アイドル天使ようこそようこ
(1990年4月2日〜1991年2月4日・全43話 / TV放送)


〜ようこのようは太陽の陽です、ハイ!〜
 アイドルとアニメのタイアップ作品として制作された「アイドル伝説えり子」は、なかなかの人気を獲得 して1年の放送を務め上げました。それを受け、アイドルシリーズの続編として登場したのが「アイドル天使ようこそようこ」(以下「ようこ」)です。
 アニメの制作は前作に引き続いて葦プロが担当し、新しくこれとタッグを組んだのは芸能プロの大手ホリプロ。タイアップの対象となったのは 歴史あるホリプロタレントスカウトキャラバンの1989年度グランプリを受賞した田中陽子氏でした。

 この「ようこ」は「えり子」の続編ということもあってか、当初は前作を踏襲した正統派のアイドルサクセス物語が企画されていたそうです。 ところが、シリーズ構成として首藤剛志氏を起用したのが、様々な意味で「ようこ」を独自色の強い作品に仕上げる原因となってしまいました。
 当時の首藤氏といえば「魔法のプリンセス ミンキーモモ」(以下「空モモ」)のシリーズ構成で知られる存在で、 おそらく企画サイドとしては、その少女向けのイメージを「ようこ」に組み込ませたかったのだと思われます。しかし、実際に「空モモ」をご覧になった 方なら分かると思いますが、「空モモ」は子供向けアニメとしては決して正統派の作品ではありませんでした。
 氏を起用した結果「ようこ」がどうなったかというと、「<普通じゃない>アニメ」(ぶるまほげろー氏の文章より引用)となってしまったわけです。
 ヘンテコなアニメは数あれど、ファンにまで”普通じゃない”と語られる「ようこ」。その独自色とは、いったい何なのか。それを以下から簡単に 見ていきたいと思います。

 …といきたいところでしたが、その前に。そもそも「ようこ」の内容をご存じない方のために物語のあらすじを大まかに紹介しておきましょう。







 <とある田舎村に住む少女・田中ようこはテレビで目にしたブロードウェイの世界に憧れ、その夢をかなえるために田舎から都会・渋谷へ やってきたのでした…。>

 アウトラインのさらにアウトラインだけを書くと、こんな感じになります。これだけを見ると、普通のアイドル・サクセスストーリーっぽく見えなくも ありません。では、どんなところに「ようこ」の独自性があったのでしょうか。



 まず、「ようこ」最大の特徴となるのが「歌」の扱いです。
 アイドルのプロモート番組ゆえ作品に歌を絡ませるのは当然といえば当然の話で、前作の「えり子」でも作中に歌が多用されていました。しかし本作では、 そういったBGMとして歌を流すという手法だけではなく、アレンジされた劇伴(=劇中に流れるBGM)にオリジナルの歌詞(おそらくは即興の)を乗せ、それを 声優たちが歌いまくるというミュージカル風の演出が採用されていたのです。
 ところで、ミュージカルというものは非常に特殊な劇作法です。もともと劇や映画は、それ自体が人工的なものではありますが、その中でもミュージカルは 特に非現実感の強いものとなっています。ミュージカル映画を浦山珠夫氏は「他愛もない砂糖菓子のような」現実逃避のための作品と書いていましたが、これは 当初は物語とその添え物であった歌の主客が転倒したミュージカルの特殊性を簡潔に示した言葉だと思います。
 その極端な非現実性によって、ミュージカル演出は「ようこ」の世界に他のアニメには見られないほど強烈な”陽”の面をもたらしてくれたのです。「ようこの ようは太陽の陽」という台詞が「ようこ」の作中では度々繰り返されていますが、まさに然り。これ以上に「ようこ」の作風を表現する言葉はないのではない でしょうか。


 次に、全体的に「ようこ」はナンセンス劇の色合いが強い物語になっています。
 元々、シリーズ構成の首藤氏がスラップスティック系のスカした味の脚本を得意とされていたということもあるのですが、どうも話によると首藤氏が 従来のアニメ的脚本からの脱却を狙ってドラマの脚本家や素人などに脚本を依頼していたのだそうです。そのため、「ようこ」は後半になるに従って 「どうしてそういう設定やオチになるのか…」と言いたくなる物語が目立つようになります。
 ここにさらに先述のミュージカル演出が加わるわけですから、「ようこ」はなんとも異様な雰囲気を醸し出すようになるわけです。



 以上のようなファクターが絡まりあって、「ようこ」はポップでキッチュな、独特の作風を確立することに成功しました(本当は、番組の最後の挿入された 宣伝コーナー「ヨッキュンコーナー」(正確にはヨ©キュンコーナー」)の暴力的なまでのインパクトもまた、 「ようこ」を伝説のアニメへと昇華させる重要な要因の一つなのではありますが、こちらは本編とは何の関係もないものなので除外しておきます…)。

 ところが、そんな「ようこ」は当時の一部マニア層には絶大な好評をもって迎え入れられたものの、その後番組にはロボットアニメの「ゲッターロボ號」が 放送されてアイドルシリーズはわずか二作品をもって終結することとなります。
 この理由としては様々なことが考えられますが、結局は「ようこ」のアクが強すぎる味わいが問題だったのではないかと思われます(肝心の訴求対象である 少女層への受けは悪かったでしょうし、それは関連商品の売上にも響いたことでしょう…)。

 また、アイドルのプロモート番組として見た場合も、正直なところ「ようこ」は上手くいっていたとは思われません。というのも、作中で流れる 歌は基本的に声優たちの歌うミュージカル風のそればかりとなっていて、田中氏の歌が作中で使われたのは数える程度でしかありませんでした。つまり 「ようこ」は、本来の目的であるはずの田中氏の宣伝とはなりえない内容となっていたわけです。
 これはなにも歌の問題だけではありません。アイドルのお話のはずなのに、物語の前半では芸能界の話など脇に追いやられてしまって、芸能界とまるで無関係の ドタバタ劇が繰り広げられているのです。
 前作の「えり子」が効果的に田村英理子氏の楽曲を使用し、正統派の芸能サクセスストーリーを展開させていたのに比べると、その無視っぷりは際立ったものが あります。まるで、スタッフたちがあえてプロモート番組であることを放棄して意図的に暴走したのではないかと思えるほどに…。


 それが是か非かと問われると、これはなかなかに判断の難しいところです(個人的には、もう少しスマートにやってもよかったのではないかと思います)。
 ただ、首藤氏のカラーを前面に押し出した作風を貫き通したからこそ、一部のマニアに絶賛される怪作として「ようこ」は現在でも語られる存在と なっている。それだけは間違いないことなのではないでしょうか。



〜「アイドル天使ようこそようこ」 登場キャラクター紹介〜

田中ようこ
 本編の主人公。テレビで目にしたブロードウェイミュージカルに感動し、歌手になることを夢見て辺鄙な山奥の村から渋谷へ飛び出した。 やがて、その天性の歌唱力と人々を惹き付ける不思議な魅力によって、スターの座を駆け上がっていく。
 天真爛漫で悩み事など何もないオプティミスト…のような感じの性格。好きなことは、歌とダンス。ムササビのムーとは田舎に住んでいた頃から友達。
 「ようこのようは太陽の陽です、ハイ」が口癖。相性はヨッキュン。
山杜サキ
 女優になることを夢見て故郷を飛び出した少女。東京に向かう電車の中でようこと出会い、渋谷で寝食を共にする仲となる。アイスター事務所に所属。
 女優を目指しているのに人前に出ると緊張して喋れなくなるという、引っ込み思案の性格をしている。そのせいか、考えるより動く性格のようこに 振り回されることが多いようだ。
 「サキのサキはお先真っ暗のサキ」など、口癖も悲観的なものが多い。
星花京子
 かわいらしい顔立ちで人気を博し、末は世界的スターを目指している売れっ子アイドル。しかし、ようこが出現してから急激に雲行きが怪しくなり始め、 次第に彼女を目の敵にするようになる。マリンテラスプロ所属。
 人気者らしく表面的には尊大な受け答えが目立つが、実際には素朴な性格。歌にしても演技にしても、自分の才能に自信が持てずに悩んでいたりもする。
 「あたしって不幸…」が口癖。愛称はホッキョン。
山下秀樹&
原田俊雄&
吉秋久美子
 ようことサキが所属するアイスター事務所のメンバー。ムーンライトキッスというバンドを結成して音楽賞を受賞した経験もあるが、今では 弱小芸能プロの経営者という地位に甘んじている。
 山下(左)はアイスターの社長。ニヒリストで物事を諦観する性格ながら、意外と野心家なところもあり。
 原田(右)はアイスターの社員。渋谷でスカウトをしていたところ、ようことサキに逆スカウトをされる羽目に。ロマンチストな性格で、涙もろいところがある。
 久美子(中)はアイスターに所属する妙齢の女優。ようこやサキには芸能界の先輩として優しく接する。山下の煮えきらぬ態度のため、二人の仲は中途半端なまま。
速水亮&
徳大寺豊
 ようことサキを陰から支える人物。
 亮(左)は速水財閥の御曹司。腕っ節の強い一匹狼といった性格で、ようことサキを「arisu」に誘った人物。常に渋谷の町をバイクで走り回って いるような印象がある。
 豊(右)は徳大寺財閥の御曹司。亮に比べると家の力に寄りかかった生活をしており、万事お金で解決しようというところが見られる。女性同伴で ポルシェを駆っているシーンが目立った。
渋谷長五郎
 渋谷活性会会長。渋谷を平和を守るため、安と全という子分を引き連れて日々渋谷を練り歩いている。愛称は「渋長(”しぶちょう”と読む)」。
 ドスのきいた声や左目の傷など凶悪そうな外見とは裏腹に、妙にひょうきんな性格をしている。渋谷を彷徨っていたようこを一目で気に入り、その後は 様々な面でバックアップするように。「ヨッキュン」という愛称を生み出したのは、おそらく彼。第23話では彼の隠された過去が明らかになった。


 次項からは「アイドル天使ようこそようこ」の必見エピソード紹介を行います。



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