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 中国絵画史ノート 宋時代 郭煕と「林泉高致」

郭煕の位置
1.五代北宋山水画の集大成 古代的なものと革新的な要素の統合
 地方様式 李成(平遠 山東省)┐
      范寛(高遠 陝西省)┘ 総合し理想化
2.評価の激変
 神宗朝 新法の改革時に活躍 →徽宗朝 絹の画が雑巾代わりに使われる
3.李郭派(李成・郭煕)と董巨派(董源・巨然)
 中国絵画のメインストリームの一つとなり、後世に大きな影響
4.実作《早春図》と画論『林泉高致』を遺す

[生涯]
1000年前後 河陽温県(河南省)に生まれる
若くして方外に遊ぶ(道教を学ぶ)
神宗朝1067-85年 70才前後中央に登場
御書院芸学→翰林学士院待詔
 学士院は皇帝と中書(内閣)・枢密院(国防省)をつなぐ秘書官の役割
1080年前半 新法の改革が進む宮中の大障壁画群を描く
 中書・門下省及び後省・枢密・学士院は、皆郭煕一人の手によって描かれた。その中で甚だ傑然として観るべき者は、学士院に画いた「春江暁景」であり、最も工みである(葉夢得『石林燕語』)
 玉堂晝掩春日閑 玉堂の晝は掩され春の日は閑か
 中有郭煕画春山 中に郭煕が画く春山あり
 鳴鳩乳燕初睡起
 白波青嶂非人間 ……(蘇軾「郭煕画秋山平遠」)
80才頃没?

[作品]
李成を拡張 李成の画法(淡墨を駆使した平遠山水)+范寛の山(濃墨の高遠山水)を総合
李成の淡墨は夢の如し、夢中の石は雲の如し(米芾)→郭煕の山は雲のようだ
1.古代:
雲氣文=龍=山岳のトリプルイメージ 参照:山水の萌芽から山水の変へ
2.郭煕:
雲=山=龍の古代性を古典に 参照:同時代の楽士画家 翟院深の入道雲の例
3.後世:
宋元明の李郭派の“雲頭皴”“捲雲皴”として形式化

1072年《早春図》 絹本墨画淡彩 158.3x108.1cm 台北故宮博物院
早春図  早春壬子年郭煕筆  →プリント(『ジュディの中国絵画っておもしろい』より)参照
乾隆帝題詩:樹纔發葉溪開凍,樓閣仙居最上層,不借桃花聞點綴,春山早見氣如蒸。
[伝承作品]
樹石平遠図巻》 絹本墨画淡彩 31.3×160.5cm メトロポリタン美術館
 コピー 斜線上にモチーフを配置し余白の多い構成は、北宋末の原本を示唆
《窠石平遠図》 絹本墨画淡彩 121×168cm 北京故宮博物院 コピー
《溪山秋霽図巻》 絹本墨画淡彩 26×206cm フリア美術館 北宋末王詵風
《雪景山水図巻》 絹本墨画 金代任詢跋 謝稚柳郭煕早年説
《幽谷図》 絹本墨画 168×53.6 上海博物館 無款「宣和殿宝」印 コピー
[郭煕派の作品]
《山村図》 絹本墨画淡彩 109.8×54.2 南京大学 蘇24-003
《秋山行旅図》 絹本墨画 141x96.5cm 13-14C郭煕派
秋山行旅図 秋山行旅図   宇宙的なイメージ:カリーナ星雲との比較
  郭煕偽款、北宋徽宗朝「睿思東閣」大印「内府珍秘」「政和」…項元汴「項墨林父祕笈之印」「子京父印」「墨林父」3印…→龐元済(『虚斎名画続録』p14)「虛齋珍賞」「萊臣眼福」「虛齋審定」「寶繢室所藏」4印→Stephen Junkunc,III→1999N.Y.Christie's→王己千 など全10収蔵印

《早春図》と『林泉高致』
1117年頃『林泉高致』 郭思(郭煕の子)編 許光凝序 山水画論の白眉
 1.山水訓 2.画意 3.画訣 4.画題
    郭煕の生前の言葉を息子の郭思がまとめる(郭思の註付き)
 5.画格拾遺(郭煕の作品) 6.画記(郭煕の生前の事迹) 5,6は郭思著

【アンソロジー】 原文『林泉高致』参照
1.山水訓
林泉の心 君子が山水を愛する故
山水は大物 遠くから見るのがよい 大観山水
行くべき望むべき山水は遊ぶべき居るべき山水にしかず 旅行、遠望<遊覧、住居
斉魯(山東省)の士はただ李成を模し
関陜(陝西省)の士はただ范寛を写す
花の絵を学ぶ場合、一株の花を深い穴の中に置いて上からのぞいてみます。そうすると花の立体感がつかめます。
竹の絵を学ぶ場合、一枝の竹をとって、月の夜、白壁に影を写してみます。そうすると竹の真の形がつかめます。
山水の絵を学ぶ場合もこれと変りません。身を実際の山川に入ってその本質をつかみます。
真の山水の川谷は、遠望してその勢をとり、近くからその質を看ます。
真の山水の雲気は四時違います:
春は融冶(なごやか)、夏は蓊鬱(うっそう)、秋は疏薄(うすく)、冬は黯淡(くらく)
刻々と変化する形でなく、雲気の大きな様をつかめば活き活きとしてきます。
真の山水の烟嵐は四時違います:
春山は淡冶として笑っているかのよう,
夏山は蒼翠として滴るよう,
秋山は明浄として妝うよう,
冬山は惨淡として睡っているかのよう。
中国山水画の遠近法 三遠
  定義 人物 人物の大きさ 発展した時代
平遠 近山より遠山を望む 明あり晦あり 冲融また縹緲 冲淡 不大 唐代に流行
高遠 山下より山顛を仰ぐ 清明 勢は突兀 明瞭 不短 五代北宋
范寛の山
深遠 山前より山後を窺う 重晦 重疊 細碎 不長 郭煕の時代
かたわらの平遠は、嶺が重なりジグザグに連なり縹緲と消えていく。その遠さを厭わず描き尽し、広々とした眺めを極める。
中国山水画の比例 三大
山>木>人 木の葉若干=人の頭
雲烟、水の効果

2.画意
“解衣盤礴”(莊子) “詩は無形の画,画は有形の詩”(蘇軾)

3.画訣(がけつ) 画の描き方
画を構成して筆を下ろす前に、必ず天地を決めます。
たとえば一尺半の小幅でも、画面の上にの位置をあけ、下にの位置を留め、中間に意を立てを定めます。
山水を描くには、まず主峰を定めます。近いもの、遠いもの、小いもの、大いものからなる一境は、この主峰を中心に構成します。それは君臣の上下関係に似ています。
林石を描くには、まず宗老という大きな松を定めます。そこから雜木、小樹、女蘿、碎石を配置します。それは君臣小人の関係のようです。

すべて筆を使うこと、逆に筆に使われてはいけません。
すべて墨を用いること、逆に墨に用いられてはいけません。
用墨について:
淡墨を用いるには、六七回重ねると深みをまし、墨色は滋潤になりがさがさした感じがなくなります。
濃墨、焦墨を用い、特にものの輪郭をとります。濃墨、焦墨でなければ松の輪郭や石の角が明瞭にならないためです。
明瞭にした後青墨水を用い、何回も重ねると墨色が明らかになり、あたかも霧露中の中から出てきたような効果が得られます。
淡墨をだんだんとあちこち重ねていくことを斡淡(せんたん)といいます。
鋭筆を横にねかせ引きずりながら描くのを皴擦(しゅんさつ)といいます。
水墨を再三塗るのを(せん)といいます。
水と墨をまとめて混合して一気に塗るのを(さつ)といいます。
筆頭をま直ぐにしておくのを(そつ)といいます。
筆頭を特に圧するのを(たく)といいます。
筆端で打つのを(てん)といい、人物や木の葉にも施します。
筆を引いて描くのを(かく)といい、建物や松針を描く時に施します。

雪の色は濃淡の墨を用い濃淡をつくります。墨の色は均一にならないよう染めます。
雲煙の色は地色を残したまま、境をうねうねと淡墨水で染めます。筆墨の迹が残ってはいけません。
風の色黄土あるいは埃墨(えいぼく 台所の煤)を用いてつくります。
土の色は淡墨と埃墨を用いてつくります。
石の色青黛と墨を用いて浅い深いをつくります。
瀑布は地色を残したまま、周りを焦墨で染めます。

よく熟考して描いていくこと。杜甫の詩に“五日で一水を画き、十日で一石を画く”(題王宰画山水図)とはよく言いえています。


参考書
ジュディ・オング ジュディの中国絵画っておもしろい 二玄社 2000年 2500円
世界大美術全集 東洋編5 五代・北宋・遼・西夏 小学館 1998年
鈴木敬 中国絵画史 上 吉川弘文館 1981年-
劉道醇『聖朝名画評』 北宋絵画の基礎史料
郭若虚『図画見聞志』 張彦遠『歴代名画記』の後を継ぐ中国絵画の正史
青木正児 青木正児全集6 歴代画論 春秋社 1969年 郭煕『林泉高致』訳など
台北故宮博物院等 中国書画複製 二玄社 -1999年
参考サイト
台北故宮博物院(Big5,GB,Japanese,English)
 大觀 北宋書畫 (960-1127)
北京故宮博物院 蔵品検索 数以百万計的珍貴蔵品鑑賞(GB)
シカゴ大学東アジア芸術センター 東アジアの画巻
 中国・韓国・日本の画巻(絵巻)高精細画像プロジェクト



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 中国絵画史ノート 山水画の古典 北宋山水画   2002.5写 

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