デッドスペース

スピーカー

長岡鉄男氏 バックロードホーンスピーカー D58ES-R の製作

長岡スピーカーのバックロードホーンタイプの
スピーカーとしては最上位機種です。

20cmのユニットを1個使用し背面から出る音を
図のようにぐるぐると迷路状のホーンを通すことによって
38cmウーハー並みの低音と単一ユニットの利点である定位の
良さとネットワーク回路の無いクリアな音を実現させようという
仕組みです。

板材は音が良いとされるシナ、アピトン積層合板18mm厚を選びました。
フィンランドバーチという選択肢もありますが、こちらは木材の品質、厚みが不安定でオススメできないとのことです。

板取りは下図のように、1台で4枚使用します。完成時の重量が1台で60kgのヘビーな工作です。
板材の購入先は専業ショップのmakizou、カットもお願いしました。送料を含んで約11万円の買い物です。

makizouさんから送られてきたカット済み板材は品質、精度とも全く非の打ち所の無いものでした。
同じ寸法の板材を重ねると4辺とも完全に一致しています。
180度回転して重ねても完全に一致、そりゃ〜直角と寸法が出てりゃぁ当たり前なんですが、
その当たり前を大小70枚の材料すべてに実現するのがどんなに困難なことか
木を切った経験のある人にはわかるはずですネ。
少なくともウチの工房では、これほどの精度のカットは全く不可能であり、専業ならではの職人業です。


一番上の図面を良く見ていただくとわかりますが箱の6面は、なんと2枚張り合わせ!!36mm厚なのです。
しかも、最も大きい側板は2枚板矧ぎをした上での張り合わせ!。工作の難易度は非常に高いです。

組み立ては接着剤によるイモ付け、イモ付けでクランプをかけると必ずズレがでます。
なんらかの位置を固定する方法を考えなければなりません。

仕上げの塗りは内部まで塗る事にします。組み立ての手順も慎重に考えなければなりません。

このようにどのようにクランプするか、どこまで塗るか、組み立て手順は、などと考えると同じこの図面から
10人の人が作れば10通りのスピーカーができそうです。

側面断面図

正面図

18mm厚を2枚張り合わせ

内部も塗装するので、組み立てる前にサンディングをすることに。
水引き後に#240でサンディング、粉の拭き取りがまた大変です。
粉の拭き取りはベタベタのタッククロスが便利。
合板約7枚の裏表なので、実に地味で手間のかかる作業です。


内部の仕上げをツルツルにするかザラザラにするかで音がどうなるかは
賛否があると思います。
音道を通る周波数帯を考えれば、どちらでも影響は無いはずなのですが、
すべての音は漏れなく通してあげたい、出すぎる音があれば後で止めましょう。
という考えで、ツルツル仕上げとしました。

、、というのは建て前で、バックロードホーンは前面の開口が大きいので
内部も良く見えます。見栄え優先だったりします。


1.LeeValley FishGlue    オープンタイムが長く1時間 、クランプタイム12時間、水性、にかわの仲間らしい。
2.LeeValley 2002GF     Pongoo工房の常用接着剤、タレずに伸びがよく使いやすいイエローボンドの仲間
3.イエローボンド       乾くと固く固まるのでサンディングも可能。
4, タイトボンドV       耐水性のイエローボンド、強力な接着力と、食品安全性も高いらしい。
5、白ボンド          おなじみ木工ボンドです。乾いても弾力性が残ります。
6、2液エポキシボンド30分  参考出品です。

接着剤の選定

手持ちの接着剤です。
それぞれの特徴はこんな感じですね。

絞って1週間後です。

接着剤の塊をカッターで削ってみました。
感覚的な試験ですが、固い順に

1、フィッシュ
2、イエロー
3,2002とエポキシ
5、白ボンド
6、タイトV


2液エポキシは思いのほか柔らかく
タイトボンドVが最も柔らかいのは意外でした。

スピーカー用としては、できるだけ堅く固まるものが良いと思われます。
イエローボンドの遅乾燥特性のあるタイトボンドIエクステンドを選びました。
国内ではギターなど、楽器製作にもよく使われているようです。
1ガロンびんを購入、4.2kgありました、製作後2.1kgになっていました。

直角に組み立てるために、組み立てスコヤと、
コーナークランプを併用して直角を出しました。

段差が生じないように慎重に指でなでながら位置を決めて
さらにクランプで完全に固定、

矢印の方向から4〜5箇所にモクネジで締め上げます。
これは仮組みなので、一旦これはバラして、接着剤
を塗るのですが、これだけ、慎重に位置を決めても、
再組み立ての際は接着剤を塗って、強力にクランプすると、
ニュルリと滑って、わずかに位置がズレてしまうことが
わかりました。

慎重に位置を決めて、モクネジを打っても、バラして再組立てすると、
モクネジだけでは正確な位置の再現はできないのです。

仮組みの段階で通しでドミノを打ち込むことにしました。
ドミノは深さ最大28mmまでしか掘れないので、飛び出た
部分はフラッシュソーでカットします。

ドミノで位置を決め、モクネジで締め上げる。
このコンビネーションで精度、剛性はかなり高い工作が
できたと思いますが、一つの接着にも、やたら手間がかかります。


実際の組み立てでは、すべてを仮組みした後、ばらして
接着、クランピングします。
仮組みが終了した時点では、モクネジの下穴、ドミノの穴が
開けられているので再組み立てはスムーズかつ正確です。

接着する前に内部を塗装することにしました。
2液ウレタン塗料を使用、通常のウレタンより硬度が高いです。
組み立ててしまうと手が入らないので側板と内部構造とに分割して
塗ります。このような塗り方をすると、接着面と塗装面を完全に塗りわけることは
出来ませんが、この内部の塗りは、見栄えよりも内部の音道を硬化するのが
目的なので、気にしないことにしました。
接着面をマスキングして塗ります。

電気スタンドで光を映しながら塗るとムラの確認がしやすいです。

このスピーカーの板材で最も大きなものは570mm×1030mmの側板です。
これを2枚貼りあわせるのですが、板取りの都合でしょう、内側の板材は
2枚矧ぎ合わせて作らなくてはなりません。
家具の天板と違って目違い無しの工作精度が要求されます。キビシ〜。

しかし2枚張り合わせなので強度はさほど必要無いと思われるので、
ドミノチップに鉋をかけてユル目のドミノで板矧ぎをしました。

クランプを締めつつ手で慎重に目違いを修正しつつ、ゆっくりと締め上げて
いきます。

わづかに段差を感じる部分もありましたが、
薄く鉋をかければ、充分
許容範囲に収まったと思います。

このスピーカーの組み立てで最も困難なのは、
音道迷路と側板の接着でしょう。

外観にモクネジやドミノの跡を見せないようにする場合、
1枚側板で組み上げた後で2枚目を貼り合わせてそれらを覆い隠すの
が簡単ですが、
それでは、側板2枚貼り合わせのクランピングがまともには出来ません。

側板は先に2枚貼り合わせをするべきです。
2枚貼り合わせは内側に3cm間隔くらいで多量のモクネジで締め上げるという手も
ありますが、内側でも矢印部分は組上がったあとも良く見えますので、
側板は、クランピングによる圧着のみで仕上げることにします。

組み立て台に約80cmの2バイ材8本を縦置き。

8本それぞれの両端にパイプクランプをかけて圧着しようという
もくろみです。

赤の矢印が2枚重ねた側板です。
段差が無いように位置を決めた後、クランピングによるズレが
生じないよう6個のドミノで位置を固定しています。

2バイ材と、以前作ったボウクランプでサンドイッチしています。

12本のパイプクランプと6本のパラレルクランプで締め上げています。
パイプクランプは以前ヘルスメーターで圧力を測ったことがありますが、
100kgを軽く超えて測定不能だったので、仮に1本150kgとすれば、
総計で2トン位の圧力はかかっているのではないかと思います。

かなり盛大に接着剤がにじみ出るので中央付近にも圧力がかかって
いるようです。

側板内側の音道との接着部分に仮組みのときに開けておいたドミノ穴に
ドミノを打ち込みます。
2枚貼り合わせの前にあけたので、外側には見えません。

約20個の位置決めドミノを打ち込んでいますが
これらをを同時に差し込むのはトラブルがあるかもしれません。
念のために突起の先端を細く削ってスムーズに定位置に導くように
しました。

音道部分の接着

赤矢印は、にじみ出る接着剤をマスキングするためのテープ
です。
接着剤が硬化してしまうとはがしにくくなるので注意が必要ですが、
拭き取る手間がかなり省けます。


側板2枚と
3分割した音道部分が写っています。

いよいよ最終段階
背面、底面は小さく分割されてた板材なので、
最後に2枚貼り合わせしました。

作業スペースが少ないので
1台ずつ製作しました。
2台目はさすがにうんざり。
この段階で5ヶ月くらいかかってます。

塗装仕上げ

仕上げは2液混合タイプのウレタン仕上げです。
通常の1液のウレタンやラッカーなどと比べて、格段に硬度が高く、
透明で硬質の仕上がりになります。

内部も同じ塗料を使っています。
硬度の高い塗料で表面を固めることによって音質に良い影響がでる
ことを期待してのことですが、比較の対象が無いので、結果はなんとも
言えません。自己満足的な選択ですね。

内部の塗装は塗れてさえいれば、いいのでハケ塗りで、いいかげんに塗ったのですが、
案外、ムラ無くうまく塗ることができました。

外部の塗りはスプレー仕上げに挑戦しようと思っていたのですが、ハケ塗りでも
なんとかイケそうです。
ちょっと奮発して、良い刷毛、、、といっても\700ですが、を使うことにしました。
右が高級品?のハケ、ニス用仕上げハケ、毛足が短いのでコシがあって、毛の
ボリュームがたっぷりあります。含みが良く、滑らかに仕上がりました。

塗る前にもう一度#300でサンディング、大事なのは粉の拭き取りです。
これがイイカゲンだと濁りがでます。
下塗りを2回、上塗りはムラが怖いので1回塗りでやめました。

スピーカーの場合ほぼ単純な6面体なので、恰好の練習になりますね。
側面塗りはせずに、塗る面はすべて上向きにして作業を進めます。

飛行機が離着陸するイメージで端から端まで塗ります。
\700のハケは含みが良く使いやすかった。
対面に照明を置くと塗りムラの確認がしやすいです。

側面はマスキングして、、、
でも、慣れると不要

完成

塗りは比較的、うまく行ったと思います。接着剤の拭き取りの見落としが少しありますけど。
シナ合板の表面はメイプルのようなおもむきの美しい木目がありますね。
コグチ丸出しというのはいただけませんが、処理する余裕がありませんでした。
前面のコーナーはテーブルエッジビットでユルく丸めました。
スピーカー端子は使用せず、半田じか付けです。

木工を少しかじった私には、非常に困難な製作でした。
重いし、デカいし、やたら、精度を要求されます。
経験の無い人がいきなり高価な板材を買って、製作を始めるのはあまりに無謀、、、
と思いきや、たくさんのオーディオマニアの方々が、これを製作しています。
好きの一字で行動を起こされているのだと思います。
知識や道具にがんじがらめになっている自分を感じて、いかんな〜と思ってしまいます。



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試聴編に続く