******************************* あの説教、いつ終わるの? 子どもを礼拝に参加させるためのヒント ロビー・キャッスルマン著 広橋麻子訳 CS成長センター 1300円+税 *******************************  牧師の私としては、あまりに露骨なタイトルなので読むのを敬遠していたのですが、読んでみると、 これがなかなかよい本でした。  実際のところ礼拝は、子どもにとっては静かにさせようとする大人たちからの解放を待ち望む忍耐の 時であり、子どもを持つ親にとっては静寂を獲得するための闘争の場になりがちです。しかし、そもそ も礼拝とは善男善女が静かにお話を聞き、敬虔に祈るための場ではないのですから、目的から外れたと ころでお互いの体力や精神力を消耗するのは空しいことです。大切なことは私たちが心から神をあがめ、 神を喜ぶことであり、そのことは子どもにとっても同じです。  本書には、著者が礼拝の意義と喜びを子どもたちと共有できるようになるまでの体験が記されています。 語り口は、説教調でなく、よかったこと悪かったことを読者と一緒に分かち合おうとする姿勢で貫かれて います。ここにはすぐにも試してみることができる具体的なヒントや問いかけがたくさんあります。  子育て中の両親だけでなく、礼拝をいささか退屈に感じ始めている方にもお薦めです。 ******************************* 母と子の読書教室 子どもにこころの密を グラディス・ハント著 すぐ書房 971円 *******************************  この本は、子どもと一緒に良い本を読むことがこんなにも豊かで楽しいものか、ということに目を開 かせてくれます。どんな良い本も、ただ買って与えるだけでは子どもの心に届きません。そこには、お 母さん、お父さんでなければできない大切な役割があります。本を手にとり、声に出して読み、一緒に 時間を過ごすことです。「ある人間を知ろうとするなら、お互いに考えを分かち合いながら、一緒に成 長していく努力をしなければなりません。(P.68)」というハントさんの言葉には、箴言のような響きが あります。勉強は学校で教えてくれますが、本当の教育(共育)がなされる第一の場所は、家庭なので す。親が子どもと過ごす豊かな時間を取り戻してほしいと願います。  また、ハントさんは「一度よい児童文学書の楽しさを知ると、人は以後、読書という無限の宝庫を開 く鍵を手にすることができます。(P.30)」とも言っています。  私自身は、この本の中で大好きな絵本(センダックやポターのもの)やファンタジー(マクドナル ド、C.S.ルイス、トールキンのもの)が紹介されるたびに、心が躍りました。今は、家族みんなで、そ の思いを共有できるように時間を使いたいと思っています。巻末に子どもの良書のリスト付き。 ******************************* 「絵本・ことばのよろこび」 松居 直著 日本基督教団出版局 1456円(税別) *******************************  本書は、すぐれた児童書の出版元として定評のある福音館書店で編集者・社長・会長を努めて来られ た松居直氏が、日本基督教団の月刊誌「信徒の友」に3年にわたって連載してきた文章をまとめたもの です。  編集者として良い本と出会ったときの喜び、世界中の優れた作家、画家との触れ合い(マリー・ホー ル・エッツの小伝は感動的です)、さらには読者との対話。そして、豊かな交友関係を通して投げかけ られる様々な問題を、ひとつひとつ真摯に受けとめつつ、著者の視線はアジアにおける和解と共存へ、 さらには世界へと向けられていきます。   著者は「わたしは四十年間ほど絵本をつくり続けて来ましたが、『役に立つ、ためになる絵本』はつ くってこなかったつもりです。たとえそれが知識の本、科学絵本であっても、…物語の絵本と全く同じ に。『おもしろく、楽しい』から出版しただけです」と言います。  思うに、児童書をつくるという作業は、著者にとって、子どもたちが現実の世界と真実に出会うため の道備えなのではないでしょうか。もちろんそれは「役に立つ、ためになる」といった浅薄な実利主義 ではありません。それは「世界」と出会う「おもしろさ」であり、人と出会う「喜び」なのでしょう。  このように、ことばの大切さを知り、そこから喜びを汲みあげることのできる大人がいてこそ、子ど もたちも豊かなことばの世界に触れ、やがては現実の世界に真実に向き合うことができるようになるの だと思います。 ******************************* こころを育てる子どもの本100 + a 中村順子著 いのちのことば社 998円(税込) *******************************  本屋さんの児童書コーナーに行くと、ハデな色使いのカッコイイ本、カワイイ本が所狭しと並んでい ます。親が何の備えもないままで子どもを連れていくと、子どもと本との出会いは、つい安易なものに 流れてしまいがちです。しかし、幼いときの良い本との幸いな出会いは、人生に大きな意味を持ちま す。  中村さんはクリスチャンの児童図書館員です。石井桃子さんや中川李枝子さんが関わっておられる東 京子ども図書館に10年も務めておられたと言うことで、なるほど子どもを見る目と子どもの本を見る目 とは確かです(私が言うのも何ですが!)。ぜひ、この本をポケットに入れて(サイズもコンパクトで す)、こころを育てる本を見つけに本屋さんに出かけてみてください。  この本は、良書のリストが中心ですが、さらに深く学んでみたいという方には、以前この欄で紹介し た「母と子の読書教室」(グラディス・ハント著、すぐ書房)を心からお勧めします。 ******************************* 父から子どもたちへ 29 の手紙 ダニエル・テイラー著 中台孝雄訳 CS成長センター 1900円(税別) *******************************  「おもしろくてためになる」というのは、講談社の絵本のキャッチフレーズですが(かなり古い)、 この本もかなりおもしろい(アメリカでしか通用しないユーモアも随所にちりばめられていて日本の読 者の失笑を誘います)、それにためになります(対象年齢は10代から60代。子どもが読んでも、親が 読んでもOK)。  中身は、4人の子どもたちからの質問に、父親であるテイラーさんが手紙で答えるというものです。 質問は、「どうしてみんな死ぬの。死んだらどうなるの」といった人類永遠の課題から「非常事態だ。 パパ。ぼくはみんなの前で大失敗をしでかした。二度とみんなに顔を合わせられないよ。どこか地の果 て、ノース・ダコタ州にでも引っ越そう。こうなりゃ夜逃げだ!」と本人だけが大騒ぎしているような 問題まで、全部で29問。テイラーさんは、その一つ一つに時にユーモアも交えつつ、丁寧に答えます。  テイラーさんはクリスチャンです。クリスチャンは、相手が聞こうが聞くまいが、いきなり聖書や真 理や価値について話したがるものです(牧師と母親は特にそうです)。けれどもテイラーさんはちょっ と違います。あとがきにこうあります。「私はいきなりむき出しの価値について書きはじめることはし ませんでした。まずは自分が強く感じたこと、感動したこと、長く骨身にしみたことから書きはじめた ほうがよいでしょう。そうしてから、自分にとって大切な価値について書いていくのです」。