択一5回 論文3回 口述1回

刑事系 刑法 佐久間修先生  刑事訴訟法 林真琴先生

 

刑法

主査 まず私の方から刑法の問題についてお尋ねしますが、事例を言うのでしっかり聴いてください。

Aは銀行のATMで100万円を引き出し、それを50万円ずつに分けそれぞれを二つの封筒に入れました。Aは片方の封筒だけを持ってもう片方はATMの上に置き忘れていってしまいました。Aの後ろに並んでいた甲はAが封筒をおき忘れたことに気づいていたがなにも言わず、そのまま封筒をかばんにしまった。甲の罪責は?

私  はい。甲は占有離脱物横領罪になると思います。

主査 占有離脱物横領罪ですか。なぜですか。

私  はい。まず、Aは封筒について忘れており、銀行を出ていってしまっているのでAには封筒につき占有はありません。あっ、Aは銀行の外に出てしまっているということでいいでしょうか?

主査 いいですよ。Aは銀行を出ていきました。

私  はい。それではAには占有はありません。次に、銀行ですが、あっ・・・・。

主査 どうしましたか。(笑いながら)いいですよ、なにか気づいたなら言ってください。

私  あっ、いえ・・・。あの先ほど占有離脱物横領としましたが撤回して窃盗罪が成立すると思います。

主査 窃盗罪ですか。それはどうしてですか。

私  はい。先ほど占有離脱物横領罪としたのは、ATMは人の出入りが激しいので銀行には封筒の占有はないと考えたのですが、やはり銀行の占有があると考え直したからです。

主査 窃盗罪と占有離脱物横領罪は何で分けるのですか。

私  占有の有無です。

主査 そうですね。この場合ATMのうえの封筒について銀行に占有があるというのですか?先ほどATMは人の出入りが激しいといいましたがそれでも占有があるんですか?

私  はい。まず、ATMには銀行のパンフなどがありますがそれには明かに銀行に占有がある以上ATMのうえにあるものには銀行に占有があると考えるべきで・・・。

主査 (割り込んで)そりゃそうでしょう、銀行の建物内に銀行が自分でおいた銀行のものですから。でも問題はAが忘れていった封筒ですよ。銀行は封筒について気づいていないんですよ。ほんとに占有があるんですか?占有って何ですか。

私  はい。占有とは物に対する事実上の支配を指します。この場合、まず、銀行は業務の一環としてATM利用者がATMに忘れ物をした場合には、それを保管して連絡などすることが条理上予定されているといえるので、銀行はATM上の忘れ物につき占有意思が包括的にあるといえます。次に銀行の建物ないですし、ATMがおいてあるところには最近警備員がいて監視しているので客観的にも銀行に事実上の支配があると思います。

主査 なるほどね。いま警備員っていったけど、案内係じゃないかな?

私  はあ、でも警備員らしき格好をしてますが・・・。もしかしたら銀行員かもしれません。

主査 そう。そういう銀行もあるということでしょう。まあそれはいいけど、窃盗が成立するとして誰の占有が侵害されたの。

私  え〜、銀行です。

主査 銀行・・・。君は法人に占有を認めるの?

私  えっ(やばいな〜、法人に占有は認められなかったか?)、・・・え〜と・・・銀行だと思います。

主査 ほんとに法人に占有はあるの?

私  え〜と、法人は確かに観念的なものですが、現実には自然人たる機関が占有していて、自然人の占有が法人の占有とされるのですから法人にも占有は認められます。

主査 この場合には法人の機関が占有していないよね。それでも法人なの?

私   (う〜ん、これは撤回を求められているな、でも誰の占有にするんだ?仕方ないからもう少し頑張ってみよう)はい。確かにこの場合直接機関が占有しているわけではないのですが、警備員などが機関の手足として占有してまして、機関が占有しているといって良いのでは・・・。

主査 確かに、法律的には機関の占有は法人の占有と扱われることになるね、そしてこの場合でも被害者は法人だね。でも窃盗罪の占有って現実的なものでしょう。

私  そうですねぇ・・・・、う〜ん。

主査 あのさ、この事例は銀行の支店なんだけど、きみの考えだと本店に占有があることになるの?

私  (確かに本店に占有があるというのはおかしいな)いいえ。支店にあると思います。

主査 そう、支店の責任者、支店長だけど、支店長に占有があるといえない?

私  はい。支店長に占有があると考えます。

主査 そう。じゃあさ,さっき君は警備員が見ているから占有があるといったよね、そうしたら支店長じゃなく警備員に占有があるんじゃないの?

私  う〜ん、警備員ですか・・・、え〜警備員は支店長の手足にすぎないので、警備員の監視を通じて支店長に占有があると思います。

主査 まあそうだね。じゃあさ、Aに占有はないの?

私  はあ、Aはもう外に出ていってしまっているんですよね。出ていないときには、時間にもよるかと思うのですが・・・。

主査 そう、Aはもう出てしまっているとして。

私  う〜ん、それなら封筒について忘れてしまっているしAが外に出てしまっている以上は占有はないのではないかと。

主査 そう。Aが外に出てしまったら占有はないと。まあいいでしょう。

 それじゃあ、甲は何時既遂になるの?

私  え〜、(警備員がいる建物内だからどうしようか、万引きは確かかばんなどに入れたときが既遂だったような)・・・かばんに入れた時かと。

主査 かばんに入れたら確定的に占有が移転したと言うことですね。

私  そう言っていいと思います。

主査 それではまた事例を言いますので聴いてください。銀行の案内係乙は甲の行為の一部始終を見ていたが、Aに対して恨みを抱いていたのでこれ幸いになにもせず甲の行為を見逃した。この場合に乙の罪責は?

私  窃盗の幇助になると思います。

主査 そうですか。この場合乙はただ見ていただけですが犯罪になるのですか。

私  不作為による窃盗幇助となります。

主査(うなずく)不作為犯が成立するためには作為義務が必要ですね。作為義務はどのような場合に認められますか?

私  作為義務は契約、法令、事務管理、条理によって生じます。

主査 この場合、乙に作為義務がありますか?

私  はい。警備員、いえ案内係でした。銀行には業務の一環として顧客がATMなど銀行内に忘れ物をした場合にはそれを保管し顧客に返還することが認められると思いますし、条理によっても顧客に対して保管などの義務が認められると思います。ですから乙にも業務上の義務として封筒の保管などの義務があります。

主査 まあ契約から作為義務が認められるということですね。不作為犯の場合犯罪阻止義務が必要ですが、乙には具体的にはどのような義務があるのですか。

私  まず、甲に対してその封筒はAが忘れたものであると注意する必要があります。

主査 注意ね。甲がそれに従わず封筒を持っていこうとしたらそれを阻止する必要はあるの。

私  う〜ん、とめる義務ですか。そこまでは認めなくてもいいようなきもしますが・・・。しかし、法益侵害の切迫性はありますし・・・阻止可能ですし・・・・容易性もありますし・・・そのくらいは認めてもいいのではないかと。

主査 乙には業務上甲が封筒を持っていくのを止める義務があるのですね。それでは甲が外に出ていった場合追いかける必要はありますか。

私  う〜ん、…そこまではする必要はないように思います。警備や忘れ物保管の責任者などに知らせればよいのではないかと。

主査 出て行ってしまったらもはやいいと。それではあなたは甲に声をかけたり注意することが作為義務の内容になるのですね。

私  あ〜、甲は窃盗ですから、作為義務の内容は占有移転の防止について認められなければなりませんが〜、通常ATMの上にあるものを取ろうとした場合、それは忘れ物ですよと声をかければ窃盗を止めると思われますので、声をかけることが作為義務の内容になると考えます。

主査 (机に向かって一生懸命何か書きながら)なるほど、そういう風につなげますか。いいでしょう。

   それでは、乙には窃盗幇助の他に共犯で何か成立しませんか?

私  (「共犯で」といわれたことを聴いてなかった)…え〜、他には…背任がありうるかと(わかんないよ〜)。

主査  背任ですか。(と言ってじっとこちらを見たまま何もいわない)

私  (助け舟くれ!と思いながら主査の顔を見て呟くように)…背任は事務処理者が図利加害目的を持って背信行為をなし全体財産に対して損害を与えれば成立しますが…本件では乙が事務処理者か問題に…あ〜銀行に損害を与えるという加害目的もありそうですし…あっ、乙はAを害する意図でしたっけ?そうするとAに対する背任になりそうですが、そうすると事務処理者ではないですし…う〜ん…

主査  確かに銀行との関係で背任になり得るかもしれないけど、私がさっき訊いたのは他に共犯で何か成立しないかということなんだけど。

私  窃盗の共犯ですか?(う〜ん、意思の連絡がない以上、共同正犯はありえないし…教唆行為もないし…何が成立するんだ?)(沈黙)

主査 幇助よりも上の共犯成立しない?

私  共同正犯ですか?

主査 そう。

私  (あ〜そうか、片面的共同正犯か)成立しません。

主査 なぜ

私   意思の連絡がないからです。

主査  (うなずいて)これで私の方からは終わります。

 

刑事訴訟法

 

主査 じゃあ、次に私のほうから訊くから訊いてね。

   銀行の防犯カメラに甲が写っていてそれがもとで甲は捕まって起訴されました。いいですか。検察官は甲の行為の一部始終を撮影した銀行の監視カメラのテープを証拠として提出するつもりです。検察官がこのテープを証拠として使うにはまずどうしますか。

私  証拠申請します。

主査 証拠申請したらどうするの。

私  裁判所が証拠決定します。

主査 証拠決定するとき裁判所は当事者の意見を聴くことができるの?

私  できます。

主査 根拠は。

私  条文です。確か296条あたりにあったと思うのですが。

主査 (うなずく)。このとき当事者は何を言うの。

私  え〜、証拠決定に関して意見を言うのですから、検察官はこのテープが要証事実と関連性があることを述べると思いますが。

主査 この場合、検察官が証拠申請しているんだから、なんか言うのは弁護人でしょ。弁護人はなに言うの?

私  え〜、関連性がないとかだと思いますが。

主査 他に何かいうことないの。

私  う〜ん、証拠能力がないということがあると思います。

主査 このテープは証拠能力あるの?

私  甲の犯行を映しているんで関連性がありますし、あると思います。

主査 証拠の種類をいってみて。

私  人証、物証、書証です。

主査 このテープは何にあたるの

私  物証です。

主査 それではこのテープは証拠として使えるの。

私  自然的関連性もありますし、使えると思います。

主査 証拠能力ってどのような場合に認められるの?

私  自然的関連性が否定されないこと、法律的関連性があること、証拠禁止に触れないことが必要です。

主査 いま三ついったけど、それぞれ説明して。

私  はい。自然的関連性とは要証事実に対して証拠が最低限度の証明力を有していることを言います。法律的関連性とは要証事実との関係で証拠が裁判官に対して不当な偏見や予断を生じさせないことを言います。証拠禁止に触れないとは違法収集証拠排除法則の適用がないことを言います。

主査 法律的関連性って具体的にはなんなの?

私  伝聞証拠にあたらないことです。

主査 伝聞証拠って何?

私  公判廷以外の供述を内容とする公判廷における供述または書面を言います。

主査 伝聞証拠になるとどうなるの?

私  320条1項により原則として証拠として使えません。

主査 何で伝聞証拠は証拠として使えないの。

私  人の供述は観察・記憶・表現・叙述という過程を経て公判廷に顕出されますが、この過程にはうそや誤り等がはいりやすいのにそれが確認できないからです。

主査 その確認はどうやってやるの?

私  反対尋問です。

主査 それではこのテープは伝聞証拠にならないの?

私  はい。テープは供述証拠ではないのであたりません。

主査 供述ってなに?

私  はい。人が観察し記憶した内容を言語をもって表現したものです。

主査 このテープは供述証拠ではないの?

私  甲の犯行の様子を映したものですよね?その場合には供述証拠ではありません。

主査 供述証拠とそれ以外はどうやって区別するの?

私  う〜ん、供述は人の観察・記憶の過程を経ますが、物証はそれを経ないで裁判所の前に検出されます。

主査 だからどうやって区別するの

私  う〜ん、人の心理過程を経るか…否かで…

主査 (割り込んで)まあいいや。ところで、供述証拠だという説を知ってる?

私  はい。知ってます。

主査 どうしてそういう説があるか分かる?

私  はい。作為の介在などの危険があるので伝聞方法則の適用を認めるためです。

主査 (うなずく)撮影者を反対尋問する必要があるということですね。

私  はい、そうです。

主査 それでは、テープが供述証拠だとして考えてください。この場合、証拠決定する前に弁護人は何かいうことないの?

私  伝聞法則の適用があるから証拠能力はないというかと…

主査 あのさ,326条知っている?

私  あっ、すいません。まず、弁護人は同意不同意に付いて述べます。

主査 同意は弁護人ができるの?

私  いいえ。条文上被告人だけですが、弁護人は被告人の意見を確かめていうことができます。

主査 それでは、同意がないとこのテープは使えないの。

私  伝聞法則の適用の例外にあたる必要があると思います。

主査 具体的には?

私  え〜と、321条1項3号だと思います。

主査 それじゃ、君の意見に従って物証だとしましょう。この場合、弁護人は同意不同意できるの。

私  えっ(物証に同意不同意の規定なんかないような)、え〜と、できます。

主査 条文あるの。

私  先ほどの意見を述べるという規定でするのでは。

主査 まあ、いいや。一応物証の場合は異議というんだけどね。

次にテープの関連性はどうやって確かめるの。

私  ビデオテープを再生して中身が関係するか確認します。

主査 いきなり再生するの。証拠決定前なんだけど。

私  銀行に検察官主張の日時場所のビデオテープがどうか訊くこともできます。

主査 じゃあ、必ず銀行の監視カメラ責任者の尋問が必要なの?例えばさ、警察なんかにさ、何時どういう位置で撮影したかなんか捜査させて捜査報告書を提出させるとかできないの。

私  関連性の立証は自由な証明の対象事項なので捜査報告書でもいいと思います。

主査 自由な証明の反対概念しっている?

私  厳格な証明です。

主査 厳格な証明って何?

私  はい。刑訴法の規定により証拠能力が認められ且つ刑訴法の規定に従って証拠調べて続きを経た証拠による証明です。

主査 うなずく。それでは、証拠決定が為され、証拠調べが為されました。そのあとそのテープはどうするの?

私  不要なら所有者などに返還します。

主査 いきなり返還するの?

私  いえ、すいません。まず裁判所に提出すると思います。

主査 裁判所が提出された証拠を持っていることをなんというか知ってる?

私  条文を参照していいでしょうか?

主査 いや、いい。ではこれで終わります。