魔法のスター マジカルエミ
(1985年6月7日〜1986年2月28日・全38話 / TV放送)


〜魔法の存在を否定した、魔女っ子アニメの異端にして最高傑作〜
 まず最初に断らせて頂きますが、筆者は「魔法のスター マジカルエミ」(以下「エミ」)こそが魔女っ子アニメの最高傑作 だと信じています。むろん作品自体の素晴らしさもあるのですが(これに関しては後で色々と書いていきます)、それ以前の もっと根本的な、もっと個人的な理由から上記のような結論を導き出しています。
 その理由とは、筆者が妙な感情(今で言うところの萌えの、さらに強烈になったような感覚)を抱いた唯一の2次元キャラこそが 本作に登場するエミだったから。その影響は半端なものではなく、今でもエミの絵を見ると参ってしまうほどなのです。

 ですから、最高のアニメキャラは?と問われれば、エミと即答するでしょう。
 ゆえに、最高の魔女っ子アニメは?と問われれば、「エミ」と答えるわけです。
 はっきり言って、筆者は「エミ」が好きというよりは「エミ」に心酔しています。以下からの文章は、そんなフィルターの かかった人間によって書かれたものですので、その点に十分注意してお読みになってくださいませ。


 閑話休題。筆者の思い出話などはこのあたりで終えて、そろそろ「エミ」の内容に話を移したいと思います。
 「エミ」は「魔法の妖精ペルシャ」に続く”ぴえろ魔女っ子アニメ”の第3弾として登場した作品で、基本的な スタッフは「魔法の妖精ペルシャ」からのスライド登板となっています。前作の「ペルシャ」は 原作付きとなっていましたが、今回はオリジナルのものとなっています。

 まず外見的なところから見ていくと、「エミ」には過去の有名作品の要素が目立ちます。例えば鏡の精から魔法を受け取る という点は「ひみつのアッコちゃん」、魔法で大人になった主人公が芸能界と関わりを持つようになるという 点は「魔法の天使クリィミーマミ」あたりを想起させるのではないでしょうか。特に「マミ」との 類似性に関しては、同じ”ぴえろ魔女っ子”ということもあってかよく指摘されるようです。
 ですが、よくよく見ていくと本作は従来の魔女っ子アニメとは向いている方向がまるで異なっていることに気付かされます。 それは”魔法ではなく人物描写を重視する”ということ。人間描写や生活感の表現を重視するという作風は「マミ」の後期でも見られた ものではありますが、本作ではその点をより徹底的に押し進めて”魔法が存在しなくても成り立つ話”ばかりに仕上げてしまっている のです。
 この”魔法が存在しなくてもよい”という方向性は、「エミ」のラスト3話においてより強く提示されています。同じ”ぴえろ 魔女っ子”でも、「マミ」は時間切れ、「ペルシャ」は任務達成によって魔法を失ったのに対し、「エミ」では 主人公に魔法は必要ないと語らせて自主的に放棄する という結末を迎えさせているのです (「魔法のマコ」も自らの手で魔法を放棄しますが、それとはまた違ったものとなっています)。

 「エミ」の特異性については、もう二点ほど記しておきましょう。一つ目は、「エミ」における演出方法について。
 登場人物の心理を背景に映してみる、同じような背景を少しずつ変更して季節の移り変わりを表現するなど、とにかく画面の前面に 背景を押し出すという独特の演出方法を「エミ」では採用しているのです。ただひたすら背景が映し出されるという演出は場合に よっては手抜きと見られかねません。それを、本作では執拗に採用することで邦画のような”間”の演出にまで昇華しているのです。








 しかも本作が凄いのは、この背景と心情の合わせ鏡的な演出が各話だけに留まっていないということ。これは筆者の勝手な思い違い かもしれませんが、どうも本作では1年を通しての季節の移り変わりすらも主人公の心の変化を映し出す鏡として利用している節が 見られるのです。
 魔法を手に入れて楽しくて仕方ないという状態からやがて魔法を使うことのむなしさ覚え、それを越えた向こうに本当の自分を 見つけていく主人公の舞。一方、明るい陽射しの夏から始まり、寒い冬を越えた向こうに春が待っている…というところで幕を閉じる 作品の季節。両者には明らかな一致が見てとれる…とまで書くと少し強引かもしれませんが、本作を通して見ているとそのような気に させられてしまうのです。
 これが筆者の勘違いでなければ、このような長期スパンでの演出は最初から予定されていなければ不可能なわけであり、にも かかわらず見事に実現されているということは、やはり最初から予定されていたことに…。ともかく、そういう点に本作の 真の凄みが感じられるのです。

 二つ目はシナリオについて。
 上で人物や日常の描写に力を入れていると書きましたが、実際、「マミ」や「ペルシャ」で見られたようなあざといまでのドラマ、 そして事件を魔法で解決するという展開はあまり見当たりません。時には妖精が登場するという話も用意されていますが、別に彼らが ドタバタ騒ぎを起こすわけではなく、基本的に季節を実体化させただけの存在として描かれているにすぎないのです。
 できるだけメロドラマをシナリオから排除しようする姿勢(そのためか、「エミ」の登場人物にはライバルや悪者と呼べるキャラ クターが存在しません)、その徹底振りは魔法の存在すら危うくするほどで、例えば第31話では、本当は必要ないのだけどスポンサー の命令で仕方なしに嫌々ながら変身させてます…というスタッフの意見が滲み出ているようなシーンが登場するのです。 結果、生まれた物語は 最初から子供受けを放棄しているのかと思えるほど非常に地味なもの となっており、魔女っ子アニメの本来の姿から考えると明らかに異質なものとなっています。


 魔女っ子アニメでありながら異様に魔法の出番が少ないこと、スポンサーからの命令で嫌々やっているように見えてしまうくらい 申し訳程度にしか変身シーンを画面に出さないこと、そして魔法の存在を否定するという反則技ともいえる結末…。 以上のように、「エミ」における魔法の描き方は決してバランスのよいものではありません。製作者の色を強く出しすぎていることは 商品としてスマートではありませんし、当然のように魔女っ子アニメとしては明らかに失敗作であると断言せざるをえないでしょう。
 しかし、かたくなに我を貫き通した「エミ」は、だからこそ今見ても色あせることのない存在たりえたとも言えるのです。 可愛い美少女が描かれていれば十分という刹那的な作品が蔓延している現状を見ていると、おそらく本作と同じような道を進む 魔女っ子アニメは二度と現れないのではないかと思われます。
 「エミ」は、魔女っ子アニメ史上(というよりはアニメ史上)に屹立する孤高の傑作である。そう言い切っても、あながち間違い ではないはずです。



〜「魔法のスター マジカルエミ」 登場キャラクター紹介〜
 それでは「エミ」の大まかな内容紹介も終わりましたので、主な登場人物の紹介に移りたいと思います。が、レギュラー 出場する脇役がけっこう多いのでリストが長くなってしまいました。これでも数人は削っているのですが…。

香月舞
 こてまり学園の小学部に通う女の子。母方の祖父母が奇術団を運営している関係からか一流のマジシャンに なることを夢見ているが、生来の不器用さのおかげでマジックの腕前は上達する兆しが見えない。どちらかというと感情の起伏が 激しく、よく言えば天真爛漫、悪く言えば幼さが残る性格。
 同級生の小金井武蔵から好意を持たれているが、本人は一向に気付く気配を見せていない。いちご柄のパンツを愛用している。 口癖は「そんなことないよ」、「んべぇーっ!」。
マジカルエミ
 新生マジカラットの初日公演にて衝撃的なデビューを果たした、謎の天才マジシャン。その正体は魔法によって大人に変身した 香月舞で、彼女の憧れる希代の天才マジシャン”エミリー・ハウエル”から名前を頂戴している。
 後にTY局のディレクターである小金井によってアイドルとしてデビューさせられてしまう。ということは、デビュー当時の プリンセステンコーのようなものと考えればよいだろうか…。第11話にて「イヤでーす、ダメでーす」という超名言を放っている。
トポ
 突如として香月舞の前に現れ、彼女に魔法を与えた鏡の精。本来はただの光球のような姿をしているが、舞と付き合い だしてからはモモンガのヌイグルミに乗り移って生活している(なぜか周りの人間たちはヌイグルミが動くことを不思議がらない)。
 かなりお気楽な性格をしており、寝そべってクッキーを食いまくるだけのシーンが頻繁に登場した。自分をオモチャ代わりに する岬が大の苦手。
香月岬
 舞の弟。愛称はみーちゃん。
 マジシャン一家の血筋ゆえか手先が器用で、わずか4歳にして舞よりも上手くマジックをこなしている。とはいえ、 本人はマジシャンよりはテレビに登場するヒーローに憧れている様子。
 主な遊び相手にトポを選んでいるが、どちらかというとペットというより動くオモチャとして接しているように見える。
結城将
 舞の従兄妹にあたる高校生。両親がアメリカに移住しており、親戚である中森家に居候することになった。そのような家柄 ゆえか幼い頃はマジックに親しんでいたらしく、今もってその腕前はなかなかのものである。現在はボクシングに夢中になっているが、 本人に才能がないのか戦う相手が強すぎるのか、試合で勝利したためしがない。
 舞は将に対して淡い恋心を抱き、将はエミが気になっている風ではあるのだが、作中で細かいことは語られていなかった。
中森洋輔&晴子
 マジックグループ”マジカラット”を率いる仲良し夫婦。
 洋輔(右)は60歳にしていまだ現役のマジックの先生。骨董品蒐集が趣味。とはいえ、集めている物はガラクタに見えるのだが…。 「ま〜、なんだその〜」が口癖。
 晴子(左)はマジカラットの団長。しっかり者で気が強い性格をしているが、後先考えずに行動することが多く、あまり経営者向き ではないように見える。
ゆき子&進&明
 中森家に居候しているマジカラットの若手団員3人組。
 弘田ゆき子(左)は車を運転することが好きなのだが、その技術は殺人級だった。国分寺円から好意を持たれていることを 知っており、本人もまんざらではないようだが、二人の仲はイマイチ進展しなかった。
 塩沢進(右)はつかみ所のないように見えるが、意外と繊細な性格が第22話ではドラマになっていた。貧弱な体格を気にしてか、 バーベルを使って自室でトレーニングしている。
 松尾明(中)は太目の外見に反して身が軽く、コンピュータに強い。残念なことに彼を主役に据えた話が存在しなかったため、 他の2人に比べて影が薄い存在だった。
小金井&国分寺
 小金井滋(左)はジャパンテレビの敏腕プロデューサー。マジカラット初日公演に現れたエミの姿を一目見て”これは売れる”と 判断し、以降、彼女のプロデュースに尽力する。父子家庭であるらしく、息子の武蔵を溺愛している。なぜかチーズケーキが苦手。
 国分寺円(右)はジャパンテレビに勤務するお調子者の社員で、小金井の部下にあたる。弘田ゆき子とは男女の仲に発展しそうで していかない。ちなみに、カリントウは色や形がある物を思い起こさせるらしく大の苦手である。

 登場人物の紹介は以上で終了です。次項からは「エミ」のストーリー紹介に移ります。



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