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2008年1月−2


白月

冬の空
白月笑い
オラトリオ





初天神

天竺へ
吾を通せり
初天神





テディベア

物置で
孫の顔待つ
テディベア





温室効果

年年に
氷り薄れて
南国化





皆持つ

オピオイド
無くても皆持つ
ドーパミン





血球

遠い地で
多い血求める
国土あり











照明が
身体透かして
影がなく





つまみ食い

つまみ食い
した吾刈られる
網目の刃





初春に

大通りを風を切って
初春の羽織が行く

停車場の湯気に
駅弁が秩序だっていた

小指の塩気を肴に
五ん合枡を空ける







姿を見たことがない鼠は
しかし同居している
壁の裏側で巣をつくり
食料庫までの安全経路をメモし
丑三つ時にキキとなき
人が寝付くころ
マイクとアンプを背負い
ガザガザ
ガザゴゾ
ガザガザ
ガザゴゾ
と路地裏パフォーマンスし
戦利品のヤクルトで一杯やりながら
子供たちの祝福された未来に栄光を
と盃を空け
ここだよ
ここにおいでよと
キキとなき求愛する





茶屋

虎の置物のある店先
ハエ型カメラが路地裏探検
三味線が爪弾かれ
井戸底に月が映る

暮れ六つにあすぶ
天下の茶屋




港で

遠出をして
ビルのつきあたりの
埠頭の辺りで
弁当をひろげた

阿部薫のアルトサックスを聴きながら
空飛ぶカモメに
砕いた煎餅を
放り投げた

ドックから
杖を突いた貨物船が進水する
大陸の岩盤のように
どっしりとした巨人たちに助けられ

遠浅の波が
晴れた青空を映して
寄せては引く音を味わい
アンドロマケが戦いの
回廊の蜉蝣に浮かぶ

煙のおいしさを
波間に抛った







岩塊を創り
懐に抱えた
波打ち際の
朝日の反対側に
薄い白の月があり
単軌鉄道のレールが軋む
みやげもの屋は今日も休みで
錆びた電線で
椋鳥が謳う
隠された締込





坂の上で

初霜の日
あちらこちらで苔が明るい
流れの清水で
三ヶ月ぶりに顔を洗った
洗いざらしの手拭いで
顔を掻き回すと
朔風に皮膚がぴりりとし
口を漱いで
神棚と仏壇に詣でてから
ウリヤノフの帝国主義論の続きを読んだ
一町先の隣家のおばあさんが
肉じゃがと薇の煮付けを持ってきてくれた
釜を開けて飯の焦げたところをよそり
KORGに向かい
プリセット音源を適当に選び
しばし即興して
ふと遠くを見ると
山道を
黒眼鏡の借金取りの
梵譚がやってくるのが見てとれた。
情婦の河馬美から提供された
梵譚が男娼としけこむ写真を
念のために箪笥から引っぱり出した
コルトレーンのジャイアントステップスをかけ
せめてものご馳走にと
炭を囲炉裏にたっぷり放り込んだ
五言絶句を捻ろうとして
いつものように何も浮かばず
梵譚に一膳の飯でも準備しようと
土間の台所へ立つ







デンと腰を据えた田楽は
楽しい音楽を田畑に
煮詰めた炭団のドンタク

水行末に風来末と雲行末

寿司の王国が
小僧の神様を怯えさせる
貴族院議員の
お稲荷さま





ジャギー

どぶ板に明るい人影が
聳える三個の
キャメルの北鎌倉に
枕かき乱したキャラメル
脅える涙腺のルイセンコ

ジャギーの横顔





春の始まり近し

時々時の日和に
冬の空は晴れて
陽にセーターは
何だか膨らみ
遠くの火山が身を振るわせた
お市の方さまの寝屋を
望遠鏡で見てみた
魚市場が血管に行き渡る
三千回回転する一秒





かとだ

カダフィとダカフィ
ガタフィッと切れたダッカ
肩フィッ斬れたダマスカス
チョンチョンのビンロウジ
赤く染まったベロを出しておどけて
今と呼ばれる今は
三千年前の昔





凧あげ

竜の児が老いて
飛び道具を置いて
秩父山系に於いて
冶金工場が臭いて
歩く耳たぶ仁王いて
ある失敗に大痛て
寝床で夢を請いて
大脳のWEBを削いで
和声の tension and release を砥いで
春の凍土から顔を出した天花菜をもいで
確かな未来へフロイデ
ここら辺においで
即身仏乗せた木船を漕いで
いってといって
名電の水田に去るE電は
楓の祭殿に帯電する
もたらされた停電の夜に
ついでに来た拝殿の
秀でて脱いで閉店する
ほいでねメーデーに向いて
雷電の冷殿におわす
ロイド眼鏡の猥伝に
おいでおいでする





象龜

通りの反対側から
くれないの象龜が
時代のついたバグパイプに乗り合わせ
エンデのアウラを抱いて
執り行う加持祈祷





次郎吉

倒れたメイ・パンを助けた次郎吉は
雨漏りの壁に寄り添うイパネマの
砂糖作りの銀の匙で
融けた四大新聞をかき回し
六甲山系の湧水を搾り取り
吹き降ろす冬の風を押し戴く





国境で

馬車に揺られて
道の悪い街道をゆく

国境で鎧をつけた老人が
人間である証明をせよと云った

裸になって見せると
それはヒトである証明なのだと云う

人間である証明をせよと再び云う
他の乗客はもう馬車に戻っている

出ない答えをぐっと喉に詰まらせていると
老人が腕ぐみして首をかしげ
しばし考え込んだのち
左手を差し出したので
なけなしの金貨を
老人の左の袂に滑り込ませると
よろしい。これで証明されたというので
いそいで服を着ながら馬車に乗り込んだ





おもちゃ箱

神代の大安にしばし待つ
箆を押し込み
布団を担ぐ
声を挿んで賀正とし
剣を手挟み合唱とす
智慧の地域を見通す
横に滑って耐性菌が思いつく
四つの声が重なり助かる
ミラーが効果を補う
弁当が消していく形にはならない
おもちゃ箱が階段の上からばらまかれる







街で女を買い
互いに注射しあい
黒い拳銃を隠しあい
春にはドニゼッティを歌いあう





法の

カラメル焼きの団栗
昔の法令を絡める
天日干しの楡が死人を
天蓋が一列に行列し
汗の脂と塩で汚れた
ルビヤンカの石の顔
願かけられた万年雪の彫像
象を喰ったような虎は砂岩を駈け
按配を売るピテカントロプスの売店
元気な子供にアンドレ・ブルトンを読む
世界へ潜入したスリーパーとしての鉱石ラジオ
ピンクのダイヤが寝屋に降り注ぎ
白木の三方を押し戴いた侠客が
トリニティの刃先を晒に押し当てる