二十四節気・七十二候

季節・気候の語源

 「季節」「気候」といえば気象学の分野で天文とは直接関係なさそうに思えますが、「季」は四季、「節」「気」は二十四節気「候」は七十二候のことで、いずれも太陽黄経を示す暦のことです。
 太陰暦を採用していた時代には月の形を見て日付を知ることは重要なことでした。時計が無く夜間照明が月しかないのですから、太陽の位置や月の形を見て時刻や日付を知ることは庶民の生活にとって必要な能力だったのです。
 ところが毎日の生活は月を見るとして農耕に必要な季節は太陰暦からは得られません。太陰暦の1年は354日程度しかなく毎年11日も年初が早まってしまいます。3年も経つと1ヶ月以上も季節がずれて種まきや収穫をいつするのかわからなくなるのです。そこで太陽暦を取り入れた太陰太陽暦が作られました。中国や日本で用いられた「旧暦」というのは太陰太陽暦のことです。それでも19年に7回も1年が13ヶ月あるという暦では農耕には向きません。季節変化は地球と太陽の位置関係で決まるので完全な太陽暦を用いるべきなのですが、他の事情がそれを許さないので 太陽の天球上の位置を示す季節、気候が導入されてカレンダーに書かれていたのです。
 江戸時代の庶民はカレンダー(暦)を買ってきて そこに書かれている節気を参考に 種まきや収穫の日取りを決めていたのです。もちろん現在の暦は太陽暦ですから 節気を気にする必要はありません。立春はいつも2月4日と決まっているからです。
 地球から太陽を見ると 天球上を移動していくように見えます。実際は地球が太陽の周囲を公転しているのですが、太陽が動いていると考えても問題はありません。太陽が動く天球上の道筋を「黄道」(こうどう)といいます。地球の赤道を天球に投影した大円を「天の赤道」といいます。天の赤道と黄道は約23.5度傾いています。太陽が黄道上を動き、天の赤道を南から北へ横切る点を「春分点」といいます。「春分点」は天球上の天体の位置を示す基準となる点です。
 太陽は春分点を出発して1年で天球上を1周して春分点に戻ります。これを360等分して春分点からの角度を示したものを「黄経」といいます。季節や気候は太陽の黄経を示しているのです。
 旧暦でおこなわれていた年中行事を現在のグレゴリオ暦で行うのは確かに季節感がずれているのですが、それは年初の日付(元旦と旧正月)が1ヶ月以上ずれていることが問題なのであって、太陰暦のほうが季節感があるなどという主張は明らかに誤りということになります。

四季節気太陽黄経七十二候(本朝=日本)七十二候(中国)
 立春 りっしゅん
2月4日
315東風解氷 とうふうこおりをとく
黄鶯睨v こうおうけんかんす
魚氷上 うおこおりにのぼる
東風解氷 とうふうこおりをとく
蟄虫始振 ちっちゅうはじめてふるう
魚氷上 うおこおりをのぼる
 雨水 うすい
2月19日
330土脈潤起 どみゃくうるおいおこる
霞始靆 かすみはじめてたなびく
草木萌動 そうもくきざしうごく
獺祭魚 たつうおをまもる
鴻雁来 こうがんきたる
草木萠動 そうもくほうどうす
 啓蟄 けいちつ
3月6日
345蟄虫啓戸 ちっちゅうこをひらく
桃始笑 ももはじめてわらう
菜虫化蝶 なむしちょうとけす
桃始華 ももはじめてはなさく
倉庚鳴 そうこうなく
鷹化為鳩 たかけしてはととなる
 春分 しゅんぶん
3月21日
雀始巣 すずめはじめてすくう
桜始開 さくらはじめてひらく
雷乃発声 らいすなわちこえをはっす
玄鳥至 げんちょういたる
雷乃発声 かみなりすなわちこえをはっす
始電 はじめていなびかりす
 清明 せいめい
4月5日
15玄鳥至 げんちょういたる
鴻雁北 こうがんきたす
虹始見 にじはじめてあらわる
桐始華 きりはじめてはなさく
田鼠化為鳥 でんそけしてうずらとなる
虹始見 にじはじめてあらわる
 穀雨 こくう
4月20日
30葭始生 よしはじめてしょうず
霜止出苗 しもやんでなえいず
牡丹華 ぼたんはなさく
萍始生 うきくさはじめてしょうず
鳴鳩払其羽 めいきゅうそのはねをはらう
戴勝降于桑 たいしょうくわにくだる
 立夏 りっか
5月6日
45蛙始鳴 かえるはじめてなく
蚯蚓出 きゅういんいずる
竹笋生 ちくかんしょうず
螻虫國鳴 ろうこくなく
蚯蚓出 きゅういんいず
王瓜生 おうかしょうず
 小満 しょうまん
5月21日
60蚕起食桑 かいこおこってくわをくらう
紅花栄 こうかさかう
麦秋生 ばくしゅういたる
苦菜秀 くさいひいず
靡草死 びそうかる
小暑至 しょうしょいたる
 芒種 ぼうしゅ
6月6日
75蟷螂生 とうろうしょうず
腐草為螢 ふそうほたるとなる
梅子黄 うめのみきなり
蟷螂生 とうろうしょうず
鵙始鳴 もずはじめてなく
反舌無声 はんぜつこえなし
 夏至 げし
6月22日
90乃東枯 ないとうかるる
菖蒲華 しょうぶはなさく
半夏生 はんげしょう
鹿角解 しかのつのおつ
蜩始鳴 せみはじめてなく
半夏生 はんげしょう
 小暑 しょうしょ
7月7日
105温風至 おんぷういたる
蓮始華 はすはじめてはなさく
鷹乃学習 たかすなわちがくしゅうす
温風至 うんぷういたる
蟋蟀居壁 しつしゅつかべにいたる
鷹乃学習 たかすなわちがくしゅうす
 大暑 たいしょ
7月23日
120桐始結花 きりはじめてはなをむすぶ
土潤溽暑 つちうるおいてじゅくしょす
大雨時行 たいうときどきおこなう
腐草為螢 ふそうほたるとなる
土潤溽暑 つちうるおいてあつし
大雨時行 たいうときにゆく
 立秋 りっしゅう
8月8日
135涼風至 りょうふういたる
寒蝉鳴 かんせんなく
蒙霧升降 もうむしょうこう
涼風至 りょうふういたる
白露降 はくろくだる
寒蝉鳴 かんせんなく
 処暑 しょしょ
8月23日
150綿柎開 めんぷひらく
天地始粛 てんちはじめてしゅくす
禾乃登 くわすなわちのぼる
鷹乃祭鳥 たかすなわちとりをまつる
天地始粛 てんちはじめてしじむ
禾乃登 かすみすなわちみのる
 白露 はくろ
9月8日
165草露白 そうろしろし
鶺鴒鳴 せきれいなく
玄鳥去 げんちょうさる
鴻雁来 こうがんきたる
玄鳥帰 げんちょうかえる
羣鳥養羞 ぐんちょうしゆうをやしなう
 秋分 しゅうぶん
9月23日
180雷乃収声 らいすなわちおさむ
蟄虫坏戸 ちっちゅうこをはいす
水始涸 みずはじめてかる
雷乃収声 かみなりすなわちおさむ
蟄虫坏戸 ちっちゅうとをとざす
水始涸 みずはじめてかる
 寒露 かんろ
10月9日
210鴻雁来 こうがんきたる
菊花開 きくはなひらく
蟋蟀在戸 しっそくこにあり
鴻雁来賓 こうがんらいひんす
雀入大水為蛤 すずめたいすいにいりこはまぐりとなる
菊有黄華 きくにこうかあり
 霜降 そうこう
10月24日
210霜始降 しもはじめてみる
霎時施 しぐれときどきほどこす
楓蔦黄 ふうかつきなり
豺乃祭獣 さいすなわちけものをまつる
草木黄落 そうもくこうらくす
蟄虫咸俯 ちっちゅうことごとくふす
 立冬 りっとう
11月8日
225山茶始開 さんちゃはじめてひらく
地始凍 ちはじめてこおる
金盞香 きんせんこうばし
水始氷 みずはじめてこおる
地始凍 ちはじめてこおる
野鷄入水為蜃 やけいみずにいりおおはまぐりとなる
 小雪 しょうせつ
11月23日
240虹蔵不見 にじかくれてみえず
朔風払葉 さくふうはをはらふ
橘始黄 たちばなはじめてきなり
虹蔵不見 にじかくれてみえず
天気上騰地気下降 てんちじょうとうしちかこうす
閉塞而成冬 へいそくしてふゆをなす
 大雪 たいせつ
12月7日
255閉塞成冬 へいそくしてふゆとなる
熊蟄穴 くまあなにちっす
魚厥魚群 けつぎょむらがる
蚯蚓結 きゅういんむすぶ
虎始交・武始交 とらはじめてつむる
茘挺出 そうていいずる
 冬至 とうじ
12月22日
270乃東生 ないとうしょうず
麋角解 びかくげす
雪下出麦 せつかむぎをいだす
蚯蚓結 きゅういんむすぶ
麋角解 びかくげす
水泉動 すいせんうごく
 小寒 しょうかん
1月6日
285芹乃栄 せりすなわちさかう
水泉動 すいせんうごく
雉始鳴 きじはじめてなく
雁北郷 かりきたにむかう
鵲始巣 かささぎはじめてすくう
夜鶏始鳴 やけいはじめてなく
 大寒 だいかん
1月20日
300款冬華 かんとうはなさく
水沢腹堅 すいたくふくけん
鶏始乳 にわとりはじめてにゅうす
鶏始乳 にわとりはじめてにゅうす
鷙鳥試セ しちょうれいしつす
水沢腹堅 すいたくあつくかたし
:節 :中  二十四節気の日付は2003年  七十二候のなかには変換できない漢字があります。

二十四節気

平気法
 二十四節気は1年を24等分したものですから 1年=365.2422日の24分の1は 15.2184日です。つまり15日または16日に1回節気がやってきます。古い暦では冬至からはじめて単純に15日または16日ごとに節気を配置しています。この方法を平気法といいます。現在用いられている平均太陽日と同じ考え方です。
 表で節と中がありますが 季節の最初を節とし 節−中−節−中 と交互に繰り返していきます。節から節(中から中)の間は30.437日ですが 旧暦の月(朔望月)の長さは 29.531日ですから1朔望月のなかに中気を含まないときがあります。太陰太陽暦では 太陽年と太陰暦の帳尻を合わせるために19年に7回の閏月(うるうづき)を挿入しました。この年は1年=13ヶ月となりますが、中気を含まない月を閏月と決めています。
 平気法は単純でわかりやすい反面、太陽の動きを正確に反映していません。冬至を基準として正反対の夏至で太陽の黄経は180度になりません。そのため現在では定気法が用いられています。
定気法
 現在用いられている二十四節気の決め方です。地球の軌道は楕円で太陽に近いほど速く動きます。地球から見た太陽の動きも同じですから、太陽の動く速度は一定ではありません。
 そこで実際の太陽の動きを基準に 黄道上で15度動く毎に節気を配置する方法を定気法といいます。基準点は春分を用いています。この方法は西洋の暦の影響を受けた中国清朝の時憲暦(もともと明朝末期につくられた『崇禎暦書』で、清朝になり『時憲暦』として1644年に採用された)から採用され、日本では1844年実施の天保暦から用いられています。
 なお節気の名称は中国黄河流域の季節を元にしているので日本では感覚的な差もあります。上の表では四季を示すため立春からはじめています。

雑節

 二十四節気以外にカレンダーには雑節が記載されています。ここでは太陽暦を基準にした雑節を取り上げます。
節分 せつぶん
 大寒より15日目 立春の前日。もともと立春・立夏・立夏・立冬の前日すべてを節分と言ったが現在では立春の前日のみを節分とよんでいます。
 立春=初春=年始 の考え方から1年の最後とされ邪気払いの風習が多く残っています。恵方と寿司屋もご覧ください。
彼岸 ひがん
 春秋の彼岸会(ひがんえ)のことで 春分の日、秋分の日を中日(ちゅうにち)として前後3日の計7日をさします。一般に中日のみを彼岸ということも多いようです。
 もともと仏教行事であったものが暦に加えられ雑節となったもので、日本独特のものです。仏典の波羅蜜多(はらみた=サンスクリット語の「パーラミッタ」)を漢訳した「到彼岸」に由来します。
社日 しゃにち
 春分の日、秋分の日に最も近い戊(つちのえ)の日のことで、年に2回あります。
「社」は産土神(うぶすながみ)のことで、豊作と収穫のお参りをするのですが、最近ではあまりおこなわれていません。
八十八夜 はちじゅうはちや
 立春から数えて88日目で、5月2日頃のことです。農耕を営むための重要な日で、茶摘み・苗代の籾蒔きなど目安とされています。また遅霜の被害が出る時期でもあり注意をうながす意味もあるようです。
 江戸時代の幕府天文方であった渋川春海(しぶかわはるみ)が雑節として貞享暦(1684)に取り入れたとされています。
入梅 にゅうばい
 太陽黄経が80度になる日を入梅といい6月11日頃です。本来は梅雨入りを示す雑節でしたが、現在は実際の梅雨入りとは無関係になっています。田植えのための重要な意味があります。
 梅の実が熟す時期という意味と、黴(かび)が生えやすいので「黴雨」(ばいう)がかぶって「梅雨」になったといいます。
半夏生 はんげしょう
 太陽黄経が100度になる日で、7月2日頃になります。「半夏」は仏教用語で夏安居接心(げあんごせっしん=僧の修行する期間のこと)の中間をいいます。またドクダミ科の毒草のことでもあり、それが生える時期を示すともいわれています。
土用 どよう
 本来は立春・立夏・立秋・立冬の前の十八日間を指しますが、現在では立夏前のことだけをいうようになりました。
 土用にうなぎを食す風習は江戸時代の蘭学者平賀源内が始めたとの説が有力のようです。
二百十日 にひゃくとおか
 立春から数えて210日目で、9月1日頃にあたります。稲の開花時期と台風を警戒する意味から 渋川春海が貞享暦に記載したと言われていますが、それ以前からも各地で使われている雑節であるようです。
二百二十日 にひゃくはつか
 立春から数えて220日目で9月10日頃にあたり、意味は二百十日と同様です。これも渋川春海によるものとの説がありますが、それ以前の京暦や伊勢暦にも記載があるということがわかっています。

七十二候

 節気をさらに三等分して初候・次候・末候に分けたものが七十二候で、天気の変化や動物や植物の生態を表現しています。細かく分けすぎてあまり用いられていないのが実情です。
 ルーツは中国の春秋時代にまでさかのぼることができるそうで、華北地方の自然がうかがえる内容です。ここでは大衍暦・宣明暦に記された七十二候を用いています。
 しかし日本に二十四節気や七十二候が輸入されたとき、日本の季節感とは異なる内容も多かったため、日本独自の本朝七十二候が作られました。本朝七十二候は作者や暦が異なるごとに書き換えられたりしたのでいろいろな七十二候が存在します。現在では「暦の会」が編集した「現代七十二候」が存在しますが、ここでは江戸時代の宝暦暦・寛政暦を用いています。
 七十二候に出てくる動植物について解説をします。
   黄鶯=ウグイス  蟄中=ふゆごもりしている虫
   獺(たつうお)=カワウソ
   菜虫=アオムシ アブラナの葉を食う昆虫の総称   倉庚=ウグイス   鷹化為鳩=鳩=カッコウ(ハトではない)
   玄鳥=ツバメ
   鴻雁=鴻は大型の雁   田鼠化為鳥=ネズミが変化してウズラになる ウズラは如かんむりに鳥だがJIS漢字に無い
   鳴鳩=イカル イカルガ 一説にカッコウ   戴勝=カッコウ 一説にウソ
   蛙=カエル   蚯蚓=ミミズ    螻虫國=アマガエル  王瓜=カラスウリ 竹笋=たけのこ
   蚕=カイコ(カイコガの幼虫)   紅花=ベニバナ苦菜=にがな 靡草=ナズナなど田に生える草
   蟷螂=カマキリ 鵙=モズ   反舌=ウグイス
   乃東枯=夏枯草のこと   菖蒲=アヤメ
   蟋蟀=キリギリス 一説にコオロギ
   禾=イネ
   鶺鴒鳴=セキレイ  羣鳥=群がる鳥の意
   楓=カエデ  豺=ヤマイヌ
   山茶=ツバキ  金盞=スイセン(水仙)  野鷄=キジ   蜃=オオハマグリ
   魚厥=サケ 魚へんに厥だがJIS漢字に無い
   茘挺=オオニラ
   麋角=ナレシカの角(トナカイの一種)
   芹=セリ   雉=キジ   鵲=カササギ   夜鶏=雄のキジ
   款冬=フキ(蕗)  鶏始乳=鶏が卵を産む   鷙鳥=ワシやタカなどの猛禽

関連サイト

massangeana(益山)の趣味のページ 暦関係に中国の暦に関する記述多数
国立国会図書館「日本の暦」 日本の暦に関する記述 図版が多く見やすい
ぽんずのページ 北京歳時記に中国の七十二候の解説があります
かわうそ暦 現代七十二候の解説があります

2003.3.7
2007.10.28追補

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