虹の俳句館      虹の俳句を集めます。素晴らしく沢山あります。
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*虹の季語*   俳諧歳時記「新潮社編」(春・夏・秋・冬新年)
春の季語  春の虹 初虹
夏の季語  朝虹 夕虹 虹の帯 虹の梁 虹の橋 白虹 二重虹 片虹 虹晴 虹立つ
秋の季語  秋の虹
冬の季語  冬の虹
   
裾山や 虹吐くあとの夕つつじ松尾芭蕉 「虹吐くあとの」;虹が出たあとの
虹を吐いてひらかんとするぼたんかな与謝蕪村 遺稿
夕虹に日のけば〜し花木槿小林一茶 寛政年間
夕紅葉谷残虹の消かゝる小林一茶 寛政年間
山は虹いまだに湖水は野分哉小林一茶 寛政年間
青苔や膝の上迄春の虹小林一茶
初虹に草も壬の畠哉小林一茶
初虹もわかば盛りやしなの山小林一茶
初虹や左り麦西雪の山小林一茶
昼寝るによしといふ日や虹はじめ小林一茶
夕紅葉 谷残虹の 消えかかる小林一茶(季語 秋)
海づらの虹をけしたる燕かな其角
大瀧や 虹をつらぬく岩燕春秋庵準一「虹をつらぬく」;虹を通り抜ける
忘るなよ虹に蝉鳴山の雪会覚(羽黒山別当代・会覚阿闍梨)
木々の雪渡すや虹の橋柱水田正秀
虹立つや釣してあそぶ鼻の先中村史邦
虹の根に雉啼雨の晴間かな高井几董
かやごしに虹見る朝の涼かな千雀妻 俳諧撰集玉藻集
朝虹やあがる雲雀のちから草山口素堂


高浜虚子
虹立ちて忽(たちま)ち君の在る如し高浜虚子
(「虹の橋かかりたらば渡りて鎌倉に行かんといひし三国の愛子におくる」)
虹消えて忽ち君の無き如し同(同上)
浅間かけて虹の立ちたり君知るや
虹かゝり小諸の町の美しさ
我生の美しき虹皆消えぬ
虹を見て思ひ思ひに美しき
虹消えて小説は尚ほ続きをり
虹の輪の中に走りぬ牧の柵
虹の橋渡り交して相見舞ひ
虹立ちて消えぬ三国に人の病む
虹の橋渡り遊ぶも意のままに同(愛子死去の報に)
虹を見て思ひ出しつゝ消えにけり
虹渡り来と言ひし人虹は消え
人の世の虹物語うすれつゝ
虹立ちて雨逃げて行く広野かな
バス来るや虹の立ちたる湖畔村
今はある虹の彼方に娘と共に
虹の橋架かれば渡り来るといふ
人の世も斯く美しと虹の立つ
我生の美しき虹皆消えぬ
今はある虹の彼方に娘と共に
虹消えて音楽は尚ほ続きをり
虹消えて静かにもとの小村かな
虹立ちし昨日は遠し鰯雲
虹立ちぬ女三人虹五色
愛子の虹消えて十年虹立ちぬ
十年になりぬ三国の虹消えて
小説の虹の空しき如くなり
龍巻に添うて虹立つ室戸岬同(室戸岬句碑)
虹の上に立てば小諸も鎌倉も森田愛子の絶唱


飯田蛇笏
秋の虹ほのくらく樹をはなれけり飯田蛇笏 春蘭
登高や秋虹たちて草木濡れ飯田蛇笏 春蘭
山かけて朝虹ちかく茄子咲けり飯田蛇笏 春蘭
とくはしる水蜘蛛ありて秋の虹飯田蛇笏 春蘭
虹に啼(な)き雲にうつろひ夏ひばり飯田蛇笏 春蘭
虹はえて税関の窓夏たちぬ飯田蛇笏 春蘭
夕虹に蜘蛛のまげたる青すすき飯田蛇笏 春蘭
尺蠖の濡れ桑にゐて虹あかり飯田蛇笏 春蘭
金蠅話呂睦椶鬚垢齠・ヘえぬ飯田蛇笏 春蘭
蘭しげる滝口みえて春の虹飯田蛇笏 春蘭
湿原の茱萸あさる童に虹たちぬ飯田蛇笏 春蘭
山景色荒涼として虹の下飯田蛇笏  椿花集
後山の雲を高みに虹消ゆる飯田蛇笏  椿花集
後山の虹をはるかに母の佇つ飯田蛇笏  椿花集
硯洗うや虹濃き水の豊かなる飯田蛇笏(霊芝)
蚕部屋より妹も眺めぬ秋の虹同  (同)
谷橋に見る秋虹のやがて消ゆ同  (同)
秋風をしばらく仰ぐ草刈女同  (同)
虹たちて白桃の芽の萌えにけり同  (同)
虹消えて夕焼けしたる蔬菜籠同  (同)
虹たつや常山木に顫(ふる)ふ烏(からす)蝶同  (同)
うす虹をかけて暮秋の港かな同  (同)
夕虹に蜘蛛の曲げたる青すゝき飯田蛇笏
墓みちの紫蘇香ばしりて秋の虹飯田蛇笏

角川源義・春樹
二の滝の虹のごとしや蝉の声角川源義 西行の日
夕ざくら虹のごとくに親子雲角川源義 西行の日
薔薇大輪稚ければ神召されしや角川源義 冬の虹
いかに見し日向の灘や冬の虹角川源義
青すすき虹のごと崩えし朝の魔羅角川源義
冬の虹命透けゆくばかりなり角川春樹 いのちの緒
(参考)花あれば西行の日と思ふべし角川源義 西行の日
(参考)年ゆくや天につながるいのちの緒角川春樹 いのちの緒

虹立つや人馬賑ふ空の上萩原朔太郎
虹を囃してさびしく山の子よ荻原井泉水
虹より暮るる釣橋に川瀬たぎり落つ
おとめ等よ虹と飛ぶ毬を捉えよ
岩燕鳴く靄晴れの虹見えて河東碧梧桐
虹のごと山夜明りす旱年
虹立てり病来るまで病まざるなり中村草田男
片虹といふべき虹の久しくも同(長子)
虹しばしば出でたる蝦夷の夏の旅同(長子)
朝の虹ほとり仰げる新樹かな石田波郷(鶴の眼)
虹立つやとりどり熟れしトマト園同(同)
ひとたびの虹のあとより虎が雨阿波野青畝(万両)(虎が雨 陰暦五月二八日に降る雨)
虹の輪や一人二人は石を投げ高野素十(初鴉)
虹自身時間はありと思いけり阿部青鞋
身をそらす虹の/絶巓/処刑台高柳重信
虹高く書閣の乙女これを見る山口懍掘弊禮顱
枯菊に虹が走りぬ蜘蛛の糸松本たかし(弓)
虹のもと童ゆき逢えりその真顔加藤楸邨(寒雷)
虹新し田にてをとめの濡れとほる橋本多佳子(紅糸)
歎きゐて虹濃き刻を逸したり橋本多佳子
ひとに会ふひとは知らずに虹を負ひ橋本多佳子
横山にしぐれの虹は欠けて立つ小林侠子
カルストの遠嶺初冬の虹二重本田末子
峠路の来し方澄める秋の虹後藤秋邑
冬の虹の弧の中に樹を伐りたふす柴田白葉女
春の虹映れりくらき水の上
虹消えて久し野の家灯さず
晩年やあまりに淡き春の虹
虹消えしさびしさ馬は横向きに
秋の虹消えずに暮るる藪穂立ち岡田日郎
冬の虹消え野も川も刻失ふ
一斉に土掘る虹が消えてより西東三鬼(今日)
冬の山虹に踏まれて彫深し同(同)
音を立てて蠅打つ虹を壁の外に同(同)
蟹と居て宙に切れたる虹仰ぐ同(同)
消ゆる時虹青色をのこしけり軽部烏帽子
一双の虹をかけたりはだか山
虹の空鮮かにして冬の夢阿部みどり
梅の虹幾人見しや五郎の忌
釦もうひとつ外しぬ虹の後鎌倉佐弓
虹を呑みほせずに首長竜ほろぶ
こは幸か大秋虹が今し今し及川貞
冬の虹はげしきことを草に見し金田咲子
目つむれば秋の虹見え消えにけり
虹二重涙のやうな長女次女栗林千津
虹飛んで来たるかといふ合歓の花細見綾子
早稲刈りにそばへが通り虹が出し
キャスリン・バトル虹立つやうに唄ひたり
吾が死なば虹を柩の通路とす三好潤子
白虹忌銀杏大樹を燭とせり寺井谷子
虹鱒を見てそれよりは旅の人小泉八重子
溺愛をときにはせむと虹が顕つ清水径子
斜め上以外に虹が出たら呼んでよ池田澄子
口虹つかう気力体力 寒いわ
虹立つと呼ぶ七人の子供欲し中嶋秀子
虹消えて石の仏の大き耳
定型の中に暫く虹たてり中尾寿美子
冬の虹呼ばれしごとく振り返る横山房子
虹二重神も恋愛したまへり津田清子
誰も見ぬ街の冬虹紅勝る北原志満子
槇山の神の遊びの 秋の虹伊丹公子
牛乳買ふと山坂こえぬ虹の橋石橋秀野
春の虹消ぬまでの物思ひかな中村苑子
朝戸出の人人のみに春の虹中村汀女
渡り来る人なき虹のたちにけり飯島晴子
冬虹のいま身に叶ふ淡さかな
虹をゆく男ばかりにたのしまず野澤節子
虹の輪をくぐる白雲童子かな
ある時の虚子に鎌倉山の虹山口青邨 鎌倉
夏雲や虹の下なる安房上総二松庵にて 玉堂 金澤八景/杉田
いくたびも虹を吐いては山眠る高野ムツオ
人寰や虹架かる音響きいる寺井 谷子
指させばたちまち消ゆる冬の虹黛 まどか
噴水の虹は手に取る近さなる岩淵喜代子
冬の虹うちへ夕刊つきささる瀬間 陽子
キャンディを谷に落とせば虹の種塩見 恵介
片虹や首の根ふかくしめりをり佐怒賀正美
久々に母の箪笥に虹が立ち渡辺誠一郎
日本海かけて虹さす尾花より大谷句佛 我は我
秋の虹夕べの地をはなれけり吉武月二郎句集
青巒にそよぎかゝりぬ虹の雨西島麥南 金剛纂
黒鯛つりに虹たつ濤のしづまれる西島麥南 金剛纂
小鰺売虹にそむきて行きにけり五十崎古郷句集
大虹の照り映ゆる輪を鵜がくゞる渡邊水巴 富士
朝の虹立ちかはりたる青嶺かな五十崎古郷句集
虹のあし青田のそこにとらふべく五十崎古郷句集
草刈の笠阿呆かむり虹に立つ西山泊雲 泊雲
一湾の明るき虹に汝を葬る榎本冬一郎 眼光
冬の虹時雨と共に消えにけり高木晴子 晴子句集
虹ふた重つたなき世すぎ子より子へ篠田悌二郎 風雪前
虹久し遠樹一列暮れつゝをり篠田悌二郎 風雪前
畳みゆく双六世界虹と失せ上野泰 春潮
北山に時雨虹立ち街を行く波多野爽波 鋪道の花
子を抱いて虹に立つ人また妊めり波多野爽波 鋪道の花
梅雨の鳩咽喉虹いろに仏菓食む?宮武寒々 朱卓
嫁きしよりもの想ふ姪虹に佇つ宮武寒々 朱卓
虹仰ぐこころはすでに盲ひつつ河原枇杷男 定本烏宙論
虹消えしあとの草木や藤夕碧雲居句集 大谷碧雲居
夕虹のはるかにかゝる樹海かな比叡 野村泊月
行水や虹消え残る東山露月句集 石井露月
春しぐれ虹の松原砂丘越え石原八束 空の渚
あからひく昼の虹寒ゆるまずに下村槐太 天涯
地に下りし虹を見こころさまよへり下村槐太 天涯
時雨虹かたみに懸り檜原越ゆ下村槐太 天涯
平和をたたかう地上に虹の足はげし赤城さかえ句集
虹の下猫の死骸と滑走路三谷昭 獣身
魚くさい街に氷塊虹を噴く三谷昭 獣身
虹の輪をくぐる黒薔薇かざしつつ三谷昭 獣身
虹消えし空白を抜けどこまでも三谷昭 獣身
命終の岩壁飾る虹二重福田蓼汀 秋風挽歌
生きものを見ぬ尾根の池虹映す福田蓼汀 秋風挽歌
虹映り綺羅星映る岳の池福田蓼汀 秋風挽歌
虹まとふ月岳を越え傾きぬ福田蓼汀 秋風挽歌
嶺暮れてきし秋虹は嶺に燃ゆ石原八束 空の渚
疎開苦や村から町へ二重虹香西照雄 素心
野分雲虹の切端さらひゆく百合山羽公 寒雁
川底へ鐶を落して秋の虹百合山羽公 寒雁
虹を見て人生とんぼ返りも出来ず百合山羽公 寒雁
虹をみる吾に百姓紫蘇を摘む百合山羽公 寒雁
朝の虹森の彼方に雉子孵り松村蒼石 雪
きれぎれの虹きれぎれの雲とかな草間時彦 櫻山
冬の虹貧しさは掌をひらくより長谷川双魚 風形
忌みあけの目を大切に冬の虹長谷川双魚 風形
走る子がゐて草そよぐ冬の虹長谷川双魚 風形
白き息稀には虹となるべかり相生垣瓜人 明治草抄
美しき虹なりしかば約忘る相馬遷子 山河
岬端やふりむきざまに冬の虹岸田稚魚 筍流し
僧形の清盛像に虹の出でし宇佐美魚目 天地存問
石小法師顔犇めきて虹あかり岸田稚魚 筍流し
虹を見る目のありやなし石小法師岸田稚魚 筍流し
夕虹の消え石小法師顔のなし岸田稚魚 筍流し
春の虹泣ぐせことはもう泣かず岸田稚魚 筍流し
比良かけて僅かの虹や葦の角飴山實 辛酉小雪
産むならむ湖暗がりの虹鱒は中拓夫 愛鷹
乳房や ああ身をそらす 春の虹富澤赤黄男
あはれこの瓦礫の都 冬の虹富澤赤黄男
あはれこの瓦礫の都 冬の虹富澤赤黄男
密息や山の根に浮く春の虹赤尾兜子
虹消えし空より乳房赤坊に野見山朱鳥
尿前のしぐれて虹を立てにけり阿波野青畝
虹の橋カルストの野をうるほして阿波野青畝
虹立つて青田いよいよ青かつし深川正一郎
虹立ちしことはさいぜん月かかり深見けん二
命終の岩壁飾る虹二重福田蓼汀
円虹の中に吾が影手振れば振る福田蓼汀
野の虹と春田の虹と空に合ふ水原秋桜子
をさなごのひとさしゆびにかかる虹日野草城
朝の虹ひとり仰げる新樹かな石田波郷
夕虹や三年生き得ば神の寵石田波郷
濃く低き虹を冠りぬ幾工場石田波郷
虹消えて土管山なす辺に居たり石田波郷
虹のごと山夜明りす旱年河東碧梧桐
初虹や裏見が瀧に照る朝日井上井月
馳せ来てあな巨(ふと)き汽関車虹隠す川口重美
秋の虹金借りにゆく緒が堅く川口重美
夕虹に妻より解けし二タ日の不和川口重美
母に虹告げる飴玉手に出して川口重美
筆買ふや朝虹の今日佳きことあれ川口重美
靴磨くも磨かすも貧虹久し川口重美
レールまたぐ虹や明日あれ明後日あれ川口重美
神父の竿に虹鱒躍り吾妻笑みぬ 中村草田男
虹に謝す妻よりほかに女知らず中村草田男
咎ある愛ここで振り向く虹・墓標楠本憲吉
杖ついて虹をわたれといひし人京極杞陽
冬の山虹に踏まれて彫深し西東三鬼
国飢えたりわれも立ち見る冬の虹西東三鬼
虹七線わが箴言をこゝに書く高柳重信
虹の上独楽廻りじりりじりり虹が消え高柳重信
身をそらす虹の絶顛処刑台高柳重信
汽車が虹が雲が税吏が見下ろす谷間高柳重信
しぐるるや畝傍は虹をかかげつつ篠原鳳作
一時雨一時雨虹はなやかに篠原鳳作
インカの子虹に向つて石を打つ高野素十
冬の虹貧しさは掌をひらくより長谷川双魚
山を見るたび声が出て冬の虹長谷川双魚
野の虹と春田の虹と空に合ふ水原秋櫻子
赤松も今濃き虹の中に入る中村汀女
朝戸出の人人のみに春の虹中村汀女
秋の虹二川夕浪たてにけり臼田亞浪 定本亜浪句集
牛乳買ふと山坂こえぬ虹の橋石橋秀野
虹二重二重のまぶた妻も持つ有馬朗人 母国
窓開き虹と晩鐘入れにけり有馬朗人 知命
虹の足とは不確に美しき後藤比奈夫 花匂ひ
虹飛んで来たるかといふ合歓の花細見綾子 伎藝天
早稲刈りにそばへが通り虹が出し細見綾子 曼陀羅
奥美濃のなかなか消えぬ春の虹細見綾子 曼陀羅
キヤスリン・バトル虹立つやうに唱ひたり細見綾子 天然の 風以後
夕虹に立ちゐしが長く思はるゝ細見綾子 桃は八重
かかる日の金融に虹かかりけり鈴木六林男 後座
幼年が虹を見ており立ち止り鈴木六林男 悪霊
おのれ恃み水を打ちては虹つくる鈴木六林男 第三突堤
虹へだて旅信に待たんこと多し野沢節子 未明音
まばたいて睫毛に春の虹たたす野沢節子 八朶集以後
虹懸けて男盛りの雲の峰沢木欣一 沖縄吟遊集
虹かけて沖過ぎゆけり荒時雨沢木欣一 二上挽歌
虹の環を以て地上のものかこむ山口誓子 和服
虹を懸け時が到ればまた外す山口誓子 和服
Thou too Brutus!今も冬虹消えやすく加藤秋邨 野哭
畦を違へて虹の根に行けざりし鷹羽狩行 誕生
虹なにかしきりにこぼす海の上鷹羽狩行
時雨虹とは晴れてゆく空のあり稲畑汀子 ホトトギス汀子句 帖
時雨虹色うらがへるとき二重稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
京時雨虹滋賀時雨虹湖畔稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
雪雲にさへ立つ虹のあることを稲畑汀子 ホトトギス汀子句 帖
時雨虹消えて舟音残りけり稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
並木座を出てみる虹のうすれ際能村登四郎 枯野の沖
秋虹のかなたに睦べ吾子ふたり能村登四郎 咀嚼音
咳果てて虹追ふ翼われになし鷲谷七菜子 黄炎
砂丘の虹風紋いづこよりゆるぶ鷲谷七菜子 花寂び
オーロラのうす虹いろや寒の澄み石原八束 高野谿
こぼさずに虹の雨溜め蕗の薹宮津昭彦
音たてて色流れをり虹の幅宮津昭彦
春の虹花選る人を店の中宮津昭彦
苜蓿の雨虹となり還るなり宮津昭彦
野の虹を帰る橋本夢道 無礼なる妻
駈けあがる朱ヶもて虹の全うす中戸川朝人
虹に根があり天竺にアーナンダあり加藤郁乎
虹りゆく朝半宵丁にセザンヌるかな加藤郁乎
右手なくしし人も闇屋や夕の虹田川飛旅子
完き虹花屋と蛇屋隣り合ふ田川飛旅子
春虹の消えぎはに逢ふ柩出し福永耕二
虹全し窓より脚を垂らしけり木下夕爾
人をらぬ噴水ひたにゑがく虹木下夕爾
垣薔薇に夕虹の尾のふれにけり木下夕爾
美しき虹なりしかば約忘る相馬遷子 山河
朝の虹一本足の身を横たふ永田耕一郎 氷紋
秋虹の消えてしばらく柱の木永田耕一郎 雪明
虹消えて向日葵はまだ妻の丈藤田湘子 雲の流域
ことごとく宮殿のもの虹も亦大峯あきら
虹消えし空のどよめき破船群今瀬剛一
古代遺跡の虹のむかうを人歩く今瀬剛一
虹へ進むとはあとずさる如きかな今瀬剛一
虹の根を鯛らつついてゐるならむ今瀬剛一
秋冷の虹まむかいの藪に立つ松村蒼石 「雁」以後
普請場の小僧が虹を見つけけり松村蒼石 「雁」以後
朝の虹森の彼方に雉子孵り松村蒼石 雪
濡れもせず全き虹の前をとぶ渋谷道
虹をもて飾りしことも初時雨山田弘子
吊橋も虹のかけらも覚束な山田弘子
虹の根にあらむ亡父のはんだごて攝津幸彦
虹立ちしことはさいぜん月かかり深見けん二
虹鱒のその水底に旅の影斉藤夏風
産むならむ湖暗がりの虹鱒は中拓夫
虹の盆地生涯半ばガラス截る和田悟朗
大頭ならでは見えじ春の虹和田悟朗
三月や虹のひといろ残す海朝倉和江
冬の虹あなたを好きなひとが好き池田澄子
斜め上以外に虹が出たら呼んでよ池田澄子
虹消えるまで消えるのを待っている池田澄子
ここかしこ冬虹胸の谷眩し栗林千津
時雨虹湖に残して比叡晴るゝ石井とし夫
沼の子等蓮の葉笠に虹仰ぐ石井とし夫
子等帰る虹の立ちたる雨に濡れ石井とし夫
冬虹の明日なき潟に光り合ふ佐川広治
冬虹の一角崩す鬼のこゑ佐川広治
瞽女去つて佐渡に根のある春の虹佐川広治
ドミニカの国に二重の虹立てり佐川広治
をののける雄鶏一羽春の虹原田喬
足音は芭蕉と杜国冬の虹原田喬
春の虹誰にも告げぬうちに消ゆ朝倉和江
虹たちて導尿管を尿走る品川鈴子
春の虹この道ゆかば都あと柿本多映
男草を刈る虹明りする水べの草を安斎櫻[カイ]子
白虹日を貫いて蟷螂起つ石井露月
虹高し八大龍王遠く去りたるなり荻原井泉水
幼きは愛し 大きな虹の中にいる荻原井泉水
虹や水煙の天女はふえをふく荻原井泉水
初虹の下流るゝや根なし水松瀬青々
大空は虹してすてし蜆殻松瀬青々
虹の中河内の蝉もすだくべし松瀬青々
虹鱒を霧の草生に釣りおろす横山白虹
虹は神の弓なり吾等手にとり難く細谷源二
心の旗とするには長し冬の虹細谷源二
けんらんと虹あり吾等は長く生きぬものぞ細谷源二
虹を捕ろうかいやいや食堂で飯でも食おう細谷源二
青巒にそよぎかゝりぬ虹の雨西島麥南
甘茶佛虹は海棠より淡く西島麥南
農婦聲たかし夕虹野を染めて西島麥南
植田澄み飛燕虹よりはるかなる西島麥南
合歓の葉はねむりそめつゝ喜雨の虹西島麥南
虹暮れて灯は田園にひかり濃く西島麥南
甘茶佛虹は海棠より淡く西島麥南
農婦聲たかし夕虹野を染めて西島麥南
植田澄み飛燕虹よりはるかなる西島麥南
合歓の葉はねむりそめつゝ喜雨の虹西島麥南
虹暮れて灯は田園にひかり濃く西島麥南
蛤の虹より生れし夜の蝶か石塚友二
息つめてシャワーを浴びる海の虹中島斌男
虹濃くて苗田のみどりひきしまる内藤吐天
虹の根の太しや土に幸充ちて内藤吐天
虹の環を消すまじと子のおとなしき内藤吐天
別れ途や片虹さらに薄れゆく石川桂郎
病癒ゆる兆か虹の二タ重為し石川桂郎
夕虹に立ちゐしが長く思はるる細見綾子
虹二重(にじふたえ)神も恋愛したまへり津田清子「礼拜」(津田は、二重の虹が虹ゲイ(虹は雄の虹、
ゲイは雌の虹)であるという伝えを知ってこう詠んだと思われる。)
悔ゆることばかり脚より消ゆる虹津田清子
お遍路が一列に行く虹の中渥美清(四国八十八ヶ所18番恩山寺と19番鶴林寺の間にある
寅さん地蔵の俳句碑。「新日本大歳時記」(講談社)所収)
武蔵野へ雪なだれ来し青葉かな平川巴竹
並木座を出て見る虹のうすれ際awano 登四郎

  「御来迎」(円虹(えんこう))
御来迎人々数珠を揉みにけり  野村泡月
円虹の中に吾が影手振れば振る 福田蓼汀
御来迎はるかの嶺にわれの影  武石佐海

(参考 「山の俳句歳時記」岡田日郎 現代教養文庫)