空戦のエースに学ぶ「プロマネ行動の原則」 ←*全篇印刷pdfはこちらをクリック

更新:2017.11.24 最終回 

Learn from Experience of Ace Fighter Pilots


はじめに

 第一次および第二次世界大戦において活躍したいわゆる撃墜王と呼ばれる各国空軍のエースパイロットたちの残した言葉の中から有益なものを抽出し、我々の社会経済行動における言葉として再び蘇らせる試みを行なった。彼らの発言録はプロジェクトマネジメントにおける行動の原則としても有意義な指針となり得るものと確信される。

 若くして斃れ、また命を賭して生きのびた彼らの戦場における行動原理は、平和時における我々の社会経済活動においても通用し得る有益な原理であり続けるだろう。


第一部 エースパイロットたちの遺した言葉

■ RAF(Royal Air Force)戦闘守則 イギリス空軍

1.「ドイツ機は常に太陽の中にあり」

(プロマネ行動の原則)

 目標は逆光の中にあり見えにくく、捉え難く、達成し難いものと心得よ。

 イギリス攻撃に当って、東方に位置したドイツ空軍は常に太陽を背にした時間帯に攻撃を仕掛けてきたという。

2.「相手の白眼をみるまで射撃を待て」

(プロマネ行動の原則)

 目標がはっきりしない間は性急な行動は慎むべし。内容があやふやな状態で仕事に着手するな。

測でこなせる程仕事は甘くない。 目標が射程距離内に達しないときに、いくら弾を撃っても当りはしな

い。無駄な攻撃で弾薬を消費した後に待っているのは敵からの容赦のない反撃だ。

3.「命中弾を与えた敵機を追うな。他の敵機に必ず撃墜されるであろう」&「敵機の撃墜確認を求めて撃墜されるより、撃墜未確認で帰投するを可とす」

(プロマネ行動の原則)

 ダメ押しは失敗の元。ついでの一行のソース改変が全店ロックを招く。

 「蛇足」である。本当はする必要が無いのに調子にのって、それをしてしまったばかりに全体が台無しになってしまうこと。(『戦国策)』)

4.「注意せよ!見えざる敵機が貴官を撃墜する」

(プロマネ行動の原則)

 常に警戒を怠るな。敵やリスクはいつも見えないところから狙ってくる。

 仕事における警戒とは主に情報収集によって行なわれる。

5.「ガールフレンドのことは考えるな。ドイツ機の攻撃に気付かず、その機が僚機を撃墜したときは、貴官に責任あり」

(プロマネ行動の原則)

 自分の部下から犠牲者を出してはいけない。

 部下が倒れるのはリーダーとしての自覚不足、技量不足、注意散漫によることが多く、リーダーの責任は非常に重い。

*注)僚機; 編隊は先頭に位置する指揮官が搭乗し攻撃に専念する「長機」と、部下が搭乗する後方の援護・哨戒を行なう「僚機」で編成される。

6.「無線通信には沈黙を保て。無線通信を混乱させてはならない」

(プロマネ行動の原則)

 他人同士の議論には不用意に割り込んで論議を混乱させてはいけない。

 単なる安心のための直接関係のない人たちへのCCメールの送付は他人の時間を浪費させる。

7.「敵地に撃墜されたときは脱出せよ。捕らわれたときは沈黙せよ」

(プロマネ行動の原則)

 絶対絶命の窮地に陥った時は、その場を一旦離れ身を伏せよ。


■ 米空軍における空中戦闘間に厳守すべき10項目の教訓

1.「先に発見したものが有利である」

(プロマネ行動の原則)

 危険物(リスク)は先に発見しなければならない。

 あらゆる戦闘的な行為においては、先に敵を見つけたものが有利である。桶狭間の戦いにおける信長しかり、ミッドウェー海戦における米軍しかり。劣勢のものが優勢のものを打ち破るためには攻撃目標の補足と、それに対する集中攻撃しかない。

2.「相互援助は不可欠である」

(プロマネ行動の原則)

 情けは人の為ならず。助け・助けられの関係が自他を共に助け組織を強化する。

 極限の組織的戦闘である空中戦において、味方同士の相互援助が勝利に不可欠なものだということが分かった。自分だけが良ければ他人のことはどうでも良いという考え方では仕事でも戦闘でも決して勝利を得ることはできない。

3.「戦闘に於いて勝利は失うもので得るものではない」

(プロマネ行動の原則)

 仕事を始めるにあたって、仕事はうまくいかない様に仕組まれていると覚悟しておいた方が良い。

4.「敵にミスを犯させるように仕向けよ」

(プロマネ行動の原則)

 成功したければリスクを減らせ。

5.「エネルギーを保持せよ」

(プロマネ行動の原則)

 憶測や不安感に駆られて人を動かすな、モノ・カネを消費するな、時間を浪費するな。

勝敗、成否を決するものはエネルギー、すなわち保持するリソースの質と量による。

6.「積極的であれ」

(プロマネ行動の原則)

 一歩先を読んで行動せよ。進むにしろ後退するにしろ積極的な理由の基に動け。

7.「切り返しの時期」

(プロマネ行動の原則)

 反転攻勢は時期を見極めよ。

8.「他に手段が無くなったならば、敵機に機首を向けよ」

(プロマネ行動の原則)

 逃げ切れない相手には正対せよ。避けられない問題には正面から取り組め。

9.「諦めてはいけない」

(プロマネ行動の原則)

 諦めてはいけない。諦めた瞬間に失敗が確定される。

10.「上方の敵を攻撃せよ」

(プロマネ行動の原則)

 まずは最大のリスクから排除せよ。

 枝葉末節のリスクにこだわっていると足元をすくわれる。

■ 米空軍空戦参考書

 「君がどんなにうまかろうと、世界中のどこかには君よりほんの少しだけうまいパイロットがいる。出会った敵は世界一のパイロットだと思え。そして相手がそうでないことが明らかになるまでは、世界一のパイロットに対するやり方で戦え。」

(プロマネ行動の原則)

 謙虚であれ。自分にどんなに自信があろうとも言葉にも態度にも現してはいけない。相手が誰であろうとも自分の最大のパフォーマンスで相対すべきだ。自分より上手な技術者はどこにでもいると思うべし。

◎トップガン(top gun;米国空軍士官学校の最優秀卒業生)のモットー

 「飛ぶために戦え、戦うために飛べ、勝つために戦え。」

(プロマネ行動の原則)

 生きるために仕事をせよ。仕事をするために生きよ。成功するために仕事をせよ。


■ エーリッヒ・ハルトマン(Erich Alfred "Bubi" Hartmann ドイツ、撃墜機数:352、1922年4月19日〜1993年9月20日)

1.「撃つのは前風防一杯に敵機が立ち塞がって見えるところまで接近した時だ」

(プロマネ行動の原則)

 目標を明確にせよ。目標から目をそらすな。目標に正対し有効な手を素早く打て。

2.「敵が優勢だと感じたら、基地へ帰ることにしている。もっとマシな日のために」

(プロマネ行動の原則)

 状況が不利だと感じたら無理をせず、一旦後退して冷静に善後策を考えよ。

3.「頭脳を使うことだ。空戦は頭脳によって決せられる。90%の撃墜成功確率がない限り冒険すべきではない」

(プロマネ行動の原則)

 頭脳を使うことだ。仕事の成否は頭脳によって決せられる。頭脳を使って、90%の成功率が得られるような条件整備と準備をせよ。

4.「一機撃墜したらコーヒー・ブレイク」

(プロマネ行動の原則)

 一仕事終わったら心と体を休ませよう。

エーリヒ・アルフレート・ハルトマン(Erich Alfred "Bubi" Hartmann, 1922年4月19日 - 1993年9月20日)

 ドイツ空軍の軍人。第二次世界大戦時のドイツ空軍のエース・パイロットの1人であり、空中戦での撃墜機数352機は戦史上最多である。

 独ソ戦において、格闘戦を避ける一撃離脱戦法で撃墜スコアを重ね、1944年8月25日に前人未踏の300機撃墜を達成した。総出撃回数1405回、うち825回の戦闘機会において最終撃墜数352機、被撃墜16回。敗戦後、ソビエト連邦での抑留を経て、1956年にドイツ連邦共和国(西ドイツ)空軍に入隊し現役復帰。1970年に大佐で退役。

 乗機メッサーシュミット Bf109Gの機首に黒いチューリップ風のマーキングをしていたため、ソ連空軍から「黒い悪魔」と恐れられた。


■ ヨアヒム・ミュンヒェベルク(Joachim Muncheberg ドイツ、撃墜機数:135、1918年12月18日〜1943年 3月23日、享年24歳)

 「過去の栄光は、現在のこの瞬間の栄光を意味するものではない。飛ぶことは生命の半分を担っているが、残り半分は注意することにかかっている」

(プロマネ行動の原則)

 いつまでも前と同じやり方を続けると失敗する。過去の成功は未来の成功を保証しない。状況・環境

は刻々と変化しているのだ。

ヨアヒム・ミュンヒェベルク

(Joachim Muncheberg、1918年12月18日〜943年 3月23日、享年24歳)

 第二次世界大戦時のドイツ空軍のエース・パイロットである。エース・パイロットとは空中戦で5機以上の敵機を撃墜した軍人パイロットを呼び表す呼称である。ミュンヒェベルクは500回以上の作戦飛行で135機を撃墜し、東部戦線での33機を含む戦果の大部分は西部戦線で挙げられたものであった。西部戦線での102機の戦果の中には46機のスーパーマリン スピットファイア戦闘機が含まれていた。


■ ディートリッヒ・フラバク (Dietrich "Dieter" Hrabak ドイツ、撃墜機数:125、1914年12月19日〜1995年 9月15日)

 「頭を使って飛べ。筋肉を使って飛ぶようなことはするな」

(プロマネ行動の原則)

 頭を使って仕事をせよ。頭脳労働者は筋肉を使って仕事をするな。

ディートリヒ・「ディーター」・フラバク

(Dietrich "Dieter" Hrabak、1914年12月19日〜1995年 9月15日)

 第二次世界大戦時のドイツ空軍のエース・パイロットである。1935年から1945年5月8日までドイツ国防軍、1955年から1970年9月30日に退役するまではドイツ連邦軍の空軍に奉職した。エース・パイロットとは空中戦で5機以上の敵機を撃墜した軍隊パイロットを呼び表す呼称である。第二次世界大戦中に1,000回以上の作戦行動に出撃し、東部戦線での109機と西部戦線での16機を含む125機の戦果を記録した。


■ ヴェルナー・メルダース (Werner Molders ドイツ、撃墜機数:115、1913年3月18日〜1941年11月22日、享年28歳)

 「空戦に興奮は禁物である。落ち着け。落ち着いて、ぐっと近寄り良く狙って撃て」 &「まず落ち着け。そして正確な射角でずっと近寄れ。距離200m。よし、撃て!」

(プロマネ行動の原則)

 論議において、交渉ごとにおいて、緊急トラブル対応において、あせりと興奮は禁物だ。

 落ち着き、冷静さを保ち、相手と状況を良く把握し、思考・行動せよ。頭に来てはいけない。短気は損気である。

ヴェルナー・メルダース

(Werner Molders 、1913年3月18日-1941年11月22日、享年28歳)

 スペイン内戦、第二次世界大戦で活躍したドイツ空軍のエース・パイロット。最終階級は大佐。ダイヤモンド剣柏葉付騎士鉄十字章受章。115機撃墜。


■ アドルフ・ガーランド (Adolf Galland ドイツ、撃墜機数:104、1912年3月19日〜1996年2月9日)

 「先に相手を発見した者が、空戦の主導権を握ることになる」&「空戦の第一原則は、先に獲物を見つけることだ」

(プロマネ行動の原則)

 先にリスクを見つけたものが仕事の主導権を握ることになる。

アドルフ・ガーランド(Adolf Galland 、1912年3月19日〜1996年2月9日)

 ドイツの軍人。最終階級は空軍中将。戦闘機パイロット、戦闘機隊総監を務め、第44戦闘団司令官として終戦を迎えた。出撃回数705回、撃墜機数104機のエースパイロットである。


■ マンフレート・フォン・リヒトホーフェン (Manfred Albrecht Freiherr von Richthofen ドイツ、愛称「レッドバロン」、撃墜機数:80、1892年5月2日〜1918年4月21日、享年25歳)

1.「空を駈け、敵を見つけ、撃墜しろ。あとはくだらんことだ」

(プロマネ行動の原則)

 仕事に専念せよ。雑念・雑事に振り回されるな。

2.「悔しさが、惨めさが、悲しさが男をつくる。強大な敵こそが、真に偉大な男につくりあげる」

(プロマネ行動の原則)

 負けたら悔しいと思え。到らなければ惨めに感じろ。悲しければ泣けばいい。困難なくして成長なし。古語に曰く、艱難汝を玉にす。

3.「空中戦に興奮は禁物である」

(プロマネ行動の原則)

 感情的な興奮は事実・現実をゆがんで見せる。仕事は感情本位ではなく事実本位で遂行すべし。

マンフレート・フォン・リヒトフォーフェン(Manfred Albrecht Freiherr von Richthofen, 1892年5月2日〜1918年4月21日、享年25歳)

 第一次世界大戦における帝政プロイセン陸軍の騎兵将校(航空士官)。第一次大戦参加各国で最高の撃墜機記録(80機撃墜、ほか未公認3)保持者。乗機を鮮紅色に塗装していたことから「レッドバロン」や「赤い悪魔」の異名で呼ばれた。80機撃墜の翌日、フランスソンム川コルビエ近くで、英軍機を低空で追撃中にオーストラリア第53砲兵中隊の軽機銃に撃墜されて戦死。 彼は、騎士道精神にあふれ、共同撃墜の場合は戦友に功名を譲るなど戦友愛をもち、ストイックで責任感が強く統率力にとんでいた。 身長はそれほど高くない(180センチ)が屈強な体格をもち、金髪を短く刈り上げたハンサムな彼は、ドイツ帝国きっての女性のあこがれの青年であった。 ゆっくりとした口調で語り、プライドが高く孤高を保った(しかし、戦友はそれをはにかみやの性格を隠す為のものであると考えていた)。 攻撃に熱中すると周囲の状況が全く見えなくなってしまうという大きな欠点があり、そのため幾度となく窮地に陥り、最後には致命的な結果を招いた。


■ ビリー・ビショップ(William Bishop ウィリアム・ビショップ、イギリス、撃墜機数:72、

8 February 1894〜11 September 1956)

1.「空戦で最も重要なのは射撃で、次が射撃に到る接近戦術だ。飛行技術などドン尻だ」

(プロマネ行動の原則)

 コミュニケーションなくして仕事はなし得ない。コミュニケーションで最も重要なのは伝わることで、次が伝わるための工夫だ。弁舌力などは最後でよい。

2.「敵パイロットの上半身に弾丸を撃ち込め。人間は上半身を撃ち抜かれれば、通常の場合、その機能を喪失する」

(プロマネ行動の原則)

 仕事をうまくやりたければ、その仕事の要とツボを押さえることだ。人・モノ・カネ・情報において、その大局的有り様を鳥瞰せよ。人においては誰がキーパーソンなのか、モノ・カネ・情報においては何が真に価値有るものなのかを知ることだ。要とツボを抑えたら枝葉末節にはこだわるな。

ビリー・ビショップ(William Avery "Billy" Bishop、8 February 1894〜11 September 1956)

 イギリス空軍司令官、撃墜数72。第一次世界大戦におけるカナダ人のエースパイロット。公式撃墜数72機。第二次世界大戦中においてはイギリス連邦空軍訓練計画の策定および促進に貢献した。


■ 坂井三郎 (日本、撃墜機数:64、1916年8月26日 - 2000年9月22日)

1.「読みを深くし、自分が敵を撃つ時に、自分を撃つ事のできる敵機がいないようにせよ」

(プロマネ行動の原則)

 まさに決断・行動しようとする時、もう一度後ろを振り返って見よ。

2.「射撃ははやる心を抑え、体当たり寸前まで敵機に近接し、弾丸を全部命中させる気持ちで発射把柄を握れ」

(プロマネ行動の原則)

 問題の要とツボを押さえ、そこに全エネルギーを投入せよ。

3.「真の名人は、めったに格闘戦にははいらない。格闘戦とは窮地にはいったときの脱出法と心得よ」

(プロマネ行動の原則)

 真に喧嘩に強いものは、めったに喧嘩はしない。喧嘩は自分が窮地に陥った時の脱出法と心得よ。君子危うきに近寄らず。

4.「巴戦とは苦労を重ねて一機墜とすだけ。空戦は据え物斬りと心得よ。スーッと寄っていって、パッと斬る。これが極意である」

(プロマネ行動の原則)

 やみくもに走っても得るものはない。不合理な努力は報いられない。要とツボを押さえてバッサリと斬るべし。

坂井 三郎(1916年8月26日〜2000年9月22日)

 大日本帝国海軍の戦闘機搭乗員(パイロット)。太平洋終戦時は海軍少尉、最終階級は海軍中尉。 終戦までに大小多数の撃墜スコアを残す日本のエース・パイロットとして知られる。戦後に海軍時代の経験を綴った著書『大空のサムライ』は世界的ベストセラー。 坂井には、僚機の被撃墜記録がない。これは簡単に達成できることではなく、同じく僚機被撃墜記録がないとされるドイツ空軍のエーリヒ・ハルトマンも1機撃墜(搭乗員は生還)されていた事実が判明したことから、第二次世界大戦の歴戦搭乗員の中でこれを成し遂げたのは判明している限りでは坂井だけである。 飛行機を上手に操縦することが誇りであった彼の自慢は「ただの一度も飛行機を壊したことがないこと」、「自分の僚機(小隊の2・3番機)の搭乗員を戦死せしめなかったこと」であり、撃墜スコアではないことは彼の著作に何度も書き記されている。また低燃費航行にも長けており、最小燃費の最高記録保持者を自負していた。


■ マノックのルール(Edward Corringham ”Mick” Mannock ミック・マノック、イギリス空軍、撃墜機数:61、24 May 1887 ? 26 July 1918、享年31歳)

1.「降下攻撃を心がけよ。敵機との距離が100ヤードになるまでは射撃を我慢しろ」

(プロマネ行動の原則)

 自分やチームを優位の状態に持ち上げた後に行動に移れ。

2.「東側からの攻撃で奇襲せよ(ドイツ軍との戦線の関係から・・・後方から攻撃しろの意)」

(プロマネ行動の原則)

 地の利を生かせ。時間優位性を生かせ。状況優位性を生かせ。

3.「太陽や雲を利用して奇襲をかけろ」

(プロマネ行動の原則)

 環境優位性を生かせ。

4.「訓練と適度な投薬により、常に体調を万全にしておけ」

(プロマネ行動の原則)

 仕事にいそしみ適度な休息を楽しみ心身を健全に保て。

5.「しっかりと照準しろ。移動目標に命中させられるように訓練しろ」

(プロマネ行動の原則)

 目標をはっきりさせよ。そして移動する目標を追尾せよ。

6.「空中の機体を発見する術を身につけろ。遠方の彼我不明機は、味方と判るまでは敵として対処しろ」

(プロマネ行動の原則)

 問題やリスクを発見する術を身につけよ。白黒がはっきりするまでは問題だと思え。

7.「敵機の死角を覚えておけ」

(プロマネ行動の原則)

 我彼の弱点を知っておけ。

8.「偵察機は上から攻撃しろ。二人乗りの機体は後下方から攻撃しろ」

(プロマネ行動の原則)

 交渉事においては相手の弱点から攻めよ。

9.「素早く旋回する術を身につけろ。空戦では素早い旋回が最も重要である」

(プロマネ行動の原則)

 回避力のない実務力は暴走力に過ぎない。実務力のない回避力は優柔不断に過ぎない。リスク回避力と実務力が揃って仕事力となる。

10.「空中で標的との距離を正確に把握することは重要である」

(プロマネ行動の原則)

 『もう』は『未だ』であり、『未だ』は『もう』である。相手や対象物との間合いや頃合(タイミング)を正確に把握せよ。

11.「単機の敵は囮である。攻撃前に周囲を警戒しろ」

(プロマネ行動の原則)

 おいしい話には注意せよ。飛びつく前に確認せよ。毒饅頭に食いついてはいけない。

12.「日差しの強い日は、激しいバンクを控えろ。太陽が翼に反射して、遠方から発見されてしまう」*(注.バンク;翼を傾ける動作)

(プロマネ行動の原則)

 不用意な合図を送るな。あなたの背後で敵が見ている。壁に耳あり、障子に目あり。

13.「空戦中は常に旋回し、射撃する時以外は直進するな」

(プロマネ行動の原則)

 乱戦状態に陥った場合、静止してはいけない。素早く対処し、素早く脱出すること。

14.「どんな状況にあっても降下して逃げてははならない。敵は偏差射撃無しに命中させることができる。弾丸は飛行機よりも速い」

(プロマネ行動の原則)

 敵に相対した時に背中を見せて逃げてはならない。容易に背中を撃たれてしまう。

15.「パトロール中は、時計から目を離してはいけない。風向風速に気を付けろ」

(プロマネ行動の原則)

 明日、来週、来月に何が起きそうか常に考え、状況・条件の変化に気をつけろ。

ミック・マノック

(Edward Corringham "Mick" Mannock、24 May 1887 ? 26 July 1918、享年31歳)

 イギリス空軍少佐、撃墜数61機。

 第一次世界大戦時のイギリス空軍のエースパイロット。最初に配属された第40中隊では臆病者の不適格者だと疑われながらも、彼は撃墜数を積み重ね始めた。彼は最初の勝利の為に非常に危険とされる気球防御網の破壊攻撃を行い、粘り強い集中力による射撃技術によって最初の戦闘行で15機の撃墜を記録した。

 彼は軍用機の戦術に関する世界で最初の理論家の一人であり、空戦における用心深さと共にその積極的なリーダーシップは名声高いものであった。第85小隊における指揮にあたって、彼の誇りは、今まで決して僚機(編隊における部下の戦闘機)の部下を死なせたことがないということであった。

■ アレクサンドル・ポクルイシュキン(Alexander Pokryshkin ソビエト、撃墜機数:59、1913年3月6日〜985年11月13日)

 「勝利の要因は、作戦行動と射撃にあり、そして成功は至近距離からの射撃である」

(プロマネ行動の原則)

 目標を明確にせよ。目標から目をそらすな。目標に正対し有効な手を素早く打て。

アレクサンドル・ポクルィシュキン(1913年3月6日〜1985年11月13日)

 ソ連の軍人、飛行士、エース・パイロット。最終階級:航空元帥。ソ連邦英雄(3度)。1942年からソ連共産党員。ロシア人。撃墜59機(非公式75機)、協同撃墜6機を記録した。


■ ヘルウート・ヴィック(Helmut Wick ドイツ、撃墜機数:56、5 August 1915 ? 28 November 1940、享年25歳)

1.「冷静さを保て」

「よき戦闘機パイロットになるためにはなによりまず、よい意味で無神経であることが必要だ。冷静な上にも冷静。無神経と思われるほどの冷静さが必要である。」

(プロマネ行動の原則)

 良き仕事人になるためには、不都合な事実であっても、それを直視できる冷静さが必要である。修羅

場であればある程冷静な上にも冷静であること。」

2.「頭脳は明快であれ」

 「また、戦闘機パイロットは向こう気の強い荒武者でなくてはならないという議論には私も賛同するが、

しかし、無思慮な猪武者であってはならない。頭脳が常に明快であり、注意が絶えず綿密であることが

必要である。無謀な猪突は自殺行為に等しいことが往々にしてある。戦闘機は瞬間的に生死を決す

るものであるから明晰にして冷静な頭脳をもって、どのような変化にも即応し、臨機応変な攻撃、防御

の策を巡らすべきである。」

(プロマネ行動の原則)

 頭の悪い体育会系では生き残れない。知的体育会系であれ。明晰な頭脳によって、どの様な変化に

も即応し、臨機応変な攻撃、防御の策を貫徹できる気力・体力を保持すべし。

3.「戦場の変化に応じた適切な攻撃と防御を行なうべし」

プロマネ行動の原則)

 目標はいつまでも同じ位置には止まってはいない。時々刻々と変化・移動する目標に沿うように行動

せよ。リスク排除は先制攻撃であり、いつもの業務は防御なり。

ヘルウート・ヴィック

(Helmut Paul Emil Wick、5 August 1915 ? 28 November 1940、享年25歳)

 ドイツ空軍少佐。4度の最高騎士十字勲章受賞。撃墜数56機。

 マンハイム出身。1986年ドイツ空軍に入隊、戦闘機パイロットとして訓練を受けた。リヒトホーヘンの二番機としてフランスおよびイギリスとの戦いに参戦。1940年10月に少佐に昇格。ドイツ空軍において最も若いJG2の攻撃僚機のポジションおよび階級を与えられた。

 1940年11月28日、イギリス南岸の島Isle of Wightの付近で撃墜された。おそらく、イギリス空軍のJohn Dundasによるもので、行動不能、推定死亡として通知された。

その時まで彼の空戦における敵機の破壊記録は56機であり、その時点でのドイツ空軍のリーディング戦闘パイロットであった。彼の西側同盟に対する全ての勝利はメッサーシュミットBf109によるものだと語った。


■ ベルケの空戦の八ヵ条(Oswald Boelcke オスヴァルト・ベルケ、ドイツ、撃墜機数:40、19 May 1891 〜28 October 1916、享年25歳)

1.「攻撃をかける前に有利な情勢を確保せよ。可能な限り太陽を背にすること」

(プロマネ行動の原則)

 行動する前に準備をせよ。準備による有利なポジションの確保は仕事において最大の武器となる。 戦いに出る前には良く訓練されたパイロットと良く整備された戦闘機と十分な燃料の準備が必要であるのと同様に、仕事を始めるに当たっては良く育成された人材と必要な機材と十分な予算と時間が必要である。どれか一つが欠けても無事には終われない。

2.「一旦開始した攻撃は完遂せよ」

(プロマネ行動の原則)

 一旦開始した行動はやり抜け。中途放棄は落胆しか残さない。

 仕事における中途半端な行動は、隙や緩みを生み出し、即失敗の元となる。自分が未熟だと思えば、地道な努力を続けることだ。継続は力となる。

 古語に曰く、「ど馬も千里を致すは可なり。駿馬は一夜にして千里を致す。ど馬も鞭打ち鞭打ち至らば、ついには千里を致す」。

3.「射撃は至近距離からのみ行うこと。また、正確に照準できる目標に対してのみ射撃せよ」

プロマネ行動の原則)

 目標を明確にせよ。そして適時なタイミングで目標達成のために行動せよ。

 目標を立てその実現に向かって地道に行動するという実に当たり前のことが当たり前に実行されない現実の状況は多くの人々における脱力感とさまよえる心象を物語っている。狙うべき的がなくて何を狙おうというのだろうか。自己の狭い利益のみに執心する者は、その実現が困難な社会情勢下においてはたやすく自己の目標を放棄してしまう。

4.「敵機から目を反らしてはならない。また、敵のトリックにひっかかるな」

(プロマネ行動の原則)

 目標から目を反らしてはならない。動く目標に幻惑されるな。

 恐怖の現実を直視することはその緊張感において耐えがたいものとなるということを改めて認識しておく必要がある。目の前に迫り来る敵は見たくなくとも、見るしかない。脳が見たくないと思っても現実の敵や困難は目前に迫って来る。嫌なもの嫌いなものを忌避するだけの生活習慣は人における危機回避能力を著しく低下させる。嫌なもの嫌いなものを無理に好きになる必要はないが、少なくともそれを知り、それに慣れる事だ。

 古語に曰く、「心ここにあらざれば 見えても見えず」。

5.「どんな攻撃においても、敵の後方から攻撃することが最も重要である」

(プロマネ行動の原則)

 目標達成のための最短距離・最大効果を考え行動せよ。

 最小の力で最大の効果が得られるものを常に探すことだ。そして最も価値の高いものの順に攻略することだ。

6.「敵に降下攻撃をかけられた際は、回避しようとせず敵に向かい合うように飛行せよ」

(プロマネ行動の原則)

 困難に直面した際は、回避しようとせず真正面から相対せよ。

 目前の困難さにおじ気づき現実逃避の果てに自分勝手に立てた安心目標に向かっていっても何も得るものはない。桃のなっていない山にいくら登ってみても桃は手に入らない。労多くして功なしとなる。不合理な努力は決して報いられない。

 目前の問題を正視せよ、正対せよ。

7.「敵領土上空を飛行する際は、離脱ルートを頭に叩き込んでおけ」

(プロマネ行動の原則)

 危険な状況に際しては予め解決方法を用意せよ。

 どのような計画も万全ということはない。予期せぬ障害や失敗はまま起きるものだ。ものごとを計画するに当たってこのことを必ず心に留め、それに対する備えをしておくべきだ。コンティンジェンシー・プランとはこのことを指している。最後にこれがあなたの命を救う。

8.「4機ないし6機による編隊攻撃の原則を忘れるな。単機戦闘に分離する際は、1機の敵に複数がくっついていかないように注意せよ」

(プロマネ行動の原則)

 独断専行に走らずメンバー自身に考えさせよ。スタンドプレーは百害有って一利なし。手柄を争うべからず。空気の読み合いをするべからず。

 リーダー、メンバーともに自己の役割を明確に知り行動すること。

オズワルド・ベルケ(Oswald Boelcke、19 May 1891 ? 28 October 1916、享年25歳)

 第一次世界大戦時のドイツ空軍のエースパイロットであり、最も有力な偵察隊リーダーの一人であり初期の空戦の戦術家であった。ベルケは空戦戦略の父ともドイツ戦闘機空軍の父とも言われる。彼は空戦の原則を最初に形式化し、ディクタ・ベルケ(Dicta Boelcke)として公開した。個人のパイロットに原則を公開する一方、彼の真意は個人単独の奮闘よりも編隊戦闘に使用されることにあった。 ドイツ空軍の筆頭エースパイロットであったマンフレッド・フォン・リヒトホーヘン(通称レッド・バロン)はベルケの門下生であり、彼がベルケの勝利記録を越えた後も、彼を先の指導者として崇拝し続けた。


■ ジョニー・ジョンソン(James Edgar "Johnnie" Johnson イギリス、撃墜機数:38、1915年3月9日〜001年1月30日)

 「編隊長の責務は可能な限り速やかに、なしうれば敵に気付かれないうちに、味方の全ての機銃が敵機を狙い射ちできる位置へ編隊を導いていくことだ。」

(プロマネ行動の原則)

 リーダーの重要な責務の一つは、チームから一人の犠牲者も出さないということである。

 そのためには初動時において過不足のない準備と体制を整えることだ。粗悪な見積りと劣悪な要件

定義はプロジェクトを滅ぼす。

ジェームズ・エドガー・”ジョニー”・ジョンソン

(James Edgar "Johnnie" Johnson, 1915年3月9日〜2001年1月30日)

 イギリス空軍の軍人で、第二次世界大戦中のエース・パイロット。ドイツ空軍機を34機撃墜した。英空軍公認の撃墜数38機は英空軍トップとなる。RAF認識番号83267。

 バトル・オブ・ブリテンには参戦しなかったが、第二次世界大戦中、515回出撃したうち、空中戦での被弾はたった1発であった。撃墜記録の全てが戦闘機であり、戦闘機のみの撃墜数では、ソビエトも含めた全連合軍の中でも最多の記録である。


■ マランの空戦十則(Adolf Gysbert Malan アドルフ・マラン、イギリス、撃墜機数:32、1910年3月24日〜1963年9月17日)

1.「敵の白眼が見える まで待て。敵を視界に捉えてる間に、1?2秒の短い射撃を行え」

(プロマネ行動の原則)

 目標が明確になるまで資源や時間を浪費するな。

 目標が明確にならない内に走り出すことは博打的な行為と同じだ。当たるも八卦、当たらぬも八卦で、実際のところほとんどが外れる。仕様未定の事前着手が良い例である。

2.「射撃の間は何も考えるな。身体を引き締め、両手で操縦桿を握り、照準器に集中せよ」

(プロマネ行動の原則)

 行動している間は余分なことを考えず目標に集中し行動に専念せよ。

 余計な欲や感情的雑念に支配されていては当たる弾も当らない。あちこちに気を散らさず仕事においては一旦走り出したら、その行動に集中することだ。

3.「常に警戒を怠るな」

(プロマネ行動の原則)

 常に警戒を怠るな。背後から危機やリスクがあなたを狙っている。

 仕事をなめている場合や過労状態の時に大きな失敗を起こすことが多い。簡単に思える仕事においてすらなお工夫の余地を考えるべし。過労の時は早めに休養をとるべし。

4.「高度は君に先制攻撃のチャンスを与える」

(プロマネ行動の原則)

 用意周到な準備は仕事における成功の優位性を高める。

 事前準備は仕事を成功に導く水先案内人である。攻略すべき対象は明確になったか。必要な人材は用意したか。必要な技術と機材は用意したか。必要な資金は確保されたか。

5.「常に旋回し攻撃に立ち向かえ」

(プロマネ行動の原則)

 常に現場を巡回し問題を見つけ出せ。

 仕事は一人相撲ではない。常にアンテナを張り巡らし状況の変化をいち早くキャッチすること。

6.「決断は迅速に。君の戦術がベストでなかったとしても、素早い行動はベターである」

(プロマネ行動の原則)

 「巧遅は拙速に如かず(孫子)」

 決断は迅速でなければ時を逃し優柔不断に陥る。どのように素晴らしい計画であっても実行されなけ

れば意味がない。例えベストの案でなくともベターな案ならば素早くそれを実行すべきだ。

 古語に曰く、絵に描いたモチは食べられない。

 *注)「巧遅は拙速に如かず」;「巧遅」とは、出来はよいが仕上がりまでが遅いという意味。「拙速」とは、出来はよくないが仕事が早いという意味。場合によっては、ぐずぐずしているより、上手でなくとも、迅速に物事を進めるべきだということ。(『孫子』 )

7.「戦闘空域では30秒以上真っ直ぐ飛んだり、同高度を維持するな」

(プロマネ行動の原則)

 同じ事を繰り返していると、いつか必ず失敗する。

 変化の激しい世の中においては惰性的・慣例的・慣習的な思考や行動はかえってリスクが多いものと心得よ。

8.「対地攻撃を行う際は、上空で直衛に当たる編隊を残しておけ」

(プロマネ行動の原則)

 全力投球・全員突撃は成功を約束しない。必ず予備を残しておけ。敵は一人ではない、問題は一つではない。

9.「航空戦のキーワードは『イニシアティブ(先制)』『アグレッション(攻勢)』『ディシプリン(規律)』『チームワーク』である」

*注)「initiative(先手・先制・率先)」「aggression(攻撃・積極性)」「discipline(訓練・規律・自制)」と「teamwork(チームワーク・協力・共同作業)」。

(プロマネ行動の原則)

 仕事は組織戦である。

 組織戦に必要なことは、良く訓練されたチーム、連携プレー、積極的な行動による先手必勝にある。

10.「ゴーは素早く、パンチは強烈に、そして逃げ出せ」

(プロマネ行動の原則)

 行動は素早く、効果的に一発で仕留め、終わったらサッサと次の行動に移れ。

 いつまでも効果のないやり方でだらだらとした仕事を続けてはいけない。

アドルフ・ギズバート・マラン(Adolf Gysbert Malan、1910年3月24日〜1963年9月17日)

 イギリス空軍の軍人、エース・パイロット。RAF認識番号37604

 ヒュー・ダウディングはマランについて次のように語っている。 「私は彼という人材を戦闘機軍団の得難い宝の一つと思っていた。単に自分の撃墜記録にのみ固執するパイロットではなく、常に飛行隊全体のためを思い、自分のもとで戦う若い部下達の生命の安全を第一に考えているパイロットである」。最終階級は大佐で第二次大戦終結後南アフリカに帰国、1963年に逝去した。マランの唱えた「空戦の十則」は、イギリス空軍の各部隊に配布された。


■ 加藤建夫(日本、撃墜機数:18+、1903年9月28日〜1942年5月22日、享年38歳)

 「射撃せむとせば、まず後を見よ」

(プロマネ行動の原則)

 まさに決断・行動しようとする時、もう一度後ろを振り返って見よ。

加藤 建夫(1903年9月28日〜1942年5月22日、享年38歳)

 大日本帝国陸軍の軍人、戦闘機操縦者。最終階級は陸軍少将。北海道上川郡東旭川村(現:旭川市東旭川町)出身。旭川中学(現:北海道旭川東高等学校)、仙台陸軍幼年学校、陸軍士官学校、陸軍大学校(専科)卒。

 太平洋戦争(大東亜戦争)緒戦時に、戦隊長として一式戦闘機「隼」装備の「加藤隼戦闘隊」こと、飛行第64戦隊を率い活躍した帝国陸軍(陸軍航空部隊)のみならず日本軍を代表するエース・パイロットの一人。


■ チャック・イェーガー(Charles Elwood "Chuck" Yeager アメリカ、撃墜機数:11+1/2、1923年2月13日〜)

1.「いいかい、兵士が空にいるのは、敵を叩き落とすためだ。敵が戦闘機だろうと爆撃機だろうと、得物が機関砲だろうとミサイルだろうと、それだけは変わらない。どんな戦争だろうと、こいつだけは同じなのさ」

(プロマネ行動の原則)

 ルーチンワークはやりたくない。さりとて難しい仕事もやりたくない。あなたがやりたい事は何ですか。誰でもできる事なら誰も仕事としては頼んだりしない。あなたの仕事は何ですか。

2.「集中力、それが全てだ。集中力でもって敵に狙いを定め、恐怖や疲労を忘れることができる。狭いアクリルの棺桶の中でな」

(プロマネ行動の原則)

 感情に振り回されず物事に集中せよ。問題の要に集中し一点突破全面展開せよ。

チャールズ・エルウッド・"チャック"・イェーガー(Charles Elwood "Chuck" Yeager、1923年2月13日〜)

 アメリカ陸軍及びアメリカ空軍の軍人。退役時の階級は、空軍准将。公式記録において世界で初めて音速を超えた人物として知られる。


■ イワン・コチェドゥプ

「人の性格に違いがあるように、空戦もまた実に多様である。普遍の戦闘形式などというものはない。だから片時も油断してはならない」

(プロマネ行動の原則)

 仕事向きのお誂えの性格などないのだ。あるのは自分の性格をどれだけ仕事に生かせるかなのだ。

イワン・コチェドゥプ(1920年6月8日〜1991年8月8日)

 62機の敵機を撃墜したソ連第一のエース・パイロット。ウクライナ人。赤色空軍の戦闘機パイロットとして第二次世界大戦に参加し、三度「ソ連英雄」の称号を受けた。戦後はソ連空軍の指揮官として朝鮮戦争に参戦した。その後、空軍の将官として勤務を続けた。


■ ブーツ・ブレス

1.「高い巡航速度を保持せよ!」

(プロマネ行動の原則)

 身の回りの浪費や無駄を排除せよ。最も資源燃費の良い仕事に心掛けよ。資源や燃料が尽きたら、そこで一巻の終わりとなる。

2.「No guts, no glory(ガッツ無くして栄光無し)」

(プロマネ行動の原則)

 ガッツ無くして栄光なし。決して諦めてはいけない。


■ フレデリック・ラビー

 「空中での射撃は、90%が個人の素質であり、10%が照準である」

(プロマネ行動の原則)

 『猫に小判』『豚に真珠』にならぬよう、勉学に労働によくよく励み自分を高めよ。


第二部 空戦の法則からプロマネの法則へ〜空戦の法則が教えてくれるもの

 航空戦術家であり優れた戦闘機パイロットであったジョン・ボイド(1927.1.23−1997.3.9、米空軍)は、航空戦におけるパイロットの戦闘行動は、「観察 Observations」「目標の把握 Orientation」「決断 Decision」「行動 Action」の四つのフェーズで成り立っているとして、航空戦における行動のプロセスをこれらの頭文字をとってOODA(ウーダ)ループと名付けました。

 敵に遭遇した場合のこれらの四つのプロセスの前に「準備」のプロセスを、最後に「振り返り」のプロセスを加えた六つのプロセスでトップガンたちが遺した空戦の法則を現代のプロジェクトにおける個人あるいは組織の行動の原則として甦らせてみます。

1. 戦闘の準備 Preperation 

 戦闘に限らず、現代のビジネスシーンにおける競争・交渉・駆け引きにおいて、その決断および選択を確かなものにするためには事前の準備が大きな影響を及ぼします。準備段階において必要な思考や行動について、以下の8項目を取り上げました。

(1) 勝利をもたらす行動の要素

【行動の法則1】 先手必勝

 「航空戦のキーワードはイニシアティブ(先制)・アグレッション(攻勢)・ディシプリン(規律)・チームワークである」

(アドルフ・マラン、イギリス)

 空戦に限らず、人間同士や組織同士の競争においても、勝利をもたらす行動の重要な要素は、先手を取ること、積極的な行動、規律的な行動、およびチームワークの四つにある。

 先手を取るとは、先に条件を提示するとか、先に意見を述べるとか、先に手を挙げるとかという行動によって現されるもので、その場の状況を自分のコントロール下におくために必要となる。 一方、不安や恐怖にとらわれることによる受け身的な姿勢などの過剰防衛的な姿勢は、自己の立場をより不利な状況に追い込むことが多い。

 普段から良く学び、良く訓練しておくことが積極的な行動およびぶれない行動の元になり、更にプロジェクトなどの組織戦においては、個人の連携プレーが強力な実行力を生み出す。

 びびって逃げるのではなくびびりながらも前に一歩を踏み出すことが状況を改善する。

(2) 目的への集中

【行動の法則2】 仕事をする意味をはっきりと意識する

 「飛ぶために戦え、戦うために飛べ、勝つために戦え。トップガン(top gun;米国空軍士官学校の最優秀卒業生)のモットー」

(U.S.AIR FORCE、アメリカ空軍)

 言い換えると、「生きるために仕事をせよ。仕事をするために生きよ。成功するために仕事をせよ。」ということだろう。 ただ漫然と日々の仕事を流していくのではなく、より良く生き、より良く仕事をするということをもっと考えなければ他者あるいは自分自身との闘いに勝つことはできないのかも知れない。

【行動の法則3】 目標を明確に捕捉し、それに全力を集中する

 「空を駈け、敵を見つけ、撃墜しろ。あとはくだらんことだ」

(マンフレート・リヒトフォーフェン=レッドバロン、ドイツ)

 仕事を進めるにあたって、とりあえず決まったところからとか、やさしそうなところから着手してはいないだろうか。そのような枝葉末節に飛びつき、肝心の重要な仕様が決まるのを待っているような受け身的な仕事になってはいないだろうか。

 ここ一番という時に、人はその目的に集中し、それを突破することに全力を尽くすことが必要となる。雑念・雑事に振り回されずに、やるべき仕事に専念することで道は開けるだろう。

【行動の法則4】 目標は仕事をやり遂げること

 「いいかい、兵士が空にいるのは、敵を叩き落とすためだ。敵が戦闘機だろうと爆撃機だろうと、得物が機関砲だろうとミサイルだろうと、それだけは変わらない。どんな戦争だろうと、こいつだけは同じなのさ」

(チャック・イェーガー、アメリカ)

 ルーチンワークはやりたくない。さりとて難しい仕事もやりたくない。あなたがやりたい事は一体何でしょうか。誰でもできる事なら誰も仕事としては頼んだりはしない。あなたの仕事は何でしょうか。

(3) 事前に自分およびチームを優位な位置に導く

【行動の法則5】 弱い敵や簡単な仕事などはない

 「敵機は常に太陽の中にあり」(Royal Air Force、イギリス空軍)

 英軍のパイロットは、太陽を背にして東方から攻めてくる独軍の戦闘機群を迎え撃つことが多かった。敵は逆光の中にあり見えにくく、闘いは困難を極めた。我々が迎え撃つ仕事や敵も、同じように逆光の中にあり、捉え難く、達成し難いものだと最初から心得ていた方が良いだろう。

 仕事に疲れて、ためいきが出そうな時は、そもそも「仕事とは難しいからこそ、他人が自分たちに頼んできたものだ」と考えるようにしたい。

【行動の法則6】 自分ないしはチームを優位な状態においてから行動する

 「降下攻撃を心がけよ。敵機との距離が100ヤードになるまでは射撃を我慢しろ」(ミック・マノック、イギリス)

 プロジェクトという闘いにおける優位な状態とは、妥当な開発期間・費用が獲得され、さらに設計開始までに要求仕様が確定された状態のことを言う。リーダーは、自分やチームを優位の状態に持ち上げた後に開発という行動に移ることでしか勝利を得ることはできないと認識しておく必要がある。

【行動の法則7】 敵が利用している優位性を、こちらが先に利用する

 「東側からの攻撃で奇襲せよ」(ミック・マノック、イギリス)

 東方から太陽を背にして攻めてくる独軍戦闘機に対して、さらにその背後の東方に回り込んで優位の位置を獲得し、返り討ちにすべし、と英空軍の格言でも述べられている。

 ビジネスの場においても、自分ないしはチームが不利な状況に陥りそうだと認識したら、現在保有している資源以外のものにも目を向け、地の利を生かし、時間優位性を生かし、状況優位性を生かすことを必死で探し、現在の逆境を反転させる必要がある。

【行動の法則8】 保有資源以外の資源も利用し戦う

 「太陽や雲を利用して奇襲をかけろ」(ミック・マノック、イギリス)

 困難な目標の達成に向けては、自分が保有する人・もの・資金・時間が足りないなどと嘆いてばかりいないで、未知の情報・時間差・敵の時間やリソース・自然環境の差などあらゆるものを利用することだ。使えるものは何でも使うべし。立っている者は親でも使え。

【行動の法則9】 敵の弱点を突け

 「敵機の死角を覚えておけ」(ミック・マノック、イギリス)

 交渉事において自分の弱みにばかり気をとられてはいないだろうか。自分の弱みにばかり気をとられていると相手のことが見えなくなってしまう。

 自分の弱点だけではなく敵の弱点をも十分に把握しておく必要がある。勝敗は、お互いの優位性においてだけで決するものではなく、多くの場合、お互いの劣位性において決するものなのだ。強味で勝つのではなく、弱みで負けるのだ。

【行動の法則10】 自分の弱点を攻められる前に相手の弱点を攻める

 「偵察機は上から攻撃しろ。二人乗りの機体は後下方から攻撃しろ」(ミック・マノック、イギリス)

 交渉事においては相手の弱点から攻めた方が効果的なのだ。先に相手にこちらの弱点を突かれる前に、相手の弱点を突かなければならない。例えば開発費削減交渉において、削減ありきという心情になってしまった場合、自分の見積りの正当性をいくら並べ立てたとしても、すでにその交渉は相手のペースになっており、必ず負けることになる。

 相手の弱点は、表情には出さないかもしれないが、すでに利益は確保されているのに更に上積みが欲しいのかも知れない。自分の見積りに自信があれば、相手に「いくら削減して欲しいのか」と聞くことだ。希望金額が出たら、何故その金額なのかを聞くことだ。あいまいな回答ならば、更に、上部に出した稟議書の提示を求めることだ。ほとんどの場合、この対応でこの要求は引っ込められる場合が多い。そうでなく本当に相手が赤字の証拠を見せてくれるならば、そこで新たに検討をすれば良い。

行動の法則11】 有利な情勢を確保するために事前の準備を尽くす

 「攻撃をかける前に有利な情勢を確保せよ。可能な限り太陽を背にすること」(オズワルト・ベルケ、ドイツ)

 行動する前に準備をしよう。準備による有利なポジションの確保は仕事において最大の武器と

なる。戦いに出る前には良く訓練されたパイロットと良く整備された戦闘機と十分な燃料の準備が必要であるのと同様に、仕事を始めるに当たっては良く訓練された人材、必要な機材、必要な予算と時間の確保が必要であり、どれか一つが欠けても無事には終われない。走り出してから考えようではプロジェクトは必ず撃墜される。

【行動の法則12】 用意周到な準備は成功の可能性を高める

 「高度は君に先制攻撃のチャンスを与える」(アドルフ・マラン、イギリス)

 用意周到な準備は仕事における成功の可能性を高める。事前準備は仕事を成功に導く水先案内人である。攻略すべき対象は明確になったか。必要な人材は用意したか。必要な技術と機材は用意したか。必要な資金と期間は確保されたか。要求仕様の不明点はすべて解消したか。

(4) 部下から犠牲者を出してはならない

【行動の法則13】 リーダーはチームを安全な位置に導かなければいけない

 「編隊長の責務は可能な限り速やかに、なしうれば敵に気付かれないうちに、味方の全ての機銃が敵機を狙い射ちできる位置へ編隊を導いていくことだ」(ジョニー・ジョンソン、イギリス)

 あなたのチームで、仕事が原因で健康を損ねる者が出てはいないか。もし出ているならば、それはその本人の自己責任などではなく、リーダーの責任である。

 リーダーの重要な責務の一つは、チームの全員が健康的かつ正常に業務を遂行できる環境を整え、チームから一人の犠牲者も出さないということである。そのためには初動時において過不足のない準備と体制を整えることだ。粗悪な見積りと劣悪な要件定義はプロジェクトを滅ぼすということを強く心に刻んでおく必要がある。そのように考えられない、そのように行動できない者はリーダーになってはいけない。

【行動の法則14】 リーダーはプロジェクトから犠牲者を出してはいけない

 「ガールフレンドのことは考えるな。ドイツ機の攻撃に気付かず、その機が僚機を撃墜したときは、貴官に責任あり」

(Royal Air Force、イギリス空軍)

(注.僚機:指揮官機と編隊を組む部下の機のこと。)

 自分の部下から犠牲者を出してはいけない。雑事・雑念に気をとられ事故を招くことで部下が倒れるのはリーダーとしての自覚不足、技量不足、注意散漫によることが多く、リーダーの責任は非常に重い。

(5) 必要なリソースのレベルを維持しておく

【行動の法則15】 目標完遂に必要なエネルギーを維持する

 「エネルギーを保持せよ」(U.S.AIR FORCE、アメリカ空軍)

 憶測や不安感に駆られて人を動かしてはいけない。ヒト・モノ・カネを浪費してはいけない。時間を浪費してはいけない。勝敗の成否を決するものはエネルギー、すなわち保有するヒト・モノ・カネ・情報・時間というリソースの質と量による。俗に言うところの「腹が減っては戦はできぬ」ということなのだ。

【行動の法則16】 浪費や無駄を排除せよ

 「高い巡航速度を保持せよ!」(ブーツ・ブレス)

 身の回りの浪費や無駄を排除しているか。最も資源燃費の良い仕事に心掛けているか。そうすることで自分自身も戦闘機もプロジェクトも高い戦闘能力を維持することができる。

 自分や組織における浪費や無駄は、たまった垢のようにまとわりついて動作や行動を鈍らせる。資源や燃料が尽きたら、そこで一巻の終わりとなる。日頃から改善活動にいそしむべし。

(6) 万が一の危機脱出策を事前に検討しておく

【行動の法則17】 窮地に陥った時は悪あがきせず静止せよ

 「敵地に撃墜されたときは脱出せよ。捕らわれたときは沈黙せよ」(Royal Air Force、イギリス空軍)

 絶対絶命の窮地に陥った時は、その場を一旦離れ身を伏せることだ。これは動物の世界における生き残りの鉄則でもある。藪で猛獣に遭遇した鹿は、身動きせず藪の陰で静かにやり過ごす。仕事において抵抗できないほどの大きな災難に直面した場合は、先ずは大騒ぎせず冷静に状況の推移を見守ることだ。出社できないほどのストレスを受けたならば休むことだ。数日休めば状況も変わるし、気分も変わる。

【行動の法則18】 コンティンジェンシー・プランの用意を

 「敵領土上空を飛行する際は、離脱ルートを頭に叩き込んでおけ」(オズワルト・ベルケ、ドイツ)

 正確な開発費の見込みがつかなかったリスキーなプロジェクトにおいて、開発着手前に経営者に対して、このプロジェクトは会社にとって最重要な戦略プロジェクトであることを確認した上で、予測できないことが発生した場合は経営者からの十分なサポートを受けられるとの約束を取り付けておいた。開発費不足に陥り、約束通りにサポートを受けた。これがコンティンジェンシー・プランと言うものだ。

 危険な状況に飛び込まざるを得ない場合は、予め脱出方法を考えておくことだ。どのような計画も万全ということはない。予期せぬ障害や失敗はまま起きるものだ。ものごとを計画するに当たってこのことを必ず心に留め、それに対する備えをしておくべきだ。コンティンジェンシー・プランとはこのことを指している。最後にこれがあなたやチームの命を救うことになる。

(7) 危機に備え、ヒト・モノ・カネと時間の予備を確保しておく

【行動の法則19】 全てのリソースを一気に使い果たしてはいけない

 「対地攻撃を行う際は、上空で直衛に当たる編隊を残しておけ」(アドルフ・マラン、イギリス)

 (*注.直衛機:味方の戦闘機や艦隊を守るための護衛戦闘機)

 開発におけるリソースとしてはヒト・モノ・カネが代表的なものだが、開発費に関して言えば予算を使い切るまで使うという姿勢が強い。お役所仕事的な開発組織においては特にそうだと言える。そのせいで、開発後半における予算不足が頻繁に発生し、さらに次の開発に着手する事前調査費用の捻出にも支障が出ることが多い。開発費に関しては、使い切ることに目標を置くべきではなく、改善活動などによる生産性向上の実行によって余剰を生み出す努力が必要である。

 この余剰資金が、開発後半で発生する予期しないトラブル対応の費用や次の開発の事前調査費用の原資となり、開発チームの対応の柔軟性およびスピードを上げる原動力として機能することになる。もう一つの重要なリソースであるヒトについても同様で、人材を使い切ってしまうような体制では予期しないトラブルや突然の顧客要求に柔軟に対応することはできない。

 余力を残している開発チームは仕事に熱心ではないと評価する低能な上司のことはさておき、勝利を確実にするチームは常に余力を保っているものだ。

 全力投球・全員突撃は成功を約束しない。必ず予備を残しておくこと。敵は一人ではないし、問題は一つではない。たった一発の銃弾を残しておけば助かった戦闘もあっただろう。

(8) 謙虚であれ

【行動の法則20】 天狗になると足をすくわれる

 「君がどんなにうまかろうと、世界中のどこかには君よりほんの少しだけうまいパイロットがいる。出会った敵は世界一のパイロットだと思え。そして相手がそうでないことが明らかになるまでは、世界一のパイロットに対するやり方で戦え」

(U.S.AIR FORCE、米空軍空戦参考書)

 謙虚であることは大切なことだ。たとえ自分にどんなに自信があっても言葉や態度に現してはいけない。相手が誰であろうとも、問題の程度がどうであろうとも、一貫して自分のベストのパフォーマンスで相対すれば、油断に足をすくわれることもない。自分より上手な技術者はどこにでもいると思うべし。

【行動の法則21】 過去の成功は、現在・未来の成功を保証しない

 「過去の栄光は、現在のこの瞬間の栄光を意味するものではない。飛ぶことは生命の半分を担っているが、残り半分は注意することにかかっている」(ヨアヒム・ミュンヒェベルク、ドイツ)

 過去の成功は未来の成功を保証しない。状況・環境は刻々と変化している。いつまでも前と同じやり方を続けていると、突然の曲がり角を曲がれず失敗する。状況の変化を注意深く観察し、起こりそうなリスクを事前に排除し、過去の失敗を繰り返さないような改善活動を継続的に実行することが未来の大失敗を予防する有効な手段である。あなたは改善活動を実行していますか。


2. 敵の観察 Observations 

 敵や困難な仕事に遭遇した場合、最初に状況把握のために、その対象物の観察や情報収集を行う必要がある。

(1) 状況の観察を通じてリスクを事前に把握する

【行動の法則22】 相手の手の内を良く知る

 「先に発見したものが有利である」(U.S.AIR FORCE、アメリカ空軍)

 普通、交渉事や駆け引きにおいては、相手が何を欲しがっているのかは大体分かっているが、問題なのはどれくらい欲しがっているのかということにある。その数値を先に知った方が駆け引きに勝つ。カードゲームにおいて相手の手札を知れば、勝てるのと同じ理屈だ。例えば、発注者から、この仕事はいくらくらいかかりそうかと聞かれた場合、不用意に答えるべきではない。反対に、どれくらいかかりそうだと思いますかと問いかけて、相手の予算を聞き出す方が賢い。

 先に知るということは勝利を確かなものにする。リスクについても同様のことが言える。危険物(リスク)は先に発見しなければならない。あらゆる戦闘的な行為においては、先に敵を見つけたものが有利である。桶狭間の戦いにおける信長しかり、ミッドウェー海戦における米軍しかり。劣勢のものが優勢のものを打ち破るためには攻撃目標の先行補足と、それに対する集中攻撃しかない。相手の勢いに恐れをなし、持っている有利な札を切るタイミングを失するようでは、ビジネスシーンにおける競争・交渉・駆け引きにおいて勝利することはできない。必要なのは、ほんのちょっとした見方の工夫と勇気だけなのだ.

【行動の法則23】 先にリスクや相手の弱点を見つける

 「先に相手を発見した者が、空戦の主導権を握ることになる。空戦の第一原則は、先に獲物を見つけることだ」

(アドルフ・ガーラント、ドイツ)

 先にリスクを見つけ、それを排除した者が仕事の主導権を握ることになる。出たとこ勝負の仕事では、次から次へと現れてくる問題に追いまくられ、リスクに主導権を奪われ右往左往することになる。仕事に着手する前に、リスクの発見と排除に努めるべし。代表的なリスクとはあなたが毎回繰り返している失敗そのものなのだ。あなたは毎日の終業時に昨日の失敗を振り返っていますか。各工程の終了時に工程の失敗をまとめていますか。プロジェクトの終了時に主要な失敗を総括していますか。

【行動の法則24】 リスクは注意しないと見えない

 「空中の機体を発見する術を身につけろ。遠方の彼我不明機は、味方と判るまでは敵として対処しろ」

(ミック・マノック、イギリス)

 問題やリスクを発見する術を身につけよう。リスクは過去の自分や他のチームの失敗にあると思っても間違いない。リスクかどうか判然としないことについては、白黒がはっきりするまでは問題だと思うこと。そうすれば問題が“突然”現れることもないし、リスクに振り回されることもなくなる。

【行動の法則25】 異常を示す数値指標に敏感になれ

 「パトロール中は、時計から目を離してはいけない。風向風速に気を付けろ」(ミック・マノック、イギリス)

 プロジェクトに数値目標が必要な理由は、目標の達成ということ以外にも、プロジェクトの異常値が見えるようになるということもある。QCDの目標値は、プロジェクトの健康を表す指標である。これらの数値の急増・急減は、相応の理由がなければプロジェクトの異常を示している。

 QCDの指標を常に把握し、プロジェクトの健康状態に気を配る必要がある。明日、来週、来月に何が起きそうか常に考え、状況・条件の変化に気をつけろ。

 数値に基づいた開発、すなわちデータドリブンな開発を実行していないプロジェクトはアイマスクをして暗闇を歩いているのと同じ状態にある。実に恐ろしいことだ。

【行動の法則26】 見ようとしなければ見えないリスク

 「注意せよ!見えざる敵機が貴官を撃墜する」(Royal Air Force、イギリス空軍)

 常に警戒を怠ってはいけない。仕事における警戒は、プロジェクトの状況のみならず顧客の情報および全ての関係する組織の情報収集によって行われる。これらの情報収集はこれらの関係者たちとの直接コミュニケーションから得られる場合が多い。

 敵やリスクはいつも見えないところから狙ってくる。突然遅延する進捗報告然り、肝心な要件が決まっていないプロジェクト然り、残っているはずの予算がないこと然り、突然の追加要求然り、メンバーの突然の長期欠勤然り。積極的なコミュニケーションがもたらす恩恵は大きい。

【行動の法則27】 敵やリスクは自分の真後ろに潜んでいる

 「読みを深くし、自分が敵を撃つ時に、自分を撃つ事のできる敵機がいないようにせよ」(坂井三郎、日本)

 まさに決断・行動しようとする時、もう一度後ろを振り返って見よう。場合によっては味方から背中を撃たれる場合もある。 プロジェクトが順調な時は上司もにこにこしているが、順調でない時には豹変し罵詈雑言を発し、遂には“俺は知らない”と逃げてしまう上司もいる。苦境にある時にサポートをするのが上司の重要な役割ではあるが、それを平気で放棄する上司もいるということを忘れてはいけない。そのような上司は最初から頼りにしないことだ。

【行動の法則28】 おいしい話には乗ってはいけない

 「単機の敵はおとりである。攻撃前に周囲を警戒しろ」(ミック・マノック、イギリス)

 おいしい話には注意せよ。飛びつく前に確認せよ。毒饅頭に食いついてはいけない。交渉時における相手からの良すぎる条件提示には必ず裏がある。良すぎるプレゼントには、時間をおいてから回答すること。「あなたのために」というキーワードには要注意。

 うちに来てくれれば大きな椅子と割り増しの報酬を用意しましょうなどと言う申し出には必ず裏があると思った方がいい。

【行動の法則29】 ポーカーフェイスで強敵や困難をやり過ごす

 「日差しの強い日は、激しいバンクを控えろ。太陽が翼に反射して、遠方から発見されてしまう」(ミック・マノック、イギリス)

(注.バンク;翼を傾ける動作)

 人が居る場所で不用意な合図を送ってはいけない。あなたの背後で必ず誰かが見ている。壁に耳あり、障子に目あり。 重要な交渉の場においては、ポーカーフェースを貫いた方が安全である。 重要な情報は信頼のおける人間だけに一対一の場で伝えることだ。たとえ自分の上司であっても、信用のおけない人物ならば、通常の業務報告以上の情報を伝えるべきではない。

【行動の法則30】 敵や困難を直視する

 「敵機から目を反らしてはならない。また、敵のトリックにひっかかるな」(オズワルト・ベルケ、ドイツ)

 目標から目を反らしてはならない。動く目標に幻惑されてはいけない。恐怖の現実を直視することはその緊張感において耐えがたいものがある。しかしながら目の前に迫り来る敵は見たくなくとも、見るしかない。見たくないと思っても現実の敵や困難は目前に迫って来る。嫌なもの嫌いなものを忌避するだけの生活習慣は人における危機回避能力を著しく低下させる。嫌なもの嫌いなものを無理に好きになる必要はないが、少なくともそれを知り、それに慣れる事だ。危機を乗り越えるにあたっては、危機や困難の実態を直視し、その正体を見極めるところから始めたい。本当にヤバければ逃げる、そうでなければ戦うことだ。

【行動の法則31】 弱者は常に警戒せよ

 「常に警戒を怠るな」(アドルフ・マラン、イギリス)

 常に警戒を怠ってはいけない。背後から危機やリスクがあなたを狙っているかも知れない。仕事をなめている場合や過労状態の時に大きな失敗を起こすことが多い。簡単に思える仕事においてすらなお工夫の余地を考えるべし。過労の時は早めに休養をとるべし。

 強い動物であるライオンの耳は小さいが、弱い動物であるウサギの耳は大きく、常に警戒を怠らない。

【行動の法則32】 プロフェッショナルには前後左右を見る目が必要

 「射撃をしようとする前に、まず後を見よ」(加藤建夫、日本)

 何人もの撃墜王たちが同じことを言っている。自分が敵を照準器の視覚野に捕捉し、チャンス到来と思った瞬間が一番危ないのだ。目前の敵に目も気持ちも奪われて、背後のリスクには全く気が付かないことがある。プロフェッショナルには前後左右を見る目が必要なのだ。

 バグ修正できましたという報告を聞いても、すぐに修正版のリリースを実行してはいけない。修正者からは確認テストの内容を聞き、テストメンバーからは実機環境での確認の結果を聞き、前後左右斜めにわたるレビューの後に対策版の投入を行うこと。

【行動の法則33】 “普通”という罠に、はまってはいけない

 「人の性格に違いがあるように、空戦もまた実に多様である。普遍の戦闘形式などというものはない。だから片時も油断してはならない」(イワン・コチェドゥプ)

 普通の仕事などと思って何らの注意も払わず流していると必ず失敗することになる。仕事における条件・状況は仕事ごとに違っている。以前と似たような仕様だと思い、設計書を確認せずにコードを直接いじるようなことをしてはいけない。また人の性格についても仕事向きのお誂えの性格などないのだ。臆病な性格を生かせば慎重でミスの少ない仕事に適し、一方外交的な性格は使い方を誤れば軽佻浮薄・八方美人と非難される。要するに自分の性格をどれだけ仕事に生かせるかなのだ。


3. 攻撃目標の把握 Orientation

 敵または問題の観察において得られた情報に基づいて、このフェーズではその分析や統合を通して状況の理解と判断が行われる。端的に言えば、克服すべき目標を正確に把握することが行われる。

(1) 目標を明確に把握すること

【行動の法則34】 やるべきことがはっきりするまでは行動してはいけない

 「相手の白眼をみるまで射撃を待て」(Royal Air Force、イギリス空軍)

 目標がはっきりしない間は性急な行動は慎み、内容があやふやなままで仕事に着手してはいけない。どのような仕事であれ開発という仕事は憶測でこなせる程甘くはない。 目標が射程距離内に達しないときに、いくら弾を撃っても当りはしない。ヘタな鉄砲は数を撃っても当たらない。無駄な攻撃で弾薬を消費した後に待っているのは敵からの容赦のない反撃なのだ。基幹仕様が決まっていないのに事前着手してはいけない。開発とはそう言う仕事なのだ。

【行動の法則35】 目標を捕捉した瞬間に攻撃を集中せよ

 「敵の白眼が見える まで待て。敵を視界に捉えてる間に、1?2秒の短い射撃を行え」(アドルフ・マラン、イギリス)

 目標が明確になるまで資源や時間を浪費してはいけない。すなわち基本の要求仕様が不明確な段階で開発に着手すべきではない。やるべきことは要求仕様の凍結に最大限の努力を集中し、一旦仕様が決まったら一気呵成に開発を進めるようなやり方が最も成功率の高い開発スタイルと言える。

 それでも要求仕様が決まるまでの時間が惜しいからと言う理由で事前着手を選びますか。

【行動の法則36】 目標を完全に掌握せよ

 「撃つのは前風防一杯に敵機が立ち塞がって見えるところまで接近した時だ」(エーリッヒ・ハルトマン、ドイツ)

 目の前に敵が大写しになるまで接近する事とは、開発においては要求仕様の骨子を確定することに全力を注げと言うことであり、開発着手という攻撃はそれからすることなのだ。

 交渉事においても、勝敗をあせり相手の状況を把握しないまま自分の都合ばかり並べ立てても何の効果もないということだ。必要なことは、相手の言っていることの本質を正しく聞き取ることであり、相手の本音を聞き出すための質問を行うということにある。

【行動の法則37】 何が本質なのかを理解しておく

 「空戦で最も重要なのは射撃で、次が射撃に到る接近戦術だ。飛行技術などドン尻だ」(ビリー・ビショップ、イギリス)

 コミュニケーションなくして仕事は成立しない。コミュニケーションで最も重要なのは「伝わること」と相手の本音を引き出す「質問力」にある。弁舌力などは最後でよい。しゃべりが流暢でなくても問題ではない。

【行動の法則38】 敵のウィークポイントを抑える

 「敵パイロットの上半身に弾丸を撃ち込め。人間は上半身を撃ち抜かれれば、通常の場合、その機能を喪失する」

(ビリー・ビショップ、イギリス)

 仕事をうまくやりたければ、その仕事の要とツボを押さえることだ。ヒト・モノ・カネ・情報において、その大局的有り様を俯瞰すれば、何が重要なのかが見えてくる。人においては誰がキーパーソンなのかを見定めることだ。キーパーソンが怖いからといってサブの人間と駆け引きをしても何も決まらない。交渉事は、キーパーソンとしなければ進展しない。また、モノ・カネ・情報においては価値が高いものはどれなのかを知ることだ。重要度の高いものを二つ三つ押さえれば、事はスムーズに運ぶ。要とツボを抑えたら枝葉末節にはこだわる必要はない。

【行動の法則39】 目標を限りなく正確にとらえ、それに全勢力を結集する

 「射撃ははやる心を抑え、体当たり寸前まで敵機に近接し、弾丸を全部命中させる気持ちで発射把柄(レバー)を握れ」(坂井三郎、日本)

 問題の核心を把握し、そこに全力を投入すれば問題は自ずと解決する。多くの問題がこじれるのは、問題を早く片づけたいばかりに、あせって人の言うことも良く聞かないまま、自分の都合の良いように解釈し、本質が見えなくなるからである。敵機に限りなく接近するとは、顧客と密接なコミュニケーションを行うということであり、社内においてはメンバーとの情報共有を欠かさないということに他ならない。

【行動の法則40】 やみくもに行動しても成果は得られない

 「勝利の要因は、作戦行動と射撃にあり、そして成功は至近距離からの射撃である」

(アレクサンダー・ポクルイシュキン、ソビエト)

 ものごとを成功させるためには、目標を明確にし、それを達成するための作戦を立て、有効な方策を実行するしかない。目標を明確にするとは仕様を明確に理解するということであり、作戦行動とは仕様の正しい理解に基づいて設計を行うということであり、射撃とは、正しい設計に基づいてコード製造およびテストを行うということに他ならない。

 プロジェクトを成功させたければ、その方法を良く考え、有効な手段を講じることだ。雑で手抜きだらけの不合理な行動はいつまでたっても報いられることはない。

【行動の法則41】 当たるべくして当たる、成功するべくして成功するようにする

 「射撃は至近距離からのみ行うこと。また、正確に照準できる目標に対してのみ射撃せよ」

(オズヴァルト・ベルケ、ドイツ)

 見えない的を撃ってはいけない。できるかも知れないという気持ちだけで行動を始めてはいけない。目標を明確にし、そして適時なタイミングで目標達成のために行動することだ。

【行動の法則42】 目標に到達するには学習と訓練と情報共有が必要

 「しっかりと照準しろ。移動目標に命中させられるように訓練しろ」(ミック・マノック、イギリス)

 目標をはっきりさせ、そして移動する目標を日々追尾しなければならない。我々の仕事においては、目標や敵は日々変化をしている。変化する目標を追尾し、目標に照準を合わせるためにコミュニケーションは必須である。顧客との要求仕様検討会議も開発内部における日次の短時間情報共有会議もそのためにある。

 また的を撃ちぬく有効弾とは、開発技術力のことであり、OJTおよび自己学習やグループ学習による継続的な研鑽が欠かせない。

【行動の法則43】 間合いを読む

 「空中で標的との距離を正確に把握することは重要である」(ミック・マノック、イギリス)

 他人や目標との間合いを読み違えると手痛い失敗を招く。間合いには、地位の差、実力の差、保有する武器やリソースの差、時間の差などいろいろの種類がある。真剣勝負の世界では、先に間合いを把握したものが勝利する。

 例えば時間の差においては、「もう」は「未だ」であり、「未だ」は「もう」である。相手や対象物との間合いや頃合(タイミング)を正確に把握することが勝利を引き寄せる。


4. 攻撃の意思決定 Decision

 状況の理解と判断による目標の捕捉の次に行われるのが、意思決定である。

 敵との闘いあるいは目標の達成に向けて、どのような対策を実行すべきかを選択、決定するフェーズである。

(1) 決断は迅速に行なう

【行動の法則44】 素早い行動に心がける

 「決断は迅速に。君の戦術がベストでなかったとしても、素早い行動はベターである」(アドルフ・マラン、イギリス)

 優柔不断な人の欠点は、決断が遅いため好機を逃してしまうことにある。どのように素晴らしい計画であっても実行されなければ意味がない。例えベストの案でなくともベターな案ならば素早くそれを実行すべきだ。 優柔不断の原因は、いろいろな問題に対する解決策の引き出しが少ないという所にある。多くの経験を積んだ開発者は、多くの解決策の引き出しを持っている。

 優柔不断な上司やリーダーは組織やチームのロードブロックとなりプロジェクトに致命傷を負わせるリスクが高い。

 「巧遅は拙速に如かず」という言葉がある。「巧遅」とは、出来はよいが仕上がりまでが遅いという意味。「拙速」とは、出来はよくないが仕事が早いという意味。場合によっては、ぐずぐずしているより、上手でなくとも、迅速に物事を進めるべきだということ。(『孫子』 )


5. 攻撃 Action

 決定した対策案を実際の行動に移すフェーズである。

(1) まず最初に最大のリスクから排除する

【行動の法則45】 見積りの失敗、要件定義の失敗をなくす

 「上方の敵を攻撃せよ」(U.S.AIR FORCE、アメリカ空軍)

 戦闘機の最大の弱点は上空からの急襲である。開発における最大のリスクは、見積りの失敗、決まらない要求仕様およびコミュニケ―ション不良の三つだ。

 まずは最大のリスクから排除する必要がある。要求仕様の骨子を設計工程の前までに決定しなければならない。自分ができないのならできる人を探すことだ。できないまま放置しておくことは仕事を放棄していることと同じことである。ウォーターフォール方式でできないからアジャイル方式ではできそうだと思うのは幻想に過ぎない。

【行動の法則46】 最小努力で目標を達成する

 「どんな攻撃においても、敵の後方から攻撃することが最も重要である」(オズワルト・ベルケ、ドイツ)

 目標達成のための最短時間・最大効果を考え行動する必要がある。最小の力で最大の効果が得られるものを常に探すことだ。そして最も価値の高いものの順に実行することだ。それらは、身近な問題の日々の改善活動の積み重ねの中しか現れてこない。

(2) チームプレーの原則を守る

【行動の法則47】 相互援助を実行する

 「相互援助は不可欠である」(U.S.AIR FORCE、アメリカ空軍)

 極限の組織的戦闘である空中戦において、味方同士の相互援助が勝利に不可欠なものだと言っている。プロジェクト活動も典型的な組織戦である。個人戦の勝った負けたにこだわらず仲間との連携による組織戦に持ち込むことで5人力は10人力となる。

 空戦における組織戦の好例として、グラマンF6F対零戦の空戦における2対1戦法、いわゆるサッチ・ウィーブ戦法がある。零戦はなすすべもなく敗れ去ったと言われている。(『失敗の本質』)

 自分だけが良ければ他人のことはどうでも良いという考え方では仕事でも戦闘でも決して勝利を得ることはできない。 情けは人の為ならず。助け・助けられの関係が自他を共に助け組織を強化する。

【行動の法則48】 独断専行に走らず組織戦を行え

 「4機ないし6機による編隊攻撃の原則を忘れるな。単機戦闘に分離する際は、1機の敵に複数がくっついていかないように注意せよ」(オズワルト・ベルケ、ドイツ)

 組織的にまとまった行動をとらなければ組織としての力を発揮することはできない。例えば4機編隊の体制を守って敵に立ち向かえば、単機の数倍の力が発揮される。まとまりのない烏合の衆的なプロジェクトのパフォーマンスは著しく劣化し、成功を望むことはできない。

 プロジェクトの編隊攻撃の体制をまとめるのはリーダーの重要な責務の一つであるが、その意識もなく個人プレーにばかり生きがいを感じる名ばかりリーダーにならないように注意する必要がある。リーダーは独断専行に走らず、メンバー自身に考えさせることも必要だ。個人的なスタンドプレーは百害有って一利なし。手柄を争うべからず。空気の読み合いをするべからず。リーダー、メンバーともに自己の役割を明確に知り行動すること。開発業務は個人戦ではなく組織戦なのだ。

(3) コミュニケーションのルールを守る

【行動の法則49】 話の中途割り込みはルール違反

 「無線通信には沈黙を保て。無線通信を混乱させてはならない」(Royal Air Force、イギリス空軍)

(注.戦闘機の無線通信において、みんなが同時に話始めると全員の声が混じり合って聞き取れなくなる。)

 人の話が終わっていないのに途中で断りもなく割り込むことは、話をしている人に対して失礼であり、相手に非常な不快感を与えてしまう結果となる。一部の身勝手な人たちにみられる悪癖で、意思疎通を阻害する効果しかない。戦闘機の無線通信においては命令等の聞き逃しなどを招く悪質な行為とみなされるだろう。 どうしても中途で割り込む必要がある場合は、「済みませんが」の一言で、相手の了解を得る必要がある。

(4) 頭脳戦を行なう

【行動の法則50】 相手のミスを誘うには誉めまくることが一番

 「敵にミスを犯させるように仕向けよ」(U.S.AIR FORCE、アメリカ空軍)

 交渉事などにおいて正論ばかりで攻めると相手も構えてなかなか折り合いがつかないことが多い。交渉事においては硬軟織り交ぜ、隙があるようにみせかけたアプローチが功を奏することもある。また人は高慢な気分のときはミスをしやすくなるので、ほめてほめて相手の自滅をさそう方法は「ほめ殺し」として知られている。

【行動の法則51】 空戦も開発も着手前の準備段階で勝敗が決まっている

 「頭脳を使うことだ。空戦は頭脳によって決せられる。90%の撃墜成功確率がない限り冒険すべきではない」

(エーリッヒ・ハルトマン、ドイツ)

 知恵ある行為とそうでない行為の結果は歴然とした差が出てしまう。世の中で素晴らしいものとか美しいものと言われるものは知恵の試行錯誤の結果生み出されたものが多い。事前の考慮もない思いつきの行動では、良い仕事にはならない。開発においても、その着手前にヒト・モノ・カネ・時間の条件が準備できたもので失敗したものは見たことがない。極論かも知れないが、プロジェクトはその着手前にすでに成功か失敗かが決定されていると言える。

【行動の法則52】 筋肉を使わず、頭を使う

 「頭を使って飛べ。筋肉を使って飛ぶようなことはするな」(ディートリッヒ・フラバク、ドイツ)

 事前にリスクを排除しておけばしなくても済んだ作業を、出たとこ勝負の開発においては、問題の出る都度行わざるを得ない。代表的な例としては、仕様未確定状態における想定仕様による事前着手がある。仕様が二転三転するたびにやり直しが発生し時間とお金の無駄使いとなってしまう。事前着手は、一見、頭をつかった仕事のやり方のように勘違いするが、この非効率なやり方は筋肉労働と同じレベルにある。

 頭を使って仕事をせよ。頭脳労働者は筋肉を使って仕事をするな。遭遇するであろうリスクを思い浮かべ、分析し、有効な対策を考えることだ。出たとこ勝負で、思いつきの対策をもぐらたたき的に打ちまくっても労多くして功少なしとなる。

【行動の法則53】 乱闘に巻き込まれるな

 「巴戦とは苦労を重ねて一機墜とすだけ。空戦は据え物斬りと心得よ。スーッと寄っていって、パッと斬る。これが極意である」

(坂井三郎、日本)(注.巴戦:戦闘機どうしの激しい空中戦、いわゆるドッグファイトのこと)

 交渉事において何の作戦もなく、相手の出方を待って受け身的に反応しているだけでは、勝利を得る可能性は低いだろう。受け身的な行動では、目先の敵の動きに幻惑され冷静さを失い、感情的な反応に陥りがちとなる。一旦そのモードになってしまうと一生懸命もがけばもがく程、相手の術中にはまってしまう。

 特に一枚上手と目される相手に対しては、乱戦で撃墜されることを避けるために、事前に用意周到な作戦を練っておき、相手が負けを意識しない内に、こちらの土俵の上でさっさと勝負をつけてしまうことだ。

【行動の法則54】 知的体育会系であれ

 「頭脳は明快であれ。また、戦闘機パイロットは向こう気の強い荒武者でなくてはならないという議論には私も賛同するが、しかし、無思慮な猪武者であってはならない。頭脳が常に明快であり、注意が絶えず綿密であることが必要である。無謀な猪突は自殺行為に等しいことが往々にしてある。戦闘機は瞬間的に生死を決するものであるから明晰にして冷静な頭脳をもって、どのような変化にも即応し、臨機応変な攻撃、防御の策を巡らすべきである」(ヘルウート・ヴィック、ドイツ)

 頭の悪い体育会系では生き残れない。知的体育会系であれ。どの様な変化にも即応し、臨機応変な攻撃、防御の策を貫徹できる気力・体力を保持すべし。それには普段の努力が欠かせない。全ての経験を、他人の経験をも取り込んで、自分の問題解決棚の引き出しを多くしておくことだ。 理屈が通じない相手には人間の情を説き、人間の情が通じない相手には合理性を説くこと。 知には情で、情には知で対抗すべし。楽をして良いものは決して手に入らない。

【行動の法則55】 素早く効果的な行動を

 「ゴーは素早く、パンチは強烈に、そして逃げ出せ」(アドルフ・マラン、イギリス)

 いつまでも効果のないやり方でだらだらとした仕事を続けてはいけない。仕様決定における受け身的な姿勢、想定仕様による設計・製造、効果の薄いチェックリストによる評価、再現の見込みのない再現テストなどいろいろあるだろう。事前にものごとを良く考えておけば、実際の行動は素早くなり、問題の処理は短時間ないしは短期間で済むだろう。終わったらサッサと次の行動に移ることだ。

【行動の法則56】 勝敗は個人および組織の経験知で決まる

 「空中での射撃は、90%が個人の素質であり、10%が照準である」(フレデリック・ラビー)

 仕事における成功体験および失敗体験を都度振り返り、個人ないしは組織の経験知として蓄積しておく必要がある。とくに失敗体験の経験知は、将来の強力な武器になり得る。そしてそれらの経験知の蓄積はいつでも交渉や闘いの場で自由に使いこなせるようにしておくこと。

(5) 環境・状況の変化に沿うように行動する

 同じやり方をいつまでも続けていては、いつか訪れる曲がり角で曲がれずに衝突することになる。変化に対応する柔軟性を保持し続けるということは、口で言うほど簡単なことではない。変化に柔軟に対応するためには「仮説と検証」の実行が必要となる。常に回りの状況を観察し、この先はどうなるだろうかというような仮説を立て、それに対応する対策を実行してみて検証を行う。小刻みに試行錯誤を続ける必要がある。

【行動の法則57】 一歩前へ

 「積極的であれ」(U.S.AIR FORCE、アメリカ空軍)

 何か意見はありませんかと問われて沈黙してはいないだろうか。何もないわけがない。

 すべからく何事においても事前に一歩先を読んで行動する必要がある。進むにしろ後退するにしろ積極的な理由のもとに動いた方が良い結果を生む。一歩先に歩めば、今まで見えなかったものが見えてくるだろう。恐れをなして、ずるずると真後ろに後退すれば敵の銃撃の射線上で討ち死にする確率が高まる。

【行動の法則58】 異常時においては、平時における能力以上のものは出ない

 「素早く旋回する術を身につけろ。空戦では素早い旋回が最も重要である」(ミック・マノック、イギリス)

 不利な状況で問題や敵に遭遇した場合、まずはその場を回避する必要がある。回避とは単純に逃げることを意味しない。回避するとは、態勢を立て直すための時間をかせぎ、不利な状況を有利な状況に変え守勢から攻勢への逆転を図ることを意味する。回避行動と逃走は全く意味が異なる。前者は戦いの意思を保持しているのに対し、逃走は戦いの意思の放棄となる。

 素早い回避力には、素早い状況の判断と素早い行動力が必要となり、これらの能力は平時において同等の能力を発揮できていてこそ危機の時においても発揮できる。平時において優れたパフォーマンスを発揮していてこそ危機における回避力も発揮される。

 優れた人やチームは平時においては高い生産性を示し、異常時においても優れた回避能力を現す。優れた人やチームは、普段の改善活動をきっかけとした切磋琢磨の中で育成されていく。

【行動の法則59】 戦闘中は静止してはいけない

 「空戦中は常に旋回し、射撃する時以外は直進するな」(ミック・マノック、イギリス)

 乱戦状態に陥った場合、静止してはいけない。素早く対処し、素早く脱出しなければならない。

 常に旋回するとは、アクティブに自律的に問題に取り組むということであり、直進するということは昨日も今日も明日も何も考えず同じ方法で仕事を流すだけの状態を表している。

 自分やチームの仕事のやり方に不備はないかといつも点検し改善を積み重ねることが自分たちを楽にする。現在のやり方には不合理なところはないか、またこれはみんなの納得が得られることなのかをいつも考える必要がある。

 合理性の改善は体を楽にし、妥当性の改善は心を楽にする。

【行動の法則60】 周りを良く見回して誰よりも先に問題をキャッチする

 「常に旋回し攻撃に立ち向かえ」(アドルフ・マラン、イギリス)

 常に現場を巡回し問題を見つけ出せ。仕事は、個人戦の一人相撲ではない。常にアンテナを張り巡らし現場の状況の変化をいち早くキャッチする必要がある。現場の声を聞かない、現場に行かない、それだけでリーダー失格の条件となる。

【行動の法則61】 同じことをいつまでも続けてはいけない

 「戦闘空域では30秒以上真っ直ぐ飛んだり、同高度を維持するな」(アドルフ・マラン、イギリス)

 同じ事を繰り返していると、いつか必ず失敗する。変化の激しい世の中においては惰性的・慣例的・慣習的な思考や行動はかえってリスクが多いものと心得ておいた方がよい。

【行動の法則62】 反転攻勢、逆襲の好機を待て

 「切り返しの時期」(U.S.AIR FORCE、アメリカ空軍)

 相手の発言にすぐ感情的な反応を返すことは自分を危うくする場合が多い。刺激的な発言に対しては一呼吸おき、その発言の裏を読むこと。その真意が読めたら冷静に対抗すれば良いし、読めなければ沈黙を保った方が良い。そのうちに相手が疲れてくる。その時が反転攻勢の時期となる。「短気は損気」。

【行動の法則63】 リスクの排除は目標の変化への対応を可能にする

 「戦場の変化に応じた適切な攻撃と防御を行なうべし」(ヘルウート・ヴィック、ドイツ)

 目標はいつまでも同じ位置には止まってはいない。時々刻々と変化・移動する目標に沿うように行動する必要がある。リスク排除は先制攻撃であり、いつもの業務は防御的な行動と言える。

 何をするのかを先に決め、その決まったものを実行することだ。走りながら何をするのかを決められるほど人間は賢くはない。 戦いに勝利するためには先にリスクの排除を行うことが重要なポイントとなる。


(6) 危機に直面したら、逃げず敵に正対する

【行動の法則64】 断じて行えば鬼神もこれを避く

 「他に手段が無くなったならば、敵機に機首を向けよ」(U.S.AIR FORCE、アメリカ空軍)

 にっちもさっちもいかなくなったら逃げ出してしまいたくなる。課題や敵に背を見せながら逃げると背後から撃たれて死ぬだけだ。軍事行動においても攻めることよりも退却することが難しいと言われている。どうせ避けられない運命ならば、ヘタレながらでも良いから正面から取り組むことだ。最後に生き延びる可能性があるのは、相手に向かっていくことしかない。差し違える覚悟で正対すれば、敵も驚いて道を開ける。古人いわく「断じて行えば鬼神もこれを避く」。

【行動の法則65】 逃げ方にもいろいろある

 「どんな状況にあっても降下して逃げてはならない。敵は偏差射撃無しに命中させることができる。弾丸は飛行機よりも速い」(ミック・マノック、イギリス)

(注.偏差射撃:発射から着弾までのタイムラグの間に目標がどう動くかを予測して、その予想位置を狙って射撃する事。「見越し射撃」「リード射撃」とも。 出典 航空軍事用語辞典)

 背後から連射の銃弾を浴びたいのなら、敵に背中を見せて逃げればいい。敵から顔を背けずに、斜め後ろに前後左右に反撃の連射を繰り返しながら後退し、反撃の機会を待つような逃げ方もある。転んでもただでは起きないようなしぶとさを身に着けることだ。ドブに転げ落ちたとしても、反撃のつぶてをしっかりと握りしめて立ち上がることだ。何度でも。

【行動の法則66】 逃避は労多くして功なし

 「敵に降下攻撃をかけられた際は、回避しようとせず敵に向かい合うように飛行せよ」(オズワルト・ベルケ、ドイツ)

 困難に直面した際にやるべきことは、逃げることを考えるのではなく、その現実を直視し、観察し、やりすごす手立てを考えることだ。目前の困難さにおじ気づき現実逃避の果てに自分勝手に立てた安心目標に向かっていっても得るものはない。桃のなっていない山にいくら登ってみても桃は手に入らない。労多くして功なしとなる。不合理な努力は決して報いられない。つらくても目前の問題を正視し、正対することだ。

(7) 一旦行動開始したら中途で諦めない

【行動の法則67】 あきらめない

 「諦めてはいけない」(U.S.AIR FORCE、アメリカ空軍)

 失敗が続いたとしても諦めてはいけない。あきらめない内は失敗は確定しない。諦めた瞬間に失敗が確定される。

【行動の法則68】 空元気でも出す

 「No guts, no glory(ガッツ無くして栄光無し)」(ブーツ・ブレス)

 空元気でも出している内に状況が好転することもある。眉間にしわが寄っていれば眉間を開け。背中が曲がっていれば背筋を伸ばせ。うつむいているのなら頭を上げよ。外装整えば、自ずと内装整う。

 「国は小さく力なく 糧は乏しく恥多く 命かそけくなりけらし 嘆くをやめよ目をあげよ」(堀口大学)

【行動の法則69】 継続は力なり

 「一旦開始した攻撃は完遂せよ」(オズワルト・ベルケ、ドイツ)

 一旦開始した行動はやり抜くことだ。仕事における中途半端な行動は、隙や緩みを生み出し、即失敗の元となる。自分が未熟だと思えば、地道な努力を続けることだ。継続は力となる。古語に曰く、「駄馬も千里に至ることは可能か。駿馬は一夜にして千里を致すと言うが、駄馬も鞭打ち鞭打ち、今日十里明日十里を続ければ、ついには千里を致す」(『鞭駘録』、塩谷世弘著)

(8) やり過ぎない

【行動の法則70】 深追いをしてはいけない

 「命中弾を与えた敵機を追うな。他の敵機に必ず撃墜されるであろう。」

 「敵機の撃墜確認を求めて撃墜されるより、撃墜未確認で帰投するを可とす」

(Royal Air Force、イギリス空軍)

 ダメ押しは失敗の元。ついでの一行のソース改変が全店ロックを招く。

 蛇足である。本当はする必要が無いのに調子にのって、それをしてしまったばかりに全体が台無しになってしまうこと。(蛇足 『戦国策)』)

(9) 無理をしないこと

【行動の法則71】 猪突猛進は勇気の証拠にはならない

 「敵が優勢だと感じたら、基地へ帰ることにしている。もっとマシな日のために」(エーリッヒ・ハルトマン、ドイツ)

 やってもやっても終わりの目途が立たない仕事は、一旦中断し頭を冷やして目途が立たない理由を考え、別の対策を考えた方が良い。考え方によっては、その仕事は今やるべき仕事ではないのかも知れない。

【行動の法則72】 個人戦をしてはいけない

 「真の名人は、めったに格闘戦には入らない。格闘戦とは窮地にはいったときの脱出法と心得よ」

(坂井三郎、日本)

 協調性のないチームや個人の間では感情的な格闘戦が行われやすい。彼らが好むのは、いわゆる勝った負けたの個人戦だけなのだ。

 売られたケンカを買ってはいけない。売る方は最初から悪意と勝算もってけしかけている。感情的なもめごとは、両者に深い傷を負わせ後々まで遺恨を残すことになる。売られたケンカには知らん顔をすることが上策である。

【行動の法則73】 異常な指示は拒否すること

 「一機撃墜したらコーヒー・ブレイク」(エーリッヒ・ハルトマン、ドイツ)

 休みなしで仕事を続けさせる者も続ける者も正常な人間とは言えない。何が正常で何が異常なのかという感覚を常に保持しておく必要がある。異常さを強要する者に対しては断固とした拒否宣言をする必要がある。異常さは、個人を破壊し、組織を破壊する。一仕事終わったら心と体を休ませよう。

【行動の法則74】 健全さは戦いの基本力である

 「訓練と適度な投薬により、常に体調を万全にしておけ」(ミック・マノック、イギリス)

 休出したら代休を取るべし。休出させたら代休を取らせるべし。部下は長時間残業で苦しんでいるのに、自分だけは休養十分なリーダーや上司を放置しておいてはいけない。命の危険を感じたら、黙って忍従していないで声を上げなければいけない。何事においてもどこまでもいつまでも譲るわけにはいかない。自分の限度をわきまえておく必要がある。命よりも大切な仕事など存在しない。

(10) 困難に直面しても冷静に問題の解決に集中する

【行動の法則75】 頭に血がのぼったら深呼吸を

 「空戦に興奮は禁物である。落ち着け。落ち着いて、ぐっと近寄り良く狙って撃て」&

  「まず落ち着け。そして正確な射角でずっと近寄れ。距離200m。よし、撃て!」

(ヴェルナー・メルダース、ドイツ)

 論議において、交渉ごとにおいて、緊急トラブル対応において、あせりと興奮は禁物だ。落ち着き、冷静さを保ち、相手と状況を良く観察し、それが意味することを正しく理解し、判断と選択を誤らないような行動が必要だ。緊急時ほど頭を冷やし冷静に対応すること。また何かがうまくいったとしても喜び過ぎて我を忘れてはいけない。一喜一憂するのはまだまた半人前。

【行動の法則76】 アジテーションにのせられてはいけない

 「空中戦に興奮は禁物である」

(マンフレート・リヒトフォーフェン=レッドバロン、ドイツ)

 感情的な興奮は事実・現実をゆがんで見せる。仕事は感情本位ではなく事実本位で遂行すべし。相手のアジテーションにいちいち反応しないことだ。世の中には、人を怒らせるのが上手な人もいる。逆の見方をすれば、相手の判断を誤らせたければ、ドッグファイトを覚悟で相手が興奮するようなことを言ってみることだ。

【行動の法則77】 目の前の現実を直視する

 「冷静さを保て。よき戦闘機パイロットになるためにはなによりまず、よい意味で無神経であることが必要だ。冷静な上にも冷静。無神経と思われるほどの冷静さが必要である」

(ヘルウート・ヴィック、ドイツ)

 良き仕事人になるためには、不都合な事実であっても、それを直視できる冷静さが必要となる。修羅場であればある程冷静な上にも冷静であることが必要とされる。冷静さはいったん自分の利害関係を離れ、問題の本質を見極めた時に生まれてくる。あれもこれもできない、失いたくないと思っている内は、問題の本質も解決の糸口も見つかりはしない。

【行動の法則78】 ここ一番という時に、余計な心配はしない

 「射撃の間は何も考えるな。身体を引き締め、両手で操縦桿を握り、照準器に集中せよ」

(アドルフ・マラン、イギリス)

 行動している間は余分なことを考えず目標に集中し行動に専念する必要がある。失敗したらどうしようとか考えることや、余計な欲や感情的雑念に支配されていては当たる弾も当らない。あちこちに気を散らさず仕事においては一旦走り出したら、その行動に集中することだ。

【行動の法則79】 一点突破、全面展開

 「集中力、それが全てだ。集中力でもって敵に狙いを定め、恐怖や疲労を忘れることができる。狭いアクリルの棺桶の中でな」

(チャック・イェーガー、アメリカ)

 気持ちの集中は問題の突破力を強化する。チームの連帯とはチームの集中力を強化すると言うことだ。弱い光もレンズで収束すれば強力なレーザー光となり、一見不可能な壁をも貫き通す。一点突破全面展開とはこのことを言う。

(11) 何も行動しなければ勝利は得られない

【行動の法則80】 何もしなければ持っているものさえ失う

 「戦闘に於いて勝利は失うもので得るものではない」

(U.S.AIR FORCE、アメリカ空軍)

 仕事を始めるにあたって、仕事はうまくいかない様に仕組まれていると覚悟しておいた方が良い。改善や対策を何も行わなければ、自動的に失敗に向かって走っていくことになる。仕事はうまく行くのではなくうまく行かせることだ。いつも課題・問題を掘り起こし、改善活動に努力する必要がある。


6. 行動結果の振り返り Feedback

 どのような事においても、実行したらそれで終わりではない。実行までの5つのステップにおける成功と失敗の総括としての「振り返り」が必要となる。これが一連のプロセスのケジメとなり、次の行動の「準備」にもつながり、成功率を高める。

(1) 失敗に学ぶ

【行動の法則81】 失敗に学び、経験知を増やす

 「悔しさが、惨めさが、悲しさが男をつくる。強大な敵こそが、真に偉大な男につくりあげる」

(マンフレート・リヒトフォーフェン=レッドバロン、ドイツ)

 負けたら悔しくないのだろうか。到らなければ惨めにないのだろうか。悲しくて泣いているだけでは問題は解決しない。困難を自分で乗り越えないで成長することはできない。自分やチームの失敗を振り返り、二度と同じ過ちをしない方法を発見することが経験に学ぶということだ。ただ漫然と年数を過ごすだけでは経験知は深まらない。 古語に曰く、「艱難汝を玉にす」。


7.空戦に学ぶ法則のCheck List

 トップガンたちが命がけで遺した言葉の数々をプロジェクトにおける行動の原則として読み替え、チェックリスト形式にまとめると以下のようになる。自分やチームの行動や認識と対比させてみよう。

◆勝利をもたらす行動の要素

□ 先手必勝。 【行動の法則1】

◆目的に集中すること

□ 仕事をする意味をはっきりと意識すること。 【行動の法則2】

□ 目標を明確に捕捉し、それに全力を集中すること。 【行動の法則3】

□ 目標は仕事をやり遂げること。 【行動の法則4】

◆リーダーが最初にとるべき行動

□ 弱い敵や簡単な仕事などはないということ。 【行動の法則5】

□ 自分ないしはチームを優位な状態においてから行動すること。 【行動の法則6】

□ 敵が利用している優位性を、こちらが先に利用すること。 【行動の法則7】

□ 保有資源以外の資源も利用し戦うこと。 【行動の法則8】

□ 敵の弱点を突け。 【行動の法則9】

□ 自分の弱点を攻められる前に相手の弱点を攻めること。 【行動の法則10】

□ 有利な情勢を確保するために事前の準備を尽くすこと。 【行動の法則11】

□ 用意周到な準備は成功の可能性を高める。 【行動の法則12】

リーダの責任

□ リーダーはチームを安全な位置に導かなければいけない。 【行動の法則13】

□ リーダーはプロジェクトから犠牲者を出してはいけない。 【行動の法則14】

◆必要なリソースのレベルを維持しておくこと

□ 目標完遂に必要なエネルギーを維持すること。 【行動の法則15】

□ 浪費や無駄を排除せよ。 【行動の法則16】

◆万が一の危機脱出策を事前に検討しておくこと

□ 窮地に陥った時は悪あがきせず静止せよ。 【行動の法則17】

□ コンティンジェンシー・プランの用意を。 【行動の法則18】

◆危機に備え、ヒト・モノ・カネと時間の予備を確保しておくこと

□ 全てのリソースを一気に使い果たしてはいけない。 【行動の法則19】

◆謙虚であること

□ 天狗になると足をすくわれる。 【行動の法則20】

□ 過去の成功は、現在・未来の成功を保証しない。 【行動の法則21】

◆状況の観察を通じてリスクを事前に把握すること

□ 相手の手の内を良く見ること。 【行動の法則22】

□ 先にリスクや相手の弱点を見つけること。 【行動の法則23】

□ リスクは注意しないと見えない。 【行動の法則24】

□ 異常を示す数値指標に敏感になれ。 【行動の法則25】

□ 見ようとしなければ見えないリスク。 【行動の法則26】

□ 敵やリスクは自分の真後ろに潜んでいる。 【行動の法則27】

□ おいしい話には乗ってはいけない。 【行動の法則28】

□ ポーカーフェイスで強敵や困難をやり過ごす。 【行動の法則29】

□ 敵や困難を直視すること。 【行動の法則30】

□ 弱者は常に警戒せよ。 【行動の法則31】

□ プロフェッショナルには前後左右を見る目が必要。 【行動の法則32】

□ “普通”という罠に、はまってはいけない。 【行動の法則33】

◆目標を明確に把握すること

□ やるべきことがはっきりするまでは行動してはいけない。 【行動の法則34】

□ 目標を捕捉した瞬間に攻撃を集中せよ。 【行動の法則35】

□ 目標を完全に掌握せよ。 【行動の法則36】

□ 何が本質なのかを理解しておくこと。 【行動の法則37】

□ ウィークポイントを抑えること。 【行動の法則38】

□ 目標を限りなく正確にとらえし、それに全勢力を結集すること。 【行動の法則39】

□ やみくもに行動しても成果は得られない。 【行動の法則40】

□ 当たるべくして当たる、成功するべくして成功するようにすること。 【行動の法則41】

□ 目標に到達するには学習と訓練と情報共有が必要。 【行動の法則42】

□ 間合いを読むこと。 【行動の法則43】

◆決断は迅速に行なうこと

□ 素早い行動に心がけること。 【行動の法則44】

◆まず最初に最大のリスクから排除すること

□ 見積りの失敗、要件定義の失敗をなくすべし。 【行動の法則45】

□ 最小努力で目標を達成すべし。 【行動の法則46】

◆チームプレーの原則を守ること

□ 相互援助を実行すること。 【行動の法則47】

□ 独断専行に走らず組織戦を行え。 【行動の法則48】

◆コミュニケーションのルールを守ること

□ 話の中途割り込みはルール違反。 【行動の法則49】

◆頭脳戦を行なうこと

□ 相手のミスを誘うには誉めまくることが一番。 【行動の法則50】

□ 空戦も開発も着手前の準備段階で勝敗が決まっている。 【行動の法則51】

□ 筋肉を使わず、頭を使うべし。 【行動の法則52】

□ 乱闘に巻き込まれるな。 【行動の法則53】

□ 知的体育会系であれ。 【行動の法則54】

□ 素早く効果的な行動を。 【行動の法則55】

□ 勝敗は個人および組織の経験知で決まる。 【行動の法則56】

◆環境・状況の変化に沿うように行動すること

□ 一歩前へ。 【行動の法則57】

□ 異常時においては、平時における能力以上のものは出ない。 【行動の法則58】

□ 戦闘中は静止してはいけない。 【行動の法則59】

□ 周りを良く見回して誰よりも先に問題をキャッチすること。 【行動の法則60】

□ 同じことをいつまでも続けてはいけない。 【行動の法則61】

□ 反転攻勢、逆襲の好機を待て。 【行動の法則62】

□ リスクの排除は目標の変化への対応を可能にする。 【行動の法則63】

◆危機に直面したら、逃げずに正対すること

□ 断じて行えば鬼神もこれを避く。 【行動の法則64】

□ 逃げ方にもいろいろある。 【行動の法則65】

□ 回避は労多くして功なし。 【行動の法則66】

◆一旦行動開始したら中途で諦めないこと

□ あきらめない。 【行動の法則67】

□ 空元気でも出すべし。 【行動の法則68】

□ 継続は力なり。 【行動の法則69】

◆やり過ぎないこと

□ 深追いをしてはいけない。 【行動の法則70】

◆無理をしないこと

□ 猪突猛進は勇気の証拠にはならない。 【行動の法則71】

□ 個人戦をしてはいけない。 【行動の法則72】

□ 異常な指示は拒否すること。 【行動の法則73】

□ 健全さは戦いの基本力である。 【行動の法則74】

◆困難に直面しても冷静に問題の解決に集中すること

□ 頭に血がのぼったら深呼吸を。 【行動の法則75】

□ アジテーションにのせられてはいけない。 【行動の法則76】

□ 目の前の現実を直視すること。 【行動の法則77】

□ ここ一番という時に、余計な心配はしないこと。 【行動の法則78】

□ 一点突破、全面展開。 【行動の法則79】

◆何も行動しなければ勝利は得られない

□ 何もしなければ持っているものも失う。 【行動の法則80】

◆失敗に学ぶこと

□ 失敗に学び、経験知を増やすこと。 【行動の法則81】


おわりに

 いろいろな局面における戦い方について述べてきましたが、これらのノウハウは決して弱い立場の人たちに向けることを意図してはいません。一昔前まではグループ内やチーム内での助け合いは、ごく普通に行われていたように思います。さらに組織における上位の者は、その職位に応じて組織の構成員たちを守ることを第一番に考えていました。しかしながら昨今の状況は「貧すれば鈍す」と言われるように、上位の者たちほど先に逃げ、下位のものたちに平気で責任や苦難を押しつける傾向が顕著に感じられます。

 戦うべき相手は、そのような平気で不条理さを押しつけてくる強い立場の者たちなのです。

 またこの戦いは、それを仕方のないことだとあきらめかけているあなた自身なのかも知れません。

 弱い立場の者たちには戦うための武器が必要です。ビジネスシーンにおける武器とは、相手を凌駕する合理性の知恵であり、妥当性の倫理観だと言えます。どのようなことにおいても、どのような場合においても、どこまでも譲るわけにはいかない一線があります。これ以上譲れない線を超えるような不条理な仕打ちには断固として闘いを挑む必要があります。弱い立場の人間だといっても、いつまでも泣かされ続けるわけにはいかないでしょう。

 ビジネスシーンにおける戦い方は、お互いの主張は出しつつも、先に相手が欲しいものを渡し、残りの利を自分のものとするやり方が現実的に有効な方法でしょう。たとえて言えば、左手ではお互いに殴り合いをしつつも、右手はしっかりと離さず、決定的な決裂を避けることのように思います。

 Give&Takeと言う通り、先に与え後に得るという生き方が弱者が生き残るもっとも良い方法だと思えます。

 読者のみなさんに少しでも勇気が湧き、今つまずいている壁を乗り越えられることを願っています。


引用・参考文献

・ Wikipedia

・ [エース・パイロット]  http://ja.wikipedia.org/wiki/

・ [空戦の原則]  http://www43.atwiki.jp/aceshigh/pages/167.html

・ [失敗の本質] 野中郁次郎等共著、ダイヤモンド社

・ [ジョン・ボイド]  http://ja.wikipedia.org/wiki/

・ [F-22ラプターへの道] http://majo44.sakura.ne.jp/planes/F22/top.html

・ [John Boyd] http://en.wikipedia.org/wiki/John_Boyd_(military_strategist)

・ [OODAループ]  http://ja.wikipedia.org/wiki/OODA%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97

・イラスト: いらすとや http://www.irasutoya.com/p/terms.html