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■第10回 社会主義人民リビア・アラブ国

  「国旗がバグってるわよ」

  「あの…… これで合っています。

 これがリビアの国旗です」

  「マジで!? なんにも書かれてないじゃない!」

  「というわけで、今回はリビアを扱います」

  「リビアの位置は下の地図で確認ください」

 

  「リビアは地中海南岸の国なのね」

  「リビアって社会主義国なんでしょう?」

  「はい、リビア外交を語るためには、現在のリビアの実質的な指導者である

 ムアンマル・アル・カダフィ大佐について説明しなくてはなりません」

  「カダフィー大佐もアカ?」

  「かなり強い社会主義思想の持ち主です。国旗が緑一色なのもイスラムのもとの平等を表わしていますし、

 本人の著書緑の書でも社会全体の平等主義を説いています」

  「国旗まで一色に染めてしまうわけだから、ただのアカではないわね……」

  「さて、まず簡単なリビアの歴史を。

 リビアはしばらくオスマントルコ帝国による支配地域だったのですが、伊土戦争によりイタリアに占領され、

 第二次世界大戦まではイタリアの植民地でした。

 第二次世界大戦後、リビア王国として独立しますが、

 1969年カダフィー大佐はクーデターを決行、王政を廃止しリビアを社会主義国家にします」

  「ずいぶんアッサリ共産主義化したのね。抵抗組織や他国の介入はなかったの?」

  「カダフィー大佐は無血クーデターに成功しています。この時点では他国の介入も特にありません」

  「アンゴラの回では執拗に大国が絡んできたけど…… 意外ね」

  「そうですね。現在も存命の独裁者の中では、クーデターのタイミングや国内の調整などはかなり上手であると思います」

  「でも、リビアってアメリカと仲が悪いんでしょう。悪の枢軸なんて名指しされていたし。なぜそんなことになったの?」

  「1988年に起きたアメリカのパンナム機爆破事件

 様々なテロ行為によりアメリカや国連から経済制裁を受けています」

  「アメリカの旅客機なんて爆破したら、制裁は当然でしょう…… なんでリビアはそんなことをしたのかしら?」

  「1986年アメリカはリビアを空爆しました。アメリカはピンポイント爆撃によるカダフィー大佐の暗殺を狙っていたようです。

 このときカダフィー大佐は難を逃れていますが、代わりにカダフィー大佐の家族が犠牲になりました。パンナム機の爆破はその報復です」

  「アメリカも無茶苦茶やるわね…… それは恨まれるわ」

  「アメリカがリビアを空爆したのは何故? いくらアカの国は潰すべきでも外交を軽視してそんなことをするわけにはいかないでしょうに」

  「1986年4月ベルリンのディスコ爆発事件で米兵に犠牲者が出た際、容疑者がリビアのスパイだったのです。

 アメリカのレーガン大統領はその報復としてリビア空爆を行ったのです」

  「ベルリンのディスコ爆破事件はなんで行われたのかしら……?」

  「それは不明ですが、わざわざベルリンのディスコを爆破して米兵を殺す意味はないです。

 つまり、この事件はリビアが故意にやったものではないと思われます」

  「でもディスコを爆破するなんて…… 悪いことでしょう?」

  「もちろんそうですが、このときの米兵は巻き込まれただけだと考えられます。アメリカの空爆は行き過ぎでしょう」

  「日本共産党もアメリカ叩きをするときはそこを指摘している。世界中の共産主義者も大差ないだろう」

  「この時は、アメリカの過剰なタカ派主義というわけね……」

  「また、国連も動きます。パンナム機爆破事件により、1992年国連安保理は対リビアの経済制裁を行います」

  「国連だって、アメリカの思惑通りなんじゃないかしら?」

  「それはそうですが、アメリカ単独の経済制裁なんて全く効果がありません。

 しかし、世界のほとんどの国が参加している国連で決議される経済制裁というのは大変な影響力があります」

  「リビアに経済制裁は効果あるの?」

  「リビアは石油が産出されるので経済的には豊かな国です。

 その豊かさに対して経済制裁は非常に効果があります」

  「なんで国連の経済制裁は効果があるのかしら……」

  「国連に参加している国が世界中で承認されている国だからです。

 お互いがお互いを認め合っている国同士が議論して、可決した決議に対して、

 もし自分だけその決議に逆らって好き勝手に行動すれば、その国は極めて外交的に不利になります」

  「みんなで決めた議論に参加しておいて、みんなで決めた決議が守れないような国は信用されなくなるということね」

  「現在、国連には世界のほとんどの国が加盟しています。

 ソ連崩壊の影響も大きく、国連で経済制裁を決議されるというのは、かなりの効果があると考えていいでしょう。

 孤立するリビアは核開発を始めました。これもさらにリビアの孤立を深めることになります」

  「核開発なんてしたら、既に核保有国の大国はさらに圧力を強めるわよね」

  「さて、リビアとアメリカの対立は決定的だと思われましたが、1999年から一気に方針を変更します。

 まず、リビアはパンナム機の爆破を認め謝罪してアメリカや国連が要求する容疑者の引渡し、

 さらに遺族への賠償金にも応じます」

  「過去のテロ行為を認めたりしたら、逆に外交的に不利になったりしないのかしら……」

  「賠償金だって、そんな簡単に応じれるものなの?」

  「独裁者カダフィー大佐の英断といえるでしょう。

 世界中には様々なトラブルがありますが、もしそれをすれば自分の立場が危うくなるかもしれないのに、

 自らのテロの責任を認めて賠償に応じることのできる人がどれだけいるでしょうか」

  「そんな人はほとんどいないし、ましてや国家なら皆無ね」

  「確かに難しいわよね……」

  「さらに、核兵器廃棄を表明し、査察も受け入れることにしました。これにより経済制裁は解除され、対米関係も急速に改善します」

  「随分あっさり和解できるものなのね」

  「もちろん完全に和解したわけではありませんし、簡単に和解できるものでもありません。

 しかし、それでも先進国の投資が集まり、経済は一気に好転しました。

 カダフィー大佐自身も外交に積極的です」

  「例えばどんなのがあるのかしら?」

  「北朝鮮の核問題などの説得役を引き受けるなどです。リビアは共産主義の国ですから北朝鮮と繋がりがあります。

 リビアは核の廃棄と欧米諸国への関係改善で経済は一気に好転したことを説得材料にするようですね。

 カダフィ大佐の息子、サイフ・アル・イスラーム・カダフィも積極的に外交に精を出しています。

 日本にも来ていますし、リビアの経済に日本企業の進出を促すため、本人自身がテレビ出演なども行っています」

  「テレビ出演……」

  「日本では僅か一週間の滞在でしたが、リビアのイメージ改善のため奔走しました。

 これと同様のことを各国を回ってやっているのですから、その効果は絶大なものであると考えられます」

  「独裁者外交のあるべき姿ということなのかしら?」

  「外交の重要性は民主国家でも独裁国家でも資本主義でも社会主義でも関係ありません。

 リビアは一度悪化した外交関係を立て直す外交を見せました。

 悪化した関係を改善するというのは大変な外交努力であるといえるでしょう。

 さてリビアと日本の関係はまだまだ始まったばかりです。50%としておきますが、これから関係改善の方向へ進むと思われます」

  「カダフィー大佐が亡くなった後はどうなるかはわからないけどね」

  「ところで、カダフィー大佐は……」















  「実は元大尉です」

  「へぇへぇへぇへぇへぇへぇへぇ……」

  「10へぇ、ぐらいで」

  「軍人の時に大佐になったことはなく、大佐は当時のエジプトのナセル大統領にあやかってつけたといわれるニックネームです」

  「リビアだけにトリビアオチね(苦笑)」

 第10回 終了


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○参考資料

・外務省のホームページ

・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

・世界史講義録


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