トレーディングカードゲーム、略してTCGと呼ばれるゲームを専門的に扱っている店というものがある。
 その名は、カードショップ。そのままである。普通におもちゃとかも扱ってたりするが、そこらへんは話の都合上無視してくれ。
 カードショップでは連日連夜、様々な生意気の子供たちが優雅にブレイクタイムを楽しんでいる。
 もちろん嘘だ。私はカードショップに行ったことがないから想像で言ってみた。
 しかし、寂れた店ならともかく、大体の店は結構子供とかが入り浸っているだろうと思う。
 というか、そうじゃないとこの話が進まない。所詮はフィクションなのだし、そういう店が舞台だと考えてくれ。
 というわけで今宵、いやしかし夜ともなれば流石に親御さんが心配するか。最近はかなり頭がイってる親も多いけど、普通の親は子供を心配するのが当たり前だ。だから時間は昼頃ということにしておこう。午後一時ぐらいなら普通なのか? やはり経験が無いからよく分からないな。まぁどうでもいいか、フィクションだし。
 まるで春の陽気と夏の暑さと秋の風と冬の雪が混ざり合ったかのような、という意味の分からない比喩はさておき、ある日の昼頃。
 日溜まりのようにぽんやりした平和に包まれていた店が、突如阿鼻叫喚響き渡る惨劇の場に変化してしまうなんて。
 一体誰が予想できただろうか――




 それはもちろんこの物語の創造主である私だろう、という今後がつまらなくなる冗談は置いといて。
 ここに一人の少年、いや青年、いや男――定義が分からない。大体高校生ぐらいの男性がいた。
 彼の名前はTAIMATSU。もちろん生粋の日本人である。
 いくら最近の親が少々おかしくなってきているとしても、自分の子供をローマ字で名付ける馬鹿はいないはずだと信じたい。
 まぁ、光宙でピカチュウと読ませる名前を我が子に付けた親とかは例外だが。
 話を元に戻そう。なぜ彼の名前はローマ字なのだろうか。それには色々と複雑な事情が絡み合ってほつれて結局ぐちゃぐちゃになって存在しているのだが、端的に言うと名前を考えるのが面倒だったからだ。
 どうせフィクションなのだから、笑って許してくれるだろうといういわゆる楽観的思考でこの名前にした。
 だからもしこのページをTAIMATSUさんが見ていたら、笑って許していただきたいと思う。
 けして晒し者にしようという考えは無いのだ。ちょっとこれを見て「良いネタになる」と思っただけなのだ。私の方がKYだ。
 しかし、ところでTAIMATSUさんはカッコいい。女の子に視線を送るだけで家にお持ち帰ることも可能なんじゃないかと思う。それに性格も良い。信号の手前でお婆ちゃんが困っていたら、手を差し伸べずにはいられないぐらい心優しいお人なのだ、彼は。それを見て女の子もますます彼に惚れていくことだろうと思う。また、株で儲けた金をユニセフに寄付しているという噂もある。未だ高校生だというのに、世界の子供たちを救うことまで考えているのだ。私のようなちっぽけな指示待ち人間には、数十歩下がって見上げないと彼の全貌が掴めないんじゃないかと思う。まさしく格が違う。私の想像だが、恐らく彼は現世に舞い降りた神なのだろう。いや、それぐらい凄い存在なのだ、彼は。
 さて、これだけ言っておけば少々常軌を逸脱した行為を物語中のTAIMATSUが実行しても何とか許してくれると思う。思いたい。信じたい。話を戻そう。ちなみに今後の展開は上のリンクに沿って進む予定だ。
 TAIMATSUが、ここ――つまり、とある平和なカードショップの前――にいるのには理由がある。
 それは数日前、彼がいつものようにカードショップにやってきた時のことだ。楽しく酒を――もとい、カードを片手に友達連中と談笑していたに違いない(と妄想する)彼は、帰宅時刻が来たので家に帰った。
 そしてデッキの調整でもするかな、とかカード整理でもするかな、とかそういう類のことを思ってファイルを見た時、気付いたのだ。
カードが無い、と。
 その時の彼の焦り具合は、間違って核爆弾の発射を許可する書類にサインしてしまったアメリカ大統領と同じぐらいのものだっただろう。
 それぐらい人は焦っちゃうのだ、普通。だから「てへっ、失敗しちゃった☆」とかすぐ言えるやつは本当の馬鹿か、もしくは計算され尽くしたボケなのだ。テレビって怖い。
 無くなったカードは日本円にして、まぁ現実のカードなんて最近まったく見てないからよく分からないが、多分一万円ぐらいだ。
 ペリカに直せば、約十万ペリカ。もちろんTAIMATSUがすんでいる地域は地下世界ではないので、ペリカに直す必要は無い。まぁ、何だ。ちょっとした好奇心からやってしまったんだ。特に深い意味は無い。
 中年親父が痴漢した時の言い訳みたいになってしまったが、それはそれとして、カードの話に戻そう。
 カードが無いことに気付いたTAIMATSUは、ひとまずカードBOXを漁った。もしかしたら自分はカードをファイルの中に入れておらず、カードBOXの中に無造作に放置してしまったのではないかと、そう考えたのだ。
 そして一通り探しても見つからなかったので、デッキのカードを確認した。チェックした。スリーブに間違えて二枚突っ込んでなかったか、という細かい所まで調べた。
 しかし見つからなかった。本当にTAIMATSUさんがここまで調べたのかは分からないが、私がボルメテウス・ホワイト・ドラゴンを盗られた時はこれぐらい探した。ちなみに未だ見つかっていない。
 話が脱線したな、元に戻そう。どれだけ探してもカードが無い。ともなれば、つまり、考えられる最も簡単な結論は――『盗難』。
 まさかカードが一人で勝手にファイルから出ていった、なんて世迷言を信じるよりはかなり現実的な線だと思う。
 いくらTCGが遊びと言っても、少なからず金は絡んでいる。だとすればそれを狙った犯罪が起きる可能性は存在しないわけがない。遊戯王だってマリクを首領としたカード強奪組織があるのだ。DMでカードを盗られても不思議はない。
 というわけで不運にも約一万円相当のカードを奪われたことに気付いたTAIMATSUは、もちろん激昂した。
 怒らない方がおかしいというものだ。少ない小遣いを必死にやりくりした買い集めたカードを、それはそれはいとも簡単に奪われたのだから。
 犯人を探し出して、カードを回収すると共に謝罪を要求する。
 今のTAIMATSUの頭は、それでいっぱいだった。



 というわけで、その後友達連中から情報を聞き出したのかどうかは知らないから皆様の想像力にお任せするとして、突然高価なカードを使い始めたという輩がいることを突きとめたTAIMATSUは、その不埒な輩を捕まえるためにカードショップの前に立っている。
 私としては、最早ここからの展開を全て省略して「結局カードは返してもらえた。はっぴぃえんどだ」で締めても良い気分なのだが、流石にそれでは盛り上がりが欠けに欠けている。
 所詮世の中は起承転結で言うなら転の部分、序破急で言うなら破の部分が重要なのだ。序破急が分からない人はウィキで調べて欲しい、私もそれで知った。
 意味が分からない人のために簡単に言っておくと、大体、日常パートだけやってもギャルゲーはつまらないという意味だ。
 いくら幼馴染が不味い手作り弁当を作っても、曲がり角で転校生とぶつかっても、不良に絡まれた美少女を助けても。
 交通事故にあうだとか、記憶喪失になるだとか、先端恐怖症になるとか、場面が転換する要素が無いと読者は付いて来ないのだ。
 読者を蔑ろにした作家は人気が出ないのは周知の事実だし、私も物語と呼べるのかどうか分からないが作文しているのだから作家なのだ。
 だからここからは皆様お待ちかねのデュエルシーンをお送りしようと思う。
 一応これはDM小説なのだ。だというのにここまででやってきたのは、ただの私の一人語りである。
 流石に私も、これじゃあ駄目だよな、とか期待外れだ死ねって言われたらどうしよう、とか色々心配になってきているのだ。
 しかし、ここまで書いたのだからやめたくはない。ここまで書くのにかかった時計の短針が六十度進むぐらいの時間が台無しになってしまうから。たかだかこの程度の分量を書くのにそれだけの時間をかけるのかよ、というツッコミが幻聴として聞こえてくるが、思うにこれは私の書き方が悪いのだろう。こんな一人称だか二人称だか三人称だか分からない書き方をして、しかも関係無い話ばかり取り上げてればそりゃあ時間もかかるというものだ。
 だからデュエルシーンを書くに当たって、これからはTAIMATSUの一人称視点に移ろうと思う。
 一度このままの口調で書き進めたら関係無い話ばかり上げすぎて全然デュエルが進まなかったのだ。なので一人称にする。
 というわけで、前半はこれで終了する。ほら、言った通りだろう? 前半読まなくても、後半だけで十分だって。
 でも前半から読んでくれた少ない読者の方に、少ないが私から感謝の気持ちを届けよう。
 …………よし、届いたな。何、届いていない? それは君の心が淀んでいるからだ。もっとボランティア活動に積極的に参加して、誰かに奉仕する喜びを感じろ。そしてそんな素晴らしい喜びを教えてくれた私に、心を込めて奉仕するんだ。






……すまない、冗談だ。後半に続く。
ちなみに、TAIMATSUがカードショップに入った所から物語が始まるから、よろしく。