「普通」の上質…
五感のやすらぎをもとめて

熱海荘
(福島県・磐梯熱海温泉)
2008/2
 2泊


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おいしい宿、くつろぎの空間、ゆったり湯浴み・・・そんな宿を求めている私たち。この「熱海荘」はそんな条件に合うに違いない・・・と思い、以前から行ってみたかった宿のひとつです。冬場のちょっと寒い時期ですが、連泊でくつろぎたいので、連休を利用して泊まる機会を得ました。


雪の季節、さて車でいけるのか?・・・1週間前にかなりの雪が降った模様で、雪道運転の慣れていない私たちは安全をみて断念。新幹線を乗り継いで、郡山に行くことにしました。上野から郡山は新幹線でわずか2時間弱。あっという間の距離でした。乗り換えた磐越西線は通常のローカル線ですが、こちらがかなり混んでいて、普通の通勤電車に乗っているような感じでした。


寄り駅の磐梯熱海駅に降りると、こぢんまりとしたロータリーのある駅前。ふと前を見ると、おっとりした年配の男性が車の前で待っていらっしゃるではありませんか。「Pockie様ですね。熱海荘でございます。お待ち申し上げておりました。」予約の最後の確認で新幹線〜磐越西線を乗り継いでいくことを連絡してあったので、駅に送迎にきてくださっていました。駅から電話すればいいのかな、と思っていた私はびっくり。しかもあとからわかったのですが、この紳士がなんとやどのオーナーの寺田さんだったのです。オーナー自ら車で駅まで迎えに来てくださっていた。。。それだけでまずとても印象があがりました。


宿に到着すると、本当に普通の入口。あら、これが高級旅館かしら?と思ってしまうほど。玄関の引き戸をひらくと、ちょっと奥まって上がりになっていました。ほんのりとお香をたいたかおりが鼻をさりげなくくすぐる。。。


両親と2部屋とった今回の宿は、温泉露天風呂付きの「草月」と洋室の「青嵐」でした。


「草月」は12畳ほどの和室に縁側、外の庭に露天風呂がついているというもの。源泉掛け流しのお風呂ははいると快適で、けっこうはまりました。ただし玄関横の駐車場側に面した部屋のため、眺めは望めません。


一方、「青嵐」はちょっとユニークな部屋。渓流側の奥の部屋で、ツインベッドにダイニングも可能なソファーとテーブル、そして横にはリクライニングチェアーが2つあります。窓からはさりげなく渓谷も眺められる角度です。実はこの部屋、当初は「隠し部屋」だったそうで、常連さんなどしか利用していなかったところだそうです。確かに窓の半分はちょっと裏方が見える場所で、純和風の宿にしてはこの完全な洋風が意外なミスマッチ。でもベッドやソファのほうがくつろげる人もいるし、立ち座りは楽です。リクライニングの椅子で転寝しながら川の眺めをぼやっと見るのも悪くないですよ。


お食事は部屋食、ダイニング食が選べます。ダイニングは2006年にできたもの。このやどで唯一少々モダンな雰囲気の場所です。眺めもよく、ダイニングが空いているようなら、そちらをおすすめしますね。やはり調理場から近いので、食事のタイミングもよく、サービスの目が行き届きます。宿の主人やサービスのスタッフとのコミュニケーションも愉しいものです。私たちは1日目は部屋、2日目はダイニングでいただきました。ダイニングではおススメ日本酒をいただきたいといったら、6種類ほどもってきてくださいました。趣味で集めたのか、幾種類ものお猪口を並べて選ぶ愉しさ、たっぷり味わえました。


夕食は一品ずつ供される懐石のコースです。きちっとした料理、さりげない器ながら、素材に対する気遣いがすばらしい。決して、豪華な材料をつかっているわけではないのです。たとえば、お刺身はなんとメジマグロ。たいてい本マグロの中トロとかだす宿がおおいですよね。メジマグロのすばらしいトロを楽しませてくれました。鱒の蕗のとう味噌焼もいい味噌のつかり具合と蕗の風合いが絶妙でした。蟹しんじょの揚げ物もさっくりと風合いがいい。蛸と大根の煮物など、田舎料理風なのに、やわらかく上品な味に仕上げたのは見事でした。べつに、霜降りブランド牛にイセエビ、雲丹、大トロ、などという高級素材だけがおいしいわけじゃない。むしろ、普通の素材をおいしく食べさせる工夫をする勇気・・・そのほうが大変だと思います。見劣りする食事は宿としては致命的ですから、ある程度高級な宿だとなおさら勇気がいるはずです。最後の豆ご飯に自家製福神漬けも本当においしくいただけました。福神漬けは最強です・・・初めての味でした。感服。。。


お風呂は、渡り廊下を通り浴室棟に向かいます。お風呂は、渓流沿いに男女1つずつ。それぞれが、大浴場と露天風呂になっています。宿の規模から小ぢんまりとしていて、ほっと落ち着く、ごく普通のお風呂です。私が気にいったは、清潔な脱衣所に横の縁側から見える渓流のながめです。五百川と雪の眺めのコントラストがすばらしく、ここからうっとり眺めていました。たっぷり使えるタオルに、過不足ないアメニティ。


お湯は、源泉掛け流しではありません。でもここの主人、「源泉掛け流し信仰」の最近の風潮にちょっと反発を感じているようで、ほんとうによいお風呂はいかに清潔に心地よく入れるかが重要だとおっしゃっています(HP参照)。そんな気骨な宿の心意気もありながら、でしゃばらないお風呂のつくりと自然の景観のよさをしみじみと感じました。


館内は小ぢんまりしたロビー横にソファと囲炉裏風のくつろぎスペースがあるのみです。こちらにオーナーの集めた珠玉の器や飾り物などが並べられ、簡単なショップを兼ねているようです。特にデザイナー風の家具などもなく、あえて普通の和の宿のまま。そして、あとは部屋でゆっくり過ごすのが基本です。


すべて「さりげなさ」が信条。オーナーのTさんがおっしゃるように、


「うちは普通のやどです」


というのは簡単。でもこの宿、やはり世の中の基準からいけば高級宿です。普通でありながら、それをいかに上質に仕上げるか。


食事は奇を衒わない、部屋の調度はさりげなく、お風呂も極普通に清潔に。。。そのような自然体でありながら、窓から見える眺めのよさ、部屋の居心地など、気配りは欠かしていないのです。深深と降る雪・・・静かさに、思わず「音」を感じました。朝の露天風呂は渓流から跳ね返る朝日のまぶしさ・・・・すてきな「光」を感じました。


見る
触れる
聴く
味わう
香る


まさに、「普通の上質」を五感で感じさせる宿でした。


データ: 963-1309 福島県郡山市熱海町熱海4-315
TEL 024-984-2101FAX 024-984-2102 E-mail yumeno21@ebony.plala.or.jp

総客室: 11室
温泉・風呂: 磐梯熱海温泉 
大浴場 男女各1、露天風呂1


料金(通常): 2名1室25,560円〜52,125円  チェックイン・アウト: 15:00  11:00

場所: 磐越西線 磐梯熱海駅より タクシーで3分。 磐越自動車道磐梯熱海ICより5分。

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