魔法の天使 クリィミーマミ
(1983年7月1日〜1984年6月29日・全52話 / TV放送)

〜現実味あふれる魔女っ子アニメの金字塔〜
 1983年、前年の「ミンキーモモ」に続いて魔女っ子アニメ界はある作品の登場を受けて大きな盛り上がりを見せました。 スタジオぴえろが生み出した、その作品の名は「魔法の天使 クリィミーマミ」(以下、「マミ」)。以降、ぴえろ系と呼ばれる 魔女っ子アニメの新しい系譜の始まりとなった作品です。

 「マミ」が生まれるまでの簡単な流れを書きますと、「魔法のプリンセス ミンキーモモ」の製作を担当した読売広告社が 「モモ」に続く魔女っ子アニメを企画した際、葦プロに替わる製作会社としてスタジオぴえろが選ばれることになりました。 そして、「はずんでクリィミー」というタイトルで企画されていた作品が「マミ」として完成します。ですから、まるっきり カラーは違うものの、「モモ」と「マミ」は読売広告社を通じて1つの流れの上に存在するの魔女っ子アニメと見ることができます。
 ちなみにスタジオぴえろという会社は1979年に設立された、当時はまだ歴史の浅い会社で、デビュー作の「ニルスの不思議な旅」、 そして「うる星やつら」のヒットで名を知られるようになってきたばかりの存在でした。


 さて、この「マミ」は”魔法による女の子の変身”、”魔法の力を他者に知られてはならない”、”お供のペットの存在”…など、 外枠だけなら従来の魔女っ子アニメのパターンを踏襲しただけの作品に見えます。しかしながら、そこにある1点が、まさしく革新的 といえる1つの要素が加えられたことによって、他との差別化に成功しているのです。それは、芸能界という要素を持ち込んだこと。
 芸能界を素人レベルにまで押し下げ、アイドルの神秘性を崩壊させた存在といわれる”おニャン子クラブ”が登場するのは1985年 のこと。まだ「マミ」の放送が開始された頃は、子供たちが芸能界に対して夢と憧れというものを抱くことができた時代でした。
 本作はそのような時代に登場した、おそらく史上初めて芸能界を具体的に描いたTVアニメであり、しかも主人公役の声優に 本物のアイドル歌手である太田貴子氏を起用していたのです。そのインパクト(太田氏の演技力という意味ではないです)たるや、 現在からでは想像しづらいくらいのものでした。









 また、これは現在の目から見ると忘れ去られがちな点なのですが、「マミ」は芸能界を舞台にしたことによって必然的に当時の 風俗が盛り込まれた内容となっており、これが「マミ」を人気作品に押し上げた1つの要因になっていたのではないかとも 思われるのです。
 例えば主人公・森沢優の家はクレープ屋となっています。クレープは1970年代末に登場し、当時の原宿で爆発的な人気となって いた、いわば流行の最先端をいく食べ物でした。また、優のフード付トレーナーという服装は、まさに当時のファッションを 反映したものだったのです。
 それまでの魔女っ子アニメが架空性の高い世界を舞台としていたのに対し、このように風俗を盛り込んだ「マミ」の世界は 現実とリンクしていきます。それによって作中の世界が現実味を帯びることになり、結果、視聴者は作品の中へと楽に入り込む ことができたのです(それゆえ、今見ると時代を感じさせる内容となっているわけですが)。


 他に「マミ」の魅力として挙げておきたい要素として、”魔法を使うことのデメリット”というものを、おそらく魔女っ子 アニメ史上初めて提示したという点があります。
 森沢優は魔法の力によってアイドルとしての生活を手に入れます。最初は変身することに楽しさを感じ、そしてまたその 力によって自分の恋する相手からの関心も受けることになりますが、その対象はあくまで変身後の姿であって本来の自分では ないこと気付き、ジレンマを感じるようになります。こうなると魔法は便利な道具どころか本人にとって邪魔な存在でしか なくなるわけです。
 本作はまだ試験段階だったせいか、この点に関しては中途半端な描き方のまま物語に幕を下ろすこととなります。ですが、 そのような魔法に対するアプローチを本作が始めたということは心にとどめておくべきでしょう。


 そして最後にもう一つ、これは前の要素とリンクする点ではありますが、主人公自身の成長や心の変化に重きをおいて物語が 描かれているということもまた、「マミ」を語る上で外せない要素ではないでしょうか。
 どちらかというと従来の魔女っ子アニメにおける魔法は基本的に何でもできるものとなっており、その有用性を見せ付けるため 毎回のように何らかの騒動を発生させる必要がありました。つまり、”何らかの事件を解決するための道具”として魔法は登場 していたのです。これは変身をメインに据えた「モモ」などでも同じで、結局は事件を解決するための手段として魔法が使用 されていました。
 一方、本作では”魔法=変身”という点を強調することで、その万能性を重視しない内容となっているのです。それによって 物語に必要以上の事件性を入れずにすみ、代わりに10歳の、等身大の女の子としての主人公を描写することに力を入れることが 可能となりました。そうして一個人としての生活や心情を描くことで、単なる”魔法の使い手”というだけではない”血の通った 一人の人間”としての主人公像が浮かび上がってくるのです。

 そしてまた、先に挙げた本来の自分(=優)と虚像の自分(=マミ)との間の葛藤を通すことで、従来の魔女っ子アニメでは 描かれなかった主人公の成長、つまりはアイデンティティの確立というものを描き出すことに成功しているのです。
 ちょうどそれは、現実の女の子たちが思春期前という微妙な年齢において成長してゆく様(初潮を迎えるなどの肉体的成長も 含めて)を象徴的に描いたものなのかもしれません。




〜「魔法の天使 クリィミーマミ」 登場キャラクター紹介〜
 それでは「マミ」の大まかな内容紹介も終わりましたので、主な登場人物の紹介に移りたいと思います。「マミ」の場合、 意外とレギュラー出場する脇役が多いので少し人数が多めになってます…。

森沢優
 1973年10月10日生まれ、私立セントレミー学園小等部に通う明るく元気な10歳の女の子(つまり小学4年生)。
 ふとしたことから”フェザースター”と呼ばれる魔法の世界に迷い込み、そこの住人であるピノピノから1年間の期限付きで 魔法の力とステッキを授かる。その力を使うことでスーパーアイドル・クリィミーマミに変身できるようになるが、その事実を 知られると力は失われてしまうという…。
クリィミーマミ
 別名・午後8時のシンデレラ。デビューするや瞬く間に世間の人気をさらった、本名、年齢、その他が全て謎の スーパーアイドル。(作中で年齢を語るシーンは無かったと思うが、設定では17歳ということになっているようだ)
 わずか1年間の芸能活動の後、ファイナルコンサートを最後に人々の前から忽然と姿を消してしまう。 その正体は、魔法の力で変身した森沢優だった。
ネガ&ポジ
 魔法の世界”フェザースター”の住人。ピノピノの命令(?)により魔法の力を手にした森沢優の相談役として人間界に 残されたが、フェザースターにいた頃の力は弱まっているらしい。猫のような外見をしているためか、その言葉も森沢優以外には ただの猫の鳴き声にしか聞こえない。
 ちなみに、青くてオス型(右)なのがネガ、赤くてメス型(左)なのがポジである。
大伴俊夫
 森沢優の幼なじみで、私立セントレミー学園の中等部に通っている14歳の少年。優から好意を抱かれていることには 気付いているようだが、それよりも本人は突如として現れたクリィミーマミに夢中となってしまう。その熱意は無断で撮影所に 侵入するなど犯罪行為に及ぶほどである。
 後にマミの正体を知るが、自分の意思で記憶を消去することによって優に魔法の力を戻す。
立花慎悟
 芸能プロダクション”パルテノンプロ”の2代目社長。クリィミーマミを一目見て大物になると確信、後にそれが現実のものに なるなど、なかなかの慧眼の持ち主だと思われる。ルックスも良くあまり欠点が無さそうに見えるが、感情が高ぶると途端に三枚目 になってしまうところが玉に瑕。マミばかりを優遇するので、プライドを傷つけられためぐみに毎度のように引っ叩かれている。
 実は怖がり屋で、幽霊の話などが大の苦手。
綾瀬めぐみ
 芸能プロダクション”パルテノンプロ”に所属する女性タレント。”ミルキーウェイ・プリンセス”というニックネームが 付けられているらしい(第43話「走れ優!カメよりも速く」より)。
 立花慎悟や世間の関心を独り占めしてしまったクリィミーマミに対して強いライバル心を抱いている。ややヒステリックな 性格をしているが、根はいい人。歌にドラマにとなかなかマルチな活躍をしているので、マミ人気の陰に隠れてはいるが相当な 売れっ子なのだろう。
木所隼人
 芸能プロダクション”パルテノンプロ”の敏腕…というわけではないマネージャー。当初はめぐみ、後にマミの専属となる。 人気タレントを担当しているわりに気が小さく、立花慎悟に怒鳴られてばかりの毎日。そのせいか、胃薬を常用している。 意外と怪談が得意なようでもある。
 TV版ではコメディリリーフ的脇役に過ぎない存在だったが、OVA版「ロング・グッドバイ」ではとんでもないことに…。
如月みどり
 私立セントレミー学園の中等部に通う少年で、大伴俊夫の友人。見た目の通り大食漢で運動は苦手。気弱な性格なので 常に俊夫に振り回されてばかりではあるものの、大好きな優のことになると途端に積極的になる。
 優を俊夫に譲った後、OVA版で早川愛という恋人ができるわけだが、二人を見てみるとどうもロリ系が好みなのではないのかと 思えてならない。
森沢哲夫&なつめ
 森沢優のパパとママ。東京都国立市のくりみヶ丘で”CREAMY”という名前のクレープ屋を経営している。 かつては共に”カミナリ族”という暴走族に所属しており、なつめはその頭だった。
 いつもラブラブな二人だが、たまにケンカしてしまうこともある。そんなときは、決まって気弱な哲夫の方が家出をしてしまう らしい。ちなみに、なつめ(旧姓、藤野)は子供の頃に歌手としてデビューする予定もあったようだが、結局は失敗している。

 登場人物の紹介は以上で終了です。次項からは「マミ」のストーリー紹介に移ります。



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