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2003年1月31日
幻影
沙漠に降り立つ階段に
光る霊魂が匂い立つ
仮死した番兵が来歴を朗唱するとき
恋愛の虚実を遠くの猫が告白する
未だ錆びない金属の柱廊は
片目の潰された少女の屍の上に建ち
傷ついた人々は宙を逝くゴンドラに乗る
幻となった古代都市では
今でも闇夜の街灯が煌煌としている
capをとれよ
capをとれよおっさん
手錠(ワッパ)が鈴なりだぜ
いいともいいとも
何だって持ち込んでやる
スパナ?
ナイフ?
ドラッグ?
思想に宗教?
肛門・ヴァギナ・脳髄の縫い目
どこにでも隠せるのさ
使い方はあんた次第
言っとくけど
熱い銃口だけはカンベンしてくれよ
あの時
垂れ幕に迷い子の名が記される
そうあの時
男装した少女が文(ふみ)を運んだあの時
胡弓の音が相対して重なるとき
水面に反射した陽光に
髪飾りが鮮やかにうきでて
逞しい男が餓死した
あの時
2003年1月30日
三景
高原に横たわる道
板塀が朽ちかけている
時間は徐々に
鰐に食べられていく
霧が生む雑音が
草原より攻めてくる
チョコフレークの常識
階段を降りる
子供が不安げにハーブを囓る
部屋に置かれたハープから湖が広がる
ボートが暗い水面をいくうちに
つーか、後ろの人、誰?
少年が氷原で囁く
陽に照らされたブリザードが天高く
岩山を覆った巨大鼠が
電流!
と叫ぶと
少年は人気のない部屋で冷たくなった
二人
声を漏らさんと
小指を噛んでのけぞる
髪が揺れる
細やかな髪の陰影
濡れた音
湿った声
時は重くなる
二人は視線で語る
二人は指で語る
二人は体温で語る
二人は息で語る
二人は混じり溶け合う
混合から融合へ
融合から統合へ
漸近面を突き抜けノヴァへ
部屋は永遠に
闇に閉ざされている
時間と波動は
戻っては進み
進んでは戻る
その振幅の蠕動が
いつ終わるか知っているのは
私ではなく
それが終わった後の二人のみである
性別など関係ない
いまはそれを知る者はいない
部屋のみがそれを待っている
闇のみが二人を感じている
除霊
白い朝を抱きしめる
収穫の学舎に呪いあれ
草の合間の知恵の泉
ナナカマドの実は潰された
仔象のはじめの一歩によって
六階の一室で六時間の攻撃に耐えた後負けた私は
経験と知識を身につけた今では一秒で勝つ
三つの星よ炎につつまれよ
海のあるいは雲のDJよ
君の道が誤りであるのは明白だ
幻の宝石は富士に映える
つららの中の無数の六芒星
遅すぎたのか
待ち人来たらず
男たちは灼熱の炭の上を歩く
強引な祈りよ
真の詩への勧誘を
朝陽はたまらず
腰を揺すり動かし始める
パパヤビーチ
潮騒の中から米軍機が飛びだす
小屋の外で獅子が吼えている
パパヤビーチを招き入れる
怪獣が米を研ぐうちに赤ん坊になる
万巻の書を読んだというがそれは絵本なのでは?
覗き見カメラの暴力
コロラドへのあこがれが空を飛んでいく
波に潜れば必ず入り口がある
森の湿った熱気は乱れ
偽りの詩人を捨て
遠くの遠くの驚愕のヤクザな国を
股ぐらに喜び勇んでハサミこむ
熱帯にハゲはいないぞ!
女中が起こしに来たようだ
意識の裂け目に陽が射し
潮騒の上で獅子の吼える音がする
パパヤビーチ
2003年1月26日
伝説
戦略核師団の基地は
まばゆい花畑の下にある
ああ駄目だ
セックスの最中に
どうしても字幕に目がいってしまう
ミサイル試験で
八千キロ飛んだ
雲の上
草原の上
大河の上
山岳の上
工場の上
動物園の上
恋人たちの上
幾多の街の上
人知を越えた非武装地帯で
カプチーノはいかが?
まだまだ人類には演技が足りない
伝説?
それは法ができてからの話しだ
まずは環を見つけよう
それから体を探そう
目印は群だ
白鳥の王国
すべての「世界」のあらゆる領域と構成要素は
有限個の白鳥に還元しうる
単純な世界が白鳥のみとなって群れ集い舞う
粒子の身ぶるいが頭蓋に染みついているだけのことから
闇深い街角で街灯が輝く
白鳥たちの群れ集い舞う姿を眺めりゃ
作曲だ詩作だというのは本当は必要ないんだよ
白鳥の王国自体が音楽であり詩なのだから
この白鳥の王国に定住している者は
狂人と呼ばれ
この白鳥の王国と自由自在に往還できる者が
真の天才であり
この白鳥の王国を知り それを伝えんと努力しているのが
すべての芸術家であり
この白鳥の王国に一度でも気づいた者は
芸術を志さざるをえなくなる
あれ?
「白鳥の王国」じたい「世界」なんじやないのかな?
ああ
心配ない
いくつかの白鳥に還元され
「白鳥の王国」もまた数匹の白鳥として白鳥の王国の中にいるよ
2003年1月25日
肉感
柔らかい泉はぼくによって囲まれている
純粋な瞳は琥珀色で
石膏の美徳を心から奪う
慈悲深い雲に隠れた月光が
猛り狂いながら見つめている
死をわきに押しのけ
いよいよ
陰影のある面影の素敵な名誉に
湧き出す駿馬をたずさえ
迷彩服から
情熱を残して貞節のみが
永遠に揮発する
2002年10月20日
吟ずる女
袖を噛みながら
吟ずる女は
三味の音が高まるにつれ頬を染め
次第に光を発し
溶けだしたあげく
舞台いっぱいに広がった
光が消えた後
舞台には
着物の柄だけが跡として
残った
航海
波が静まった時
最後の風が
一陣吹き抜けると
大音響とともに
地平線上に
山脈の頂上が
峰として顕れる
雲が次第に高くなり
青空の片鱗が見えたとき
前方にイルカの群が現れる
船員によれば
陽の光は
祝杯の杯全体から射していたという