存在しない惑星
 太陽系には惑星が9個あります。しかしそのすべてが有史以前から知られていたわけではなく、天王星、海王星、冥王星は望遠鏡の発達によって発見されたものです。また火星と木星の間には小惑星帯(アステロイドベルト)、土星以遠にはエッジワース・カイパーベルト天体が多数発見されるようになってきました。冥王星の地位も惑星とこれらの小天体の間で揺れ動いています。したがって今後も新しく惑星が発見される可能性は残されています。
 太陽系の主なものは現在の観測技術でとうに発見されているので、未発見の天体は太陽に近いか太陽の裏側、あるいは超遠方にしかないということになります。ここでは、過去において存在を仮定された惑星、擬似科学のネタや占星術で登場した惑星、現在もなお探査されている未発見の惑星について調べてみました。

水星より内側の惑星

バルカン
 18世紀ハーシェルによって天王星が発見されました。天王星はおよそ6等級ですから、夜空の暗いところでは肉眼でも存在を確認できるそうです。その後天王星はガリレオらによって17世紀にも惑星と気づかず観測されていたことがわかり、その軌道が正確に分かりました。
 19世紀になり、天王星はその外側に未知の新惑星を仮定しないと運動のズレを説明できなくなり、フランスのルヴェリエとイギリスのアダムズによって新惑星の位置が計算されました。これが海王星の発見につながったのです。
 このようにしてルヴェリエの名声は高まったのですが、彼は水星の近日点が惑星の摂動以上にズレることにも気づき、水星の内側にも未発見の惑星があると考えるようになりました。この未知の惑星に「バルカン」と名前を付けたのです。
 バルカンは太陽に近すぎるため夕方や明け方には観測できないため、内合を待って日面通過を観測しようとする者、皆既日食のとき太陽周辺を捜索しようとする者があとをたちませんでした。
 1859年には日面通過、1878年には皆既日食中にバルカンを発見したという報告がありましたが、後に誤報だとわかったりしました。
しかし19世紀中には水星の内側には直径50km以上の天体は存在しないことが明らかになりましたが、水星の軌道変化については説明がついていませんでした。20世紀になりアインシュタインの相対性理論が近日点の移動を説明して一件落着となりました。

1859 レカルボーが日面通過観測
1862 ルミスが日面通過観測
1878 ワトソン、スウィフトが皆既日食中に発見
1880 ニューカムがバルカンの存在を否定
1904 アインシュタイン 相対性理論により水星の近日点移動を説明

反地球

クラリオン、ヤハウェ
 惑星は太陽を公転していますが、似たような軌道を描くもう一つの惑星があれば、長い年月の間には両者は衝突するか、どちらもが大きく軌道を変えてしまうことがわかっています。ところがラグランジュポイントとよばれる軌道は、その位置にある惑星を安定させることができます。ラグランジュポイントは5個ありますが、そのうち地球と太陽を挟んで正反対のラグランジュポイント(L3)に位置するのが反地球というわけです。
 飛鳥あきお氏の本「太陽系第12番惑星ヤハウェ」(学研1996)によれば、NASAは反地球の存在を知っていて隠しているのだそうです。この惑星を「ヤハウェ」とか「クラリオン」と言うそうです。NASAの金星探査機は金星探査にかこつけてこの惑星を探査したのだそうです。飛鳥氏の本の表紙になっているヤハウェとされる写真は、1980年に出版されたカール・セーガン構成の「コスモス」(TVシリーズ「コスモス」のあと発行された解説本)で土星の衛星タイタンの模型とされる写真の色を変えたもので明らかに捏造されたものです。
 いずれにせよ、反地球が存在すれば、たとえ太陽が邪魔で見えなくとも必ず観測することはできます。地球軌道は楕円なので反地球が完全に太陽の正反対側に存在することはできませんから、皆既日食があれば見つかるはずです。また地球近傍を通過する小惑星や彗星の軌道にも重力によって影響を与えますから、見えなくとも存在を知ることは可能で、そのような観測や計算はアマチュアでもできます。もし反地球が存在すればしし座流星群の軌道も乱され流星は出現しないでしょう。つまりNASAが存在を隠すようなことはできないのです。当然そのような惑星は存在しません。

第5惑星

フェイトン、ティアマト
 火星と木星の間には現在小惑星が無数に存在し、この空域を小惑星帯(アステロイドベルト)とよびます。小惑星の発見にいたる過程にボーデの法則(法則については尽数関係をご覧下さい)があります。ボーデの法則は正確にはチチウス・ボーデの法則といい、惑星の平均距離を経験的に示すものです。
 ボーデの法則によると太陽系の惑星配置は1水星、2金星、3地球、4火星、6木星、7土星となっていて、5に相当する位置に空白があります。単なる数字合わせと考えられていた法則ですが8に相当する位置に天王星が発見され信憑性が高まりました。1801年5に相当する位置に小惑星ケレスが発見され、さらに続々と小惑星が発見されるにつれ、火星と木星の間にはかつて惑星が存在しなんらかの原因で破壊されたものが破片となっているのだと考える学者があらわれました。この破壊された惑星を「フェイトン」あるいは「ティアマト」とよびます。
 現在ある小惑星すべてを集めても月程度の質量しかなく、とても惑星とよべるようなものにはなりません。小惑星のうち比較的大きなものはすべて発見されていて未発見のものの質量の最大値は予測できています。本来惑星に成長するはずの微惑星が木星の重力によって惑星になりきれず現在にいたっていると考える学者が多いのですが別の見方も存在します。
 地球で見つかる隕石の大部分は小惑星帯を起源にしますが、そのなかに隕鉄があります。隕鉄は惑星級の天体が一旦溶けて中心部の鉄がゆっくり冷えて固まったものと考えられますが、現在の小惑星では最大のものでも全体が溶けるほどの発熱は考えられず、もっと大きな天体の破片だと考えられるのです。また小惑星ベスタは地球からの観測で表面が破壊されて内部の鉄部分が露出している天体だと考えられています。つまりもっと大きな天体であったものの中心部分である可能性が捨てきれないのです。過去には小惑星帯には複数の原始惑星があり、互いの衝突で破壊され大きな破片は太陽や木星に落ちた可能性は否定できないということになります。
 ただし惑星が破壊されたとしても、それは数十億年前の太陽系誕生の頃で、インチキ科学者が指摘するような人類の歴史に影響するような最近の事件であったはずはありません。

長円軌道惑星

惑星X、アクエリアス、ニビル、ラーメタル
 高橋実氏が1975年に「灼熱の氷惑星」(原書房1975)という本を出版しました。この本では地球には水が多すぎる、水は長円軌道を描く惑星Xからもたらされたと書かれています。神話や伝説の出来事を惑星Xが地球に接近したことで説明しようとしています。
 この手の話は「神話や伝説のなかには事実を記したものがある」「科学の発達していない古代人は見たものを神や悪魔の仕業と考え子孫に伝承した」という考えに基づいています。19世紀ドイツのシュリーマンがギリシャ叙事詩の「イーリアス」や「オデッセイア」を事実と考えトロイ遺跡を発掘したことで、神話や伝承には真実が含まれることは確かになりましたが、逆に神話・伝承の都合の良い部分だけを事実と考え現代風に解釈しようとする人々が増えたのも事実です。
 ヴェリコフスキーの「衝突する宇宙」、デニケンの「未来の記憶」、ハンコックの「神々の指紋」などがベストセラーになりましたが、SFとしては面白いのですがどれも科学的説得力はありません。ムーやアトランティスの超古代文明も同様ですし聖書やマハバーラタの記述を科学的?に解釈しようとするものなどこの手のネタには困りません。
 惑星X(=アクエリアス(アニメ宇宙戦艦ヤマトに登場する水惑星))は地球軌道まで侵入してくる長円軌道をもつ惑星で、ニビルは小惑星帯まで侵入する惑星とされていて、いずれも公転周期は数千年です。あまり長いと歴史上の奇跡や災厄を説明できませんし、近未来に回帰すると言って不安をあおることもできません。もちろんそのような惑星があれば太陽系を飛び出すボイジャーやパイオニアの軌道に影響し発見されているはずですが、そのような事実はありません。

超冥王星

ケツァルコアトル、キュピッド、魔王星、霊王星、雷王星
 どれも暗く陰気な名前の惑星ですがエセ天文学者やSF作家が勝手につけた名前です。冥王星の外側でほぼ円軌道を描いていると考えられる惑星です。存在するとして1個であるのか複数であるのかはわかりません。現在では超冥王星は存在しないと考える学者が大多数ですが、たった1個の発見がそれまでの常識をくつがえした例は過去に山ほどありますから、超冥王星が存在しないとは言い切れません
 超冥王星が存在するとすれば、エッジワース・カイパーベルト(略してカイパーベルト)とよばれる太陽系外周にある小惑星群に存在するはずです。カイパーベルト天体はアステロイドベルト天体とは成因が異なり、水を主成分とする天体だと考えられています。太陽に近づけば彗星になる天体です。これらの小天体の軌道を調べることによって超冥王星が発見される可能性はありますが、たとえ発見されてもそれは天王星や海王星のようなガス惑星ではなく、氷の星であることでしょう。
 1970年代から80年代にかけて軌道傾斜角が90°以上の逆行惑星が想定されたこともありましたが、現在ではパイオニアやボイジャーの軌道からそのような惑星の存在は否定されています。またそのような不安定軌道の惑星級天体があれば内部太陽系の惑星軌道に影響し太陽系が50億年近くも安定して存在できないことが証明されています。
 2003年 フランスのグラッドマンらが、100天文単位あたりに火星程度の質量の惑星があると仮定すればカイパーベルト天体の軌道変化を説明できるという説を述べています。
 また2008年2月 神戸大学のパトリック・リカフィカ(Patryk Lykawka)博士研究員と向井正教授が、カイパーベルト天体の軌道を説明するためには150億〜260億キロメートルの楕円(だえん)軌道を回る、質量が地球の3〜7割 軌道傾斜角20〜40度の惑星級天体が存在するはずだと発表しました。前述のグラッドマンの説に似ています。

太陽の伴星

ネメシス
 1980年 アメリカのアルヴァレス親子(父ルイスはノーベル賞学者)は、6500万年前の恐竜絶滅は、小惑星か彗星が地球に衝突した結果であるという考えを発表しました。当時は珍説の一つであっただけですが、6500万年前のK−T境界とよばれる地層から高濃度イリジウムが検出されるに及んで天体衝突は事実であることがわかってきました。また偶然、石油探査チームがユカタン半島に6500万年前の巨大クレータ(チチュルブクレーター)を発見しました。
 さらに調査をするとK−T境界だけでなくおよそ2600万年周期で大絶滅がおこること、これらの原因が天体衝突によるものだという説が受け入れられるようになりました。2600万年周期を説明するために、考えられたのが太陽の伴星「ネメシス」です。ネメシスは長半径数光年で楕円軌道を描き、2600万年周期で太陽に近づくというものです。太陽に近づいたときでも1光年程度で地球からは観測できない暗さですが、彗星の巣であるオールト雲を乱し、内部太陽系に彗星が無数に飛来し惑星に衝突するというシナリオです。日本に紹介されたのはリチャード・ミューラーの「恐竜はネメシスを見たか」(集英社1987)です。
 残念ながらネメシスは太陽から遠く、他の恒星の影響を受け力学的に長期間存在できないことが明らかになっていますので存在しないようです。
 セプコフスキーはネメシスではなく、太陽系の銀河面横断周期を2600万年としていますが、彗星の爆撃という点では同様な説をとっています。2600万年周期自体が存在するのか?(絶滅の記録が正確かどうか、統計上の見かけの周期ということは否定できない) 周期が存在したしても原因が彗星か? と問われれば苦しいのが現状です。

占星術の惑星

ドラゴンヘッド(ラーフ・羅喉星) ドラゴンテイル(ケートゥ・計都星)
 占星術では肉眼で見える5惑星と太陽、月を加えた7個の天体を惑星といいますが、これ以外に2個の惑星を加えて9惑星とするものがあります。
ドラゴンヘッドは黄道と白道(天球上の月の通り道)の交点のうち、白道が南から北へよぎる点、ドラゴンテイルは北から南へよぎる点のことで、両者は天球上の正反対に位置します。月の軌道面と黄道面は約19年周期で交点が東から西へ移動します。つまりドラゴンヘッドやドラゴンテイルは黄道上を移動するので見えない惑星と考えられたのです。
 太陽と月がドラゴンヘッドやドラコンテイルを同時に通過すると日食がおこり、180度離れていると月食が起こります。古代人は日食を月ではなくドラゴンヘッドという見えない惑星が太陽の前を通るのだと考えたのでしょう。
2003.11.20
2008.03.03追補

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