The battle of the bastards.(イリアスとレアンデルの舌戦)・・・「カルミナ・イシュメリアーナ」より

 

 リンディニス伯イリアス・フェリアスは、先代エルナンの妾姫の息子である。庶子とはいえ。エルナンの子息として場内で産声をあげることを許されたことは、生まれた時点からリンディニスの正しい世継ぎ−−−但し、正妻に男児が出生しない限りは−−−として認められていたことを示している。母親の身分はそう高いものではなかったものの、それなりの待遇を得ていたので(エルナンはそういう意味ではフェミニストであった)、生まれたときよりリンディニス伯の子息として、不自由のない生活を送っている。一部に、その母の出自をとやかく言おうとする者はいたが、プライドが高く乱暴なところも少なからずあるリンディニスの小伯爵に直言できるものなどあろうはずもなかった。

 一方、セルシー伯レアンデル・アム・モーブルは、先代グラインドルの愛人の息子であった。貴族の血を引いていたとはいえ、歓楽街の舞姫、いわば河原者にすぎぬ愛人が母親であったことや、かつどうしても後継者を明らかにせねばならぬ事態になって初めて探し出された息子ということで。正式にモーブル家の世継ぎとして迎えいれられてからも、その出自と育った環境のことにかこつけて、彼のことをよくは思わぬ者は少なくはなかった。

さて、グラインドルの死後、新しい選王侯家当主としてはじめて追うの宮廷にレアンデルが伺候したときのことである。

 選王侯の序列ではモーブル家は文官の3番目、フェリアス家は武官の3番目にあたる。

 木星は金牛宮にあったため、その時期は文を司る家が尊ばれる期間であったのだが、国王の御前から退出してくる途中、新しいセルシー伯の行列が上がろうとするのにぶつかったイリアス・フェリアスは、しかし道を譲ろうとはしなかった。

 誇り高いイリアス卿の言うよう、「どこの馬の骨ともしれん男を『選王侯』と認め道を譲るほどの腰抜けではないのでな。」

 すると新しいセルシー伯は、あっさり家臣のものたちに合図してリンディニス伯のために道を空けさせて言った、「しかしワタクシは腰抜けですので、そのようにさせていただきたいとおもいます。」

 これは先に攻撃をしてきたイリアスの言葉をそのまま彼に返したものである。

 まったくの阿呆でもないイリアスは、すぐにレアンデルの言葉の毒に気づいたが、王の宮廷でそれ以上の騒ぎを起こすこともかなわず、憤懣やるかたのない表情をあらわにしたまま、足早に宮殿の廊下を下っていった。

    <終わる。>

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登場人物;

レアンデル・アム・モーブル・・・選王侯。庶出の当主サマ。実子認定までに苦労が多かった人。

イリアス・フェリアス・・・選王侯。庶出だけど生まれたときからかなり大事に育てられたわがままモン。