TNO(太陽系外縁天体)とPlutoid(冥王星型天体)
第10番惑星はあるか

発見の歴史

 1949年にエッジワース、1951年にはカイパーが太陽系の形成過程を考え、海王星の外側には惑星になりきれなかった小さな天体が大量にあると考えました。1980年代になり、太陽系最外部にあるとされる彗星の巣オールト雲ではなく、短周期彗星の故郷としてエッジワースとカイパーの考えが現実のものとして観測されるようになりました。このような天体を太陽系外縁天体(TNO:Trans-Neptunian Objects)といいます。
 2006年以前には エッジワース・カイパーベルト天体(Edgeworth-Kuiper Belt Object)あるいは単にカイパーベルト天体とよび、略してEKBOとよんでいました。日本語では覚えやすいので「えくぼ」と発音します。
 2006年のIAU総会で冥王星を惑星から格下げする際、太陽系の外縁にある氷を主成分としたこれらの天体はTNO(Trans-Neptunian Objects:太陽系外縁天体)という名称に統一されました。その後2008年6月に惑星級のTNOを冥王星型天体(Plutoid)という名称を使用することになりました。このような天体が発見されてからの歴史が浅く、IAUでの分類に対する混乱・日本語訳の混乱が重なり同じ天体に対して多くの名称が用いられているのが現状です。このサイトでもできるだけ統一しようと試みていますが、完全に払拭できているわけではありません。2000年頃から出版されている書籍に同じ天体に対してたくさんの用語が使われ混乱ぶりがうかがえます。

 1977年 土星と天王星の間を公転するキロン(2060:Chiron)が発見されました。特異小惑星で彗星と同じくガスを放出することがわかり、キロンが遠方の空間から最近になって現在の軌道にやって来たことが明らかになりました。(古いものはガスを放出しません)
 1992年 フォーラス(5145:Pholus)の発見以降 次々と遠方の天体が発見されていきました。TNOの中には冥王星より大きなものがある可能性もあり組織的な探査が続けられました。その結果2004年には冥王星級天体のセドナが発見されました、そして2005年にはエリス(2003UB313)が冥王星より大きいらしいことがわかりました。
 このような惑星級のTNOを準惑星(dwarf planet)とよびます。かつては惑星(planet)と小惑星(asteroid)の中間的な存在としてプラネトイド(planetoid)とよんだこともあります。日本語訳も混乱しdwarf planetも矮惑星から準惑星に変わりました。またTNOの日本語訳として「汎海王星天体」が用いられたこともあります。その後TNOに属する準惑星と準惑星候補天体をプルートイド(冥王星型天体)と称することにしました。これは大きさではなくその組成と起源を同じくする天体の総称です。

TNOの起源

 太陽系が形成された46億年前 惑星になりきれなかった外周部の微小天体と、木星や土星の摂動により太陽系内部から外部へはじき飛ばされた天体であると考えられています。成分はほとんどが水の氷で、少しの岩石とメタンなどの揮発成分を含んでおり、巨大な彗星と考えてもよく、もし太陽系内部へ侵入してくればキロンのように彗星となるはずです。またエリスと冥王星は発見されているTNOの中で最大のものです。
 活動的でないTNOの表面は赤いものが多く、宇宙線照射でできるソーリン(Tholin)であると考えられています。赤くない表面をもつものは天体衝突か内部エネルギーによって表面が更新されていると推測できます。

TNOの族

 TNOの運動は天王星や海王星の摂動によって影響を受けています。
ケンタウルス属
 近日点が海王星以近の軌道を持つTNOです。2005年現在 キロン(Chiron)、エラタス(Elatus)、ペリオン(Pelion)、アスボラス(Asbolus)など100個以上が発見されています。
 キロンと同じく彗星のようにガスを放出するものもそうでないものもあります。

冥王星属(プルティーノ plutino)
 冥王星の公転周期は海王星の1.5倍です。このように海王星と2:3の公転周期をもつTNOを冥王星属(プルティーノ)といいいます。プルティーノの多くは冥王星と同じく離心率の大きな(つぶれた楕円)軌道を描いています。
 これは海王星の軌道が数十億年かけて内側から外側へ移動した結果、プルティーノの軌道も細長く変化したとする説が有力です。また2:5の公転周期を持つものも発見されています。

キュビワノ属
 海王星に近づかないため尽数関係がなりたっていない天体です。最初に発見された 1992QB1(キュービーワン)からキュビワノ族という名前が付きました。軌道傾斜角も離心率も低く、ほとんどは離心率0.2以下、軌道傾斜角10度以下の円に近い軌道を公転しています。近日点距離35AU以上、軌道長半径は41〜48AUの範囲にあり冥王星よりちょっと遠い天体群です。

トゥーティノ族(twotino)
 公転周期が海王星の2倍の尽数関係(共鳴)が成り立っているTNOです。1998SM165などがあり、公転周期約330年、軌道長半径約47.7AUです。族名のtwotinoは、two + plutinoからの造語です。

散乱EKBO
 冥王星のはるか以遠を公転するTNOで、離心率が大きな細長い楕円軌道の天体です。近年発見が相次ぎ遠距離でも発見できるので巨大なものが多く、メインベルト小惑星最大のケレス(直径940km)をしのぐものが多く、2005年には冥王星より大きいと考えられる天体(エリス:2003UB313)も発見されました。

海王星のトロヤ群
 木星のトロヤ群と同じく、海王星のラグランジュポイントに位置する天体です。2001QR322などが発見されています。公転周期は海王星と同じ165.7年です。

その他
 海王星の巨大衛星トリトンは海王星の自転方向とは逆に公転する逆行衛星である。逆行衛星の軌道は不安定でやがて母星に衝突する運命にあり、トリトンは海王星に捕獲されたTNOだと考えられています。
 また土星のリングは土星に捕獲されたTNOが破壊されたもの、巨大惑星の逆行衛星もTNOが捕獲されたものと考えることができます。
 惑星が衛星を捕獲するもっとも可能性の高いシナリオは、2個のバイナリー(互いに共通重心をまわる天体、例:冥王星とカロン)小天体が惑星のそばを通りかかったとき、一方がエネルギーを得て加速されその反作用でもう一方がエネルギーを失い衛星になるというものです。惑星探査機が惑星の重力を利用して加速するスウィングバイと同じ原理です。

50天文単位問題

 TNOが多数発見されると、50天文単位以遠ではほとんど発見されないという現象がみつかりました。カイパーベルトが50天文単位のところで切れているようにみえるのです。太陽系の形成理論ではカイパーベルトからオール雲まで連続して天体が存在するはずです。50天文単位以遠では数はあるが大きな(明るい)天体が存在せず発見されないのか、天体そのものが存在しないのか不明ですが、いずれにせよ理論の変更・修正を求められる事態になっています。例外的にセドナが存在していますが、それ以外に50天文単位を超える天体は発見されていません。

2006年現在の大きなTNOと考えられている天体 ほとんどが準惑星か準惑星候補です。
(ただし直径を直接測定することはできず推定を含む)
天体名分類赤道半径km質量10^20kg表面重力G
冥王星 PlutoTNOプルートイド1195149.350.071
トリトン TritonTNO海王星衛星N11350134.50.050
カロン CharonTNOプルートイド642  
エリス ErisTNOプルートイド1430  
2005FY9(イースターバニー)TNOプルートイド900  
2003EL61(サンタ)TNOプルートイド900  
セドナ SednaTNOプルートイド900  
クアオア QuaoarTNOプルートイド637  
イクシオン IxionTNOプルートイド650  
ヴァルナ VarunaTNOプルートイド600  


TNO探査機
ニューホライズン 2006?アメリカ冥王星・カロン探査他