 男性たちの旅行心もくすぐった。

 さらに、ビップな人にも熊野に来てもらった。
 その最初が、延喜七年(907)の宇多法皇の参詣である。
 院政期にはビップの熊野詣は恒例となり、短い生涯に何度も何度もこれでもかこれでもかと訪れる方々も登場する。

主要ビップの熊野詣回数
ビップ名 回数
後白河天皇(法皇) 33回(一説に34回)
後鳥羽天皇(上皇) 28回(一説に29or30回)
鳥羽天皇(法皇)  21回
藤原璋子(待賢門院) 13回
藤原重子(修明門院) 13回
白河天皇(法皇)  9回
藤原殖子(七条院) 5回
藤原得子(美福門院) 4回
後嵯峨天皇(上皇) 3回

 人々はうわさした。
「帝や女院も熊野へ参られたそうな」
「それも何回も何回も行かれているそうな。よっぽどすごい御利益があるに違いない」
「そうだ! 熊野へ行こう!」
「熊野へ行けば、有名人にも会えるぞ!」
 こうして平安末期には貴族も庶民も熊野へ殺到、山深い熊野はごった返して大行列をなし、「アリの熊野詣」と呼ばれるほどになった。

 戦国時代に入ると熊野詣は廃れるが、江戸時代になると観音信仰が流行、西国巡礼一番札所・青岸渡寺(せいがんとじ。那智勝浦町)に近い熊野三山は、その通り道になるため、おこぼれを受けて再び活性化することになった。

 平成十六年(2004)七月、「紀伊山地の霊場と参詣道(和歌山県奈良県三重県)」がユネスコの世界文化遺産に登録された。
 世界遺産としては日本で十二番目、世界文化遺産としては十番目、道としては世界で二番目の登録である。
 これこそ千数百年にもわたる熊野の観光会社魂の賜物であろう。

 というわけで今回は、平安時代の説話集『今昔物語集』より、世界遺産の一角・吉野金峰山(きんぷせん。奈良県吉野郡)の老僧の伝説をお届けしたい。

[2004年7月末日執筆]
参考文献はコチラ

「金峰山の老僧の伝説」主な登場人物 

【老僧S】金峰山寺の次期別当。

【老僧Sの取り巻きたち】

【老僧M】金峰山寺別当。

*          *          *

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