ここが変だよ!床ずれの常識
誤嚥性肺炎について(2)
■この書式は,患者・家族に説明をするときに実際に使っております.
ご家族を看取った経験のある方は一読して理解されますが,そのような経験のない方には何度も説明してご理解をいただいております.

実際の書式はこちらからダウンロードできます.(Word 102KB)
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  • 平成  年  月  日
  • 説明者 職名 氏名
  • 説明を受けた方
  • 本人 
  • 生年月日
  • 代理人 続柄 氏名 
  • 住所   電話番号
  • 代理人 続柄 氏名 
  • 住所   電話番号
■【診断】あなたの病気は,誤嚥性肺炎,脳血管性痴呆症(認知症)です.
  • 誤嚥性肺炎は老人性肺炎ともいわれ,高齢者の最大の死因です.
  • しばしば難治性かつ再発性で,呼吸不全や心不全をおこし,人工呼吸器や心臓マッサージなどを含む治療(CPR)が必要になることがあります.このような場合救命率が低いのが通例です.
■【誤嚥性肺炎の起こるわけ】高齢者の肺炎は,誤嚥(口のなかの唾液,痰(たん),食物を気管の中に吸い込むことにより)によりおきます.
  • 脳血管性障害(脳梗塞,脳出血)や,パーキンソン症候群,アルツハイマー型痴呆症(認知症)の方は,嚥下障害(喉の神経,筋肉の働きが正常にはたらかない)があり,嚥下反射や咳反射が減弱しているため肺炎を越しやすいことは,よく知られた事実です.
  • 一度食べた食事が,胃から食道,喉に逆流して誤嚥して起きることもあります.便秘や大腸がんなどで腸の通過が悪くなって嘔吐したときに吐瀉物を気管に吸い込んで起きることもあります.経鼻経管栄養(鼻から胃に管を入れて栄養剤をいれる)や,胃ろう(胃に穴を開けて管を入れる手術)による治療をしている場合も高率に発生します.胃ろうのほうが,経鼻経管栄養より肺炎の発生が少ないのは事実ですが,皆無というわけではありません.
  • 高齢者の肺炎は,夜つくられると言われます.健康な老人であれば夜ぐっすり寝ていても嚥下反射はあまり低下しないのですが,脳血管性障害のある方や向精神薬(鎮静剤など)を服用している方は,熟睡しているときに嚥下反射が極端に落ちます.すなわち,夜間睡眠中に不顕性誤嚥(胃液が肺の中に入る)を起こしてくるということがあります.
■【治療】食事(流動食をふくめ)を中止し,点滴(末梢静脈注射,中心静脈注射,皮下注射)により水分の補給と抗生剤の投与をします.
  • 高齢者には,皮下注射を推奨します(別紙参照)
  • 病状に応じて酸素吸入をします.重症化した場合,呼吸不全,心不全をおこして,人工呼吸器や心臓マッサージなどを含む治療(救命処置・CPR)が必要になることがありますが,このような場合は救命率が低いのが通例です.
  • 肺炎が改善し,熱が下がったら,食事や流動食を開始します.
    • 口腔外科医による嚥下機能評価のための検査VFR(レントゲンに映るようにした特別な検査食による検査と内視鏡による検査)をすることがあります.
    • 経口摂取は,段階的に行います.
    • 経口摂取困難な場合は,経管栄養(胃ろうも含む)で治療することができます.
    • 経口摂取(口から食べる),経鼻経管栄養,胃ろう手術のいずれの場合も「肺炎再発」の危険があり,開始,中止,肺炎治療再開,食事や流動食の方法の変更,を繰り返すことがあります.
    • 食事や流動食摂取困難な場合,長期間にわたり点滴(末梢静脈注射,中心静脈注射,皮下注射)をすることがあります.合併症として,栄養失調,代謝異常,感染症,出血,カテーテル挿入時の事故があります.いずれの治療法でも,平均余命は1-3ヶ月になります.
■【経過】高齢者の入院で,留意いただきたいことがあります.それは若い人と違って,入院したら必ずしも良くなるとは限らないことです.
  • 高齢者の多くは環境の変化に弱く,病気で入院した場合,それまでしっかりしていた人が夜間に興奮したり,徘徊したりして周囲を困らせたり転倒して骨折することがあります.また入院の原因となった病気が治っても,ほかの病気が出てくることもあります.一旦治った後に,肺炎を再発することがあります.寝たきりでいると褥創(床ずれ)ができて,治療するのに入院期間が長くなったりすることもあります.「お年寄りを入院させて,かえって病気が悪くなった」と言われることがあるのはこのためです.
■【治療の選択】御家族も,医療者も,できるだけ経口摂取させたいという思いは一緒です.
  • 食べられなくなった場合,そのままでは衰弱死します.昔は食べられなくなったら,それが最後と考えられていましたが,今日では病院や施設に入っている場合,経管栄養(胃ろうを含む)をするか,中心静脈栄養をするかが選ばれることが多くなりました.
  • 経管栄養または中心静脈栄養を受けるかどうかを選択・決断する場合,以下の問題についてお考え下さい.
    • 患者様ご本人が,そのような治療(ちりょう)を望んでいたかどうか.
    • ご自分が同じような立場であった場合,そのような治療を望むかどうか.
    • 自分が望まない治療を肉親にさせるのは,倫理的であるかどうか.
    • 経鼻経管栄養は,チューブが抜けて流動食が気管に入ると,窒息死することがあります.安全確保のために抑制(手袋をはかせる,手を動かせなくするなど)する必要があります.厚生労働省は,介護保険事業において「抑制ゼロ」をうたっております.その精神から考えると,経鼻経管栄養は問題のある方法です.
  • 医療は,説明と同意で行われるのが正しいあり方とされています.ご本人の意思で決めることが本来ですが,それが無理なら,ご家族がかわりに決めることになります.
    • 特定の医療行為(たとえば点滴)をする場合もしない場合も,説明と同意を要します.医療者は,このような処置をすることによって今後どのような状態になるかの正確な情報をご家族に伝えて,判断していただいております.
■【救命処置・延命処置・CPR】 老人性肺炎を発症した方は,容態が急変することがあります.
  • 救命のために人工呼吸器や心臓マッサージなどを含む治療が必要になることがありますが,このような場合救命率が低く,結果的に苦しみを引き伸ばすだけに終わるのが通例です.救命処置をするかどうか,お話し合いの上あらかじめ決めておいてください.
    • 救命処置をしないと決めた場合:口の中に食物,痰,異物が詰まった場合はそれを除去し,酸素吸入をします.マスクで呼吸補助をします.同時に,ご家族に連絡します.
    • 救命処置をすると決めた場合:人工呼吸器や心マッサージなどを含む治療(CPR)をします.一旦人工呼吸器を使用開始した場合は,自分で呼吸できるところまで回復しない限り,外すことはできません.
    • いま決められない場合:救命処置・CPRをすると決めた場合と同じ治療をします.
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