******************************* 今、礼拝を考える ドラマ、リタジー、共同体 越川弘英著 キリスト新聞社 1680円(税込) *******************************  毎週日曜日の礼拝は、クリスチャンにとって最も大切なときです。そして、クリスチャンであれば、誰もが 「礼拝を考える」ことをしているはずです。しかし、情報の行き来の激しい現代にあっては、礼拝のあり方も 激動の時代を迎えており、何の手がかりもなしに礼拝について考えようとしても、小舟で嵐の海にこぎ出すよ うなことになりかねません。  本書は、欧米の礼拝学の本を積極的に日本に紹介してきた著者による、実際的な礼拝についてのガイドブック です。250頁に満たない小著ですが、キリスト教会2000年の歴史を踏まえつつ、世界の新しい動きにも目配り がされてるので、バランスの取れた、それでいて深みのある内容になっています。  特に、第三部「礼拝の流れに沿って」では、礼拝プログラムの個々の要素(祈り、賛美歌、聖書朗読、説教 など)について、簡潔で的を得た説明がなされています。私としても、そのほとんどが、心からうなずけるも のでした。  礼拝についての本はいろいろ出版されていますが、その中でも本書は、クリスチャンが礼拝を考える手がか りとして最も有益な一冊です。 ******************************* ナザレのイエスは神の子 か? ●キリストを調べたジャーナリストの記録 リー・ストロベル著 峯岸麻子訳 *******************************  一流の学者の書いた本は、学問的価値がどれほどあるにせよ(あるいは学問的価値があればあるほど)、 素人にとっては退屈きわまりないものです。だから、二流のジャーナリストは、学問的な根拠は薄弱でも奇 をてらった三流の学者の学説に飛びつくものです。数年前、日本でも紹介された「イエスのミステリー」の バーバラ・スィーリングやイエス・セミナーなどは、まじめな学者たちから相手にされない人たちがジャー ナリズムに手助けされて、大衆の興味を引いた例です。  しかし、一流のジャーナリストならば、読み手を飽きさせずに、一流の学者の業績を紹介することができ るでしょう。そのテーマが自分の大いに関心のあるものならばなおのことそうです。  リー・ストロベルはシカゴ・トリビューン紙の敏腕記者でしたが、妻が信仰を持ったことを機にキリスト 教についてその真偽を調べ始めました。そこに記者としての経験が生かされています。彼は調査に当たって、 学問的にも人間的にも信頼できる一流の学者14人を選びました。本書は、敏腕ジャーナリストのストロベル が、14人の学者たちにインタビューをした記録です。キリスト教の本質についての鋭い疑義が、誠実かつ 学問的にも堅実な応答によって一つ一つ取り除かれていく様子には感動すら覚えます。 ******************************* Operation World When We Pray God Works 21Century Edition Patrick Johnstone & Jason Mandryk *******************************  本書は800ページにも及ぶ祈りの本です。といっても祈りの解説書や手引書ではありません。ここには 世界の国々の現状と祈りの課題、そして神さまが今まで捧げられた祈りにどう答えてくださったかが記さ れているのです。  この本は、私たちに世界を祈りという視点で見ることを教えてくれます。現代は、世界のあらゆる情報 をさまざまなメディアを通してリアルタイムで手に入れることができる時代です。そして、そのような情 報のほとんどは世俗の政治や経済、文化やエンターテイメントといった視点で提供されます。  しかし、私たちは違った目で世界を見ることが求められます。その国のクリスチャンがどのような境遇 にあるか。その国のクリスチャンの第一の祈りの課題は何か。そして、何よりも神さまのその国に対する 御心は何か。神さまはどのように働いておられるか。本書は私たちがそのような視点で世界をみつめ、そ して祈るためのガイドブックなのです。 ******************************* 第四回日本伝道会議シリーズ4 ともに生きる家族と信仰の継承 平山正美・原喜美・湊晶子 いのちのことば社 840円(税込) *******************************  本書は 2000年 6 月に沖縄で行われた第4回日本伝道会議の報告書です。家族は小さなものですが、 社会の中で最も大切な集団の一つです。沖縄で家族について語られた講演がこのような形にまとめられ たことは、タイムリーなことだと思います。  平山氏は、社会病理学的な視点で日本の家族が家族として機能しなくなっている現状を見つめ、聖書 にある家族機能の回復を模索します。  原氏は80代後半というお年ながら、国際的に活躍しておられる女性です。世界的な視野で家族問題を 見つめながら、氏は大人の責任を指摘します。氏の主張には良い意味での西欧の個人主義があります。 個々人が集団に甘えるのではなく、責任ある主体として確立していることが家族を考える上でも重視さ れています。  湊氏は5代目のクリスチャンですが、氏のお嬢さんも含めて6代に渡る信仰継承の軌跡を辿り、家族の 聖書的な意味を説き明かしていきます。  家族問題は誰にとっても他人事ではあり得ません、家族の中に生きるすべての人に一読をお勧めします。 ******************************* 第四回日本伝道会議シリーズ2 和解の福音と沖縄 倉沢正則/坂野慧吉/国吉守/渡眞利文三/金城重明 いのちのことば社 600円(税別) *******************************  本書は2000年6月に沖縄で行われた「第四回日本伝道会議」の一つの成果として、信徒のために まとめられたブックレットシリーズの2冊目です。  ここには伝道会議の基調講演と沖縄の3人のクリスチャンの証しが載っています。倉沢氏は過去三 回の日本伝道会議の成果を振り返りつつ、今回なぜ「和解の福音」がテーマとして取り上げられたか を簡潔に提示してくれます。坂野氏は三つ(主、沖縄、私たち)のストーリーと三つ(神、教会、世 界)のコミュニティーという切り口で、沖縄という現場で和解を考える意義を説き明かします。国吉 氏と渡眞利氏は沖縄のクリスチャンとして、沖縄の地理、歴史わけても戦争体験、そして福音を概観 し、そこににじみでる和解と平和のメッセージを浮き彫りにしてくれます。沖縄における「集団死」 の問題をあつかう金城氏の論考は、血のにじむような歩みをしてこられた氏が福音によって生かされ たことの証しともなっています。  このシリーズを通して沖縄伝道会議の実が広く分かち合われることを願います。 ******************************* 宗教改革の思想 A.E.マクグラス著 高柳俊一訳 教文館 4200円(税別) *******************************  アリスター・マクグラスは1953年生まれの気鋭の神学者です。本書の初版もそうですが、30代の ときにすでに一流の業績をあげています。彼が扱える神学の分野は非常に広いのですが、本書はその 中心に位置する−つまり彼の専門分野である−宗教改革研究のテキストです。  数多くある宗教改革のテキストの中で、本書を特徴づけるのは、「思想」に焦点を当てていること です。宗教改革研究において社会学的な研究の進歩には目を見張るものがありますが、反面、宗教そ のものについて省みられることが少なくなる弊害がありました。本書は中世のスコラ主義まで遡って 宗教思想を丁寧にとり扱っています。中でもルターの義認論は彼のもっとも得意とする分野であり、 深い神学的洞察が平易なことばで記述されており、福音的信仰の得難い手引きになっています。  もう一つの特徴は、さらに深い研究のための非常に丁寧な資料解説が付されていることです。特に 実際に資料を参照するときに陥りやすい過ちについて行き届いた説明がなされているのは類書にない 特徴です。  「訳者解説」に記されたマクグラスの神学的背景や業績の紹介は、福音主義神学の到達点を示すと いう意味でも有益です。 ******************************* 現代神学小史 改訂新版 C.F.ヴィスロフ著 鍋谷堯爾・勝原忠明訳編 いのちのことば社 1500円(税別) *******************************  現代神学というと学者や牧師の領域で、一般の信徒には関係がないように思われれるかもしれませ ん。しかし、私たちの身近なところでも現代神学の影響は決して小さくありません。  例えば遠藤周作の「イエスの生涯」は、本書にも出てくるブルトマンやボルンカムといった学者の 強い影響を受けています。また、日本では知識人がキリスト教について語るとき、たいていバルトや ティリッヒを通して学んだ知識をもとにしています。私たちも正しいガイドがなければ、知らない間 に周囲に張り巡らされた現代神学の迷路の中で、道に迷う危険があるのです。  本書は著者が1973年に日本の神学校で行った講義をまとめたもので、日本の事情も踏まえて読み やすい小史になっています。著者のヴィスロフ博士はノルウェーの福音的な神学者で、本書でもそれ ぞれの現代神学者について、その業績を評価しつつ福音的な立場に立って的を得た批判を加えていま す。また、著者が批判するときの論点をていねいに見ていけば、福音派のアイデンティティーがどこ にあるかをかいま見ることができるでしょう。 ******************************* 「信徒のための聖霊論」 −神学翻訳論文集− 聖恵授産所 1300円(税別) ******************************* 聖霊 E・H・パルマー 鈴木英昭訳 キリストの御霊 A・J・バンドストラ   上河原立雄訳 聖霊の導き B・B・ウォーフィールド 上河原立雄訳 聖霊の愛  B・B・ウォーフィールド 田中剛二訳  副題に「神学翻訳論文集」とあると、読むのにもつい構えてしまいそうですが、本書の中身は決し て難しいものではありません。  それもそのはずで、本書に納められている4編の文章のうち、パルマーの「聖霊」とバンドストラ の「キリストの御霊」は、アメリカの改革派教会から出た家庭礼拝用のテキスト、そしてウォーフィ ールドの2編「聖霊の導き」と「聖霊の愛」は彼の説教なのです。  初めの2編は、それぞれ31課に分かれていて毎日1課づつ、一月分の聖書日課になっています。一 日の構成や分量は、聖書同盟の「みことばの光」とさほど変わりません。大きく違うのは、「みこと ばの光」が聖書全体を読むということに主眼を置いているのに対して、「聖霊」という神学的なテー マを一月かけて聖書からじっくり学ぶ構成になっていることです。もちろん、この2編を聖書日課と してではなく聖霊についての入門書として読むこともできます。翻訳者や出版社の意図は、むしろそ ちらにあるようです。内容的には、パルマーのものは神学的な枠組みがよりはっきりしており、バン ドストラのものはより信仰生活に即したものである、と言うことができるでしょう。  ウォーフィールドの説教は、キリスト者の生活に関わり深いテーマを、確かな聖書の読みと神学を もって熱っぽく語ったものです。 ******************************* 共同体−ゆるしと祭りの場 ジャン・バニエ著 伊従信子訳 女子パウロ会 2000円(税別) *******************************  ジャン・バニエ師は障害者と共に生きるラルシュ共同体(箱船の意。本書ではアルシュ)の指導者で す。彼が「共同体」というとき、それはまずラルシュを指していますが、本書を読み進めるうちに、ラ ルシュがいくつかの点で教会と似通っていることに気づかされます。それは、主よって召された人たち の集まりであり、弱さを持った者たちの集まりであり、それゆえに、ただ恵みによって存続している共 同体だということです。障害者のいるラルシュでは、これらのことが、いつもはっきりと自覚されてい ます。そして、そこから語られる共同体についての言葉は、罪人の集まりであるが故の教会の弱さと主 の民であるが故の教会の強さを私たちの鈍い心にもはっきりと分からせてくれます。  さて、本書では副題にある二つの言葉「ゆるし」「祭り」が、共同体を考える上でのキーワードに なっています。主に赦されたとはいえ罪人の集まりである共同体=教会の歩みは、互いに赦し合うこと がなければ成り立ちません。そして赦された者同士であっても、互いに赦し合うことは一朝一夕にでき ることではありません。ですから、赦せない人がいるという緊張を受け止めつつ、教会の土台と目的を 見つめることが大切になります。私たちは「祭り」(クリスマス、イースター、ペンテコステ、主の 日、それに愛餐も教会の祭りと言って良いでしょう)において、喜びのうちに教会の土台と目的を覚 え、緊張を乗り越える力を頂くのです。 ******************************* 今求められる牧師と信徒のあり方 ジョン・ストット著 石黒則年訳   いのちのことば社  1300円(税別) *******************************  ジョン・ストット師は、福音的な立場に立つイギリス国教会の指導者の一人です。この本のテーマ は教会論ですが、教会論と言っても(たとえば監督制か会衆制か、というような)特定の立場に固執し て、自分の立場を主張しているのではありません。ストット師は、聖書的かつ実際的な切り口で私たち に「今、教会があるべき姿」を示してくれます。  英語と翻訳のタイトルを比べることで、本書の内容を要約することができるでしょう。つまり「今求 められ」ているのは「牧師と信徒」が ONE PEOPLE(一つの民)であるという正しい理解なのです。  教会の動きの中で、信徒が受け身でいるのではなく、主に召された民として積極的に仕えるようにな ること。そのために信徒が整えられる必要があること。そのために自然で豊かな交わりが求められてい ること。ストット師は、それを「集まり」「奉仕」「証し」「交わり」という四つの視点から、わかり やすく論じています。 ******************************* 小さいことはすばらしい スモール・グループ聖書研究の祝福 ハワード・スナイダー [著] 後藤敏夫+大島久美 [共訳] CS成長センター 291円(税別) *******************************  私たちの教会でも木曜会が3つのスモール・グループ(こう呼ぶことに決めたわけではありません が)に分かれてもたれるようになりました。スモール・グループにはいろいろな持ち方があるし、そ れに応じて呼び方も「家の教会」「小グループ」「セル・グループ」などいろいろあります。  私たちの教会のグループがどのように形作られていくかはまだまだ未知数ですが、この交わりを大 切に育てて欲しいと願っています。  さて、本書はスモール・グループについてのマニュアルやガイド・ブックの類ではありません。し かし、著者は福音派の教会の中でスモール・グループにどんな利点と可能性があるかを記しています ので、私たちがこれから向くべき方向を大きく指し示してくれます。スモール・グループという私た ちにとっては新しい皮袋の中で道に迷わないために、一読をお勧めします。 ******************************* 「牧会者の神学」 −祈り・聖書理解・霊的導き− E.H.ピーターソン 著 日本基督教団出版局 3800円(税別) *******************************  タイトルから読み取れるように、本書はまず牧会者のために書かれた本です。副題の「祈り・聖書理 解・霊的導き」は、牧会における「三つの基本的な行為」を表わしています。著者は牧会を三角形に例 え、「説教・教育・事務的働き」を三つの線に、「祈り・聖書理解・霊的導き」を三つの角に例えま す。そして、現代の牧師にとってこの「(三つの)角度を調整する(本書の原題)」ことこそ急を要す る課題であると指摘するのです。  実際、牧師同士の会話や信徒が牧師について話すときに、「三つの線」が話題になることはあっても 「三つの角」が話題になることはあまりありません。しかし角度を調整しないで置かれた三つの線は三 角形にならないのです。  角度を調整するために著者が提示する方法は新鮮です。例えば著者は、ゆっくりと祈ることを勧め、 「祈りと遊び」は相等しい行為であると言い、安息日遵守についての「大胆不敵な呑気さ」について語 ります。著者はまた、声に出して読まれたことばを聞くことの大切さ、勉強ではない学習の必要性を指 摘します。  実をいうと、これらはキリスト教の歴史の中で重んじられてきたけれども、現代人が、いつのまにか 置き去りにしたり、意味をすり替えたりして、使い物にならなくしてしまったものなのです。忘れられ た大切なものをあざやかによみがえらせてくれる本書は、牧会者だけでなく現代に生きる全てのクリス チャンに有益な、霊性についてのテキストです。 ******************************* 安息日と礼拝 礼拝が礼拝であるために 鞭木由行著 いのちのことば社  1890円(税込) *******************************  より良い礼拝を守りたいという願いは、全ての牧師の願いでしょう(全てのクリスチャンのと言え ないのは悲しい現実ですが)。本書は、牧師として生田丘の上キリスト教会でユニークな礼拝刷新に 取り組んでこられた著者が、教会の方々と分かち合ってきた説教や文書がもとになっています。  第1章の「安息日と礼拝」は、優れた旧約学者でもある著者が、律法と福音の関係から「安息」に ついて論じており、本書の要でもあります。また、3章で「パン裂き(聖餐)」について論じられた 箇所と、5章「礼拝における子どもの位置」は、現代の礼拝におけるアキレス腱でもある問題を聖書 的かつ具体的に論じた好論です。  礼拝について書かれた本の中には、歴史や伝統や体験から論じたものが多いのですが、著者は聖書 そのものから礼拝の本質について論じ、礼拝のあるべき方向を差し示します。そのような著者の姿勢 は、堅実な聖書信仰に立つことで、礼拝学という分野でも、実際的で豊かな収穫を得ることができる ということを証ししています。