準惑星(DWARF PLANET)
 2006年8月24日 国際天文連合(IAU)の総会において惑星の定義が改訂され「冥王星」を含むエッジワース・カイパーベルト天体、メインベルトに属するケレスなどの比較的大きな小惑星が ドワーフプラネット(dwarf planet)として新しくカテゴリを設けて分類するということになりました。日本語では「矮惑星」となっていましたが2007年3月 日本学術会議で「準惑星」とされました。2008年7月現在準惑星は 冥王星、セレス、エリス、マケマケ、ハウメアの5個で他にも多くの候補があります。セレスについてはメインベルト小惑星の項で紹介しています。

 2008年6月11日 国際天文連合(IAU)の総会において太陽系外縁天体(TNO)に属する天体のうち冥王星と起源と成分を同じくする大型氷天体を「冥王星型天体」(プルートイド)という名称に統一することが決定されました。

冥王星(Pluto)とカロン(Charon)


冥王星発見の物語

 天王星位置の理論と観測値のズレから海王星が発見されましたが、それでも説明しきれないズレが生じることから19世紀末より海王星の外側に太陽系第9番目の未知の惑星が存在するとのではないかと考えられていました。火星人騒ぎの元祖であるアマチュア天文学者パーシバル・ローウェル(Percival Lowell)は冥王星の存在を発表し、同じローウェル天文台のクライド・トンボーによって1930年に発見されました。しかしその軌道は当初の予測と大きく違い、またその質量も天王星や海王星に大きな摂動を与えるほどのものではないことも明らかになりました。また海王星の公転周期に対して3:2の尽数関係(共鳴)が成立していることもわかりました。
 冥王星は木星から海王星までのガス惑星と異なり固体の表面をもっています。その直径は地球の衛星である月の3分の2、質量は5分の1程度で 正確な大きさがわかってからは惑星と呼ぶにはあまりに小さすぎるという意見がありました。

 20世紀末になって海王星の外側の領域に多くの小惑星が発見されるようになりました。このような天体をエッジワース・カイパーベルト天体(略してカイパーベルト天体)とよぶようになりました。これらの天体は太陽系ができた当時からそこにあり惑星になりきれなかったものと考えられますが、冥王星はこれらの天体の中で最大のものだと考えられていましたが、冥王星より大きな天体の発見も時間の問題だろうと考えられてきました。
 カイパーベルトは太陽から数千天文単位まで拡がって次第に彗星の巣であるオールト雲となると考えられています。

シンボリズム

 古代ギリシャ神話の冥王ハデスの別名プルトンに由来します。記号のPLはPLUTO とともにパーシバル・ローウェルの頭文字でもあります。

表面
 探査機が到達したことのない天体です。したがってその表面は地球の周回軌道にあるハッブル宇宙望遠鏡がとらえた写真が最も解像度が高く、表面には11の暗い部分があることが分かっているが詳細は不明のままです。固体の表面をもつ天体で、おそらく氷と凍結したメタンでおおわれているだろうと考えられています。大きな離心率をもつため海王星軌道の内側までやってくるときは表面物質が蒸発して大気ができると考えられていて、極冠の存在も確認されています。
 ここに示した冥王星の図は写真から得られた表面のボンヤリした濃淡から想像されたものです。


冥王星の諸元
平均距離39.54047AU5.91517×10^12m
公転周期90717.7日248.6452年
軌道傾斜角17.1449度
離心率0.24901
質量1.49×10^22kg地球との比 0.0025
赤道半径1195km地球との比 0.188
自転周期6.3872日(逆回転)
衛星 3(うちカロンは準惑星)

カロン(Charon)

 1978年に冥王星に衛星のカロンが発見され、その運動などから冥王星の質量と直径(2390km)は明らかになったがカロンの直径は1284kmと半分以上で2重惑星(バイナリー)と考えてもさしつかえありません。両者は互いに同じ面を向け合って自転していますが、表面の様子は異なっていて。カロンは冥王星とは異なりほとんど濃淡がありません。2005年 冥王星・カロンの外側をまわる2個の衛星が発見され合計3個になりました。
 2006年のIAU総会で、カロンは衛星ではなく準惑星という分類になりました。冥王星とカロンの共通重心が冥王星の外側にあることから、カロンは衛星ではなく冥王星と共通重心をまわる二重準惑星ということになりました。
 カロンの名前は冥府の川・アケローンの渡し守カロンという意味が一般的ですが、実は発見者であるジェームズ・クリスティーの妻であるシャーリーン(Charlene ) にもちなんでいます。冥王星の頭文字PLがパーバル・ローウェルにちなんでいるのと少し似ています。
(右図の矮惑星は準惑星と読み替えてください。)

エリス(Eris=2003UB313)

 2003年に発見されたエリスは当初2003UB313という仮符号が付いていました。
 2005年になり2003UB313は冥王星より大きいと考えられることが明らかになりました。当初の見込みよりは小さいですが、それでも冥王星と同じかそれ以上あります。発見者のブラウンはゼナ(Xena)という愛称を付け惑星として登録されることを希望していましたが、2006年8月24日の国際天文連合(IAU)総会で、惑星は8個、それ以外の自重により球形の天体を準惑星(DWARF PLANET)と分類したため2003UB313も準惑星となりました。

シンボリズム

 エリスの由来は「不和の女神」です。衛星の「ディスノミア」は、名前を思い出せない症状を意味します。

発見の経緯

 2005年7月29日 カリフォルニア工科大学のマイケル・ブラウン教授(惑星科学)は、2003UB313の発見に関する電話会見で、「太陽系外縁部で初めて冥王星よりも大きいと確認できた天体だ」と述べました。電話会見が急遽行なわれたのは、発見の内容が記載された非公開のウェブサイトがハッキングされ、ハッカーがこの情報を公開すると脅しをかけてきた、という知らせをブラウン教授が受けたためだといいます。ブラウン教授はこの天体を10番目の惑星だとしているのです、明るさから判断する限り、少なくとも冥王星と同じぐらいか、最大で1.5倍の可能性もあるらしいことがわかりました。
 ブラウン教授は新惑星の名前を国際天文学連合(IAU)に申請しましたが承認はされず29日の電話会見でも名前は明らかにされませんでした。共同で研究していたブラウン教授、ジェミニ天文台のチャド・トルヒージョ博士およびイェール大学のデビッド・ラビノウィッツ研究員が、この天体を初めて撮影したのは2003年10月31日で、パロマー山天文台にある口径48インチ (1.22m) サミュエル・オシン望遠鏡を使用したとこが明らかにされました。しかし距離が遠いため、今年1月にデータが再び解析されるまで、この天体の動きはわかりませんでした。また、正確な大きさが確定するまで、少なくともあと6ヵ月はかかるといいます。
 2006年2月になり この天体の大きさは直径3000km(誤差400km)程度であり少なくとも冥王星(直径約2300km)より大きな天体であることは確実になりました。この天体が惑星かどうかの認定は2006年8月 プラハでおこなわれる国際天文連合総会で決まります。ブラウン教授は「冥王星が惑星であればこの天体が惑星でないのはおかしい」と、自ら惑星発見者としての名誉欲をあからさまにしています。
 2006年4月 ハッブル宇宙望遠鏡の観測により直径2400km(±100km)と測定されました。同じ条件で観測した冥王星が2300kmなのでほとんど同じ大きさの天体であるといえます。以前の観測で大きく見積もられたのは表面が予想より明るくメタンの氷が覆っていると考えられています。EKBOの表面はソーリンとよばれる赤色物質で覆われているものとそうでないものがありますが、Xenaは内部か衛星から明るい物質が供給されているようです。
 2006年9月 エリスという正式名称が決まりました。
エリスの諸元
平均距離67.7091AU1.0291×10^13m
公転周期557年248.6452年
軌道傾斜角44.177度
離心率0.4416129
質量地球との比 ?
赤道半径1200km?地球との比 0.23?
自転周期
衛星 1(ディスノミア)

マケマケ(Makemake=2005FY9)

 2005年3月31日 M. ブラウン、C. トルヒージョ、D. ラビノウィッツにより発見されました。復活祭の直後だったため当初「イースターバニー」という愛称がついていましたが、2008年7月15日正式に マケマケという名前になりました。

シンボリズム

 マケマケの由来は南太平洋のラパ・ヌイ島にまつわる神の名前で、人間を創造したとされるのが「マケマケ」で、豊穣をつかさどる神でもあります。2005FY9が見つかったのは、キリストの復活祭(イースター)の数日後のことで、ラパ・ヌイはイースター島の現地名です。そのためイースター島→現地の神の連想で命名されました。
マケマケの諸元
平均距離45.482AU 
公転周期306.74年248.6452年
軌道傾斜角29.0度
離心率0.160
質量地球との比 ?
赤道半径650〜950 
自転周期 
衛星 2

ハウメア(Haumea=2003EL61)

2003年にスペインシエラネバダ天文台のホセ・ルイス・オルティスらのグループが発見しました。クリスマスにこの天体の存在に気がついたためサンタの愛称で呼ばれていましたが2008年 ハウメアと命名され5番目の準惑星として登録されました。その後 1953年まで遡って観測記録(写真乾板)が調べられ軌道が詳しくわかりました。
 球形ではなくラグビーボール状(私たちにはチョコボールのほうがわかりやすいかも)をしているユニークな天体です。自転周期3.9時間で遠心力によりこのような形状になったと考えられています。衛星も2個確認されていますが、表面の様子などは不明です。
 2個の衛星があります。衛星は大衝突で破砕されたカイパーベルト天体の残物(ほとんど水の氷でできた塊)のようです。
2003EL61の諸元
平均距離43.339AU6.4834×10^12m
公転周期285年248.6452年
軌道傾斜角28.19度
離心率0.1888463
質量地球との比 ?
赤道半径1960×1518×996地球との比 0.23?
自転周期3.9時間
衛星 2

準惑星候補

セドナ(Sedna)

 2003年11月、ブラウン(エリス発見者と同一人物)によってパロマ山天文台のサミュエル・オースチン望遠鏡より発見されました。
他のTNOとは大きく異なり、近日点76AU 遠日点840AUという長円軌道をもっています。このため公転周期が1万年以上となり、彗星のような運動をしています。当初は2003VB12という仮符号が付きました。
 今回はセドナがたまたま近日点近くにいたための明るくなっていて、掃天(くまなく天体を探す)作業中に偶然発見されたと考えられます。つまり現在は太陽から遠ざかっている大きな天体がまだまだたくさんある可能性を示唆しています。
 図はセドナの軌道で、内部の青点がTNO 赤が他の天体です。黒点はセドナの発見位置
 カイパーベルト天体としては遠すぎ、オールト雲の天体としては近すぎる星なので内部オールト雲を仮定する学者もいます。とりあえずSDO(散乱ディスク天体)に分類されます。セドナの発見は50天文単位以遠に天体が見つからないという「50天文単位問題」への回答の一部かもしれません。

シンボリズム

セドナの名前は、北米極北地方に住む原住民族(特にカナダのイヌイット)の海の女神セドナに由来しています。厳寒の北極海の海底に住むという伝説を持つ女神です。
セドナの諸元
平均距離480±40AU7.18×10^13m
公転周期10500年248.6452年
軌道傾斜角17度
離心率0.1888463
質量地球との比 ?
赤道半径1180〜1800? 地球との比 未確定
自転周期10時間
衛星 不明

他の準惑星候補

 他の準惑星については、TNO(EKBO)天体の項と、星のお話の太陽系天体の大きさ比較で取り上げていますのでご覧ください。
 火星と木星の間にあるメインベルトと呼ばれる小惑星帯にある セレスが準惑星です。また同じメインベルトのジュノー、ベスタ、パラスが準惑星候補です。
 海王星以遠のTNO(Trans-Neptunian Objects)では冥王星、エリス、マケマケ、ハウメアの他に クアオアー、オルクス、イクシオン、ヴァルナ、など30個程度が準惑星候補とされています。これらの天体には仮符号しかないものも多く、今後の命名が待たれます。

冥王星・カロン探査

 冥王星を含むカイパーベルト天体に対して探査機を送る計画が進行中です。ニューホライゾンズと名付けられたこの計画は2006年1月の打ち上げ、2015年冥王星到達を目指しています。もしこの時期を逃すと、木星の引力を利用して飛ぶため地球−木星−冥王星の位置関係が打ち上げに都合よくなる2018年まで待たなければならないこと、冥王星が太陽から遠ざかり大気が凍てついて観測できなくなる可能性があることなどの問題が生じます。
 2005年9月15日 ニューホライゾンズ探査機に搭載するチップに名前を書くことができました。

冥王星探査機
ニューホライゾンズ2006アメリカ冥王星・カロン探査他