はしご湯のすすめ山形県の温泉


冨本温泉 冨本館 冨本温泉 冨本館

村山市大字湯野沢2651
TEL(0237)54-2636
立寄り時間要問合せ/500円
宿泊しました:一泊二食8500円を利用(+入湯税150円)

湯野沢温泉
アルカリ性単純温泉(Na-HCO3)
29.7℃ pH=9.8 溶存物質計=194.2mg
Na=55.8mg(98.39mv%) K=0.4 Ca=0.7 F=0.9 Cl=5.8 Br=0.6 I=0.2 OH=1.1 HS=0.2
SO4=13.2 HCO3=49.4(29.89) CO3=23.6(29.16) HSiO3=42.3(20.30)
(H7.1.12)

※加水なし。加温あり。すべて掛け流し。入浴剤・消毒剤の使用なし。(清掃時に塩素使用)


村山市の郊外に冨本館はあります。表通りから唯一ある看板を頼りに田んぼ道を進みます。約1km進んだところにお宿はありました。どう見ても田舎の農家にしか見えない外観は、ココが本当にお宿?と思ってしまいます。お宿の看板などは一切ありません。心配になって聞いてみるとそうだと言う、ようやく安心。

お風呂は一階廊下の突き当たりにあった。浴槽は二つあり普段は混浴で利用してるようだが、当日は登山客の男性7人が急遽に素泊まりすることになったというので、浴槽と浴槽の間にアコーディオンカーテンを設けての男女別に設定しているという事であった。家族で入湯の時はカーテンを取っ払って貸切でどうぞとの事。小判型のタイル浴槽が二つある。それぞれの浴槽には蛇口が二つあり、蛇口を捻ると片方からは熱い加熱湯、もう片方からは生温い源泉が出てくる。また、浴槽とは別に掛け湯槽があり、ココではライオンの湯口より常時にわたって源泉が吐き出されている。口に含むとタマゴ味に甘い香りがして美味しい湯。無色透明、タマゴ味で中程度のヌルすべ感がある。

浴槽に浸かり、湯を楽しむ。ヌルすべ感が心地よい湯である。また24時間、常時に湯が投入されているわけではない。入湯する時に湯が温ければご主人に声を掛けてボイラーを作動してもらう。なんともアットホームな宿なのである。早朝に入湯しようと浴室へ行ってみると、かなり温くなっていた。おそらく前日の夜から加熱湯を入れてなかったのだろう。およそ35℃もない温度で朝風呂を楽しんでいると、浴室裏でボイラーが作動する音がしてきた。ボイラーが暖まり10分後にやっと加熱湯が蛇口から出てくるというものである。

冨本館に一般的なお宿を想像して訪問すると拍子抜けするかもしれない。暖かいご主人と息子さんのサービスが印象的なお宿である。帰り際にお宿の敷地内に湧出する源泉をご主人にお願いして見せていただいた。草むらの中の地面から塩ビ管が顔を出している。ご丁寧にもパイプをはずして源泉を御披露までして頂けた。掘削自噴の自慢の温泉のようだ。湯量は不明だが目視でおよそ30L/minほど。触れてみると生温く、分析表の数値ほどというのが分かる。

泊まった部屋は6畳、周囲は山と田んぼ以外は何も無いので夜は非常に静かだ。部屋で寝そべっていると飼育しているアヒルのガーガー声と、秋の虫の声が響いているだけだ。食事は地の食材を用いたもので美味しく頂けた。夕食のキノコ御飯がとても美味しく大満足。襖一つで隣の部屋に、急遽登山客7人が入った事にご主人が恐縮されているのが印象的であった。山菜が美味しく頂ける時期に再訪してみたい。
(05年9月)

(三昧)



長閑な野中の一軒宿「冨本館」に宿泊しました。車の行き交う表通りからは、農道かと思える程の素朴な道を進んだ先、周囲を田圃と森に囲まれ佇むお宿です。黄金色に色付き始めた稲穂の波と赤トンボ。まるで「トトロ」の舞台のような日本の原風景。冨本館は看板等の表示がなく、一見するとまるで農家のよう。唯一、軒下にさがる提灯で「ここかな?」と思える位です。

お宿では御主人と息子さんが出迎えてくださいました。ギシギシと木造廊下をきしませ通されたのは一番端の角部屋、窓の外には田圃や森の木々が広がります。部屋は6畳、隣との仕切りは襖、クーラーの設置は無く扇風機が置かれています。お茶セットにタオル歯ブラシセット、そして浴衣が用意され、無料で観られるTVもあります。まるでどこかの農家にお邪魔したような、不思議な懐かしさのある部屋。館内は古びてはいるものの、あたたかなお日様のにおいが溢れ、柔らかな西日の射込む、遠い昔にタイムスリップしたような‥‥そんな郷愁の世界。共同のトイレは当然のようにボットンです。

お目当ての浴室は1階の一番端っこにありました。男女別脱衣所の先に2人サイズの小判型タイル浴槽が二つ、まるで眼鏡のように並んでいます。基本的には混浴(部屋ごとの貸しきり利用)のようですが、ふたつの浴槽の間をアコーデオンカーテンで仕切る事により、即席で男女別にする事ができます。浴槽壁には各々湯の投入口がふたつあり、銀の方は不定期に激熱の加熱湯が流し込まれ、金の方はノズルを開閉する事により非加熱源泉を自由に投入する事が出来ます。普段は片方の浴槽に非加熱源泉が満たされ、もう片方だけが加熱浴槽となるようですが、訪問時は他にも宿泊客があった為、両方の浴槽に加熱湯が投入されていました。

洗い場にはシャワーと非加熱源泉の蛇口があり、これを利用して体を流します。また、この他にサル?のようなライオン??のような妙な湯口の付いた細長い「掛け湯槽」があり、常に人肌よりやや温い程度の源泉が溢れています。湯は、ほぼ無色透明、とてもヌルヌルスベスベするもので、頭や顔を洗ったら、本当に泡が取れているか分からない程。湯を口に含むとかすかに鉱物的な粉っぽさが口に残り、仄かな硫黄風味がプーンと鼻に抜ける感じがします。少しばかりの石膏味も。湯浴み直後は少し寒く感じるものの後からポカポカとする湯です。木造浴室にちりばめられたタイルの装飾も雰囲気良く、小判型のタイル浴槽と相まって、なんともレトロムード満点です。夜に湯浴みを御一緒した御近所の奥さんは、「この丸い浴槽が好きで、犬の散歩途中についつい立寄っちゃうのよね」と仰っていました。

お湯を満喫した後は部屋で食事を頂きます。息子さんが少しづつ運んでくださる夕食は地のものを利用した素朴な手料理が多く、どれも美味しく頂けました。「今が一番食材が少ない時期で、こんなものしか用意できなくて申し訳ない」と御主人は仰いますが、とんでもない。私達は気取った懐石ではなく、こういう温もりある料理が何より嬉しいのです(ちなみに初夏あたりが一番食材が充実するとの事)。夕食の後半に部屋を訪ねて来られた御主人は、野良仕事を終えた後の飾り気の無い姿で、木訥とした素朴な笑顔が実に印象的でした。

夕食後は部屋でゴロゴロタイムです。窓から吹き込む夜風が心地よく、アヒルの鳴き声と虫の声だけを聞きます。このお宿のアヒル、番犬並に役立つようで、人間が察知しない車の音をいち早く聞き、来客が近づくとガアガアと大声で知らせてくれます。また、お宿には「チィ」と「サリー」という2匹の猟犬がいて、玄関先でゴロリンとしています。チイは息子さんの愛犬のようで、サリーの方はお客さんからの預かり犬との事。訪問時は生憎の曇りだったのですが、外は濃紺の闇が広がるばかり。布団の上でボーッとしているうちに、いつの間にか寝てしまいました。

翌朝は爽やかな晴天です。朝風呂の後の朝食、鮭の切り身が分厚く大きく、朝から満腹。窓から射込む朝日の中で美味しくいただきました。食後は御主人にお願いして源泉のパイプを見せていただく事に。御丁寧にも周囲の雑草を釜で刈ってパイプを外してくださいました。パイプの周囲には温かな湯の効果で寒い時期でも枯れないという花が咲いています。源泉の歴史は御主人にも「よくわからない」そうで、その昔、冨本館が建つ辺に集落があり、その当時から既に利用されていたのだそう。

そんな御主人、4年前に突然奥様を亡くされ、その後は御苦労が続いたそうです。「何にも教えてもらえず、突然たった2週間で死んでしまって、子供も結婚したもんだから、まるで砂漠に独り取り残されたようだった」と、暗中模索の中、必死に走って来られた4年間を振り返ってらっしゃいました。まだまだ手探りな面が多いとの事で「料理もどんなものを出したら喜ばれるんだろう?」等、いろいろ考えてらっしゃるようでした。

帰り際、御主人と息子さん、そしてチィが手を振って見送ってくれます。旅館やホテルのような形式ばったサービスではない、心底「客人を喜ばそう」と懸命に心を尽くされる御主人と息子さん。その心遣いは、忘れかけていた人の優しさを思い出させる、そんな素敵なお宿でした。
(05年9月)

(まぐぞー)





冨本館浴室




アコーデオンカーテンで仕切ると
即席で男女別となります



小判型のタイル浴槽




洗い場
階段奥は女性脱衣所


非加熱源泉溢れる
掛け湯槽


ビー玉目のかわいい
動物湯口



庭の源泉を
見せていただく



パイプを外す御主人


生暖かい源泉


宿泊した部屋




館内の廊下
窓の外には田圃が広がります



冨本館外観




日本の原風景に囲まれた
冨本館です


若旦那とチィ
御主人とサリー


表通りに立つ冨本館の看板
錆び付いて見にくくなっている

冨本館・食事の画像はこちら




中村遺跡縄文公園

冨本館から車で数分、車の行き交う表通り近く、田圃の中にポッカリと開けた縄文公園です。縄文時代中期〜晩期の集落跡で、数軒の縦穴式住居が復元されています。実はここ、冨本館さんの所有地で、遺跡が出土した為、このような公園として開放されているのだそうです。冨本館ご主人ご自慢の地で「ぜひ寄って見学して帰って」と大プッシュだったので寄ってみました。






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