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544ステップの秘境!
たかじょゆうき。ZEROの衝撃

ポケコンジャーナルとたかじょゆうき。とPB-100

あなたは、たかじょゆうき。氏をご存知だろうか?

氏はポケコンジャーナル誌で活躍した投稿者のひとりで、雑誌の後期には氏の作品が載らない号はないという活躍ぶりでした.

たかじょゆうき。氏にとって、PB-100 用ゲームの発表はポケコンジャーナルでの活動のごく一部のはずなのですが、 その掲載量たるや滝本飛沫氏につぐもので、おかげで PB-100 プログラマー紳士録の[た行]は大変なボリュームとなっています.

その上作品の質においても、ゲームデザイン・プログラミングスキルともにポケコンジャーナル後期を通して最高峰のものでした. また表現力の乏しいPB-100でゲームの雰囲気を伝えるべく解説文の構成にも端々にアイデアが見られ、私もおおいに参考にしています.


今回はパズルゲーム『ZERO』(ポケコンジャーナル 1992年12月)に組み込まれた面データ圧縮の技術を、たかじょゆうき。氏自身が解説した『Programmers' Work Shop 人生PROGRAMIX』(ポケコンジャーナル 1994年1月)をもとに紹介します.

たかじょゆうき。544step作品群を振り返る

~と、本題に入る前に、たかじょゆうき。氏の544step作品を簡単に紹介していきます.

BATTLE GIRL

RUN DEG
μ 5 0 7 0
作者名(発表時)
ドラム:たかじょゆうき
発表
ポケコンジャーナル '92,10
ジャンル
タイニーRPG

これまでのタイニー RPG では、迷路タイプ、2Dフィールドタイプが発表されていますが、BATTLE GIRL では 1D フィールドを採用. その分、町での買い物やステータス表現が強化されている.グラフィカルなエンディングはプレイヤーの想像を喚起する.

ZERO

RUN DEG
1 4 4 5 5 4 1 6
作者名(発表時)
部屋とYシャツとたかじょゆうき
発表
ポケコンジャーナル '92,12
ジャンル
パズル

ゲームデザイン館(滝本飛沫氏提案)参加の全15面を備えたパズルゲーム.数字をすべて消すまでの手数を競う. 最短解法の投稿を作者が呼びかけるが反響が無かったのは難しすぎたためか?私はノーマル初代PB-100に対応させるべく挑戦し玉砕した.

1974 ~16光年の訪問者~

RUN STOP DEG
\ 1 0 k I n s 0
作者名(発表時)
入試が目前!たかじょゆうき。
発表
ポケコンジャーナル '93,1
ジャンル
とても珍しいホテル経営シミュレーション

宿泊費変更・改装・火災保険・衛生検査・宣伝を指示して、ホテルの増築を目指す. ホテルに客が押し寄せる Boom! や火災、食中毒による営業停止と豊富なイベントを盛り込んで単調にならない展開がナイス.

Mozart In The House

RUN DEG
_ _ _ _ E _ Ω 1
作者名(発表時)
来週青学大!たかじょゆうき。
発表
ポケコンジャーナル '93,3
ジャンル
マッピータイプのアクションゲーム

全5面.迫りくるサリエリの恐怖感とうまく逃げたときの爽快感がグー. ジャンプによるフロア移動中に状況を掴み辛いことも.たかじょゆうき。氏の作品にしては珍しくリストにそれとわかる無駄が多い.

CHACE IN LABYRINTH ~洞窟の罠~

RUN DEG
O o _ ° , ° = =
作者名(発表時)
2浪?たCAROLゆうき。
発表
ポケコンジャーナル '93,4
ジャンル
操作性抜群の強制スクロール・アクション

障害物の組み合わせで様々な状況が生まれる点はさすが.とくにプロミナンス(噴出する溶岩)の表現が秀逸でゲーム画面を盛り上げている. また、ストーリーをデモ画面で紹介するPB劇場はすばらしい.ほんとうにすばらしい.

DRY US

RUN DEG
' : : E E <
作者名(発表時)
受験勉強まだ始めてませんたかじょうゆき。
発表
ポケコンジャーナル '94,11
ジャンル
全5面のボスキャラオンパレードシューティングゲーム

毎度のことながら、PB-100 に組み込むべき要素の選別が抜群で見事にシューティングしている. エンディングのアニメとゲームオーバー処理が光る.タイトル、敵キャラデザイン、世界観や解説文が高いレベルでハーモニーを奏でている.

BOMBER WOMAN

RUN DEG
8 ( * ) 7
作者名(発表時)
「たかじょうゆうき。さん」という人が。
発表
ポケコンジャーナル '95,4
ジャンル
ノーマルPBでまさかの格闘ゲーム

個性的な技を駆使する6人のライバルたちに唯一の女性参戦者であるプレイヤーキャラは爆弾を手に立ち向かう. 秀逸な遊び方解説文は円熟の極みに達しようとしている.実は障害物の無いボンバーマンということに気づくのに私は10年かかった.

Is this love?

RUN DEG
[ M π _ _ ] 1
作者名(発表時)
過去のたかじょゆうき。
発表
ポケコンジャーナル '95,8
ジャンル
フィールド移動型のアドベンチャー

青春ド真ん中ジャストミートであった作者の夢想を投影した文学的遊び方解説を読み解きつつ全6階からなる2つの内面世界を探索する. 肝となる謎解きはなかなかの出来.茨の道を歩む(?)当時のたかじょゆうき。氏の魂の遍歴が544ステップに凝縮されている.

各ゲームジャンルの決定版を!

以上を見てきてまず目に付くのが、ゲームジャンルのバラエティーでしょう.これには、ノーマル PB-100 における各ゲームジャンルの決定版を出そう、作者の並々ならぬ野心と自負が透けてみえるようです.

たかじょゆうき。氏の PB-100 用ゲームの収集と研究については、自身がところどころで語られていますが、その広大なバックボーンを想像するとただただ驚嘆するばかりです.

閑話休題
2 つの才能が牽引したポケコンジャーナル後期

ポケコンジャーナルの最後期になってもたかじょゆうき。氏は意欲的に PB-100 の限界に挑む作品を発表し続け、プログラム技術・ゲームデザイン技術の向上を促してくれました.

一方の滝本飛沫氏がやがてビギナー向けの入門記事に重点を移していったのとは対照的です.

ポケコンジャーナル後期においても PB-100 用作品が誌面を飾りそのゲーム表現の可能性を押し広げられたのは、対照的なふたつの才能の活躍に恵まれたところが大きいでしょう.

ゲームルールと圧縮手法の幸運な結合

私はポケコンジャーナル誌を 93 年 4 月号から購読を開始したので、はじめて ZERO を知ったのは、94 年 1 月号の『Programmers' Work Shop 人生PROGRAMIX』になります.記事では、その前半が『ZERO』のプログラミング技術の解説にあてられています.

全 15 行のリストの各行に凝縮された高度な技術、とくに目玉ともいうべき面データの圧縮には大変な衝撃を受けたのを覚えています.

その圧縮手法はゲームシステムと密接に結びつくもので、当時ダンジョン RPG の迷路データの圧縮に悶絶していた私を尻目にスマートに実現されていたのでした.

たかじょゆうき。氏自身その手法に“信じられないほどうまくいってしまった”と述べているのが印象的です.

(「ある程度不鮮明な既存値を利用する」テクニックを)うまくデータに流用できないかと考え,この『ZERO』で初めて挑戦した結果,信じられないほどうまくいってしまったので,―


まずは該当の記事が手元にない方のために、『ZERO』のルールの説明を簡単にします.

RUN DEG
1 4 4 5 5 4 1 6

点滅する矢印がカーソル.画面上の全ての数字を消すとクリア.

RUN DEG
1 4 4 5 5 4 1 6

46キーでカーソルの移動.

RUN DEG
1 4 4 5 5 4 5 5 1 5 6

Zで重なっている数字が、その数の分だけ矢印の方向へ進む.(壁にぶつかると跳ね返る)

RUN DEG
1 4 4 5 4 1 1

数字同士が重なると和の一桁が残る.この場合は 5+6 で 1.和の一桁が 0 だとそこはスペースに.画面が真っ白になるとクリア.


とここまででピンときた方は、さすが!なのですが、このルールでは、

FRAC TAN 79=0.144554016 など)小数の部分がうまい具合に10ケタあるではないですか.これを「ZERO」の面データとしてうまく利用できそうです. 1から89のうち,小数部分の合計値が10で割り切れる(値が面データとして利用できる.)

たかじょゆうき。氏はその値を求めるプログラムのためのプログラムを(おそらくは)チャチャッと組んで、候補となる数値を得ています.


このようにして 544step に収まりながら、ボリューム感満点の全15面を備えたパズルゲームが完成したのでした.

1993年、年の瀬 ― PBロッキーを襲った戦慄のビジョン!?

そのころの私はといえば、

  • ダンジョンのそこかしこに一方通行が出来てしまい、たちまちプレイヤーは出口のない部屋に閉じ込められてしまう.
  • ダンジョンデータを √座標 から採っていたので、座標が0以下の方向まで行った場合にERRになってしまう.
  • ダンジョンに無限ループができてしまう.(これはゲームの設定によってはあり)
  • 各フロアを繋ぐ階段の位置も数式から求めたい.

といった問題に直面していました.

それらを回避する処理をさまざまに考えましたが、そのためにリストが肥大するのを恐れ軒並み没にしていました.(通路を壁にする処理を追加、等)

ほとんど無処理でダンジョンデータとなるような数式を求め、N88 BASIC の出力画面と睨めっこをして還らずの森を彷徨っていました.

そんなときに『ZERO』の例は、PB-100 の秘境に挑んだプログラマーが生還した幸運な例に映りました.

そしてまた、PB-100 とプログラマーとの蜜月は終焉を迎えようとしていて、これからの PB プログラマーはゲームデータとして使える有効な数列を得るために高速なコンピュータを走らせる、そんな時代の到来を予見させるものでした.

やがてポケコンジャーナル誌上は、PB-100 ゲーム表現の最期のフロンティアに挑むプログラマー達の墓場となる、、、

白昼夢のように去来したそのビジョンはしかし、私の決意をいくらも鈍らせることはなかった!


そんなこんなで 200X 年 ―

幸いにしてそのような羽目に陥ったのは私だけのようで、杞憂に終わったのでありましたとさ、、、

チャンチャン♪

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