★ ウゲッ!飛鳥時代に汚物呼ばわりされていた少年がいた!
  〜 彼の名は…、彼の名前は、うわぁぁ「屎(くそ)」!!

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人名用漢字追加
1.ああ、クソ
2.ああ、恋愛
3.ああ、無情

 どうやら人名に使用できる漢字が増えそうである。
 平成十六年(2004)六月十一日、法制審議会の人名用漢字部会(部会長・鎌田薫)が、人名に使用できる漢字として下記の五百七十八字を追加する予定であると発表した。

岡誰頁頃腫俺其阪此薩云匂菩韓芭蓋訊腺脇陀膝袖柏腎坐枕庵顎脊卿尻犀笠腔宋椅塞厨幡叩喉撫濡噂斑狙逢鼠叢曾(曽)廻篇鍵狼雀菅貌葛疹股馴斬腿撰潰蛋蘇痕註這梶詣爪覗瓦迦挨筑拶或播貼膿而篠窟隙揃拭咽喋斯宛捉蹴稽喰呆雁淵膳嶋溜烏鞘柴鵜昧蒙尖梁錐鍋柿凄魯喧乞讃杖肋蹟裳劉毘臥癌畠呪蒲吻謎摺歪餅簾洩萎楚妖堵裾臼塵賭楕唾詮麓峯嘩夷貰狐棲鷲崖紐鴨儲鱗盃妬勃淫蔭帖祗頓汲惚苛梗堺溢醍醐吊淀仇醒謂琵隈袴琶嫉蜂菱戚洛幌芥茨鋸姦釜牙蜜駕恰怨埼淋餌櫛叉捧肘悶馳粟埴瓜芯牡怯髭蓬畏剃叱窺阜侶蓑桶糞廿槍寵峨巾鞍榊厭穿俣綻苔妾燕戴辻狗汝蔑筈辿惹輿窪諺兎鞭樋磐勾諏黴冥詫娩晦莫憐樽牟煎禰厩葺箸縞笈玩弄嘗遡垢纂窄襖蔓牢裡庇焚挫娼蕨勿廓溺漕牽藁屑釘弛綴噌函罵荻讐碗杵饗爺肴槌忽昏殆吠畿茸賑榎鄭晒捻汎僅芦栃梯湊贋悉蛙葡蟹仔膏廟迄糊羨疋蕎董曳柵堆駈撒姑蝦姥壬輯遁疏燭堰甥壕歎竿桁螺串杭狽屍按閃煽俄楯劫禿蟻粥迂逗栖瓢蜘挽樫蔽硯狸箔舵鎧挺痩兜蝕鞄套杷薙坦纏圃灼枇灸酎舷掠轟牒鳶椀噛柘箕柑闇巷寓姪閏鷺砥倦櫓托哨灘些鱒耽宕竺傭庚尤蕃凧秤蕩碓痔鋒乎誹萄斡卜錫戊珂蒐遜曝煉擢蛭錆恢賂戟頗籾沫瞥砦薗鍬湛斧萱捲掻跨佃蕪奄鼎脆撞瀕竪訣沓煤牝砧鰯塙沌畢閤釧冨禽祁楢骸諦葦咳妓臆蹄瀧桔雫漣浬埜檎椛珊豹禾湘桧侠哩祢孜樟娃煌絆遙橙萬曖刹檜已凉蕾徠苺凛琥珀萠稟凰禮櫂實麒釉榮槇珈堯圓惺昊逞梛羚晄驍俐頬嚢嘘呑剥掴繋填蝉祷莱蝋鴎倶蒋顛焔箪醤繍

(以上、法務省ホームページより。出力できない漢字は新字で出力)

 この中には「呪」「怨」「癌」「痔」「淫」「禿」「姦」「爺」「歪」など、一見、人名にはふさわしくないような漢字があるが、これらの漢字にも、「不」「非」「封」「討」など、これを打ち消したり、退治したりする意味の漢字を付ければ、かえって強力な逆の意味になり、いい名前になるかも知れない。

 それでも、中にはどうしてこれが入っているのか、腑(ふ)に落ちない漢字がある。
 特に目に付くのは「糞
(ふん・くそ)」であろう。
 これをわざわざ打ち消してみたところで、いったい何の意味があろうか?
 これをわざわざ退治させてみたところで、いったい何の意味があろうか?

 たとえ痔(じ)になっても、人は人間である。
 たとえ爺
(じじい)になっても、人は人間である。
 たとえ禿
(は)げても、人は人間である。
 たとえ癌
(がん)になっても、人は人間である。
 歪
(ゆが)んでいようが、姦(かしま)しかろうが、淫(みだ)らであろうが、呪(のろ)われてようが、人間であることには代わりはない。

 でも、クソとはなんだ!
 クソはしょせん、ウンコではないか!
 いやだ! いやだ! いやだ!
 ウンコだけは絶対にいやだ! そんな名前なら、トイレに捨ててやる! ないほうがマシだっ!
 だいたい、そんな名前を付けられた人間が、この世の中にいるか? 歴史上にもいるもんか! 考えてみてほしい!「ウ」・「ン」・「コ」だよ!!

 でも、いた。
 「大宝二年(702)戸籍」の中に、私はその名を発見してしまった。

 屎。

 私は凝り固まった。
 この漢字は、もしや……。
 念のため、念のため、漢字辞典『漢辞海』で調べてみた。

  【屎】(シ・キ)。
     [語義] くそ。糞便
(ふんべん)

 うわぁ! やっぱりそうだった!
 クソ!
 そんな名前を持った少年が、日本史上に確かに存在したのである!!

 日本史上、その少年の名前が登場するのは、この戸籍のみである。

 クソ。

 つまり歴史は、彼の生涯を「クソ」の一語で片付けてしまっているのである!

 うわあ! なんてことだ!
 彼が何か悪いことでもしたとでもいうのか!
 歴史はいったい何の恨みがあって、彼にそんなむごい仕打ちをするのであろうか! 今現在もし続けているのであろうか!

 クソ! 救わねばならない! 彼を救出しなければならない!
 ただ、ここで彼の生涯を想像して紹介することが、かえって彼に恥の上塗りをさせることになりはしないか?
 いいのだ。
 彼は許してくれるであろう。彼の死後の屈辱なんて、生前に受けた屈辱からみれば、それこそクソでもないはずだ!

 というわけで、今回はどんな歴史家も採り上げることはなかろう、飛鳥時代の無名の九州の少年「屎」の物語である。

*          *          *

 六月二十三日、法制審議会の人名漢字部会は、先の人名用漢字追加案から国民の削除要望の多かった漢字上位九字「糞」「屍」「呪」「癌」「姦」「淫」「怨」「痔」「妾」を削除し、新たに「掬」を追加すると発表した。
 「糞」の削除要望数がダントツに多かったのは、やはり当然であろう。

[2004年6月末日執筆]
参考文献はコチラ

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「屎」登場人物 

【 屎 】くそ。豊前国仲津郡丁里に住む賤民(家人)の少年。

【 婢 売 】ひめ。賤民
(家人)の少女。屎の片思いの相手。

【主人の息子】婢売の想い人。屎の恋敵。

【屎の父】
【屎の母】

【知り合いの奴】牛麻呂の知り合いの奴。占い好き。

【牛麻呂】うしまろ。屎の祖父。

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