******************************* シング・ソング童謡集 クリスティーナ・ロセッティ 安藤幸江訳 文芸社 1300円(税別) *******************************  上田敏が「英国最大の女詩人」と評したクリスティーナ・ロセッティは、ラファエル前派の中心画家ダンテ ・ゲイブリエル・ロセッティの妹です。彼女は兄と違って、正統的な信仰を持ちつつ詩人として名をあげまし た。彼女の代表作「ゴブリン・マーケット」は、信仰的な寓意をふんだんに含む長編詩。もう一つの代表作 「アップ・ヒル」はジョージ・ハーバートからの大きな影響を見ることができる対話形式の信仰詩です。他に、 多くの讃美歌詩も書いており、それらは英語圏の讃美歌集に採用されています。  本書は、彼女が子どものために書いた詩集、つまり童謡集です。現代の私たちは、童謡集というと砂糖菓子 のように甘いものを想像しがちですが昔の童謡はマザーグースに見られるように、もっと硬派な部分を持って います。この童謡集にも古き良き時代の硬質な手触りを感じます。  本書の挿し絵を描いているのは、ジョージ・マクドナルドの挿し絵などで知られるラファエル前派の画家 アーサー・ヒューズです。彼の手による素晴らしい挿し絵が各ページに載っています。 ******************************* お姫さまとゴブリンの物語 ジョージ・マクドナルド著 脇明子訳 岩波少年文庫 *******************************  ジョージ・マクドナルドは、C.S.ルイスやJ.R.R.トールキンにも深い影響を与えた英国のファンタジー作家 です。  幼いアイリーン姫は、賢さと優しさと素直さと勇気を合わせ持った、まことにファンタジーの主人公にふさ わしい少女です。このお姫様は館の塔の上で不思議な「おばあさま」に出会います。物語は、お姫様とおばあ さまを中心として、そこに人間たちに復讐しようとするゴブリンたち、そして勇敢な鉱夫の少年カーディーが からみあいながら、ゴブリンと人間たちの最後の戦いへと突き進みます。  牧師でもあったマクドナルドは、数々の幻想的なシーンを通して、人間の理解を超えたお方の存在について、 信じることについて多くの事を教えてくれます。  ラファエル前派の画家アーサー・ヒューズによる挿し絵も一見の価値があります。 ******************************* きえてしまった王女 ジョージ・マクドナルド著 田谷多枝子訳 岩渕慶造絵 太平出版社 *******************************  この物語は、別名「そっくりさん物語」とも言います。王女ロザモンドと羊飼いの娘アグネスは、生ま れも育ちもまったく違うのに、そっくりでした。どこがそっくりかというと、両親に甘やかされて育った ので、自分を「ごりっぱさん」だと思っているところが、そっくりだったのです。  さて、王女のわがままぶりにほとほと困り抜いた王様と女王様が「賢女のおばあさん」に助けを求めた ことから、ロザモンドの不思議な日々が始まります。やがて、アグネスも・・・  この物語もマクドナルドならではの幻想的なシーンを交えて進んでいくのですが、それよりも、ここで は二人の心の動きに焦点が当てられています。人が自分の悪い心をどんな風にかわいがって正当化しよう とするか、また、良くなろうとする心がどんなに簡単にもとのもくあみになってしまうか。そんな中で賢 女が二人に語りかけることばが、まるで自分に語られているように感じられます。  ロザモンドは最後に「ごりっぱさん」を捨てて「いい子になりはじめ」ます。王様と王女様、そしてア グネスとその両親はどうなったでしょう。みんなかわりはじめられると良いですね。 ******************************* 黄金の鍵 ジョージ・マクドナルド作 中村妙子訳 東逸子画 偕成社 *******************************  ジョージ・マクドナルドは日本ではあまり知られた作家ではありません。しかし、彼がいなければ、 私たちは「不思議の国のアリス」や「ナルニヤ国物語」を手にすることはできなかったでしょう。 ルイス・キャロルに「アリス」の出版を決心させたのはマクドナルド家の娘たちの絶賛だったし、 「ナルニヤ」を書いたC.S.ルイスはマクドナルドの「ファンタスティス」に決定的な影響を受けている からです。  そんなマクドナルドのファンタジー中の白眉が本書です。二人の主人公タングルとモシーが出かけた 不思議な旅。そこで出会う不思議の数々。それはまるで音楽のように読む者を包みこみ、ゆさぶります。 そして二人は「影のみなもとの国」へとのぼっていくのです。  マクドナルドを尊敬してやまないC.S.ルイスは彼のアンソロジーを編みましたが、その序文の中で 言っています。マクドナルドのような作家は「読者が、それまで一度も感じたためしのない、いえ、 感じうるとも思わなかった感覚を呼び覚ます」「そのショックによって私たちは、生涯知らなかった 目覚めを経験するのです」。  ******************************* クリスマスのものがたり 作/フェリックス・ホフマン 訳/しょうの こうきち 福音館書店 *******************************  スイスの絵本作家フェリックス・ホフマンが、聖書に忠実に書き上げたこの「クリスマスのものがた り」は、数あるクリスマス物語の絵本の中でも、最も優れたものの一つに数えることができるでしょう。  マリアへの天使のお告げから、羊飼いと三人の博士、エジプトへの逃避行まで、有名な聖書の場面が 彼独特の筆づかいで生き生きと描かれています。  この絵本はホフマンの最後の絵本になったそうですが、子どもに受け入れられる単純さと、大人にも 訴える奥深さをあわせもった傑作です。 ******************************* 子うさぎましろのお話 文/佐々木たづ  絵/三好碩也 ポプラ社 *******************************  くいしんぼでよくばりの子うさぎましろは、サンタクロースのおじいさんをだまして2回プレゼント をもらいました。すると大変なことに・・・。  赦されることのよろこび、お詫びすることの大切さ、分け与えることのうれしさ、そんな大事なこと をやさしく教えてくれる素敵な絵本です。 ******************************* ちいさなリース 絵と文 さかもと ふぁみ いのちのことば社 1575円(税込) *******************************  「今からおよそ20年前のルーマニアで、冷酷な役人によって多くのクリスチャンの命が奪われた。し かし、一人の少女の一言が、彼の凍った心を溶かしてしまった。『あなたの敵を愛しなさい』という一 言が・・・」。  これは本当にあったお話です。神学校でこの話を聞いた坂本ふぁみさんは、その後ルーマニアの孤児 院を訪問したとき、この証しを多くの子どもたちに伝えたいと思ったそうです。そうして祈りの中で生 まれたのがこの絵本です。  ストーリーも素晴らしいのですが、登場人物の表情が実によいのです。リースを持ってたたずむ少女 の涙顔、少女にキスされた将軍のびっくり顔、そして安らかな寝顔。ひとつひとつの表情が実に生きて いて、見る者の心に訴えかけるものを持っています。特に、カルロ将軍の表情に見られる変化は、人の 心の深みを知る者でないと描けない類の絵です。 ******************************* 神の道化師 トミー・デ・パオラ作 ゆあさ ふみえ訳 ほるぷ出版 1359円 *******************************  大学生のころ、私は、母教会で子ども文庫を始めるために、書店でいろいろな本を手にとったり、絵 本原画展にでかけては、新しい本を探したりしていました。この本は、そのころ出会った懐かしい絵本 の一つです。  お話は、自分の腕ひとつに頼っていたひとりの道化師が、人生の終わりに素朴な信仰に目覚めて、心 を込めた芸で少年イエスの像をほほえませる、というものです。  素朴なだけに、小さなこどもの心にも語りかける、力のある美しい絵本です。 ******************************* こころのおくりもの聖書ものがたり 文/マリ・エレーヌ・デルヴァル 訳/関根敏子 絵/ユリーズ・ヴェンセル ドン・ボスコ社 1900円(税別) *******************************  今までこの欄でも聖書物語の絵本をいくつか紹介してきましたが、いま私がいちばん気に入っている のがこの絵本です。大きさは本誌と同じA4版、地味ながらしっかりした造りの163ページに旧約、新 約からとった46話が収められています。  いちばん嬉しいのは、子どもにもわかるシンプルできれいなことばで、聖書の内容を正しく伝えてい ることです。  また落ち着いた色彩、丸みのある輪郭の絵は聖書の世界を正しくイメージさせてくれます。最初の方 で、アダムより前に人類の挿し絵がでてきますが、それは聖書が書かれた順番に従って、人類の創造を 描いた後でアダムについて書いているのです。  訳者は「子どもの記憶の中に美しい印象が残るように、聖書の中の文章が本来持っている美しいリズ ムを、できるだけ残すようにしました」と書いています。余計な解釈や飾りを排したむだのないことば は、子どもにも大人にも深い印象を残します。読み聞かせには最適です。ぜひ声に出して、文章を味 わってみてください。 ******************************* 絵でみる こどもとおとなのはじめての聖書  旧約篇・新約篇 L.ガリ他 作 佐久間彪訳 至光社 各1800円 *******************************  子ども向けの聖書の本はたくさんありますが、良いものにはなかなか巡り会えません。絵が稚拙で あったり、文章が説教調であったり、勝手な解釈でお話が変えられていたりして、感心しないものが多 いのです。  この絵本には、今あげたような欠点が見られません。文章は聖書そのままを簡潔にまとめたもので、 訳もきびきびした良い訳です。はっきりした輪郭と鮮やかな色づかいの絵は大人の鑑賞にも十分たえる 素敵なものです。聖書の有名なお話を全て含んでいるわけではありませんが、聖書全体に目が配られて いることも好感が持てます。子どもから大人までおすすめの一組です。 ******************************* わたしのせいしょ かみさまのやくそく 絵・N.ブルックス 文・L.J.サットガスト 訳・なかだ くみこ ドン・ボスコ社 800円(税別) *******************************  文庫本と同じサイズのコンパクトな絵本の中に、有名な聖書のお話が、旧約から19話、新約から2 6 話、明るく喜びにあふれた挿し絵と共に収められています。  それだけですと、すでにたくさんでている聖書物語の絵本とあまり変わらないのですが、この絵本に は、他の絵本にはない大きな特徴があります。それは、タイトルにも表れているとおり、それぞれのお 話の中から「神さまのやくそく」を読みとっていることです。  聖書を読むとき、お話の流れや、出てくる人の動き、その人の信仰に目をとめることも大切なことで す。けれども、聖書のどのお話の背後にも必ずおられる神さまに目をとめ、神さまからのやくそくに耳 を傾けることは、信仰的な聖書の読み方の基本とも言えるでしょう。  3人のこどもがいるわが家では、家庭礼拝にいろいろな聖書物語の絵本を使ってきましたが、去年の 暮れから、この絵本が7冊目の家庭礼拝テキストになりました。幼い心に、神さまからの語りかけが届 くように祈らされます。 ******************************* レーナ・マリア 学習まんがスペシャル まんが・あべ さより シナリオ・菅谷淳夫 小学館 900円(税別) *******************************  誕生から結婚まで、軽快なテンポでレーナ・マリアさんの生涯を読ませてくれるすてきなマンガで す。  ところで誤解されやすいところですが、レーナさんは、現代のシンデレラではありません。シンデレ ラにはつらい下づみ時代があって、それを通りぬけて夢をかなえることが人生のゴールになります。そ うやって生きるシンデレラには彼女をねたむ人たちがつきまといます。  レーナ・マリアさんの場合には「つらい下積み時代」がありません。苦労がないわけではありませ ん。彼女の身に起こったことを一つ一つ考えると、とても大変なことが多いのです。けれども彼女もご 両親も、それを「下づみ時代」のいやな苦労とは考えないで、神さまからの賜物としてあっけらかんと 受けとめています。そして、せっかくの「チャンス」や「成功」も、神さまといっしょにいるためな ら、かんたんに手ばなしてしまいます。  そんなレーナさんには、まわりの人の心をまっすぐにする力があるようです。大人も子どもも、すな おな心で読んでほしいマンガです。