空中聴音機
                       軍隊漫画絵葉書


聴音機
「演習」コーナーに空中聴音器が登場致しました。
一寸、何をするものか、ぱっと見ではわかり難い物ではあります。
簡単に申しますと、ラッパを空に向けて、敵性の飛行機の接近を探知するというものです。
また、空中聴音器にかんしまして資料を探しては見ましたが旨く見つける事が出来ず、まことにすみません。まずは現状で把握できました範囲を紹介したいと存じます。

昭和7年11月近畿大演習防空にて撮影されたものです。
右下に見える人物との大きさと比べてください。如何に大きな物か、お分かりいただけると思います。
聴音器の種類はいくつかある様で、これはその中でも大きいものとなります。また、写真は未入手ですが小型のものもあります。しかし、小型ともうしましてもこの写真で紹介しておりますものよりは小さいと言うだけで、トラックの荷台にかろうじて乗る、といった大きさです。
ちなみに、この写真は昭和天皇が防空演習を視察されたときのものです。右から歩いて来る将校の先頭の人物が昭和天皇です。

ラッパの付け根あたりをクローズアップします。
空へ大きな口を開けているラッパは、根元へ向かってくるくると回って細い管となっています。ラッパで音を聞くという機能からしますと、意外なくらい複雑な配管という印象があります。

こちらは別の空中聴音機です。
前頁のものとちがい、小型です。
恐らく移動に便利にしたものでしょうか。ちょっと分かりにくいかもしれませんが4本で1セット、2名で操作というのが聴音機の基本の様です。また先の絵葉書は、この写真のタイプでしょう。また人員配置もよく似ており、絵を書く際に演習などでの実使用を参考にしたものと想像します。

こちらは戦前の漫画「のらくろ」に登場しました空中聴音器です。
大砲と比較しましても、やはりとても大きな物として描かれています。
この聴音器の機能を改めて記しますと、ラッパの向きを変えながら音を聞き飛行機の方向を探るというものです。
原始的ではありますが、夜間など飛来する飛行機に対し、有効であったと想像します。
こうして方向を割り出せば、あとは対空陣地の探照灯がその方向へ向き機影を照らし、対空火器が呼応して対処するという流れで迎撃が行えます。


さて、この音を聞くという事の有効性につきまして、紹介して参ります。
まず、大型の空中聴音器の探知能力は6キロだそうです。
となりますと、単純計算で富士山の頂上と同じ高さ(約3.7km)で飛ぶ飛行機を4.7kmはなれたところで探知できる事になります。
これを大戦前に主力機であった中島 97式戦闘機 (キ-27)で考えて見ます。これは当時としてはかなり高速の機体で、最高速は最大速度:460km/hでした(こちらに紹介しております)。
もし、この中島 97式戦闘機が、富士山の高さを最大速度で飛来したと仮定しますと、有効内に入ってすぐ探知できたと仮定すれば、探知されてから真上を通過するまでに約36秒の時間が確保できます。この時間を利用し、対空火器へ情報を知らせ、対空火器は迎撃の準備を行えるわけです。
また音響的性能も良好で、飛行機の種類まで聞き分けられたとか。音を聞き分けて味方の飛行機か敵性の飛行機かを探知できれば、より適切な対処の実行が期待できます。
ただ私が把握している範囲ですが、艦船に搭載されている例は未だ見た事が無く、把握している範囲では陸軍のみ、また大戦が始まる頃には、その陸軍からも第一線を退いている様です。
これは想像ですが、飛行機が高速化するにつれ、6キロという探知距離では不十分とされたのでしょう。向けた方向の音しか気づかない(複数台の使用が必要)など、使い勝手にも問題がありそうです。
また、先に富士山の高さを飛ぶ飛行機で算出を試みましたが、これは有効探知距離に入ってすぐに探知できたら、という前提があります。つまり36秒以内に探知できなければ、悠々と頭上を通り過ぎてしまう事になります。

加えまして、絵葉書では偽装して隠してはいますが、やはり目立ちますので、攻撃されやすいかもしれません。さらに、その探知については天候(風、雨)に左右されやすいのでは、とも考えられます。
よって、こんなに大きな聴音器を運用するより、軍事目標と考えられるところからずっと離れたところに普通の監視所を置いて飛行機の飛来を察知するなどのほうが運用として楽であったとも考えています。



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