09年例大祭 「ほりごたつ」新刊 反魂個人誌




その朝、枕元で上がった絶叫に
稗田阿求は叩き起こされた。






布団を胸元まで跳ね飛ばす。
乱れた吐息。思考は、未だ半分睡魔の世界を漂っている。
身の回りを把握しようにも目新しい刺激はなく、そこには
ごくいつも通りの我が部屋と、
ごくごくいつも以上に静かな朝があるばかりだった。


誰ぞに襲われる夢でも見たか?
悪辣な夢の余韻に、踊らされているだけか……?




夢と現実の境を意識が移ろうまま、稗田阿求は布団から身を起こす。
平穏に満ちたその朝を迎える。
決まり切った、いつも通りの朝に深呼吸を一つ。
深い溜息が言霊に置き換わり、静謐の朝はいよいよ清い。


自らの吐いた溜息は、阿求本人の耳にこう聞こえた。

















あきゅっ、あ〜……あきゅう。


























……嗚呼。
嗚呼稗田阿求よ、忘れないでほしい。
連綿と続く人の絆と輪廻の中で、
数多くの縁を幻想郷縁起に刻み留めながら、
歴史を作ってゆくその墨の匂いを必ず誰かが愛してくれると。


稗田阿求よ、貴方は可愛い。
その可愛さがある限り、世界が君を敵に回すことはないだろう。
泣きながら朝の屋敷を飛び出した稗田阿求よ、運命に負けてはいけない。
今こそ心の底から叫ぶが良い。
得体の知れぬ呪い、残酷な定めに翻弄されながらも
それでも君は、叫ぶことを止めてはいけない。


さあ世界に向かって叫ぼう。
あの朝陽を焦がすほどに叫ぶのだ。
強く清らかな想いを風に乗せて、心を込めたその声で


「あきゅっ」と。



















2009年例大祭 「ほりごたつ」新刊 反魂個人誌(短編集)





【新刊】

阿求さんが『あ、あきゅ……』としかしゃべれなくなってしまったようです。

表紙絵:KOTOさま(くーげきのち)



口から出る言葉がすべて「あきゅ」に変わってしまう! 苦境に立たされた阿求さんは、わらにも縋る想いで霊夢を訪ねる。 「あきゅ」と鳴きつかれた霊夢の瞳の色が、その瞬間ハァトマークに変わり……












そして
B-Sideへ