恵まれすぎた夢を見ただけ。



現の終わりだと思ったあの事故も、
実は、
夢が終わっただけ。



行きつ戻る航跡。
帰結する回帰線。
現実と夢、幸せと不幸せを数珠繋ぎにして、
過去と未来のつじつまをあわせてゆく。
  


せめて――私達の持っていた、かばんでも服でも何でも良い。
ひとつだけで良いから、


――あの人の元へ、届け。









 夢を、見ているよう。
  
  或いは本当に、夢だろうか。
  水中の白昼夢。消え失せてゆく薄い現実。
  色の濃すぎた夢が、清らかな古い未練を水鏡に映し出した。
  今際の際のお伽噺。

  ――――――あの子は、大丈夫だから。

  末期の夢は、何故か誇らしげに――愛する女性の顔をして、笑ってこの僕に――そう、言い切ったのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――第一章 『輦々歌』




  「海に、なにか忘れものをしている気がするのですよね」 

僅かな欠片雪を波が攫う。それが答え。海だけが凍らない。
間違えてはいけない。海に雪が降らない訳ではない。

ただ海が大きく深く、また涙と同じように塩水だから、雪が雪で居られないだけ。

海の中には、かつて雪だったものが無数に漂っているはずだ。

第二章 『舟幽霊』――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 私が消える――その単語だけを、口にしないで、ほしかった、のに。

  どちらがどちらを倒してしまってもいけない。
  最初からすべて分かっていたけれど。

  十王の裁可に非ざる、原初にして根本の断罪。
  貴き師さえも貫くか。罪過はどこにある。王道と覇道の分水嶺。正義と偽悪の彼者誰時。

  その想いと、この想い。重ね合わせて貫いて。

  ――夜明け前の夜を、ここで終わらせる!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――第三章 『たかが幻』







  大丈夫だよ。――ちゃんと、幸せだから。


誰も悪くない。けれど私が居るとみんなが困る。
だから、私が消えて居なくなれば良い。ほら、それだけで良い。




光魔、スターメイル・シュトローム。
哀しませぬよう連れて行け。
その少女を遠く、高く、哀しみのない空の上まで。


その少女、幻などではないのだから。


第四章 『願い、叶え』――――――――――――――――――――――――――――――――――――











どちらも偽物と言われれば哀しい。
どちらも本物と言われれば哀しい。
どちらが本物の村紗なのか?

答えをくれる人はもう居ないだろう。

平和的に解決してくれて、ありがとう。










2009年冬 コミックマーケット77
「しばらくは反魂。」新刊






東方Project最新作 『東方星蓮船』の舞台で描く、
――少しだけ、前向きな昔の物語。



書名:  鼎 -kanae-
版型  文庫判 168頁
概要  全年齢 小説本
イラスト  唯野影吉(カゲ路
頒布価格  会場 700円(予定)
頒布イベント  コミックマーケット77 二日目(12月30日) 
頒布スペース  東ノ-34b 「穂積名堂」さまのサークルブースにて参加













――なぜなら、白蓮には一つだけ、やり残していたことがある。

村紗の魂を、呪われた海の呪縛から解放することだった。

(本文より)