相続資格の喪失

相続欠格と廃除

関連事項

相続欠格

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相続資格の喪失する場合

(1)相続開始前に推定相続人がその意思に反して相続人としての資格を奪われている場合

@相続欠格 法律上当然に相続人ではなくなる。
A廃除    被相続人が相続人としての資格を剥奪する。

(2)相続開始後に相続人が自らの意思で相続人としての資格を放棄する場合






相続放棄

相続欠格の意義

 
   

相続欠格の事由

@故意に被相続人、先順位者、同順位者を死亡に致らせ、または致らせようとしたために、刑に処せられた者
⇒刑199殺人罪、刑202自殺関与・同意殺人罪
⇒刑201殺人予備罪、刑203殺人・自殺関与の未遂罪
 過失致死罪、傷害致死罪は該当しない。
A被相続人が殺害されたことを知りながら告発・告訴しなかった者。
 ただし、是非を弁別する能力がないとき または 殺害者が自己の配偶者・直系血族のときは、この限りでない。
 犯罪が官署に発覚し、検察活動が開始されている状態では欠格事由にならない(判例)。
B詐欺・強迫によって、被相続人が遺言を作成・撤回・取消・変更をすることを妨げた者。
C詐欺・強迫によって、被相続人に遺言させ・撤回させ・取消させ・変更させた者。
D被相続人の遺言を偽造・変造・破棄・隠匿した者。
二重の故意必要説
 相続人が自己に有利な遺言を破棄した場合、欠格事由に当たるか。
 偽造・変造・破棄・隠匿の故意に加えて、相続上有利な地位を得るという積極的な目的を必要とする(判例)。
 遺言に欠けていた押印等の方式を補充する行為は、偽造・変造に当たるが、遺言者の意思を実現させるために、その法形式を整える趣旨でされたに過ぎないときは、欠格事由とはならない(判例)。

相続欠格の効果

当然に相続権を失う。
欠格者が第三者に譲渡した場合、真正の相続人から請求を受ければ返還しなければならない。
欠格の効果は確定的で、被相続人は宥恕できない(判例)。
規定はないが肯定説が有力。ただし、一身専属的で相対的である。
欠格者は、受遺者となることもできない。
しかし、親を殺した欠格者は、祖父母を代襲相続できないと解すべきである。
            A=======B 被相続人
                  |
        C======D 被代襲者
              |
              E 欠格者←代襲できない。

廃除

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相続人の廃除

推定相続人が直系卑属、直系尊属、配偶者の場合、遺留分が認められている。
⇒この遺留分を否定するには相続人の廃除が必要。
推定相続人が兄弟姉妹の場合、遺留分が認められていない。
⇒廃除制度は不要。生前の財産処分や遺贈、相続分を0として対応する。

廃除の事由

(1)遺留分を有する推定相続人であること
(2)次の事由のいずれかに該当すること
@被相続人に対する虐待
A被相続人に対する重大な侮辱
 養父を虚偽の戸籍届を理由として告訴
 情婦のもとに走り、父の病気にも戻らず、見舞状すらない。親子の財産争いから新聞に「狂父」
 絶えず父に「死ね」と暴言。
B推定相続人の著しい非行
 被相続人に対するものであることを要しない。ただし、ある程度の財産的、精神的損害が及ぶことが要求される。
 婚姻前から数名の女と三子を儲け、婚姻後、父母妻子を捨て、女工と同棲。
 賭け事、女遊び、大学中退、金を強要。実父の不動産を担保に提供し、借金の返済ができず、引渡し。
(3)廃除を認めなかった例
 一時の激情に駆られ、侮辱的な言葉を述べる。
 準禁治産宣告の申し立てが放埓な生活態度を反省させるため。
 将来懸念されるというだけ。
 被相続人が支配していた同族会社でなされた業務上横領。 

 

廃除の手続き

@被相続人は、生前に家庭裁判所に廃除を請求できる(892)。
⇒生前廃除を乙類審判事項で調停しうるのは、相続開始前の遺留分の放棄が甲類審判事項であることと均衡がないとの批判もある。
A被相続人は、遺言によって廃除の意思表示ができる。
⇒相続開始後、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求をしなければならない(893)。

 

廃除の効果

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相続人は、審判確定または調停の成立の時から相続権を失う(効力を生ずる)。
遺言による廃除の場合は、審判は相続開始後に確定するが、効果は相続開始時に遡及する(893)。
廃除の届出は、報告的。
廃除請求権は、被相続人の一身専属権。
効果は、相対的。被廃除者の子や孫の代襲相続に影響はない。
欠格と違って、受遺能力まで奪われない。⇒生前贈与や遺贈は可。←廃除取消しの手続きをとらずに宥恕の目的を達せられる。

被相続人は、廃除の取消しをいつでも請求できる(894−1)。
⇒遺言でも請求できる(894−2)。
廃除の効果は、遡って消滅する。

 廃除またはその取消しの請求があり、審判が確定する前に、相続開始または推定相続人の廃除の遺言があったときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人、検察官の請求により、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる(895)。

 廃除後、被廃除者の身分に変動を生じても、廃除当時の身分が存続する限り、被廃除者は、廃除者の相続人になれない。
 養子が離縁しないで他家の養子になった場合。
      廃除者  A=====B       D=====E
                |                |
                |--------------------
                C               養子縁組
               被廃除者

 被廃除者が廃除当時の身分を失って、廃除者に対して、新たな身分を取得したときは、新たな相続権を取得することを妨げない。
 被嫡出子を廃除した後、廃除者たる実親が被嫡出子を養子にした場合。
      廃除者  A======B
                | |
                | |
                | |
         非嫡出子 C 養子
         (被廃除者)

 
   
   
   

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