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2008年12月2日
聖夜の日
小さい鐘が鳴る
百年前のオルゴール
おしこめられた聖夜に
世界中のビルディングが
彗星の上のカフェテリアに
静かに看取られた
オジーヴ
冬の夜
寒風の中
社殿の前で
手紙をしたため
銀色のポストに投函した
その帰り
財布を空っぽにするため
寿司割烹に立ち寄った
腹六分で店を出て
夜空の片隅で
星座がゲンコツするのを
眺めた
イルカと出会う
夕空が暗くなった
ジャンクションのプラットホームで
サヴィル・ロウの背広を着た
イルカと出会った
煙草を吸いながら
いまの景気について教えてもらった
町のネオンの一つに
「ソープ・ドルフィン」
とあるのを眺めたイルカは
「どうも命名がよくないようですな」
と皮肉な笑みで云った
慌てた私は
「でも、グリーン・ドルフィン・ストリートと云う
とても良い曲もあります」
と弁解するように云った
イルカの左眉が心持ち上がった
調子に乗った私は
「イルカと云うフォークの人もいます」
と云うと
イルカの左眉が皮肉な感じで上がった
その場をとりつくろうと
「いるかいないか。それが問題だ
と、シェークスピアも云っています」
と云うと
機嫌が直ったイルカが
「わはは」
と笑った
祭りの日
ひゃらりと
松の小枝に
御囃子が鳴る
若衆と女子高生が
松の根元の後ろで抱擁する
洗練されたセキュリティ
平成の後について
ランタンの灯が消え
裏長屋の糊屋の婆は咳き込む
岡蒸気の笛が聴こえる
冬の日に蹴飛ばされた
盲の按摩は砂を噛む
役場の明るい部屋に
テレガラフはある
肺病の女が
痩せた吾子に乳を与える
通りを賑やかな
堤燈行列が続き
軍靴の音が高まる
光さす
ドレスデンの山奥で
菫が広がる野原
川には古風な水車が架かり
高空に翼を広げた
鳳凰が滑空する
イスラム様式が残る聖堂で
少年たちがコーラスし
何よりステンドグラスに似合っているのが
七声のフーガを奏でる
時代のついたパイプオルガンだ
民宿で
伊勢の街道をはずれた
人通りのない民宿で
長逗留したいと申し出ると
Windows95以前の
日本製ワードプロセッサーを出してくれた
ぽかぽか叩いてみると
案外使い心地がよい
缶ピースを吸いながら
定時制高校での経験をもとに
八十枚の短編を書いた
隣の部屋の
四十年配の素浪人と懇意となり
人の斬り方について
レクチュアをうけた
浪人は親の仇を探して
かれこれ三百年になると云う
棄民票
ここですら
生活が変わっていく怯え
水道の液滴は乾いた
携帯の充電は切れた
住民票は削除され
棄民票に編入される
通りのすべての人から
鼻柱が頬桁が折れるほど
音高く殴り飛ばされる毎日
女との日
運命のしばりつけるを逆恨み
エスエムの女は竹の鞭を持つ
柔らかい杏の実の果樹園
レコンキスタは始まった
塩田のハレの海辺で
昭和の日
丁髷が取られ
大きな葡萄が採られ
ゴジラの尻尾が獲られた
盗撮された
キティのパンティ
夜に
エレベータが軋むような音を立てたので
ライターについた白色ダイオードの灯を頼りに地下に降りると
火がついていないボイラーで麻雀をする音がしていた
シンナーみたいな臭いのする罐を開けると
早朝の横浜の
雑居ビルの白壁に
初老の男女が
スプレーで
落書きしていた
思わず
こらー
と云うと
背後に控えていた小学生たちが
金属バットを手にダッシュしてきた
慌てて蓋を閉め
ボイラーのスイッチをオンにした
金属片を掻きまわすような音がしばししたのち
子宮のようなボイラーの音だけが残った
やれやれ と部屋に戻り
幸福の手紙を十通書き
フロントに投函をお願いした
窓の外の夜景を見ながら
布でくるんだ
デリンジャーを
喉もとに
あてがった
めくるカルマの日
めくるめく
カルメンのおしり
搾り取られたカルメ
釜石の土地のメルクーマ
もう一つの性としてのあれは
仲良き麗しきお釜とお鍋
許されよ ポセイドンよ
ルカの町辺のメンマ
マメ科の久留米
陽電子砲装填完了
夜から
スウィートピーにまみれ
追いやられた目尻から
塩っぽい粒の結晶が落ちる
空に浮かんだアンタレスに
マーボロの煙を吹きつける
午前三時の列車が通り過ぎ
滴り落ちる未練について
年を重ねたヤマカガシは
シュトルムのみずうみの少年に
病み疲れた正統の馬鈴薯
笑うる勇気に欠けた
黒い帽子に隠れたラビは
歌い上げる江差追分に
シェクリーの都会のミームもある
輝かしい
真の歴史の始まりが
繰り返される
UFO
校舎から机を運び出す
校庭に積み上げ
UFOを裏次元から呼ぶ
夏の真昼の
都会の幽霊は
うらめしや
裏は飯屋
なぜ夜に出てこない
わたし、夜は怖いんです
溜まりかけた
桃色の精液は
ロスアラモスの
白亜の砦に満ち満ちて
人々を
情熱振わせ
ペンをとり
それで
紙煙草咥えた空軍兵が
無造作にボタンを押した
花開く大きな桃色パラシュート
興味深げにメモをとる
クレヴァスより這い上がった
頭の大きな異星人
奏鳴
ティッシュの箱にコケた
Dr. コパのコケティッシュ
シュティンガーかついだアフガン兵
鶏鳴 暁を告げる コッカコッコホー
チョンガー溢れる日の出の
ナウシカのくれたチコの実
あーやれさ やーれーさーあーのー
はー ちょんこ ちょんこ
どっしりと腹を割り
人生穿りだす
再びあらわれた
ナシゴレン
庭
亀の鴛鴦夫婦が岩陰で
子孫繁栄につき相談してた
神仙より授かったるリグ・ヴェーダ
赤紫色のビロード咥え踊るピアソラ
池の中央に群がる
蓮の上の蛙たちは
しだれ柳にとびつくを栄誉としている
ブルドーザーが近づいてくる