惑星直列

惑星直列とは

 1970年代に「惑星直列」(原題 Jupter Effect :John Gribbin and Stephen Plagemann 1974)という本がベストセラーになりました。1982年春に各惑星が一直線に並び、地球に天変地異がおこるかもしれないというような内容です。もちろんおおかたの天文学者はそのような説を信じていませんでしたし、たとえ災害がおこってもそれは惑星直列とは無関係な現象だと考えていました。そして実際には何もおこりませんでした。惑星の引力は月や太陽に比べて極端に小さいので、たとえすべての惑星が一方向に並んだとしてもその影響は無視できる程度に小さいのです。(すべての惑星が地球上の一人の人間に及ぼす引力は、1メートルとなりにいる人の引力以下です。また潮汐力の影響はさらに小さくなります。)
 インターネットで検索すると、地震と惑星の配列をまことしやかに関連づけているサイトが数多く見られますが、これらのサイトにあるネタはすべて結果論で「なぜそうなるのか」「次はいつおこるのか」を示していないため科学的な議論にはなっていません。
 似たような話は16世紀にもありました。1499年 ドイツのシュテッフラーは「1524年2月に大洪水がおこり人類は死滅するかもしれない」という大予言をしました。2月5日に太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星のすべてがうお座に集まる惑星直列がおこるからです。うお座=水 の連想から「大洪水」がおこるという予言でした。予言によってノアの箱船もどきを作った人や山に逃げた人がいましたが何もおこりませんでした。
 惑星直列といっても実際には地球から見てある一定の範囲に惑星が集まる現象で、完全に一直線になるわけではありません。あったとしても数百万年に一度あるかないかの現象で、惑星の過去や未来の位置予想は現在から離れるほど不確定になっていきます。そのような現象をシミュレーションすることは現代科学の力でも不可能です。

 ここでは「惑星直列」を次の3つに分類してみました。惑星ですから太陽は含まれていませんが、水星は太陽から離れないので太陽を含んでいると考えても問題ありません。また月は無関係ですが現象としては派手で面白いと思います。

A.太陽からみてすべての惑星がほぼ同じ方向に並ぶ。
B.地球から見てすべての惑星がほぼ同じ方向に並ぶ。
C.地球も含めて惑星がほぼ直線上に並ぶ。

 上の例では1524年の現象はBに分類されることになります。当時は天王星、海王星、冥王星は発見されていませんでしたから5惑星ですが、実は海王星も同じ方向に見えることがわかっていて太陽・月・6惑星が直列しています(天王星、冥王星は60度程度離れています)ので珍しい現象であることには違いありません。
 また1982年の現象はCに分類されます。これも天王星は30度、冥王星は90度程度離れています。しかしこのまれな現象のおかげでボイジャーの外惑星探査(当時はグランドツアー計画とよばれていました)が成功したといえます。外惑星が互いに反対方向にあれば1機の探査機で次々と惑星を訪れることは不可能でした。

1524年
 まず1524年の現象を確認してみましょう。2月5日の惑星の位置を見ると当時知られていたすべての惑星が天球上の一定範囲に集合していることが判ります。さらに後に発見された海王星までが集まっています。なるほど これなら惑星直列と言ってもいいかもしれません。そこで約30度程度の幅に惑星が集合した場合を直列ということにします。


Aの検証

 上のA:太陽からみてすべての惑星がほぼ同じ方向に見える が実際にあったか また将来起こるのか調べてみました。
尽数関係のところでも述べたように、海王星と冥王星の公転周期は2:3になっています。海王星が3公転する間に冥王星は2公転するのです。冥王星の公転周期は247.8年ですから両者は496年(=約500年)の会合周期となります。すべての惑星が同じ方向に並ぶためには他の惑星はさておいても海王星−冥王星が同じ方向に並ぶ500年に一度のチャンスのなかで さらに天王星−海王星−冥王星 と並ぶ機会を待たねばならず起こっても数千年に一度であることは一目瞭然です。紀元前2000年から西暦6000年までのシミュレーションでも すべての惑星が太陽から見て一定方向(30度以内)に並ぶことはありませんでした。
 Aのタイプの惑星直列は せいぜい5個か6個の惑星で我慢しなければなりません。
1982年3月10日
 「惑星直列」の語源ともなった現象です。しかし惑星直列といっても全惑星は95度範囲にあるだけで直列とはとても言い難い現象です。本の中では 惑星が偏ることにより太陽へ潮汐力を及ぼす その結果 太陽の活動が活発になり地球大気に影響する。それらは地殻変動(地震など)を誘発する という説が述べられていますが、現実には何も起こりませんでしたし、過去の似たような例でもとりたてて何かが起こったというようなことはありません。
2992年7月16日
2992年7月16日にすべての惑星が約70度の範囲に集合します。1000年近く先の話なので、その頃にはさらに別の惑星が発見されているかもしれません。そうなれば全惑星集合も水の泡になってしまいます。

Bの検証

 上のB:地球からみてすべての惑星がほぼ同じ方向に見える が実際にあったか また将来起こるのか調べてみました。
 Aと比較して視点が太陽から地球に変わっただけで現象の珍しさに変わりませんから、これも数個の惑星で我慢しなければなりません。特に天王星・海王星・冥王星のどれかを含むものは非常に珍しいと言わねばなりません。
 それでも、多くの惑星が同時に見られる現象(水星などが同方向に見えるということは太陽に近いので実際には見えない可能性も大きい)は数十年に一度程度の割合でおこります。最近では2000年5月、2002年5月におこりました。また2040年9月、2060年7月にも惑星の集合が見られます。下に2000年5月5日、2002年5月25日におこったものを示しておきます。2002年の現象は5月5日が水星も含めて見ることができたので夕方の西空を観測した人も多かったようです。(惑星が等間隔に配列している点では5月25日が興味深い)

2000年5月5日


2002年5月25日


2040年9月8日
 将来はどうでしょうか。2040年9月には肉眼で観察できる惑星が約9度の範囲に集まります。

さらに2060年7月、2100年11月にも惑星の集合が見られるようです。
2834年3月24日
 すべての惑星が狭い範囲に見えるのは2834年3月24日です。このときにはすべての惑星が45度の範囲に集合します。また月も出ています。さらに26日には月は遠ざかりますが太陽も含めて47度の範囲に集まります。


1962年2月5日
 過去にさかのぼると1962年2月5日おこった皆既日食の時 肉眼で見えるすべての惑星が16度の範囲に集まりました。インドでは暴動までおこったとされています。図では月と太陽を分けていますが、実際には皆既日食がおこっています。


1226年12月11日
 1226年末から1227年初頭にかけて惑星の集合が起こりました。1226年12月11日には惑星がほぼ等間隔で並んで夕方の西空に見えていたはずです。当時西に遠征していたチンギスハンが占星術師の言を入れて母国に戻ったのもこの惑星配列が原因ではないかと考える学者もいます。チンギスハンは翌1227年夏 母国にたどり着く前に没しています。


1186年9月15日
 11世紀から31世紀までの2000年間で、肉眼惑星が最も狭い範囲(12.4度)に集中しています。このときはヨーロッパで部分日食が起こりましたが、惑星が太陽に近すぎて肉眼での観測は難しかたっと考えられます。


Cの検証

 太陽系で地球も直線の内部に含まれるような配列 について考えてみます。AやBに比べて 惑星−地球−惑星 の配列が可能なので確率はA、Bに比べて高くなります。しかし惑星が同時に見えるわけではないので、占星術師は喜ぶかもしれませんが現象的には面白味に欠けます。
2010年8月5日
 下の図は2010年8月に起こる現象を示しています。海王星と冥王星(方向のみ示してあります)以外の惑星がほぼ直線に並びます。しかも春分点(木星・天王星)と秋分点(金星・火星・土星 少し離れて水星)付近でおこるので占星術師が喜びそうなネタです。この現象は数日間続きますので7月末から8月上旬にかけて見ることができます。





グランドクロス
 1999年8月18日 地球から惑星が4方向に見えあたかも地球を中心とする十字架のようにみえることからグランドクロスと名付けられました。当時流行した「ノストラダムスの大予言」とからめて、地球に災厄がおきるのではと噂が流れましたが、もちろん何もおこりませんでした。
 グランドクロスも Cの現象の変形と考えることができます。

関連サイト

惑星配列と地球への影響 横浜こども科学館内のページ
天体衝突、グランドクロス、惑星直列 吉田真氏(宇宙科学研究所)による考察
The Millennium Coming! 惑星配列の研究サイト
DEFECTS IN THE JUPITER EFFECT 木星効果の研究サイト

このページで用いている図はステラナビゲータ5および6で作成しました。

2003.2.20
2003.8.11追補

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