花の魔法使い マリーベル
(1992年2月3日〜1993年1月18日・全50話 / TV放送)


〜マリーベルに、おまかせよ!〜
 「花の魔法使い マリーベル」(以下、「マリーベル」)は、1989年「アイドル伝説 えり子」から続く一連の葦プロ少女向け アニメの末席を飾る作品であり、そしてまた、葦プロが生み出した最後の魔女っ子アニメでもあります。同時期に葦プロは 「魔法のプリンセス ミンキーモモ 夢を抱きしめて」(以下、「海モモ」)を放送しており、1つのアニメ製作 プロダクションが複数の魔女っ子アニメを公開するという非常に珍しい状況となっていました。おそらく地上波アニメ史上、 こういうケースは後にも先にもこれっきりだと思われます(実際には葦プロはほとんどノータッチで、スタジオジャイアンツが 中心となっていたようです)。

 ほぼ同時期に放送されていた「マリーベル」と「海モモ」ですが、両者を並べて見比べてみると、その間には大きな相違が見られます。 「海モモ」は一見能天気なスラップスティックに見えて、その実、希望の無い崩壊へとひた走る、マニア向けのシリアスな作品となっていました (この傾向は物語終盤〜OVA版で頂点を極めます)。
 一方の「マリーベル」はどうだったかというと、こちらは魔女っ子アニメの本来のターゲットである幼稚園児〜小学校低学年あたりに 向けて作られた内容となっており、徹底してその世代の目線で物語をつむぐように努力がなされているように感じます。例えば、作品内に 登場するレギュラーキャラクターたちは、作中で細かくは語られていないものの6〜7歳程度の少年少女であり、そして主人公の魔法使い マリーベルは、あくまで彼らと同じ感覚を持った”お友だち”という位置付けで描かれているのです。
 両者に明確な差異が見られるのは、魔女っ子アニメというジャンルがある程度の様式が確立してしまっているため、どうしても生まれるで あろう作風のバッティングを出来る限り避けるべく意図的に行われたもの…と見るべきなのでしょう。






 実際、制作スタッフは同じ葦プロのビッグタイトルである「海モモ」を相当に意識していたようで、企画段階では桃色だったマリーベルの 髪の毛が現在のように黄色に変更されたのは、ミンキーモモと混同されるのを避けるためだったという話です。


 とはいえ、それは制作者側の都合によるもの。明らかな原点回帰、徹底して子供向けに作られた「マリーベル」は子供層に受けこそすれ、大人の感覚 からすると幼稚すぎて見るに値しないと考えてしまう人もいらっしゃると思います。
 しかし、もしあなたが見た目だけでマイナスイメージを抱いているのだとすれば、僭越ながら、それは大きな誤りだと指摘させていただかねばなりません。

 この世界には妖精がいる、花は人間の愛情を受けて育つなど、見ているこちらが恥ずかしくなるような事をぬけぬけと作中で言い切り、 そして登場人物はケンカをしていた間柄でも最後は手を取り合い、誰一人例外なく前向きに前進していく…。
 そんな、ひたすら明るく優しい物語にミュージカル的演出が多用され、両者の融合によって小難しい理屈など吹き飛ばしてしまうくらいの 独特の”陽”の魅力が、「マリーベル」には生まれています。
 同時期に「海モモ」、「美少女戦士セーラームーン」などの話題作が放送されていたために絶対数が少ないとはいえ、 本作の作風に心酔するコアな(それも 恐ろしく熱狂的 な)ファンによって、今でも「マリーベル」は唯一無二の魔女っ子アニメ として支持されています。

 ところで、ミュージカル+少女向けアニメ+葦プロというと 「アイドル天使ようこそようこ」 を 思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。そういう方は、「マリーベル」が「ようこ」的な作品というイメージを抱かれるかもしれません。
 ですが、「マリーベル」は「ようこ」のような意図的なスラップスティックとも異なった、なんとも形容しがたいファンタジー世界となっています。 この味わいに関しては何とか文章化して伝えたいと頭を悩ませたのですが、筆者の筆力が足らないばかりに適当な表現が思い浮かびませんでした。 何はともあれ、実物を見ていただくほかないと思います(本当に申しわけございません…)。


 さて、映像・演出面における「マリーベル」の特徴を簡単に書いてみましたが、以下からは少し違った視点から「マリーベル」を見てみましょう。
 実際に作品を見てみると、「マリーベル」は魔女っ子アニメとしては非常に異質な作品となっていることに気づかれると思います。その異質さは、 主人公のマリーベルがあくまでアウトサイダーとして描かれていることに起因しています。
 一般に魔女っ子アニメの視聴者である女の子は、自身の願望(=不思議なが使えたらいいな、という願望)を実現してくれる主人公に自身を重ね合わせて 作品を見るのものでしょう。ですから、テーマは主人公の成長(これは特に”ぴえろ魔女っ子”に顕著でした)であったり、魔法による大活劇であったりと、 作品ごと各話ごとに異なるでしょうが、ともかく主人公に感情移入しやすいよう、基本的に魔法の使い手である主人公を中心として物語は回っていきます。

 ところが、「マリーベル」ではこの図式が当てはまってくれません。たしかに物語の主人公はマリーベルであり、魔法を使用するのもマリーベルなのですが、 あくまで彼女は異世界からやって来た友人・相談相手という存在にすぎず、物語の進行を左右しているのはマリーベルの周りを取り囲んでいる子供たち (たまには大人も)であって、マリーベル自身ではないのです。
 抽象的な話で分かりづらければ、これは例えば「ドラえもん」に近い図式と言えば理解しやすくなるでしょうか。「ドラえもん」の主役は、むろん ドラえもんなのですが、実際に物語の中心に存在するのは少年・野比のび太の方でドラえもんは彼のアドバイザーにすぎません。これと同じことが 「マリーベル」の物語にも現れているのです。
 そう考えると、逆に「マリーベル」は子供向けという路線を追及した結果、魔女っ子に「ドラえもん」的フォーマットを導入しようとして 生まれた作品だったのかもしれません。


 以上のような作品である「マリーベル」は、制作者の狙い通りに子供層に対して人気を博したようです。「マリーベルの火の用心」と 「マリーベルの交通安全」という教材フィルムが制作されたり、劇場版作品「フェニックスのかぎ」が公開されたのは、「マリーベル」の子供層への 人気の現れだったのではないでしょうか。


 色々と駄文を連ねてきましたが、「マリーベル」の魅力を上手く伝えられなかったような気がします。
 ともかく、1990年代前半を代表する魔女っ子アニメは何かと問われたら、筆者はこの「マリーベル」を第一位として挙げるでしょう。あの独特の、 優しい肌触りは最近のアニメからはなかなか感じられないものです。「マリーベル」は見ているだけで幸せになれる、そんな稀有な作品なのです。




〜「花の魔法使い マリーベル」 登場キャラクター紹介〜
 それでは「マリーベル」の大まかな内容紹介も終わりましたので、主な登場人物の紹介に移りたいと思います。

マリーベル
 花魔法界に住む花の魔法使い。ユーリとケンの願いによって人間の世界に姿を現し、その後は丘の上に建てた フラワーハウスで生活するようになる。外見は人間の幼女風ながら、これでも年齢50万5歳(!)だったりする。 本人は一人前のつもりらしいが家事関係はまるでダメ。
 父のパパベル・フォン・デカッセンは稀代の天才マジシャン、母のママベルは料理研究家として、共に人間界で活躍している。 祖父のジジベルはサンタクロースとして世界中の子供に夢を分け与えている。
タンバリン
 マリーベルと行動を共にするシーリーコート(Seelie court)。シーリーコートとはサクソン語で「祝福されし者」という意味の、 スコットランドにおける良い妖精の総称。
 50万年前、パンジーの花から生まれた際に幼少のマリーベルと出会い、共生の契約を結ぶことになった。料理から整頓まで マリーベルの家事全般を受け持つ便利な存在。かなり自由に身体の大きさや形を変えることができる。 なぜかネコが嫌い。その外見からナスビ呼ばわりされることが多く、本人はそれを気にしている。
ユーリ
 マリーベルと最初に友達になった人間の女の子で、ケンの姉。どちらかというと物静かなおっとりとした性格をしているが、 ここぞという場面ではケンを励ますなど、意外と芯は強いようだ。
 想像力が豊かで妖精の存在を信じており、招来は幻想文学の作家になることを夢見ている。…なのだが、それも少しばかり度を 過ぎたところがあって、むしろ妄想癖があるといったほうが当たっているようにも見える。ついでに突発的な命名癖もある。
ケン
 マリーベルと最初に友達になった人間の男の子で、ユーリの弟。姉に比べると引っ込み思案の性格をしており、ちょっと泣き虫なところがある。 そのわりに負けず嫌いで、バカにされるとけっこうムキになっていた。
 最初は自転車に乗ることすらできなかったが、その後、第20話であっさりと一輪車を乗りこなしていたりするところを見ると、 実は運動神経は良いのかもしれない。
ローズ
 フラワーショップ「マリーベル」の隣に住んでいる、花好きのお婆さん。子供の頃から「マリーベルの絵本」に耽溺し、 そこに登場するマリーベルに一目会いたいと何十年も思い焦がれていたらしい。その後、絵本はユーリとケンに譲り渡したが、 マリーベルの力で二冊に分けてもらった。
 料理が得意で、特にローズパイは絶品らしい。リボンという名前の犬を飼っている。隣家のバートとは幼なじみ。
ビビアン&
ボンゴ&タップ
 ユーリ、ケンの知人。ビビアンがリーダーとなって三人で行動することが多い。
 ビビアン(中)はローズの隣に住むバートの孫。甘やかされて育ったせいかワガママで自己中心的な性格をしている。 それでも本当は背伸びをしたがる少女で、根は優しい。「フーンっだ!」が口癖。
 ボンゴ(左)とタップ(右)は合わせてワンセットのような存在。ボンゴは可愛い女の子に弱く、マリーベルや ユーリの前ではデレデレしてしまう。タップはそれにツッコミを入れては怒鳴られていた。
ジート
 バートの甥。自称・妖精ハンター。ウ〇ーリーではない。
 小さい頃にトウモロコシ畑で迷子になっていたところを妖精に助けられて以来、妖精の存在を信じている青年。だが、周りの人間には 体験談を信じてもらえず、嘘つきとイジメられていた。そこで皆を見返すために妖精を捜している。
 そういう過去があるせいか妖精の捜索方法は強引で、マリーベルたちの反感を買っていた。最終的には妖精と和解し、ニュース キャスターのマギーと結婚したようだ。

 登場人物の紹介は以上で終了です。次項からは「マリーベル」の魔法について紹介します。



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