新作

戻る



12月10日

風景の一般性

暗い赤に彩られた岩に
据えられた地球儀
転がり墜ちる鞄から
人生の哀愁が飛び散る
幻児の心を持った
白痴の画伯の作ったレリーフは
無数の電脳昆虫に食べ尽くされた
研究所の恐妻家な
事務官の忠誠心もまた
食い散らかされる
文豪は年老いてなお沈黙を保ち
世界の破壊をたくらむ
子供のための祝祭日を慶び
活性化させた飼い犬を食す
それに驚いた大群衆が
欲望を噴出させて
歌声とともに
富籤屋に乱入する





祝祭の教訓と聖歌

器ごと
皿ごと
丸ごと

感情の
襞襞を
喰らう

偽りの
幸せに
騙されるな

記憶ごと
人生ごと
歴史ごと

宇宙の彼方で
再生の舞踊に
転化させよ

幾万の金属が触れあい
星間空間を
甲高い悲鳴がよぎる

黒髪の女は
泥太い声で
聖歌を歌い続ける





12月8日

老人は見た

地方都市の夜景を
宙空より眺める

広い海には
皹割れが無数に入り
海はいまにも極北へ
崩れ落ちそうだ

磔された「ヲ」の字を
責め立てる

全ての記憶を失った
時代としての現在

もののふの心を託した
悲しみの涙として迸る
血液の朱色

城壁を濡らした血液を溜めた
幾万個の壺に籠められた
結晶化された願いを
古い写真のように
色褪せさせてはならない

自らを省みない頂上に立つ乞食は
自らの過去を話すとき
やはり
一片の反省さえしない

頂点から転落した乞食は
死ぬこともできずに苦悶する

もしもし
未来ですか?
と尋ねる少年が
突然明るい殿堂に顕れ
虚実の詰まった花畑で
仮構の美女と抱擁する

白痴どもが
己の利得を
必死で
考えた
あげくに
作る歴史は
到底人類が
望むものでは
ないから
頭が痛む

病としての白痴には気の毒だが
白痴に政治を任せ
権力を握らせてはマズイよ
と虐殺され忘殺されていった
膨大な数の死霊が
訴えかけてくる
その声に満ち満ちた
臨界点としての現在

敵を殺せ?
フザケルナッ!

敵を殺せという奴を殺せ!

殺せという奴を殺せッ!!







寺男がこもった山は
男の児を身籠もる

古い歌が流れる街角で
隈歌の替え歌を奏でながら
児は一人泣く

焼殺された
黒眼鏡の僧侶の屍のみ
児は喰らう

寺院の回廊で繁殖した
最強兎と児は
性交する

人類が開発した文字は
異国後で美食を嗜む

丸刈りにされた虎は
裸体を晒して
壁を破壊し続ける

児は
深夜の幻影の内に
星が輝く図書館の臓腑を
発見した

舟の中で号泣した王は
自身の石像とともに砂中に
沈降する

大いなる赤色に敬礼した
南洋の魚たちは
希望と願いを未来の真紅に託す

子守歌が漂うところに
いま死に逝く児の観る幻は
全世界に伝わっていく

冬の夜に降った初雪に未来の
児の幸福が映し出されている





12月6日-2

いくつかの恋

冷え切った男の凍りついた口の中へ
指先を突っ込み恋の灰燼を
掻き起こそうとする人

男装の令嬢は樹の下で剥かれ
実父に裸体を晒す

詩人としての愛を彩る桜の樹に
少年は付き添う

北欧の谷間を舞台とする
幻想小説に出現する妖精は
茸の少女に謝罪を要求する

人の心に射す夕暮れの
赤い光に照らされた少女は
黒い洞窟の奥で
木の実を束ね続ける
ある日の情景

南の国に旅立つ涼やかな
ギター弾きの少年は
遠い記憶としての物語を
子孫の彼方へ語り続ける功労

聖人を祀る日の団欒を
ひたすら夢見る我らに希望を!

ああ!
アキツガミのアクメ!!






12月6日


甲乙(かんおつ)

興味あるエレベータ案内嬢の行列
黒い不良から抽出した
やはり黒い液体

墓地の鬼火が
竹林の遠くから
漏れてくる

濡れた冬の杯に
熱い酒が注がれる

営みを即興する性の営みを
わざわざ記録に残さんと
筆は起こされた

幼い日々に夢観られた
理想の目標に
厳山の頂に棲まう
一羽の鷲が哭くとき
暗闇に一人たちすくむ
少年が吹く笛の音

生命を携えた
社会内存在としての生物が
存在の証を刻印するため
一度きりの演奏

奏でられる巧みさが
象徴的記号に生命を与え
時空の彼方に解き放つ

我の試みもまた
それを時空に
顕現させんする
担い手により
その真価に対する
世人万人の評価は
大きく左右される

水色の淡い光が
漆黒の宙空に
回廊を造りだす

冬の荒海に生きる
獣の姿が雪の遠くに
消えゆく様を描いたこの詩篇を
愛し思い描くことになる
女性の艶やかな陰唇に捧げたい





お叱り

いつも揺れていました

四十年前の少年について山羊が語る
声をかける親は短く
曹操の死を看取った塀について教える
空いた地所に驚愕した少年は
迎えを待ちながらお叱りを受ける

感嘆の声を上げさせる
という流行の四十年前から山羊は
若い日の化学者は漫画を描きながら哭いている
釜をたくわえた蔵からの文化の土地で
世話する庭の三畳間でお茶をたてながら
ひたすら技を磨く

武人と闘士が刃で競う歴史を記憶を
記憶にもとづき思いつきで語り続ける男
勤皇の青年は夢で
新しい少女を創る少年もまた
叱られる

想い出を語る老人は
脱線に脱線を重ね
時空の遠い遠い昔の
師団の風景が現前に
出現していく

再び転ぶなら
最前起きあがらなければ良い
という現実

病院を嫌う過去の人は
娘に向かって
脚の根元を見せつける

看護士が迎えに上がる
懐かしい鬼籍の人々
すでに幽霊を体験した少年は
再び叱られる

ここを先途と力が入り
墨を流した如くに物凄く
急速に現実界が無上の幻想界を
侵食してゆく

この悪メッ!





死者と復活

海岸沿いの田園から
二筋の光が飛び立つ日に
地底の洞窟棲まう妖怪に
決して騙されることなく
暗い宙空をゆく列車に
同乗した女性と別れるとき
実は自身の内なる
母親であったことに気づく
古ぼけた写真に映った
赤い自動車こそ
闊歩する会社員の胃袋の真上で
いまも生き続けている
失われた愛する者の
下着を未だ探す人に
赫々と燃える闘士達の歌声の
恐るべき生い立ち
すでに明白な事実を
いまから解き証さんとする
TV番組の欺瞞に気づけよ
しかも出した答え全部間違ってるし
廃屋に囲まれた薄汚れた空き地に
若者が群れ集う夕べ
冬の雪原に舞い降りた映像は
遠く未来人類を描き続ける
發弦楽器の音色は
冷たい屍の胸の奥の暗闇に
静かに染み込み
生命の初めの雫となる