子を貸し腕貸しつかまつる

記念すべき子連れ狼第一作目。

主に拝一刀がなぜ戦うのかという背景を描いている、まさに導入部的な一本。

子連れ狼初体験の若人たちは、避けて通れない登竜門だ。

後期の、発狂した中学生の見る夢のようなめちゃくちゃさは少し物足りないが、それでもほかの映画を寄せ付けない孤高の存在だ。

見所も満載で、血糊の量も、足の吹き飛び具合も思い切りが良い。

何事も思い切りが大事だなぁ・・と思わせてくれる一本だ。

 

拝一刀は幕府内で特別高い地位にある公儀介錯人という役職に就く武士である。

物語は拝一刀が介錯をするシーンから始まる。

子供

いきなり子供。

ちょっと衝撃的で後味が悪いオープニングだが、なかなかインパクトが強い。

冒頭で客をふるいにかけるインディーズ精神が垣間見えるワンシーンである。

こうして毎日、せっせと人の首をはねている一刀であったが、そんな平和な毎日が突然崩れ去る。

ある晩、拝家は謎の集団の襲撃を受け、一刀と息子大五郎以外全滅

妻のあざみも殺されてしまう。

そのうえ、一刀は身に覚えの無い反逆の罪を着せられてしまうのだ。

このちょっとやりすぎなくらいの転落劇は介錯人の地位を狙う柳生一派の影の実力者「裏柳生」の仕業であった。

この恨みを晴らすため、拝親子は幕府の命令に背き、刺客「子連れ狼」として裏柳生への復讐劇を開始するのだった・・・・。

というのが大まかなストーリー。

 

映画の前編は、道中の子連れ狼が過去のいきさつを思い出しながら旅を続けている、という構成になっている。

拝一刀はすごく視聴者に優しい回想の仕方をする人なのだ。

険しい道中の一刀

ところでこの映画の魅力のひとつに、主演若山の兄貴の演技がある。

とにかく厳しい。

表情が厳しい。

子供を抱いているとき。

お風呂に入るとき。

女性と関係を結ぶとき。

常に厳しい。

もし自分が勝新だったら、「兄貴、その役作りやりすぎだよ」と言ってしまいそうなくらいだ。

しかし、この厳しすぎるハードフェイスが、独特なグルーヴを産み、心地よくなってくるから不思議だ。

確かに物語後半では、敵も全員ハードフェイスという目に厳しすぎる映画になるが、

それすらも、心地よくなり、やがて現代の役者の何の厳しさも無い営業スマイルが物足りなくなってくること請け合いだ。

さて、常に顔の筋肉を酷使して旅を続ける一刀。

その一刀の前に一番初めに現れるキャラクターは彼女だ。

彼女へへへへ・・・・

いきなり狂ってました。

この辺にも子連れ狼が復刻されない理由があるような気がしてならない。

この女性との出会いで、一刀が実は優しい一面も持つということがわかる。

そのうえ大五郎の可愛さも前面に押し出した重要シーンだ(多分)。

でも、女性が狂ってる必要は無いと思う。

その辺は三隅監督の下心がちょっと出た演出だろう。

この女性はこのシーンだけでフェイドアウト。

女優という仕事もなかなか大変だなぁ・・・としみじみ思う。

 

やがて一刀は自分が柳生と戦い始めた日のことを回想しだす。

無実の罪を着せられ柳生の刺客と戦いはじめたあの日・・・。

多勢に無勢ながらもひるまない一刀・・・。

ぎゃーーーぎゃーーーー

強い。

拝一刀は、強烈に強い。

一対十くらいは日常茶飯事。

柳生の雑魚キャラ同然の無名俳優では当然歯が立たない。

そこで裏柳生は長男、備前を送り込んでくる。

見守るのは裏柳生の親玉、柳生烈堂。

爺さん ぶぃずぇんのとぅわくぇがぁ・・・

敵サイドの怖い顔代表はこの老人に決まりだ。

しかも烈堂を演じる伊藤雄之助

この人も役作りをやりすぎたのか、

何を言っているかわからない。

なんか特撮ヒーローの悪役のような役作りだ。

ベテランともなると、こういう演技もアリなのかな、と思っていると

二作目では役者が変わっていた。

もしかしたらナシだったのかもしれない。

烈堂の見守る中、備前との対決では、自らの得意な水中での戦いに持ち込む一刀。

水鴎流 ザバザバ・・・

え?

拝さん、その戦法・・・

不自然すぎですよ。

少しずつ少しずつ水中にもぐっていく一刀。

「水鴎流、波斬りの太刀!!」

烈堂の爺さんが(多分こう)叫ぶ。

そして水面から刀が飛び出し、一瞬で備前をしとめる一刀。

とりあえずびしょぬれだ。

こうして柳生との戦いが始まるのだった。

 

さて、場面は変わって道中の拝。

追われている身の拝ではあるが、生きていくために、そして裏柳生に近づくために刺客業を営んでいる。

500両で、何人でも切り殺す凄腕の刺客、子連れ狼として。

その宣伝のために乳母車には、大きな旗がはためいている。

「子を貸し、腕貸しつかまつる。 水鴎流 拝一刀」

宣伝のためとはいえ、ここまで自己主張する逃亡者も珍しい。

危機意識の希薄さは、ちょっとすがすがしいくらいだ。

もちろん、自分の腕に半端じゃない自信がある一刀だからこそできる自殺行為なのだ。

しかし案の定、怪しいやつらに見つかってしまう。

怪しい 

「もしや、あの男、拝一刀では・・?」

書いてあるから。

このちょっととぼけたズッコケ三人組みは、拝に依頼を持ってきたのだった。

しかし、真に拝が頼れる男かを図るため藩内ナンバーワンの凄腕の二人が拝を試すことになる。

「お前ら、命を捨てる覚悟だと言ったな?」

「お任せください!」

ここ、武士の命を賭けて藩のために働く男気が感動的なシーンだ。

そして商談の途中に背後から二人同時に斬りかかる段取りに。

一刀を呼び止め、商談を開始する。

「拝一刀殿ではないかとお見受けしますが・・・。」

書いてあるから。

そして商談の途中で、突然扉を蹴り開けて、背後から斬りかかる凄腕武士二人(モーちゃんとハカセ)。

ズバーズバ----------!!!

ぜんぜんダメでした。

一切後ろを振り向くことも無く斬り捨てられ。

なんの感想もナシに死んでいく武士二人。

こうしたあまりに思い入れの無い死に方をする脇役も子連れ狼シリーズのハードボイルドな世界観に彩りを加えているのだ。

こうして死んでしまったモーちゃんとハカセをそのままに、残されたハチベエから依頼を受けた一刀は、目的地の湯治場に向かう。

その途中で、また過去の思い出を回想する一刀。

それは一刀が柳生との戦いのため、幕府を裏切ることを決意した夜のこと。

 

よちよち歩きの大五郎に向かって一刀が厳しい顔で叫ぶ。

「これから父は屍の道を進む!

お前はここで普通のガキとして死ぬか、一緒に冥府魔道に入るか自分で選べ!」

厳しすぎ。

当然、まだ言葉もわからない大五郎にそんな人生最大の選択を選べるわけは無い。

名場面

「この刀と鞠、どちらか選べ!」

理不尽すぎ。

大五郎はよちよち歩きで、二つの品の前まで来る。

そこに例のハードフェイスでプレッシャーを与える一刀。

結局、(拝家の血統によって)刀を選んだ大五郎。

「ここで死んだほうが幸せだったろうに・・・不憫な子だ・・・。」

と、自分の教育方針を棚にあげて突然の男泣きの一刀。

なかなか理不尽で、すばらしい名場面だと思うな。僕は。

 

翌朝、幕府の使いの者たちを屁理屈をこねつつ鬼のように斬り捨てる一刀。

ここでも鮮烈な強さを見せつけて、五人単位で斬っていく。

時には、折った敵の刀を吹き飛ばして

折れた刀で

他の敵に突き刺す超テクニカルな一面も。

こういった異常なイマジネーションの産物の殺陣が随所で出てくるのが、子連れ狼(や座頭市)の魅力の一つだ。

座頭市シリーズでも印象的な殺陣を撮る三隅監督の才能が爆発している。

ちょっと引くくらいの強さでもはや敵ナシ、逃亡成功か・・・と思われた一刀であったが

無理

囲まれました。

予想以上の敵の数に、さすがの一刀も敵わない様子。

大人しく捕まってしまうのか・・・という緊迫のシーン。

視聴者はどうやってこのピンチを抜け出すのか、思案を巡らせるだろう。

すると・・・・

脱衣バサッ!

「この幕府のお墨付きのご紋の入った装束を、斬ることなどできまい!!」

卑怯

幕府の権威を人質に窮地を抜け出す一刀。

そうなのだ。

この拝一刀、勝利のためなら物語的にNGなことも平気でするダーティーヒーローの代名詞みたいなやつなのだ。

この直後の柳生蔵人との一騎打ちで、それはもっと顕著に目立つ。

荒野での一騎打ち。

敵の蔵人は、太陽を背にして有利な条件で決闘を挑んでくる。

まぶしくて、相手をまともに見れない上、なぜか大五郎をおんぶしている一刀。

絶対的に不利に思われた決闘であったが・・・

カガミカッ!!

うわぁ・・・

背中の大五郎の頭につけた鏡で相手の目をくらませる一刀。

その隙をついて、蔵人の首を吹き飛ばす。

シュール

首の飛んだ侍と、子供を背負った侍、子供の額には鏡・・・。

もしかしたら、時代劇史上最もシュールに近い戦いだったかもしれない。

完全に卑怯(で間抜け)な方法で勝利を納め逃亡に成功した一刀。

これで表向きは自由な身になったはずだったが、裏では裏柳生の刺客が次々と襲ってくるのだった。

 

場面は戻り、一刀は湯治場にたどり着く・・・。

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