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春景
南風にまどろむ童子は
睡蓮の淵に凭れ
春陽が若草の下の
青い大地を蒸らす
遠くで牛が泣く
疾走
景色に触れられて
翡翠の風が
水面に照った光を
胸躍る微粒子に
ヤクの群れが
毛を靡かせ走り
伸びる脚先が
希望をあゆむ
空
鈴が重なって鳴るように
岩山を鐘が横に倒れ
転がり登攀する
色白な瀟洒な少年は
室内から窓を開き
青空に溶ける
澄んだ高原を望む
生景
懐かしい日に
翔けた少女が
春風に踊り
草原を渡る妖精は
熱望を喝采する滑車で
世界線を紡いで
現実に顕現させていく
小川は集い
殷賑の場外の市場は
生活する命の大河が
明るい日光に輝いていく
他星の鳥
机の前で脚を組む
鯨の膨らんだお腹は
歴史の聖人たちを詰め込み
銀で砥がれた隙間の刃
灰色だった空が
大きな風に洗われ
泪色のような
薄い青空に
他星の渡り鳥が
紫色にひとすじ
光り走る
空を
色々な色で彩られた布が
庭の吹き溜まりに停まった
鼓動の音と同期して
遠い崑崙の音がする
どこかから
土埃が
一陣
吹いてきた
疲れた身体で
息を吸いながら
背すじを伸ばして
胸を張る
空の彼方の
真昼の北極星を
睨つける
身体とこころ
傷ついた身体を撫でながら
ゆっくり岩の枯れた沢を這っていく
身体が動くにつれ頭も動き
どんより重く鈍く濁った
瀝青のようなこころも動いていく
歴史の果てのようだった身体が
充分傷ついたとき
身体は充分早く動きはじめ
身も心も滑空していく
□
四角に
白い口が
大きく開き
四角い
白が器に
盛られる品
阿吽は口紅
呑みこまれた四角
白い烏は
白の日の臼に
四角の白い
開かれた口
問に答える
合わさる口唇
出逢いの光
白い城の壁の
平たいレバーが引かれ
魚色の錫の釦が開かれ
約束された出逢いは
かわせみを映す手鏡の
重なった光の扉に押し寄せて
過去からの声
人気のない建物に
青と紫の淡い光が
明滅する螢のように舞う
跳び撥ねる過去の声は
青銅の扉を
ときどき揺すぶる
熔岩
鯒が斜面から
こころの縁の照りを狙って
眼が光って眩しい
熔岩のように力強く
大王の力強い肉体が
大地を蔽い尽くした
デカントラップ
既視
打ちのめされ
斃れ伏した鷲
旋回する羅針盤が
晴天の宙より見守り
聖典は自身の内にあり
静寂の中に聴こえる
既視の声
賑わう解放
黄昏に照らされた
金蝉は尖塔に群れ
光が瀧うつ広場の賑わい
南仙が大門に肯き
真昼の月は朧に浮かび
限られた無限に収束する
それにより
得た
すがすがしい解放
培われる風
甘い牡蠣のミルクは
岩の合間で
虹の真珠の
ジュゴンの時と戯れ
磯を埋め尽くした希望が
成功の確信に
海の垣根が
幸福の富に
培われる風が
疎まれることもなく
豊饒に抱擁された
おおきなシャボン
獣の矢
風の通り道に
雨に濡れた
椿の葉が
雲の広がる
空に光り
歩んでいく
始原の獣は
斗う歴史の列に
いまこそ加わる
過たず
放たれた
矢
サファイヤ
食べ散らかされた
白いケーキが
散らばった
散り散りとなった
散々となった
荊の木漏れ日が
水しぶきに散る
閑散とした海辺の
子蟹の群れに散る
散りばめられたサファイヤ
紫水晶の心
野に嵐が
言葉の森を揺らし
濡れた羽根が
枯れ木を彩る
廊下で明滅する
非常燈
肉が食べられた
炭焼小屋
紫水晶の心
焦げた焦りが
癒された薫りがする